忘却エンドロール

素敵映画に出会えた時の感動をそのまま書き綴る、映画感想ブログ.

映画「列車に乗った男」観ました

列車に乗った男
読み:れっしゃにのったおとこ
原題:L' HOMME DU TRAIN
製作:フランス・ドイツ・イギリス・スイス’2002
監督:パトリス・ルコント
ジャンル:★ドラマ

【あらすじ】シーズン・オフのリゾート地。くたびれた革ジャン姿の中年男ミランが列車から降り立ち、ひょんなことから知り合った初老の男マネスキエの自宅に泊まることに。少年に詩の個人教授するだけの平凡な日々を過ごすマネスキエと、流浪のアウトロー・ミランという対称的な2人だったが…。

Gyaoで鑑賞。ベタベタしないふたりの男の友情が、ふっと笑みがこぼれるような可愛らしさとあたたかさを含みながら描かれてました。
もうね、マネスキエが可愛いんですよ!
水がなくて頭痛薬が飲めずに困っていた男ミランを自宅に招くんだけども、さっさと薬を飲んで去ろうとする彼に、話し相手がほしいというオーラを全身で発しつつも、おしゃべりは我慢してほどほどに切り上げるところとか。結局他に泊まるところがなくて帰って来た彼を、ウキウキしながら一番いい部屋に案内するところとか。冒頭から見ててニヤニヤしちゃいました。
他にも、こっそり彼のジャケットを着て、鏡の前でワイアット・アープごっこをする姿は胸キュンだし、ピアノを弾きながら「わたしは刺繍以外なら、20世紀初頭の女性の教養は身につけている」とか、床屋で「出所直後とスポーツ選手の中間みたいな髪型にして」とか、銀行で「一度でいいから銀行を襲ってみたい」と言って周りをギョッとさせたりと、とにかく可愛いくて面白いおじいちゃんなんです。
これだけ並べると最初に書いた”ベタベタしない友情”ってのが嘘っぽいかもしれないけども、基本的にマネさんが一方的に話しかけたりしてるばっかりで、ミランが心を開いた頃にはマネさんも落ち着いてきているので(笑)、描かれる友情はホントさらっとしてます。
お互い自分のなりたかった人生を送っていて、そこに憧れと敬意を抱くようになっていくんですよね。
お店で騒ぐ迷惑な客に注意したり、夫に我慢し続ける姉に本音をさらけ出すように言うといった、マネさんにとっての大冒険ができたのも、勇気付けてくれるミランという存在があったからです。
ミランも自分とはまるで違う価値観を持つマネさんの影響を受け、人生を振り返ってみたり。
ふたりが何気なく、でも大切にこの数日を過ごしているのが丁寧に描かれていました。
ラストは”旅立ち”をやや曖昧に描いていて最初は戸惑ったものの、やはり特別な出会いだったんだと感じられるもので良かったです。(おそらく贈り物の室内履きを履きながら)ピアノを弾く男と、列車に乗る男の表情がいい!
列車の音のようなリズムのED曲を聴きながら、余韻に浸れました。

…ここから重要なネタバレですので、未見の方は回避!
実は銀行強盗に来たミランなんですが、それをさりげなく止めるマネさんと、旧友のためにマネさんの申し出を断るミランの胸中を思うと切なかったです…。
大手術を控えるマネさん的には、自分がもてあましていたものを友人のために遺したいと思っていたんだろうし、ミラン的にもなんとなく虫の知らせを感じていて、旧友を放って自分だけ新しい人生を送るなんてできなかったんですよね。
ラストに描かれた”一瞬の夢(もしくは死後の世界?)”はふたりにとって救いになったと思うし、このおかげで後味の悪い思いをしなくて済みましたが、やっぱりちょっと悲しい。
マネさんの想い人が、長年お世話になった看護師さんだったというのもね(涙)
にしても、午前10時に一言しかしゃべらない男ともう一人の仲間は、(たぶん銀行員の通報で)駆けつけた狙撃部隊に気付いて先に逃げ出しちゃうなんて酷いです!
せめて捕まってればいいけど…。

