映画「天井桟敷の人々」観ました

読み:てんじょうさじきのひとびと
原題:LES ENFANTS DU PARADIS
製作:フランス’45
監督:マルセル・カルネ
ジャンル:★ドラマ/ロマンス
【あらすじ】1840年代パリのタンプル大通り。パントマイム役者バティストは、美しいガランスに恋をする。だが、犯罪者でありながら文才のあるラスネールや女タラシの俳優ルメートル、金持ちなモントレー伯も彼女に夢中だった。一方、座長の娘ナタリーは自分とバティストは結ばれる運命だと信じていて…。
ずっと観たくて、NHKのBSシネマに2回くらいリクエスト出したんですが、先月やっとオンエアがあって期待しながら鑑賞。195分の長編にも関わらず最後まで一気に観られました(最近気を抜くとすぐ寝ちゃうのに!最近って言っても5/31だけど…)
ただ、今回はストーリーよりそれぞれのキャラクターの方に注目してしまったので、感想もそれぞれのキャラクターについて書いていこうと思います。
まず、イラストに描いた古着屋ジェリコがいいんですよね~。
たぶん生まれた時から貧しくて、信じられるのはお金だけで、才能といえば金の匂いを嗅ぎつけて人の心の隙につけ込む事だけ。当然、友達はいないし皆に嫌われていて、孤独で寂しくて虚しくて、でも自分は変えられないから(自分の事も信じられない)、不幸という形でもいいから他人の人生に関わろうとしてる…。そんなふうに見えました。
最初はただ哀しい人だなぁと思ってたんですが、巻き戻してイラスト用のシーンを物色していたら、色んなシーンで登場して「あれ、もしかしてこの人が流れをコントロールしてる?」と思ったり。
コントロールとまではいかないかもしれませんが、おそらく彼らがどのような運命を辿っていくのか予想はついていたんじゃないかな。それを傍観してほくそ笑んでる時だけ、孤独を忘れられるのかもしれません。
次に、ヒロインのガランスがクールで、やっぱり哀しいひとでした。
生きるためにいろんな事をしてきたんだろうけど、いつも正直なんです。でも、それは受け身な正直さであって、自分が何かをしたいという能動的な正直さではありません。
生きるためならモントレー伯との結婚も受け入れるけれど、自分の心は別にあるとハッキリ告げるんですよね。多分モントレーもそれを承知で結婚(偽装結婚 笑)したから、後半の彼女の行動もまったく気になりませんでした。子供もいないし、むしろルールを破って多くを求めたのはモントレーの方だろと。
ただ、こんな女性はカッコいいけども、女優さんが極妻の岩下志麻に見えちゃって…みんな熟女好きなのね(笑)
バチストは男としては頼りないけど(ナタリーと結婚しちゃうし!)、パントマイムの才能は本当に素晴らしくて、彼の舞台だけで一つの作品として観られるんじゃないかという感じでした。
俳優経験のないガランスのために、何も喋らずほとんど動かずに彼女が輝ける役を用意するところが素晴らしい。クスクス笑えるシーンもあって、なおかつ自虐的ストーリーから彼の自信のなさが伺えます。
押しの弱い男と受け身のガランスじゃ、どう考えてもハッピーエンドは無理!
そして、一番カッコいいのが女タラシの俳優ルメートルですね。恋の痛みを知ってそれを演技の糧にする…俳優の鑑です。バチストの事もその才能を認めて尊敬していたし、脚本家になったラスネールの才能も称賛していて、人はともかく才能をみる目はあります。心から舞台を愛してるんでしょう。
一方、世界一の道化役を演じたモントレー伯もね…哀れなくらい間抜けで、イラつく男なのに憎めません。
そんな世界一の間抜けすら羨む自分が道化だと理解してるラスネールさんもよかったですね。いっそ彼女が優雅な暮らしで変わり果てていれば良かったのにという気持ちが切ない!
愚かしいくらいに夢を信じたナタリーも、もう少しバチストという男をしっかり見ていればこんな事にならなかったのかも。これから息子にベッタリな過干渉な母親になりそうで怖いです。
こんな感じで、メインの登場人物たちがみんな個性的で存在感があって、最後までこの物語を堪能できました。原題の意味は「天国の子供たち」だけど、意味がよくわからんなぁ(ウィキペディアに書いてあった!あの一座で天井桟敷の人々をそう呼んでたんだね)。今度再見する時はそこら辺も考えつつ全体のストーリーを楽しみたいです。
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■ Comment
先ほどはコメントを有難うございました♪
>こんな感じで、メインの登場人物たちがみんな個性的で存在感があって、最後までこの物語を堪能できました。
>あの一座で天井桟敷の人々をそう呼んでたんだね)。今度再見する時はそこら辺も考えつつ全体のストーリーを楽しみたいです。
いえいえ、こんなにも人物それぞれをご理解なさって、凄いです☆
その意味で、全体のストーリーをもハッキリと・キチンと・とらえていらっしゃいますよ~!
ガランス役の女優さんは、日本でいえば高峰秀子的???
カルネ監督作品の常連です♪
当時はこういうお顔が受けたのかもしれませんね~?
岩下志麻さん・・・う~ん・・・。
ジャン=ルイ・バローさんは、パントマイムが本職なので、かえってこういう映画に出ることが珍しかったのだと思います~。
見て頂いて記事を書いて下さり、有難うございました☆
イラストのおじさんのことはあんまり覚えていないので、また再見できれば・・・と思いました☆
その人がコントロール(狂言回し)とは、全然思った事がないので、ビックリです☆
やはりこの物語の主人公は、天井桟敷の人たちのように思います。
.
2014/06/24 16:00 miri〔
編集〕
> いえいえ、こんなにも人物それぞれをご理解なさって、凄いです☆
> その意味で、全体のストーリーをもハッキリと・キチンと・とらえていらっしゃいますよ~!
ありがとうございます♪
長時間の作品だけど監督の腕がいいのか、するっと頭に入ってきました。
さすが名作と言われるだけあります。
> ガランス役の女優さんは、日本でいえば高峰秀子的???
> カルネ監督作品の常連です♪
> 当時はこういうお顔が受けたのかもしれませんね~?
高峰秀子さんは良く知りませんが、頬骨の辺りの骨格が似てますね。
岩下志麻さんは眼窩のくぼみが似てるんですよ。
こういう古い映画って当時の美女基準がわかって面白いです。
> ジャン=ルイ・バローさんは、パントマイムが本職なので、かえってこういう映画に出ることが珍しかったのだと思います~。
そうだったんですか~。どうりで上手いわけです。
パントマイムっていつも化粧してるイメージだから、映画で化粧を落とした顔をアップで見られるのって珍しかったかも。それだけでもお客が集まりそう(笑)
> 見て頂いて記事を書いて下さり、有難うございました☆
いえいえ、miriさんの記事を読んでずっと観たいと思っていたので。
こうしてオンエアされたのもmiriさんのおかげです。
> その人がコントロール(狂言回し)とは、全然思った事がないので、ビックリです☆
少なくともナタリーとバチストをくっつけようとしたり、バチストとガランスの間を引き裂こうとしてましたね。最初は銀食器を買ってもらうためだったと思うけど、途中から悪意を持ってやってたかも。
> やはりこの物語の主人公は、天井桟敷の人たちのように思います。
そうですね。次ぎ見る時は彼らにも注目してみようと思います!
このコメントは管理人のみ閲覧できます
2014/06/26 18:59
>ずっと観たくて、NHKのBSシネマに2回くらいリクエスト出した
僕もこの映画の存在はずっと気になっていました。
>バチストは男としては頼りないけど(ナタリーと結婚しちゃうし!)、パントマイムの才能は本当に素晴らしくて
素晴らしいパントマイムでした。
>押しの弱い男と受け身のガランスじゃ、どう考えてもハッピーエンドは無理!
そこがまたバチストの魅力かも知れません(苦笑)。
>これから息子にベッタリな過干渉な母親になりそうで怖いです。
ナタリー!そうですね。女性らしいご意見です。
宵乃さんのイラスト。この映画の雰囲気がよく出てますね!すごくいいです!
2014/07/05 13:36 間諜X72〔
編集〕
いらっしゃいませ、コメントありがとうございます。
この作品はmiriさんの記事で知って、ずっと気になってたんですよ。
間諜X72さんも観たいと思ってた作品だったんですね。
オンエアされてよかったです♪
バチストのパントマイムは本当に面白くて、改めてパントマイムの魅力を知りました。
でも、何気に罪作りな男なのがね~(笑)
ナタリーさんは伯爵ほどじゃないけど相手が見えていないというか、独占したい気持ちが先走るタイプに見えたので、バチストに愛想を尽かしたら一気に息子に向きそうでちょっと今後が不安です…。
> 宵乃さんのイラスト。この映画の雰囲気がよく出てますね!すごくいいです!
