忘却エンドロール社会派ドラマカテゴリ紹介

素敵映画に出会えた時の感動をそのまま書き綴る、映画感想ブログ.

映画「続・激突!/カージャック」観ました

続・激突!/カージャック
原題:THE SUGARLAND EXPRESS
製作:アメリカ’74 110分
監督:スティーヴン・スピルバーグ
ジャンル:★ドラマ

【あらすじ】あと4ケ月で出所という時に、妻ルー・ジーンに唆され脱獄したクローヴィス。彼女の話では、二人が刑務所にいる間に息子が里子に出されたという。二人は息子を取り戻すため、警官もろともパトカーを奪い里親の元シュガーランドへ向う。

たしか「激突」より前に観た作品だと思います。初見時はぼろ泣きで今再見したらどうなるかなぁと気になっていたんですよね。今回やっと再見できて、またもや号泣。配給会社に「激突」の続編みたいな邦題を付けられて損してますが、中身はちゃんとしたドラマでありニューシネマでした。
もうね、警官が主人公たちをみて「(中身は)子供か」というのがすべてだと思うんですよ。普通はこんなことをしたらどうなるのかわかるのに、ルー・ジーンははしゃいでいて我が子と一緒に暮らす未来しか見えてません。そして破滅の道を歩んでいるとわかっていても、子供を取り戻す以外ルー・ジーンが幸せになる方法はないと行動を共にするクロ―ヴィス…。彼女のために自分にできることは何かというと、彼にはこんなことしかできないんですよね。

そんな二人に対して、間近で見ていた人質警官はストックホルム症候群も手伝って彼らを守ろうとするし、警察も相手が大人子供だということや世間体のこともあってなかなか強硬手段を取れません。そして、幼い我が子を取り戻すために命がけで警察と渡り合う犯人たちに、世間の人達は”美談”としてお祭り騒ぎを始めるわけです。
でも、主人公たちがどうして破滅の道を歩むことになったか考えると、なんだか切なくなってくるんですよ。更生施設がきちんと機能していれば若くして道を踏み外した彼らが軽犯罪を繰り返さずに済んだかもしれないし、子供に関する通知が前の住所に送られたせいで気付けなかった時、お役所仕事で冷たくあしらったりしなければ彼らも里親も子供も翻弄されることはなかったかもしれない…。
そして、小さなことでも困った時に親切にしてくれる誰かがいれば、彼らも他人に相談したり頼ることができていたかもしれないと思ってしまいました。

クロ―ヴィスは決して頭が悪いわけじゃありません。警察が彼らに仕掛けた罠も、今まで培ってきた経験で回避しました。もし彼が法律を破らなくても生きていく方法を学んで、社会復帰のための助けがあったなら元の道に戻れた可能性はあるんですよ。ルー・ジーンだって「困った時は役所に相談しろ」というクロ―ヴィスの言い付け守る素直な女性なので、善人に囲まれていれば道を踏み外したりしなかったでしょう。
無声映画で崖から落ちるキャラクターに自分たちの未来を重ねて表情を曇らせたり、今からでも遅くないと自首を進められて「それで丸く収まっても、ルー・ジーンは幸せになれない」と断るクロ―ヴィス、そしてお祭り騒ぎを楽しむ野次馬たちからの贈り物を無邪気に喜ぶルー・ジーンをみていたら涙が止まりませんでした。

そう見えるように撮ってるんだろうけど、彼らを銃で襲撃するアホな民間人や淡々と彼らを狙うスナイパーの方が凶悪犯のよう。
ラスト、事件の後にルー・ジーンは子供を取り戻したと流れ、事件を起こす前に彼女の言い分を認めていればクロ―ヴィスは死ななかったし、里親も子供を奪われずに済んだのに…とやるせなくなりました。

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映画「ブルベイカー」観ました

 | 社会派ドラマ  com(0) 

ブルベイカー
原題:BRUBAKER
製作:アメリカ’80 130分
監督:スチュアート・ローゼンバーグ
原作:トーマス・O・マートン、ジョー・ハイアムズ
ジャンル:★社会派ドラマ

【あらすじ】囚人による自治委員の運営が行われるアーカンソーの刑務所。だがその改革的な体制の裏では、賄賂と暴力が支配する腐敗したシステムが出来上がっていた。所内の実態を調査すべく、ブルベイカーは刑務所にやってくるが…。

レッドフォードさん演じる信念の男が素敵でした。
まず最初から驚かされますよね~。何も知らずに観たので、チョイ役のモーガン・フリーマンと話してるのを聞いても交渉術の一環だと思ってました。
未見の方は何も情報入れずに観た方が良いと思います。以下ネタバレ全開で書いていきます!