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「髪結いの亭主」観た

■ Comment

No title

細かいところは覚えていないのですが、
おもしろい作品だとは覚えています。

パトリス・ルコント監督の作品は
4つほど観た事があるのですが、
どれも好きです。

全然違う性質の2人なのに、
なぜかしっくりくるのが不思議です。
また再見したくなりました。


『愛は静けさの中に』と『鍵泥棒のメソッド』を週末に借りに行ったのですが、
『愛は・・・』はおいてなくて
『鍵泥棒・・・』はレンタル中でした。残念。
遅くなりますけど、ネットレンタルで借りてみま~す!
2014/04/28 21:11  マミイ編集

>マミイさん

お~、嬉しいです!
この作品をご存知でしたか。

> パトリス・ルコント監督の作品は
> 4つほど観た事があるのですが、
> どれも好きです。

わたしもそれくらいしかみた事ないですけど、どれも妙に印象に残ってます!
独特のまったりした雰囲気と、どことなく懐かしいような切なくなるような感じがありますよね。

> 全然違う性質の2人なのに、
> なぜかしっくりくるのが不思議です。
> また再見したくなりました。

運命の出会いという感じでした。
男同士の友情を描いた作品はいいですよね~。

> 『愛は・・・』はおいてなくて
> 『鍵泥棒・・・』はレンタル中でした。残念。
> 遅くなりますけど、ネットレンタルで借りてみま~す!

探して下さってありがとうございます。
届いてからゆっくりご覧になって下さい。
2014/04/29 07:45  宵乃〔編集

おはようございます♪

ブログも映画もコメントも久々すぎて、どうやってログインするのか!?も忘れそうになっていた私ですが、宵乃さんのこちらの記事に即反応してしまいました!宵乃さんのイラスト、マネスキエがこっそり革ジャンだたかな?を着てニヤっとする可愛らしい(?)シーンですよね♪

実はこの映画も以前ご訪問させていただいた『リード・マイ・リップス』と同じ時代に観て、やはり気に入ってDVDを購入していたんですよ~。そしてやはりレビューも削除してあって、再見してから再投稿しよう!と思っていた作品だったので、『リード~』と続けて宵乃さんの記事を拝見させていただいたので、これは映画に呼ばれているかも!?と思ってしまいました(笑)。

私、ルコント監督作品で日本で知名度の高い『仕立て屋の恋』と『髪結いの亭主』は(じわーっとはわかる気はするものの)あまり大好き!!とは言えるジャンルではなかったので、この映画の"男"の世界観と映像には大いにシビレてしまいました。宵乃さんの仰るように、二人の間に生まれた友情のようなものを、ベタベタし過ぎることなくサラリと、そして丁寧に見せてくれることで余計にラストが胸にぐっとくるんですよねー。。。好きです、この映画!

アラン・ドロンとジャン・ポール・ベルモント再共演を果たしたルコント監督の『ハーフ・ア・チャンス』も男の絆を粋に描いてくれたものだったので、ルコント作品ならば女性が出てきてドロドロする物語よりも"オトコ映画"のクールさが私は好きなのかも!と今思いました^^
2014/05/01 08:49  はなまるこ〔編集

>はなまるこさん

いらっしゃいませ、即反応して下さってありがとうございます♪
そうそう、マネスキエがお茶目で可愛いんですよね~!
それまでの流れも好みでしたが、ここで完全にやられてしまいました(笑)

> 『リード・マイ・リップス』と同じ時代に観て、やはり気に入ってDVDを購入していたんですよ~。
> これは映画に呼ばれているかも!?と思ってしまいました(笑)。

おぉ、呼ばれてますよそれは!
「リード・マイ・リップス」もGyaoでしたから、お互いGyao様様ですね。
B級映画も多いけど、知られざる名作も多いからチェックは欠かせません。

> この映画の"男"の世界観と映像には大いにシビレてしまいました。宵乃さんの仰るように、二人の間に生まれた友情のようなものを、ベタベタし過ぎることなくサラリと、そして丁寧に見せてくれることで余計にラストが胸にぐっとくるんですよねー。。。好きです、この映画!

「仕立て屋の恋」と「髪結いの亭主」はわたしも観た事があります!
好きか嫌いか良く覚えてないけど、悪い印象はないですね~。濃密な空気があったのを覚えてます。
男の友情はこれくらいさっぱりしてるのがいいですよね。ラストの余韻も最高でした。

> ルコント作品ならば女性が出てきてドロドロする物語よりも"オトコ映画"のクールさが私は好きなのかも!と今思いました^^

ルコント作品では「タンゴ」が初めて観た作品で、これは「列車に乗った男」と同じで男の友情を描いていたと思います。発端は女性とのドロドロだった気がするし、クールではなかったかもだけど、はなまるこさん好みかも?
「ハーフ・ア・チャンス」は未見ですが、ドロンとベルモントの再共演だなんて素敵です!
機会があったら観てみますね♪
2014/05/01 12:04  宵乃〔編集

No title

「列車に乗った男」面白そうですね!
「髪結いの亭主」を観てパトリス・ルコント監督に興味が湧きました。
好きな『メルシィ!人生』のジョン・ロシュフォールがマネスキエを演じているし!
手に入ったら是非観たいです。
2014/08/03 15:22  しずく〔編集

>しずくさん

こちらもコメントありがとうございます。
この作品も大好きなんですよ~。
これも人によっては受け付けないかもしれないけど、「髪結いの亭主」がお好きなら楽しめるかと思います。

> 「髪結いの亭主」を観てパトリス・ルコント監督に興味が湧きました。
> 好きな『メルシィ!人生』のジョン・ロシュフォールがマネスキエを演じているし!

「メルシィ!人生」にも出てたんですか。はやく再見せねば!
パトリス・ルコントは他に「仕立て屋の恋」と「タンゴ」が印象に残ってます。数本しか観てないんですけどね。
お互い早く目的の作品が観られるといいですよね。
2014/08/03 16:54  宵乃〔編集

コメントを残して一年目にしてやっと今観終えました!
ばっちり私好みの映画でしたが、ラストがほろ苦く切なかった・・・。
でも、私は神様のプレゼントで2人の魂が入れ替わり、それぞれが余生を夢見た異なる方法でスタートしていると思うことにしました。

>マネスキエが可愛いんですよ

本当に、宵乃さんが指摘された箇所すべてに同感です。
付け加えて欲しいシーンがもう一つ。
ミランがマネスキエに「すれ違っても女があなたを振り返らないのは、あなたが輝いていてまぶしいから」と、ガラス窓に彼をうつらせ「現実をよく見て。ほら輝いているだろう」と云うところ。ミランからしても、きっとマネスキエは素敵な人生の先輩だったのでしょうね。そして何よりも、彼ともっと早く出会っていたら違う生き方が開けていたはずと感じていたのかも。
マネスキエに逢いたくて彼が出演している映画をもっと観たい!

>マネさんの想い人が、長年お世話になった看護師さんだった

そうかぁ、納得。
最後まで気づかなかったのは迂闊でした。

素敵な映画を紹介してもらってありがとう!
昨日「黒い10人の女」を観た後だっただけに、秋に相応しい余韻に浸れる映画でした。


2015/10/12 13:13  しずく〔編集

>しずくさん

いらっしゃいませ、こちらをご覧になったんですね!
気に入っていただけたようで嬉しいです♪

> でも、私は神様のプレゼントで2人の魂が入れ替わり、それぞれが余生を夢見た異なる方法でスタートしていると思うことにしました。

いいですね~。そういう見方も素敵だと思います。
私は切ない系が好きなのか、どうしても思考がそっち寄りになってしまうようで、そこまで思い至りませんでした(汗)

> ミランがマネスキエに「すれ違っても女があなたを振り返らないのは、あなたが輝いていてまぶしいから」と、ガラス窓に彼をうつらせ「現実をよく見て。ほら輝いているだろう」と云うところ。

おぉ、そういえばそんなシーンもありました!
ホント、ミランにとってもマネさんとの出会いがどんなに大きなものだったか伺えるシーンですね。彼らがもっと早くに出会っていれば…想像が膨らみます!

> 素敵な映画を紹介してもらってありがとう!
> 昨日「黒い10人の女」を観た後だっただけに、秋に相応しい余韻に浸れる映画でした。

好きな作品なので、しずくさんに喜んでもらえて私も嬉しいです。
「黒い十人の女」も面白いですよね~。大好きな作品です♪
2015/10/12 15:51  宵乃〔編集
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