ありがとうございます。
個人的にはこの心根の歪んだじいさんが一番好きかも(笑)
>まず、イラストに描いた古着屋ジェリコがいいんですよね~。
こちらの記事を覚えていたので、この人に注目しようと思ったら、なんとまぁ!
最初のシーンで、最初の台詞を言うのがこの人でした!
ビックリ仰天!!!
>色んなシーンで登場して「あれ、もしかしてこの人が流れをコントロールしてる?」と思ったり。
>コントロールとまではいかないかもしれませんが、おそらく彼らがどのような運命を辿っていくのか予想はついていたんじゃないかな。
いや、全く宵乃さん、恐れ入ります。。。
私は今までこの人の事そんな風に思って見なかったのですが、
今回、シッカリと見てみると、この人、狂言回しの役割していますね~☆
この人自身がコントロールしているというよりは
監督たちがこの人を使って物語を回していましたね~!
ラストシークエンスも、あの叫び以外では、この人の台詞だけでしたし、
最初から最後まで、重要なところにくるとひょいと現われて、
イラストのシーンなんて、マジ凄かったです!
(イラスト、素晴らしいですよ~2人の心情が伝わってきます)
***************************
その後の件は、私は再見時感想に書いたように思いましたが
ナタリーはあまり子供にうるさくないような気がしました。
幼い頃から芝居小屋で生きて、バティストの事は夫と言うよりも
同志・きょうだいに近い感覚のまま、好きになってしまったんでしょうね~
なので、坊やの事を、あまりしばるようには思えなかったです。
その他、今回も、今まで同様に楽しめましたが、
画質が悪かったので? BS2の時の方が良かったような?
(特に序盤ですが)ちょっと残念でしたね~。
あと、バティストがガランスを見つけて、終盤に走り出して
(見つけた場所が天井桟敷でしたね~)
あの滅茶苦茶なラストシーンに繋がることがとても自然で良かったです。
やっぱり19世紀を模した、当時のフランスのパワーを感じました。
再見の機会と、良い見方のチャンスを、有難うございました。
.
いらっしゃいませ!
私の記事を意識しながら観てくれたということでありがとうございます。
しかし、最初と最後のセリフもジェリコさんでしたか~。やや自信がなかったんですが、miriさんにも狂言回しだったと言ってもらえて安心しました。
> この人自身がコントロールしているというよりは
> 監督たちがこの人を使って物語を回していましたね~!
意図して重要な局面に巡り合わされるというのは、ある意味、神の使いですね~(笑)
> イラストのシーンなんて、マジ凄かったです!
> (イラスト、素晴らしいですよ~2人の心情が伝わってきます)
ありがとうございます!
インパクトあるシーンで楽しく描けました。私も監督たちに動かされてしまったのかも(笑)
> ナタリーはあまり子供にうるさくないような気がしました。
> 幼い頃から芝居小屋で生きて、バティストの事は夫と言うよりも
> 同志・きょうだいに近い感覚のまま、好きになってしまったんでしょうね~
> なので、坊やの事を、あまりしばるようには思えなかったです。
確かに彼女はバティストに兄弟のような感覚を持っていたんだと思いますが、思い込みの激しいところがなんというか…。でも、いつか再見したら印象も変わるかもしれないので、その時はまっさらな気持ちで再見したいと思います。
> やっぱり19世紀を模した、当時のフランスのパワーを感じました。
> 再見の機会と、良い見方のチャンスを、有難うございました。
いえいえ、こちらこそお話しできてよかったです。
ラストシーンはもう忘れてしまったんですが(汗)、劇場の熱気などは印象に残ってます。
またいつかお話ししましょう♪
ところで、最近fc2の管理画面の表示がおかしくないですか?
テーマを示すアイコンや、承認するのアイコンが表示されないのは、わたしだけじゃないですよね?
見づらくて困る…。
>ところで、最近fc2の管理画面の表示がおかしくないですか?
>テーマを示すアイコンや、承認するのアイコンが表示されないのは、わたしだけじゃないですよね?
>見づらくて困る…。
ハイ、仰るとおりで・・・
「高機能テキストエディタ」が一番ウザいです・・・。
こういう風に変わったのではなく、一時的なモノだと良いのですが・・・。
.
2016/09/26 09:13 miri〔
編集〕
やっぱり他の方もなってたんですか~。
今、返信しようとしたら直っていて、ホッとしました。
「高機能テキストエディタ」は使ってないのでわかりませんが、利用に少なからず支障をきたすような不具合が出た時には、きちんとお知らせで言って欲しいですよね!