映画「忘れじの面影(1948)」観ました
原題:LETTER FROM AN UNKNOWN WOMAN
製作:アメリカ’48
監督:マックス・オフュルス
原作:ステファン・ツヴァイク
ジャンル:★ロマンス/ドラマ
20世紀初頭のウィーン。決闘を明日に控えたステファンは名も知らぬ女からの一通の手紙を受け取る。そこには、彼がピアニストとして嘱望されていた頃、彼の隣室に住んでいた少女の初恋から始まる物語が、その想いと共に綴られていた…。
これはよかったですね~。後半の流れに「あれ?」と思ったものの、結局のところ泣かされました。私的に後半の主役は旦那!
まずヒロインが本当に美しくて儚げで引き込まれるんですよ~。金髪でも赤い口紅をしてないせいか、どの年齢を演じている彼女も素晴らしいと思えました。たぶん16歳~35歳くらいを演じてたんじゃないかな?(当時31歳だと!?)
少女の頃に恋に落ちた、美しいピアノの音色を響かせる甘いマスクの青年。貧しいながら出来る範囲でオシャレをしたり、ダンス教室の外から見よう見まねで練習したり、彼の執事?の手伝いをしてこっそり家に侵入したり…、幼くも一途でひたむきな恋模様にキュンとさせられました。
そして、一度しか直接会うことなく、憧れと募る恋心を抱えたまま大人になった中盤。仕事が終わったら彼の家の前で毎日毎日毎日張り込みし(一晩中じゃないよね…?)、ついに再会して”ミステリアスな女”を演じるところがまた可愛い。粘着質だけど余りある可愛さ!
この彼女の行動(自分の素性を隠す)が後の悲劇に繋がるとも知らず、デートを楽しむくだりも胸キュンです。
人力で背景を動かす列車のアトラクションで、もっと一緒に過ごしたいと彼が何度も最初からやり直させて、その後も演奏家が逃げ出すほどダンスを続けたり(笑)
でも、この脳みそ溶けてる男は、彼女に対して(たぶん深層心理レベルで)特別なものを感じながらも、いつもの女遊び程度の感覚で別れちゃうんですよ。しかも、またしても顔を忘れてしまうという…。”忘れじの”面影なんじゃないの!?
その後の彼女の行動は共感できないけれど(悲恋に酔って自分の事しか考えてない気が)、二度目の再会を描いた終盤で、一気にもう一人の男の人生が浮かび上がってきます!
冒頭で、ステファンがすっぽかそうとしていた決闘が一気に重い意味を持ち、どんな結末になっても何も報われないことがわかるんですね。おそらく生き残るだろう彼の事を思うと涙が…。
繊細なタッチの美しいモノクロ映像と、ドラマティックな展開が見事な、悲しいメロドラマでした。
ちなみに、原題の意味は「見知らぬ女からの手紙」。あと邦題と同じタイトルのあの有名な歌とは関係ないです。