普通に就任したら真実が隠されてしまう可能性が高いとは言え、すべてを知るために危険を承知で潜り込む根性が素晴らしいです。うっかりケンカに巻き込まれたら死にますよ?
そんな彼だからこそ、視聴者も囚人たちも「本気だ!」というのがわかるんですよね。なんせ短い間でも一緒にあのウジ虫料理を食べ、キツイ仕事をしてたわけですから。
そして就任してからの行動力も、彼の情熱を証明していました。暗く汚い独房に入れられた囚人たちにサングラスを支給し、毎日1回は外に出すよう指示し、食事や労働を改善。悪徳医師などを解雇。囚人たちとスポーツをするなど、テキパキと囚人たちの待遇を改善していきます。

当然、彼を信頼し始める囚人が増え始めるんですが、その一方で、今まで甘い汁を吸っていた自治委員たちの反感を買うことになり…。
この自治委員たちのやっていたことが本当に酷くて、囚人たちを奴隷として働かせて、その利益を自分たちの懐に入れるなんてのは序の口で、後半でとんでもない事実が発覚します。
でも本当に怖いのは、この事実を知っても保身と刑務所に金を出したくないという気持ちでしか判断しない州知事や上院議員たちです。
ブルベイカーを所長に推薦した州政府の女性補佐官リリアンでさえ、それを必要悪と妥協してしまいます。

唯一の味方すら失った彼がそれでも真実を暴いたのは、実話だということを考えると本当にすごいことだと思いました。そして、それに対してラストの囚人たちの賞賛と感謝の意がね…力強い響きに、これからは自分たちも戦っていくという決意が伝わってきます。
エンドロールで流れるその後のことに、彼のやったことは無駄ではなかったとジーンときました。
地上波の吹き替えカット版だったので、いつか字幕で全部ちゃんと観てみたいです。

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「暴力脱獄」観ました

映画「恋人はセックス依存症」観ました

 | 社会派ドラマ  com(7) 

恋人はセックス依存症
原題:THANKS FOR SHARING
製作:アメリカ’2012
監督:スチュアート・ブルムバーグ
ジャンル:★ドラマ/ロマンス

【あらすじ】セックス依存症のグループセラピーに参加し、5年の節制に成功した独身男アダム。一歩踏み出すためパーティーに参加した彼は、そこで積極的な美女フィービーと意気投合する。だが、元彼の依存症に苦労した彼女は真っ先に「依存症の人はパス」と釘を刺さし…。

酷い邦題ですが、セックス依存症を扱った真面目なドラマで、クスリと笑えるシーンもある良作でした。依存症に悩む男性3人を中心に、ロマンスと友情と家族のドラマが描かれます。
メインの3人は、5年の節制に成功して次のステップに踏み出そうとしているアダムと、今は克服してセラピーの世話役をするマイク、行政命令で仕方なく参加し始めたニール。邦題からはロマンス担当のアダムが主役のようですが、実際には3人とも主役ですね。
依存症が家族、とくに子供を深く傷つける事がわかる世話役マイクのパートでは、過ちを認め心から謝るラストに涙。…母親もあの後、ちゃんと謝ったと思います。先に謝ったら、あの父親はタイミングを失ってただろうし。
また、アダムのパートでは、人間は誰しも完璧じゃなくて、それを受け入れる事が愛なんだと考えさせられます。終盤の”ある呼び方”にはギョッとしたけど、あれは年齢的に考えて違いますよね。ただし、5年以上前にセフレだった事が完全にアウト。一度捕まっとけ!

中でも印象に残ったのが、医者でありながら痴漢や自慰がやめられないニール(ジャック・ブラック似)です。
以前、セックス依存症についてTVか何かで見たんですが、やってから自己嫌悪に陥ったり、生活(仕事や健康)に支障を来たす、もしくは犯罪行為だとわかっていてもやめられない場合が”依存症”に当てはまり、彼の場合は全部当てはまってました。
不安になると自慰で誤魔化し、そんな自分が惨めで向き合いたくなくて、できる事といったら好きなものを食べてストレス解消することだけ。
でも、必死に勉強してやっとなれた”医師としての自分”も痴漢や盗撮の衝動のせいで失いかけて、やっと本気で依存症と向き合います。

そんな彼の支えになったのが、新入りセラピー仲間の助けを求める電話でした。
終わった後の惨めな気持ちを知っているからこその助言、誰かに助けて欲しいと自分も思っていたからこそ必死になって駆けつける事ができる…太った体で大量の汗をかきながら街中を走る様子は笑いを誘うものの、その姿はまるでヒーローのよう。
そして、彼女と支えあいながら自分も成長し、アダムのために誘惑と戦いながら地下鉄に乗ったり、過干渉の母親に真実を打ち明けたりと、何気に一番がんばっていたかも。
相手は女性で一歩間違えばセックス依存症同士どうなるかわからなかったところ、二人とも友情を何よりも大切にしていて最後には爽やかな感動がありました。

この作品を観ると、どれだけ街往く女性の挑発的な服装が、セクシーな看板や広告が、誘惑だらけのテレビやネットが、セックス依存症の人にとって大きな障害になっているかがわかります。
この病気で一番怖いのは性病の蔓延だと思うんだけど、誘惑を回避する手段とかもう少しなんとかならないのかな?
ちなみに、原題は「聞い(共有し)てくれてありがとう」という意味で、グループセラピーで自分の辛い心境を話した後のお決まりの台詞です。

映画「見わたすかぎり人生」観ました

 | 社会派ドラマ  com(4) 
Tag:イタリア 

見わたすかぎり人生
原題:TUTTA LA VITA DAVANTITUTTA LA VITA DAVANTI
製作:イタリア’08
監督:パオロ・ヴィルズィ
ジャンル:★ドラマ/コメディ

【あらすじ】就職難のローマ。大学の哲学科を優秀な成績で卒業したマルタがようやく見つけたのは、住み込みのベビーシッターの仕事だった。雇い主のシングルマザー、ソニアの紹介で、怪しげな浄水器を売る会社のコールセンターの職も得るが…。

Gyaoで鑑賞。
全体的にブラックコメディなノリで、たまにミュージカルっぽさも入るものの、なんだかグサグサくるストーリー。観ているのが辛いのに、何故か目を離せませんでした。
コメディという割りに笑えないし(唯一、ビッチなルームメイトが風呂上りに男性と出くわし、タオルで隠すけど胸しか隠れてないくだりは笑った)、でも暗いわけではなくてブラック企業の方針で毎回仕事前に歌って踊るのがシュールなんだけども…。
ラストはとくに何も解決してないにもかかわらず、大丈夫だよと言ってもらっているような気持ちになって泣けてきました。
就職難で高学歴でも仕事にありつけないマルタが、生きるために他人を騙すような仕事をはじめて、いつの間にか心が痛まなくなっていく(でも、心の奥底で悲鳴をあげているようでもある)。
そんなマルタの言葉を全部信じた上で、彼女のことを心から心配する老婦人の優しさが彼女を救ったんだろうなぁ…。
あとは、頑張って書いていた論文が認められたのと、なおかつ面倒を見ていた女の子が将来「哲学」をやりたいと言ったところも。
この作品に登場する人たちは良くない事をしている人ばかりだけど、それぞれ必死に生きているのが垣間見えて、現代社会で生きていく辛さが描かれています。
ラストの「ケセラセラ」が胸に迫ってきました。
ちなみにタイトルは、母親がマルタに言った「自分の事だけ考えなさい。見わたすかぎりお前の人生よ」という台詞から。

映画「フィッシャー・キング」観ました

フィッシャー・キング
原題:THE FISHER KING
製作:アメリカ’91
監督:テリー・ギリアム
ジャンル:★ドラマ/コメディ

【あらすじ】スーパーDJのジャック・ルーカスは、放送中の不用意な発言のせいで悲惨な事件を引き起こしてしまう。罪の意識から酒に溺れた彼は、夜の街を彷徨って暴漢に襲われていたところを、心の傷からホームレスとなったパリーに救われ…。

どうやらTVカット版観てしまったようですが、とても良かったです。ジェフ・ブリッジスの演技に引き込まれました。
ロビン・ウィリアムズもいつも通り素晴らしいんだけども、この作品ではルーカスの苦悩があったからこそ引き込まれたと思います。
自分の考えなしの言葉が引き起こした悲劇…。そのニュースを観ている時の驕った表情から、自分の愚かさに打ちのめされていく表情に変わっていくシーンが印象的。
ただ、その後の転落っぷりが凄くてアルコール依存症にしか見えないから、後半のまともさは違和感あるかも。
命を助けてくれたホームレスのパリーが自分の罪の証だとわかった後の行動も、とても素直でよかったです。
彼を救えば自分も救われるかもしれない、この苦しみから抜け出したい…そう素直に言える相手であるアンの存在もいいですね。
決して生活に余裕があるわけではないけど、愛する男のために嫌なことでも頑張って協力して、そんな中で本物の友情みたいなものも芽生えて。
その友人となったパリーの想い人リディアも、繊細で臆病な感じがこの作品のヒロインにふさわしい。
彼女とすれ違う時、パリーには人ごみが急にダンスし始めたように見えているという表現はとてもロマンティックでした。
そして、最後の最後にわかる赤い騎士の造形の意味…。心が壊れてしまうのも当然です。
終盤、ルーカスがパリーに「オレに責任はない、同情なんてしない、気楽なお前が羨ましい」と散々言って、それでも”聖杯”を取りに行くのはやはり友情のためなんだろうね。
わざと警報機を鳴らして富豪を助けるくだりも、全てが繋がっていて意味のあることだったんだなぁと思えました。
毛むくじゃらなパリーと裸になって夜の公園の空を楽しむラストが不思議と心地いいです。
ちなみに、タイトルのフィッシャー・キングとは、アーサー王物語に登場する癒えない傷を受けた王様「漁夫王」のこと。その傷を癒したのが聖杯なんだとか。

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映画「ラビット・ホール」観ました

 | 社会派ドラマ  com(3) 

ラビット・ホール
原題:RABBIT HOLE
製作:アメリカ’2010
監督:ジョン・キャメロン・ミッチェル
原作:デヴィッド・リンゼイ=アベアー
ジャンル:★ドラマ

【あらすじ】最愛の一人息子ダニーを交通事故で亡くした夫婦ベッカとハウイー。彼らは同じ喪失感を抱きながらも、次第に溝が生まれていく。悲しみのあまり気遣う周囲にも辛く当たるようになるベッカだったが、ある日、息子を轢いた少年を偶然見かけ…。

「ヘドウィグ・アンド・アングリーインチ」の監督さんなら大丈夫と思って鑑賞。期待を裏切らない、登場人物たちの心情を丁寧に綴った秀作でした。
今のわたしには想像する事しかできないけれど、やはり同じ境遇であったとしても、悲しみを受け入れ乗り越えるまでの過程は人それぞれで、それは夫婦でも親子でも違うのが当たり前なんでしょうね…。
主人公のベッカが、同じく息子を失った夫や母親、彼女を気遣う周りの人々とすれ違い、時に酷い言葉で傷つけてしまう姿は、まるで水中で溺れてもがき苦しんでいるかのようでした。
でも、ベッカの母親が「悲しみは消えない、けれど重さは変わる」と言ったように、悲しみの感じ方は時間の経過と共に変わり、足掻き続ければいつか泳ぎ方を覚えて、冷静に悲しみと向き合える時がやってくるのかもしれません。
その境ともいえる、堰を切ったように泣き叫ぶシーンが印象的。
息子を轢いた少年が、事故の日からずっと考えてきた”愛する人を喪う悲しみ、痛み、小さな希望”を描いた物語「ラビット・ホール」は、彼女に信じられるものを与えてくれます。
心の拠りどころも人それぞれで、愛する人だったり神様だったり打ち込めるものだったり想像の世界だったり、様々なかたち、名前をしていていますが、たぶん本質的には同じことなんだろうと思えました。
ラスト、日常生活を続けたその先に、きっと何かあると穏やかに話す夫婦の姿が心に染みます。

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映画「白い巨塔(1966)」観ました

 | 社会派ドラマ  com(10) 
Tag:日本 

白い巨塔(1966)
製作:日本’66
監督:山本薩夫
原作:山崎豊子
ジャンル:★サスペンス/ドラマ

【あらすじ】浪速大学医学部の東教授が来年退官となるため、そのポスト争いが水面下で激化していた。東の教え子である財前五郎は最有力候補と言われていたが、傲慢な態度ゆえ東教授に疎まれており、彼は様々な工作を進めていく。

「機関車先生」を録画したら急遽こちらに変更になってたので、「まあいいか」と再見。前回はうるさくてセリフがぜんぜん聞き取れなかったんですよね~。セリフがわかったら面白くて、一気にぐいