原題:LOVE THE COOPERS 製作:アメリカ’2015 107分 監督:ジェシー・ネルソン ジャンル:群像劇/コメディ/ドラマ
【あらすじ】クリスマス・イブ、クーパー家ではこの日に4世代11人が揃って一緒に過ごすのが恒例だ。今年も家族と楽しく過ごす予定だったが、40年連れ添ったシャーロットとサムは離婚を決意しており、他の家族も様々な秘密を抱えていた…。
毎年クーパー家で行われるクリスマス・ディナーに向けて、それぞれが抱える問題を描いていく群像劇。 GYAOで配信中(13日23:59まで)だとお友達のブログで紹介されてたので見ました。 離婚に失業、万引き、不倫&彼氏偽装、反抗期などなど、4世代の大家族それぞれに焦点を当てていきます。久しぶりの群像劇でちょっと情報整理が大変だったけど、割りと普遍的な悩みが根底にあるので共感できるところもありました。喧嘩シーンが多くて、あまりクリスマス向けではないかもしれないけど。
個人的にほっこりしたのは、ダイナーで逢瀬(なんて色っぽいものじゃないが真心を感じる)を繰り返すお爺ちゃんと若いウェイトレスのエピソードすべてと、親の離婚で不安定な兄のために心温まるプレゼントを贈ろうと頑張る弟君、散々なクリスマスを払しょくしようと幼い孫とダンスするシーンですね。
あと、好きなシーンは空港で出会った二人が一緒に音楽を聴いた時の彼の心象シーン。恋が始まってんな~という感じで微笑ましかったです。 補導された姉コンプレックスのエマが、幼い頃の初めての嫉妬心と嫌がらせを思い出し、恥じるところも人間味あってよかったです。 人間たちの様子を理解してるような顔で寄り添ってるワンコも可愛かった。 終盤、病院で騒がしくするのはどうかと思ったけど、「家族の姿に過去と現在と未来が溶け合って見えた」というセリフにはウルっときました。
この作品で知ったFOMO(fear of missing out/取り残されることへの恐れ)という言葉は、クリスマスに取り繕って精一杯幸せの振りをしようとしたクーパー家のみんなもそうだったんでしょうね。それが歪みに繋がっていたと。 ありのままを見せることも受け取ることも難しいけれど、だからと言って最初からあきらめて取り繕っていてはダメなんだなぁと考えさせられました。
読み:かいぞくじいちゃんのおくりもの 原題:WHAT WE DID ON OUR HOLIDAY 製作:イギリス’2014 95分 監督:アンディ・ハミルト、ガイ・ジェンキン ジャンル:★コメディ/ドラマ
【あらすじ】祖父ゴーディの75歳の誕生日を祝うため、休暇を利用してロンドンからスコットランドへ来たマクラウド一家。だが、別居中の両親や兄夫婦たち大人はケンカばかりで、3人の子供たちロッティ、ミッキー、ジェスもううんざりしていた。そこで祖父は孫たちと出かけ、浜辺でかけがえのないひとときを送るが…。
起承転結の”転”から”結”への流れが物語としてはお粗末レベルのご都合展開なんだけども、転までは素晴らしかったしラストの愛が感じられるお葬式は良かったので全体的に好印象な作品。
とにかく子供たちが魅力的なんですよね。繊細でメモ魔な長女ロッティに、TVドラマや映画から色んな知識を吸収している長男ミッキー、そして石愛好家で自由すぎる末の女の子ジェス。子供ってこうだよね~と思える自然すぎる演技と、大人を振り回す無邪気な言動に思わず表情が緩みます。 一緒に見ていた家族も夢中でした。この子たちを見るだけでも価値がある映画だと思います。 石が大好きな一番下の子は台本なしで状況だけ教えて好きにやらせてたみたい。どうりで子供らしいと思った!
また、スコットランドの風景が素晴らしく、とくにおじいちゃんと過ごした浜辺は子供たちの一生の思い出になるだろうという美しさ。 ヴァイキング式海葬は引く人もいるかもしれないけど、私は子供たちの想いに素直に感動できました。 むしろ、なんで子供がそれをマスコミの前で説明しようとした時に止めたのか理解できない。それを聞けば納得する人もいたかもしれないのに…。おじいちゃんみたいにヴァイキングの血を引いていることを誇りに思ってる人とか。
まあ、色々引っかかる点はあったものの、それでもまた見たいと思える温かさがありました。この録画は永久保存決定!
製作:日本’2013 120分 監督:是枝裕和 ジャンル:ドラマ
【あらすじ】これまで勝ち組人生を歩んできた大手建設会社のエリート社員、野々宮良多。妻みどりと6歳になる息子・慶多との3人で何不自由ない生活を送っていた。そんなある日、病院から連絡があり、慶多が赤ん坊の時に取り違えられた他人の子だと告げられ…。
春の感涙祭で鑑賞第三弾。全体的に引き込まれるものはありましたが、やっぱり6年間育てたら元に戻す選択なんてありえなくない?と思ってしまって終盤までモヤモヤ。病院が言ってた「こういうケースでは100%自分の子供を引き取る」ってのも信じられないんですけど…。嘘を吐いたか、病院側からそうするように圧をかけてきたんじゃなかろうか。
あと、奥さんが一生忘れないと言っていたあの旦那の一言、私だったら旦那をもう二度と信用できないと思うので、奥さんはいろいろ飲み込み過ぎて判断力鈍ってる気がします。「任せろって言ったのに!」と後で文句を言うくらいなら自分でも動けばよかったのに。あの一言が引っかかっていた割に信用してるというか…。あまりにあり得ない言葉すぎて確信が持てず試したのか?こんな大事な時に?
