映画「トライアングル(2009)」観た
原題:TRIANGLE
製作:イギリス・オーストラリア’09
監督:クリストファー・スミス
ジャンル:★サスペンス/ホラー
【あらすじ】自閉症の息子を持つシングルマザーのジェスは、気分転換にと友人たちとヨットセーリングに出かける。だが、天候の急変でヨットが転覆、漂流し、運良く現われた豪華客船に乗り込み助けを求めるが、船内には人の気配がまるでなかった。不審に思い始めた矢先、一行は覆面の殺人鬼に次々と襲われ…。
不快感を覚える人も多そうな内容ですが、意外と好きですね。「0:34 レイジ34フン」の監督でしたか。
即効で一人になってしまうのがびっくりで、その後、ひたすら伏線回収していくばかりなんですが、割とよくできてて頑張っていたと思います。
ただ、繰り返しになってしまうし、結局船内の出来事ってあんまり意味なかった気がするのが惜しいかも。重要なのは船の名前「アイオロス号」の由来くらいで。
それに、思い込みで行動する主人公に感情移入できないんですよ。最後まで観れば、それがある意味思い込みじゃないと分かるものの、視聴者には伝わらないですからね。
でも、終盤わかる真相というか入れ替わりのタイミングには驚かされました。そこからか、と。
ラスト、自分で望んであの場所へ行ってしまうのは、やはり息子のためなんでしょうね。「わたしの世界は母親を待つ子供中心?勝手なこと言わないで」とか言ってた気がするけど、やっぱりその通りなんだと思います。
それに付き合わされる人たちが可哀想な気がするけど、実際のところ彼らは何者なんでしょう?
彼女がどうしてこんな状況になったのかハッキリとは描かれてないものの、必ず最初があったはずです。
おそらく車の事故でふたりとも亡くなり、アイオロスのように死神を騙して罰を受けることになったんでしょう。
故意か偶然か、自分だけあの世に行かず、息子も助けられると考えたのではないでしょうか?
ま、バレてこんな目に遭ってるわけですが、そうすると友人たちは幻なのか、本当に彼女と一緒に難破して彼女の罰に巻き込まれたのか、いまいちわかりません。
さすがに巻き込まれるのは可哀想ですよね…きっと難破後に彼らだけ助かって、彼女は幻の世界に連れて行かれてしまったのだと思いたいです。
ラスト、タクシー運転手(死神)が「また戻ってくるんだろ」と言うのは、ぜんぶやり直して事故を起こす前に戻ってくるんだろという意味ですが、それは事故を回避するためではないと思います。
彼女が悪い母親だったと思い知り、大切な息子を失う瞬間を何度も繰り返させるという罰を与えるために、やり直せるかもしれないと思わせていたとは思います。
ですが、すでに何度も繰り返して彼女は息子が死んだ事も、もうやり直せない事もわかっているはずで、だからこそ忘れてしまうんでしょう。
つまり「戻ってくる」というのは息子を死なせないためではなく、生きている息子(の幻)を抱きしめるためなんだと思います。
記憶を失くすのも、息子が死んだという現実と向き合うより、生きている息子に会うために必死になってあの船の上で殺し合いをする方が楽だから…。
この世界は彼女が罰を受けるための場所であり、あの船の名前の由来である伝説(死神を騙してこの世に居座った罰として、岩を山に押し上げる苦行を永遠に繰り返させた)通りの事が起きているのなら、彼女は永遠に息子に会う事はできないんです。
あそこは地獄のようなもので、いつか天国で息子の魂に会えるという希望を持つことすらできません。
それに気付いているからこそ、幻でも息子に会えるこの罰を喜んで受けているんでしょう。
ただ、「もうあなたを殴ったりしない。なぜならあなたを殴ったのは偽者のママだから」というような事をぬけぬけと言っているから、この地獄から抜け出せないという気もしますが…。
エゴが強いので、結局感情移入できないという。
まさに無間地獄という感じでした。