だいたい、こんなこと親だけで決めていい事じゃないですよね。そこも問題提起したかったのかもしれないけど…。今でも子供の意見は無視されるんでしょうか? 3人兄弟だったのが1人っ子になるなんて寂しすぎるし、1人っ子で自分しかいないのに手放される子供の気持ちだって辛すぎる。相手の家族とそこそこ仲良くやれるんだったら、子供は今まで通りにして二家族で親戚のような付き合いをしていけばいいじゃない。
終盤、やっと息子への愛情に気付けたところはホロリときました。あげるよと言われて受け取り拒否したのは、いつか自分の精いっぱいの「パパ大好きメッセージ」が届くと願っていたからなんだね…。 「父親だって取り換えのきかない仕事だろ」というセリフが、この作品の肝だと思いました。
関連記事 「歩いても 歩いても」観ました 原題:AMERICAN BEAUTY 製作:アメリカ’99 監督:サム・メンデス ジャンル:★ドラマ/ブラックコメディ
【あらすじ】妻キャロリンと高校生の娘ジェーンと平凡な毎日を送っていたレスター。だがある日、勤めていた広告代理店からリストラ宣告を受ける。自暴自棄になりかけていたところ、娘の友人アンジェラを一目見て、すべてがバラ色に。一方で、彼らの歯車は少しづつ狂い始め…。
初見時は、よくわからない悲惨な映画だなぁと思ったこの作品。再見したら、思いがけずしみじみと感動してしまいました。 確かに悲惨であることには違いないものの、ラストは初見時と違って悲壮感をまるで感じなかったんですよ。家族にしてみたら、たまったもんじゃありませんが。 この作品の言いたかったことって結局、リッキーが言っていたこと…「全てのものの背後には生命と慈愛の力があって、何も恐れることはない」 つまり裏返すと「世界の美しさ、愛(神の存在)に気付けない人は不幸だ」ということなんだと思います。(神抜きで言うなら「人生を愛せるかどうか」に近いかな?)
冒頭から描かれるのは”ハッピーじゃないけど、とくべつ不幸でもない”という”ありふれた日常”で、それでも彼らは「なんで自分は幸せになれないんだろう」と思っている様子。そしてそれを、身近な誰かのせいだと思ってるんですよね。 レスターは妻と娘が変わってしまったと思っているし、奥さんは甲斐性なしの夫のせいで成功できないと思い、娘は自分に関心を持たない両親を憎んでいる。 どれもあながち間違ってはいないものの、自分から積極的に改善しようともしません。それよりも、別の何かで埋める方が簡単とばかりに(周りに目を向けることは大切ですね)、レスターは女子高生に恋い焦がれ、妻は不倫に走り、娘は自分を見つめてくれるリッキーに興味を…。
中盤になるともう”ありふれた日常”とは言えなくなってきて、時には痛々しいくらい滑稽に、時にはヒヤリと恐ろしくなるほどに、偽りのなかで孤独に苛まれている人々が描かれています。 とくにリッキーの家族はインパクトあって、鬱状態の母親はかろうじて家事はできるものの、いつも心ここにあらずの無表情。こんな生きる屍状態を放置しているというだけで、父親の抱える闇の深さが伝わってきました。
そんな中、ジェーンとリッキーの心が触れ合い、あの台詞が出るんですね。 そしてレスターの方も、唐突にそれを見つけます。 アンジェラの「初めてなの」という告白で、憑き物がおちたかのように彼女への欲望を失ったレスター。それはきっと、彼女の中に無垢な子供と同じような神聖性を見たからでしょう。それが幼い頃の娘に自然と抱いていただろう「幸せになってほしい」という父親としての気持ちを呼び起こしたんだと思います。 アンジェラが傷ついていることを理解し、やさしく抱きしめ彼女を肯定する(あのおじさんもこれを求めていたんだろうなぁ…)。アンジェラを通してジェーンを理解し、父親としての自分を取り戻した彼にとって、もう世界は孤独でも苦痛でもありません。 いるだけで幸せだと思える相手がいることが、どんなに幸福なことか。その幸福をしみじみ実感しながら家族写真を眺める姿に、思わず涙が…。 他人から見て悲惨なラストでも、彼にとってはハッピーエンドだったのではないかとすら思えてきました。
ちなみに、タイトルは原題と同じ「アメリカン・ビューティー」。キャロリンが育てている真っ赤なバラの品種名であり、レスターがアンジェラに抱くイメージであり、その名の通り「アメリカの美しさ」という意味を持つ皮肉めいたタイトルです。 そんな虚栄美を象徴するかのような赤いバラと、レスターの体から流れて落ちる真っ赤な血。その背後にも、生命と慈愛の力が存在していたのでしょうか。 穏やかな表情を浮かべるレスターを見て、笑みを浮かべるリッキーが印象的でした。
原題:NOTHING IN COMMON 製作:アメリカ’86 監督:ゲイリー・マーシャル ジャンル:ドラマ
【あらすじ】シカゴの広告代理店でCM製作を務めるエリート・デヴィッドは仕事にも女性にも不自由のない生活を送っていた。そんなある日、母親が家を出たと父親から知らされる。両親が抱えていた夫婦問題と父親の我侭に振り回され、仕事も手に付かない状態が続くが…。
地味ながら、リアルな家族のドラマをユーモアを織り込みつつ描いた秀作だったと思います。 この邦題じゃ恋の邪魔をされるロマコメみたいですがぜんぜん違って(仕事の邪魔にはなってた)、両親の抱えていた問題や父子の確執など、いつか乗り越えなければならないものが男盛りにいっぺんにやってきたというだけ。恋はしているものの女の扱いは上手いから困ってないし、両親の破局を乗り越えて成長し、遊びの恋も卒業するという感じ。 映画でやり手の広告マンというと嫌な奴が多いのに、この主人公は多少ウザイけど(会社のクールなおばさんを毎朝笑わせようと奮闘)仕事に真摯で、信頼する仲間と楽しんで仕事をしています。 人望も厚く、彼が本当に参った時には「たかがCMだ。後は任せろ」と仲間が気遣ってくれるし、取引相手より家族を優先して先方を怒らせた時も、親友で上司のナイスハゲ(キラッ☆)がパパッと尻拭いしてくれるんですよね。しかも、デヴィッドの父親の事も心配してくれて。 そんな仲間に支えられ、ドロドロ家族問題にも頭を抱えながら「父親と知り合いたい」 と立ち向かっていく様子には力強さを感じました。 父親が嫌な奴で全体的には重い内容だったものの、最後まで嫌な気分にならずに観られたのは、主人公の人柄と諦めない姿勢のおかげだったと思います。 …あと、カツラネタ(笑) トム・ハンクスは若い頃から上手いですね~。
関連記事 「ニューイヤーズ・イブ」観ました 原題:DAS WUNDER VON BERN/THE MIRACLE OF BERN 製作:ドイツ’03 監督:ゼーンケ・ヴォルトマン 原作:クリストフ・ジーメンス ジャンル:★ドラマ/スポーツ
【あらすじ】1954年夏、敗戦後ドイツの工業地帯エッセン。サッカーが大好きな11歳のマチアスは、地元のサッカー選手ラーンを心から慕っていた。だがある日、戦争で捕虜になっていた父リヒャルトが11年ぶりに帰ってくる。厳格な父親であろうとする父に、マチアスや家族は戸惑い…。
とても優しい気持ちになれる作品でした。 1954年のワールドカップを題材にしているものの、メインはある家族のドラマです。 個人的にはサッカーパートはあんまり印象に残ってなくて、むしろスイス合宿での青い空が印象に残ってますね。主な舞台が薄暗いドイツの炭鉱町なので、そのギャップが主人公の心情にリンクしてました。 戦争帰りで家族との距離を埋められず、つい威圧的になってしまう父親のせいで、大好きなサッカーから遠ざかってしまうんですよ。彼にとってサッカーは希望そのものなので、ラーンが行ってしまえば太陽も翳ってしまいます。 しかも、この父親が不器用すぎて見てられない…。悪い人ではないというのはわかるものの、もし主人公と同じ立場だったらあんなふうに理解を示すことはできないと思います。 主人公の周りの人は誰も彼もがいい人で、彼が辛い時は必ず支えてくれる人がいるし素晴らしい助言をくれたりするので、できすぎだなぁと思う瞬間はあったものの、素直な気持ちで観れば感動ものでした。 実は主人公は出征後に生まれたので父親とは初対面なんだけども、だからこそ捕虜として過ごした辛い日々の事を聞けたし、父親も素直に話すことができたのかなぁと思います。やはり辛い気持ちを吐き出させる事が第一ということでしょう。父親の話をサッカー中継より優先したとこは尊敬します。 同じ表情で笑う父子、新聞記者と奥さん、主人公の友達の女の子なども良かった。 ただ、誕生日のくだりは…バケツの中を映す必要があったの?↓以下ネタバレ注意!
日本だとウサギは捨てるところがないと言われていたし、ドイツと言えば腸詰というくらいで食べつくすイメージなんですが…。 調理技術がなかったのかもしれないけど、あんな体験をした父親が、まだまだ貧しいのにあんなに可食部や毛皮を棄てているのは違和感があるというか、それをわざわざ見せるのはショッキングなシーンを入れたかっただけなのではと疑ってしまいます。 ショックを受ける表情と悲鳴だけでよかったような…? ここさえなければ私的にほぼ満点だったので残念です。
原題:額吉(エージ) 製作:中国’2010 監督:ニンツァイ ジャンル:ドラマ
【あらすじ】1960年代の中国。飢饉のため親と離れざるを得なかった上海の子供たちが、養子となるため内モンゴルに送られた。シリンゴル草原でつつましく暮らすチチグマは、夫の反対を押し切り、ジェンジェンとユーションの2人を家族に迎える。子供たちはモンゴル遊牧民として育つが、20年後、生みの親が現れ…。
製作は中国だけど、監督はモンゴルの人でモンゴル視点で描いてました。 飢饉で多くの孤児が出て、内モンゴルの人たちが”国家の子供たち”を受け入れるんだけども、その飢饉の事を「あれは酷い災害だった」みたいに言ってたんですよね。 雨が降らなかったのかなと思ってたら、大躍進政策で起きた飢饉の事でした。 人災でそこまで…。 教科書で読むのとはやっぱり違います。 ハッキリ言ってないのは製作が中国だからなのかもしれませんが、後半はこの政策で苦しんだ人たちの気持ちも痛いほど伝わってきました。 子供を愛しているから、少しでも生き残る可能性が高い方に賭けるしかない…。 覚悟してやった事でも、後悔せずにはいられない親たちの姿に胸が痛みます。
もちろん、前半のモンゴル遊牧民の助け合い精神や慈愛の心も丁寧に描かれていて、引き取られた子供視点で、エージ(母親)の愛情に触れ「自分はここにいてもいい」と思えるようになるくだりは涙が…。 お祖母さんの歌になんともいえない心地よさを覚えるというシーンも良かったです。 愛情って音楽でも伝わるんですよね。
原題:ELIZABETHTOWN 製作:アメリカ’05 監督:キャメロン・クロウ ジャンル:★ドラマ/ロマンス
【あらすじ】10億ドルもの大損害を出し、会社をクビになったデザイナーのドリュー。そこへ父親が心臓発作で亡くなったという報せが。葬儀のためにケンタッキー州の小さな街エリザベスタウンへと向かった彼は、飛行機の中でお節介焼きで陽気なフライト・アテンダント、クレアと出会い…。
序盤の飛行機でのドリューとクレアの出会いから涙がこみ上げてきてしまいました。父親が亡くなったことを言わなくてもクレアが察して、でも察した事を気付かれないように今までどおりの明るい態度で気遣いを見せるところがもう…優しい! エリザベスタウンについてからの思いがけない歓迎っぷりも、こんな町あるんだろうかと思いつつ、あんな心理状態だった彼への父親からの贈り物みたいで泣けます。 序盤にドリューが即席で作ったマシンとか、中盤にやんちゃで手がつけられない少年に見せた「人の話を聞く」ビデオ教材とか、ところどころ笑いが入るのも良いんですよね。メリハリあって。 主演のオーランド・ブルームは、イケメンで人懐っこい表情を最大限活かしてるって感じでした…個人的には物足りない感じでしたが。 キルスティン・ダンストは美形ではないものの、女性としての洗練された美しさを持ってて、素直に綺麗な人だなぁと思います。 でもって、母親役のスーザン・サランドンは女優として輝いてました。夫を亡くしてから、がむしゃらに自分のやりたかった事を習い始めるシーンとか、出演時間は少ないけど印象的。 最後のスピーチも習ったばかりの事を拙いながらも一生懸命披露していて、本当に旦那さんが好き(原動力)なんだなぁとまた涙が…。この作品は私を何回泣かせるつもりなのか! しかも、終盤の1人で3人旅が素敵でね…。あのタイミングで「パパ大好き!」は反則でしょ。もう涙腺が崩壊ですよ。 悲しみはひとりになってからふと襲ってくるものなんだろうけど、このクレアの用意してくれたマップのおかげで、一人であって一人じゃないんです。 本当に優しさに包まれた作品でした。
製作:日本’06 監督:安田真奈 ジャンル:★ドラマ
【あらすじ】家族より“お客様”を優先する電器屋の父に反発し、実家を離れて東京でイラストレーターとして働く21歳の怜。上司と衝突して会社を辞めたところに、妹の香から長女の瞳が倒れたとの手紙が。あわてて実家へと帰省した怜だったが、入院したのは瞳ではなく骨折した父で…。
キャスティングがよかったですね~。それぞれのキャラに合っていて、とくに長女役の本上まなみさんがほわわんとしてて、上野樹里演じる怜の発するギスギス感を和らげてました。 彼女のひねくれ方がほんと素直で、謝れない性格とか「こうはなっちゃいかんなぁ」と思うんだけども、身に覚えがあったり。 ストレス発散方法が、お店で回収した使えなくなった電球の処理(破壊)ってのも共感できます。壊して良いものを思いっきり壊すとスカッとするよね!(笑) そんな彼女が反発していた父親の仕事を手伝う事で、今まで見えなかった父親の一面が見えてきて…となるわけですが、ふっと肩の力が抜けて素直に謝れるようになったきっかけが、お客さんの何気ない「ありがとう」の言葉だったというのが地味に感動。 補聴器のエピソードも思わず涙腺緩みましたよ。そうか~、耳が悪くなると日常会話だけでなく自然界の色んな音も聞こえなくなっちゃうんだ…。 あってもなくてもいいような電化製品でも、世界が変わるような電化製品でも、買った人がみんな幸せそうにしていて心が温かくなりました。 ただ、怜を甘やかしすぎの彼氏は居なくてもよかった気が…。キス魔のいいかげん男は味があってよかったんだけど(怜に持たせるお土産がナイス!) 観終わってから知ったんですが、この作品は和歌山県田辺市を舞台としたご当地映画らしく、和歌山弁(田辺弁)が話せることがキャスティングの条件だったようです。どうりで方言も違和感なかったわけだ~。 ロケ地も厳選されてて、のどかで田辺らしい風景が楽しめます。 前向きに大らかな気持ちにさせてくれる良作でした。
作中に彼岸花は登場しません。 製作:日本’58 監督:小津安二郎 原作:里見とん ジャンル:★ドラマ
【あらすじ】娘の節子に良い縁談がないかと考えていた平山。だがある日、節子との結婚を了解して欲しいという青年・谷口が現れる。節子が相談なしに結婚の約束をしたと知り、激怒した彼は結婚に反対。そんな時、節子の友人・幸子が、自分の縁談で困っていると相談にきて…。
忙しかったので”ながら観”してしまったんですが、途中から声をたてて笑ってしまいました。いっつも同じような話なのに、なんで面白いんだろう~? とにかく頑固親父の平山が面白いんですよ。娘が自分に相談もなしに結婚の約束をした上に、自分以外は節子の味方という事で、もう完全にすねてしまいます。 今まで、知人に同棲した娘の相談をされても他人事だったのに、こうなって急に我が事のように思えてきたり(笑) 娘の友人の”トリック”のくだりも最高でしたね。自分の娘の時とは全く違う反応! それが当然といえば当然なんだけど、同時期にここまで正反対の態度を見せられると笑うしかありません。 娘のために、ビシッと夫の矛盾を突く奥さんもカッコよかったです。 なのに、この男の往生際の悪さときたら…。だんだん頑固オヤジというより駄々っ子のように…。 「人生は矛盾だらけ、矛盾がないのは神様だけだ!」と開き直った時は、奥さんの額に青筋浮いてくるんじゃないかと心配してしまいました(笑) 傍から見てると面白いけども、娘の幸せがかかってるお母さんにとっては、こんな面倒な夫、頭が痛かったに違いない。夫が結婚式用の衣装?を用意していることに気付いた時の、一仕事終えたような笑顔がよかった。 ところどころ見逃してるし、いつかしっかり再見したいです。
<再見追記:2015/12/04> 今回はきちんと観ました。概ね初見時と同じように呆れ半分で楽しめたし、節子が選んだ男性が父親そっくりだと気付いて大笑い。 結婚のことは母親から話してもらうと言っていたのに(その時は同意してたと思われる)、それを無視して勝手に父親に話しに言ったあげく、節子もこのことは知ってると大嘘ついてんの! 父親からみて第一印象最悪なのもわかるし、最初から自分で決めていて人のいう事なんて聞かないところは節子の父親そっくり。これは結婚してからお母さんと同じように苦労するわ~と思いました。 そんな男に娘はやらないと言い張る父親は、奥さんを苦労させた自覚があるのかね(笑) 同属嫌悪するのもいいけど、父親そっくりの男を選ぶなんてよっぽどパパ大好きってことだよ!
関連記事 「秋日和」観ました 原題:TWO BITS 製作:アメリカ’95 監督:ジェームズ・フォーリー ジャンル:★ドラマ
1933年、大恐慌のアメリカ。12歳のジェンナーロは、新しい映画館が今日の18時までなら半額だと聞き大はしゃぎ。だが、母親も、自分が亡くなったら25セントやると約束していた祖父もお小遣いをくれない。彼は街でお金を稼ごうとするが…。
「わが街 セントルイス 」に続き、またもや大恐慌時代の映画です。 あらすじでちょっと引いたんだけども、心温まる良作でラストはホロリ。 大人たちのイラつきや疲労感、子供の素直な欲求、そしておじいさんとの別れの準備。あの時代の良い所も悪いところも地味~に描いてました。 大人が少年に対して、やたらと八つ当たり気味な会話をしたり、すぐに我に返って大人らしい対応をし直すところもなんかリアル。 終盤でお祖父さんが言う「もう25セントは必要ないのか?それともほしくないのか?」「まるで違うとも。腹は食べ物が必要だが、心は夢がほしいんだ。」というセリフの通りですね。 生きるためにお金を必要としている大人たちは、映画を観るという夢のためにお金(仕事)をほしがる少年に、つい反感を抱いてしまうよう。 そして、観る前にひっかかっていた”お祖父さんが亡くなったら25セントもらえる”という約束。冗談めかして「今頂戴よ」と言う事はあっても、心の中ではずっとお祖父さんと一緒にいたいと思っているのがわかって(モノローグで説明しちゃってたけど)すんなり観られました。 お小遣いをもらえなくても「じゃあ自分で稼ごう」と思えるいい子だし、仕事は最後までやりきり、できなかったらお金を返そうとする立派な子なので安心して観られます。 まあ、一日でここまで起こるのは映画ならではという感じで、現実味に欠けるかもしれませんが、冒頭の結婚式と葬式のダブルブッキングなど、最初から映画的で気になりませんでした。 お医者さんの奥さんや、お祖父さんを憎むお婆さんとのくだりなど、12歳の少年が一日で経験するには辛すぎたけどね~。 ラストは少年とお祖父さんとの絆にじんわり心が温かくなります。お祖父ちゃんの25セントと、約束が、少年に笑顔を! 「求めよ!」という力強い言葉の意味もきっとわかるようになって、彼は立派に成長していくのだと思えました。 ちなみに、原題は25セントの事です。
製作:アメリカ’09 原題:MY SISTER'S KEEPER 監督:ニック・カサベテス 原作:ジョディ・ピコー ジャンル:★ドラマ
【あらすじ】白血病の娘ケイトを救うため、遺伝子操作によってドナーの適性をもって生まれてきた11歳の妹アナ。とても仲の良い姉妹だったが、ある日突然「自分の体のことは自分で決める」と臓器提供を強いる両親を相手に訴訟を起こす。その裏にはある思いが隠されていて…。
なんとなく内容を知っていて、自分がどう感じるか不安だったんですが、本当にいい作品でした。 とくに気がかりだったのは、母親に嫌悪感を覚えてしまうかもしれないという事。でも、鬼気迫る様子に驚く事はあっても、ケイトを想うあまり周りが見えなくなってしまった彼女を不愉快に感じる事は一切なく、胸が痛むばかりでした。ケイトの幸せを見守る時の表情から、彼女が本当に娘を愛してるのが伝わってきたからでしょうね。 見せ方はとても丁寧で、物語の中心である女性陣だけでなく、こういう話だと空気になりがちな男性陣も静かに見せてくれます。ダンスパーティに娘を送り出すシーンとか、姉の絵を風に任せるシーン、弁護士さんが「休憩したくてワザと倒れた」と飄々と答えるシーンが良かった! 真実が明かされていく終盤も、驚かせるという感じではなく、観ていればすんなりわかるというか、これが自然な流れだと思えるもので、実に冷静に?感動を味わえました。泣けるような感動というより、心の平穏を得られたような感動? また、嫌な人たち、鈍感な人たちも描かれてるんだけど、終盤はまるで家族が共有する世界の外側にいるような描かれ方になるんですよね。彼らの言葉なんて街の騒音と同じになってしまう…それほどの家族の強い絆を感じました。 あと、どうでもいいけど、息子役のエヴァン・エリンソン君は、大好きな海外ドラマCSI:マイアミで、主人公の息子役の子なんですよね~。たぶん2~3年間の成長過程を観てるから、こうやって立派に映画俳優やってるのを観られて嬉しかったです。 エンドロールの後、翻訳家が戸田奈津子と出て若干不安になったけど(笑)、観られて良かったと心から思える作品でした。
同じ坂道を駆け上がる親子のシーンを繋げてみた。 原題:BILLY ELLIOT 製作:イギリス’00 監督:スティーヴン・ダルドリー ジャンル:★ドラマ
【あらすじ】父や兄がストライキで闘うなか、なけなしのお金でボクシング教室に通う11歳のビリー。しかしある時、同じ場所で行われていたバレエ教室に興味を覚えたビリーは、父に隠れてバレエを習い始める。
大筋は覚えてるのに感動のシーンなどはほぼ忘れていて、自分で★つけたのに面白かったか疑心暗鬼で再見。…泣きました。 どうしてこんなにすっかり忘れられるんだろう! バレエとか彼のダンスのよさはぜんぜんわからなかったけど、音楽の感動を体で表現したいという衝動が伝わってきました。本当に音楽もダンスも大好きなんだよね! 影の努力や、バレエの先生の娘とのませたやり取り、ゲイに目覚めつつある親友とのやり取りなども微笑ましい。 ストライキの見せ方も僅かな時間で印象に残ったし、「わたしはダンサーになれた」が口癖なお祖母ちゃんも個性的。病気で亡くなった母親との繋がりであるピアノの使い方も上手かったと思います。 後半、ビリーを応援しようと覚悟を決めてからの家族(とくにお父さん)の結束には泣かされました。「ビリーはまだ11歳なんだ、夢を叶えてやりたい!」と叫ぶシーンは涙腺崩壊。合格通知のそわそわする家族には笑いました。 ダンスの先生やお兄ちゃんとの別れのシーンも良かったなぁ。 ただ、男がバレエをやる事やゲイへの偏見が残っている事をもう少し描いた方が、前半に父親が断固反対してた気持ちも伝わってきた気がします。 観終わってしみじみ「いい映画を観たな」と思える作品でした。
関連記事 「ものすごくうるさくて、ありえないほど近い」観ました(同監督) 製作:日本’53 監督:小津安二郎 ジャンル:★ドラマ
【あらすじ】故郷の尾道から20年ぶりに東京へ出てきた老夫婦が、成人した子どもたちの家を訪ねる。だが、子どもたちはそれぞれ生活に精一杯で、彼らに構っている暇もない。唯一、戦死した次男の未亡人だけが、二人に優しい心遣いを示し…。
小津監督というと、娘の結婚にまつわる作品ばかり観ていて、さすがにうんざりしてたんですけど、見逃していたこの作品は違ったんですね~新鮮でした。 大らかなお母さんが良かったです。まるで仏様みたいというか、すべてを包みこむ優しさを持っていそうというか、一度抱きしめてもらいたい!(笑) 印象に残ったのは、幼い孫を連れて土手に散歩に出かけ、「お前も大きくなったらあんなふうになるん?その時、お祖母ちゃんおるかのう?」というような事を言うシーン。 老夫婦が子供たちに冷たくあしらわれるのが切ない作品なんだけども、現代ではありふれた光景で感覚が麻痺してるのか、そこまで琴線に触れる事もなかったんですよね(全体の空気は凄く好き)。でも、このシーンは胸の内にある寂しさや喪失感なんかがポロっと零れ落ちた感じで、目の前の孫に答えを求めてるわけじゃないのに言わずにはいられない気持ちがたまらなかったです。 あと、この作品を観てるとうちわが欲しくなりますね。撮影のために一体何個用意したんだってくらい、いつも画面の片隅でパタパタ扇いでました。 今はこれくらいしか気付かなかったけど、観るたびに発見がありそうな作品です。
関連記事 「秋日和」観ました 製作:アメリカ’07 原題:CHAOS THEORY 監督:マルコス・シーガ ジャンル:★ドラマ/コメディ
【あらすじ】1日の行動全てをリスト・アップし、忠実に実行へ移していたフランク。妻スーザンはそんな彼に余裕を持たせようと時計を10分ずらすが、間違えて早めてしまう。彼の予定は目茶苦茶になり、不幸が重なって妻に不貞を疑われ…。
日本未公開の小品なんだけど、なかなかの掘り出し物でした。 人生の効率化を計るため、何事もリストに書き出してから行動しているフランクが、ちょっとした事からとんでもない事になっていくお話です。とんでもない事と言っても、ヒッチコック作品みたいに陰謀に巻き込まれたりという事ではなく、一般人の普通の人生の中での一大事。流れ的には予想もつかなかったけど、こういう事態は決してありえない事ではなく、フランクと一緒に驚いたり悲しんだりしてしまいました。 後半はドラマ寄りで、ある事実を知って声を殺して泣く姿が痛ましい。まあ、その後ちょっと壊れちゃって、やりたい事をくじ引きで決めて実行に移すという無茶を始めるんですが…。 哀愁漂うコミカルな展開もわたし好み。テンポがいいからフランクの暴走もサクっと観られます。 家族が壊れそうになってしまった時、始めの方でフランクと娘がやっていた”窓への願掛け”が効いてくるのもいいですね~。娘が本当に可愛らしいです。 これらを、ある人物に対して昔話として語っているというのも素敵です。こじんまりした作品だけど、最後にはジーンとさせてくれる良いお話でした。
【再見:2015/2/27】 あまりオンエアしないだろうと思ってDVDに焼いておいたんですが、最近タイトルを目にして内容がさっぱり思い出せないことに気付き再見してみました。 約3年ぶりだけど、感想はまったく変わらず。付け加えるなら、ライフルを買うエピソードで店員が察しすぎ&協力的すぎ(笑) あとは、あんなことがあってもフランクを好きだという親友が良かったですね。彼は彼で辛かったと思います。最後の方で映される家族写真に彼も入っていて、みんな笑顔なのが見ていて嬉しくなりました。 TV版は10分ほどカットされてたので、いつかフルで観てみたいです。
製作:日本’07 監督:是枝裕和 ジャンル:★ドラマ
【あらすじ】夏の終わり。老いた両親が暮らす横山家に、子どもたちが家族を連れて帰郷した。その日は、15年前に亡くなった長男の命日だったのだ。父親とそりが合わない次男の良多は、再婚したばかりの子連れのゆかりと渋々の帰郷だったが…。
落ち込んでるけど無理に元気になりたくない時にちょうどいいテンションの作品でした。 俳優が私でもわかる有名な人ばかりだったけど、意外と気にならなかったです。みんな濃いから中和されたのかも(笑) 淡々と家族の想いが浮き彫りにされていって、それが妙にリアルでした。子供からお祖父ちゃんまで、本当にこういう家族がいるんじゃないかと思えるほど。居心地の悪さすら完璧に再現してます。沈黙も実に雄弁でした。 お祖母ちゃんの「10年やそこらで忘れてもらっちゃ困るのよ」という言葉が忘れられません。「誰だってこんなもんよ」とも言ってたけど、ホントそうだと思います。人間は命の重さを平等には計れないものですよね。 ラストは阿部寛のナレーションが入って、ちょっと普通な感じになっちゃったけど、心に染みる秀作だと思います。
関連記事 「そして父になる」観た 「誰も知らない」を観終わりました 製作:日本’47 監督:吉村公三郎 ジャンル:★ドラマ
【あらすじ】代々の名門華族である安城家にも、太平洋戦争終結とともに悲劇が訪れた。家屋敷まで手放さなくてはならなくなった時、彼らは貴族階級との決別の意を込めて最後の舞踏会を開く。当主の忠彦は、最後の望みをかけて新川を招き…。
これも案外面白かったです。わかりやすいキャラクターと演技で、憐れっぽく滑稽に華族の没落を描いた風刺劇で、「あらあら可哀そうだこと!(笑)」 みたいな感じで観るのが正しい…のかな? (嗤)じゃないところがマイルドでわたし的には見やすかったんですが、当時の大多数がおかれた苦しい状況を知っている人から見たら、『ぬるいわっ!!』 ってなるかも。 まあ、みんなだいすき原節子が”華族の肩書きより、家族の絆”みたいなポジションにいて、健気に家族を気遣い、みんなで現実に立ち向かっていこう!と励ます姿を見たら、多少はそんな気持ちも和らぎそうです。終盤の節子タックルは爆笑でしたし。これが本当の体当たり演技(笑)
そんな彼女が手を焼くのが、まずは風が吹いただけで倒れそうな弱々しい父親。完全なる温室育ちで、温室の中では優雅に咲き誇れても、外に出れば枯れてしまうと自分で思い込んでいます。というか、節子タックルがなければ死んでたし、そうでなくても娘がついてないと生きていけそうにない。一番の問題児でした。 次に真性ファザコンで長男の正彦。放っておいたらヒモになりそうな男なんですが、パパの気を引くためにピアノは頑張ったみたいだし、パパが再婚しないから自分も結婚しないし、パパを騙した奴には痛い目見せてやろうとするし、とにかく最初から最後まで父親しか眼中に無いのに、ほとんど父と話せてないヘタレ で笑えました。…いや、筋違いな復讐に走った時は笑えなかったけどね。本気だったのかはわからないけど。 そして、気位の高いツンデレ出戻り長女の昭子。ずっと前から運転手の青年に熱烈に慕われていて意識しまくっているのに、そんな自分を否定するように”成り上がり者”とか”気持ち悪い”とか”汚い”と罵ります。「記念にぱぁっと舞踏会を開こう」と言い出したのもこのお人。最後にはデレて、砂浜を転びながら追いかけていくのが、やっぱり笑える。 そんな感じで笑いながら観てたんですが、最後は現実と向き合おうと決心したっぽい父親と、ひとりで問題児たちの面倒をみた次女・敦子のダンスが素敵で、二人の足の運びに惚れ惚れしました。このシーンが一番品があったかも。
製作:アメリカ’07 原題:NO RESERVATIONS 監督:スコット・ヒックス ジャンル:ドラマ/ロマンス/コメディ
【あらすじ】マンハッタン。料理長を務める完ぺき主義者のケイトは、突然の事故で姉を亡くした。姪のゾーイを引き取り一緒に暮らし始めるが、ゾーイは彼女の料理を口にしようとしない。だが、新しく入ったシェフ・ニックの料理を美味しそうに食べ…。
リメイク版も再見してみました。ホントは「マーサの幸せレシピ」と同じシーンを描き比べるつもりが、いまいちだったので諦めて孔雀の羽根を眺めるシーンに。「リトル・ミス・サンシャイン 」の時とは一年しか違わないのに、彼女の表情がずいぶん大人びて見えますね。 さて、個人的には先に観たオリジナルが印象に残ってるものの、こっちはこっちで好きなところもあったりします。 ひとつはゾーイ役のアビゲイルちゃん。ふたりが目の前でキスをした時に、照れながら顔を隠してしまうシーンが可愛いです。他の主演ふたりはどうしても違和感があったけど、彼女は演技が上手で気になりませんでした。その分、彼女の父親とのエピソードをぜんぶカットしてしまったのが許せん!! もう一つは、ラストですね。オリジナルももちろん好きだけど、三人の名前が書かれた看板を回すゾーイが微笑ましくて、幸せな気分で見終われました。 ちなみに原題には、”予約なし”という意味と、”遠慮、気兼ねや秘密はなし”という意味があるそうです。
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【あらすじ】1980年初頭の中国・湖南省西部の山間地帯。足を悪くした父親に代わり、息子が郵便配達の仕事を引き継ぐ。それは、一度の配達に2泊3日を要する過酷な道のり。父親は愛犬”次男坊”を連れ、息子とともに最後の仕事へと出発する。
これは素晴らしかったです。即、永久保存決定でした。 父と息子の旅、いいですよ~。一緒に過ごせなかった時間が、すれ違った想いが、旅を通じてみるみる埋まっていくのが伝わってきます。 言葉は少なくても、父親が長年続けてきたことの意味はわかるんです。たった3日の旅だけど、手紙を届けた相手の笑顔、それを一番に考えている父親の行動をみれば、一目瞭然。 この仕事を本気でやりたいというわけでもなかった息子が、父のように人々の想いを届けたいと思うようになる過程。そして、今まで父親らしいことをしてやれず「父さん」とも呼んでもらえなかった父親が、本当の意味で父親になっていく様子。それが、実にあたたかい目線で描かれていました。 美しい山の風景、心洗われるような笑顔、可愛い”次男坊”。すべてが調和していて、深い余韻を残します。 ちなみに、原題の意味は”あの山、あの人、あの犬”です。
すごく落ち込む内容の番組を見てしまって、少しでも気分を変えようと私的「癒し映画」NO.1に輝くこの作品を再見しました。 う~ん、やっぱり”大自然の緑、ロードムービー、親子の絆、可愛くて賢いわんこ”など、心が癒される要素のみをぶちこんだようなこの作品の癒しパワーは半端ないです。 それでいて押しつけがましさを感じないんですよ。もう自分の一部のように懐かしく感じる作品です。
感想はだいたい初見と変わらないものの、一つ違ったのは、彼は父と旅をする前から尊敬する父の仕事を本気でやりたかったのかもということ。ほとんど一緒に過ごせなかった父と息子の距離は、遠いようで案外近かったんだと、父親を出迎えた時(年齢別)の短い回想シーンから伝わってきました。 旅の始めは何を話したらいいのか戸惑っていた二人が、少しづつ少しづつ素直になっていって、今までほとんど話せなかったのが嘘のように自然な父子の姿に変わっていくのがもうね(涙)
とくに、冷たい川を渡る時、彼が足の悪い父を背負ってゆっくり渡るシーンは泣けました。父親を背負えるようになったら一人前だと聞いた子供の頃は、背の高い父を背負えるか不安に思っていたのに、今はちゃんと背負って川を渡っている自分がいる。 そして、背負われている父も、幼い息子を肩車していた頃を思い出しながら、その成長に涙し、そして息子の存在を確かめるように頭に顔を埋めるんです。セリフもモノローグもないけど、「立派になったなぁ…!」という声が聞こえてきそうでした。 終盤になって、今度は息子がこれから村で暮らす父親に処世術を伝授するシーンも面白かったです。もうすっかり仲良し親子だよ♪
そして、不在である母親のこともしっかり描かれていました。彼はほとんど”お母さんと二人暮らし”の状態だったので、やはり傍にいなくても想っているんですよ。仕事に出かけた父を心配していたように、今自分のことを考えているだろうかとか、山里の娘さんと良い雰囲気になっても、結婚したら母さんのように故郷を想い続けるから…と思っていたり。
ラスト、息子の背中と、それを追っていく次男坊を誇らしげに見送るお父さんの表情も素晴らしい。このお父さんを演じた方の存在感が、この作品に厚みを与えていたと思います。 93分の中で、驚くほど家族愛が込められていました。
製作:ドイツ’01 原題:DREI STERNE 監督:サンドラ・ネッテルベック ジャンル:★ドラマ/コメディ
【あらすじ】料理に絶対の自信を持ち、しばしば客と衝突するシェフのマーサ。突然の事故で姉を亡くした彼女は、姪のリナを引き取り一緒に暮らし始める。食事をとろうとしないリナだったが、新しく入ったシェフ・マリオの料理を美味しそうに食べ…。
オリジナルのほうです。Gyaoでやってたので久しぶりに観てみました。リメイク版「幸せのレシピ」には「リトル・ミス・サンシャイン 」のオリーヴ役アビゲイルちゃんが出てましたね。 やはり最初に観たせいか、オリジナルのほうがしっくりきます。なんというか、気難しい孤独なマーサはわたしのなかではもうこの人マルティナ・ゲデックなんです。リメイクを観た時は既視感ばかり気になって、いいとは思うんだけどいまいち入り込めませんでした。
前半のやや陰鬱な空気が、リナやマリオの登場によりゆっくりと明るくなっていくのがいいんですよね。マーサの表情が柔らかくなっていくと同時に、冷たくからっぽだったマーサの家が暖かく賑やかになっていくのがわかります。何度も映される”キッチンが見える廊下”がマーサの変化を表しているようでした。 そして、マリオのつくる料理もいい! 何も食べないリナの前で、大げさに、でも本当においしそうに食べているパスタが食欲をそそります。 料理がでてくる映画はたくさんあるけれど、やはりイタリア料理が一番おいしそうに見える気がします(どれがイタリア料理かよくわからないけど!)。彼とリナがマーサのキッチンで料理をした後、めちゃくちゃになったキッチンを見て過呼吸に陥るマーサが笑えました。
感情を表に出さず、辛くても隠れて泣いていたマーサが、彼らと過ごすうちに見せるようになった心からの笑顔 。 見ているこっちまで笑顔になれる作品でした。 ちなみに原題の意味は、「DREI STERNE」はドイツ語で”三ツ星”、「BELLA MARTHA」はイタリア語で”美しきマーサ”。個人的には語呂がいい邦題が好きかな。
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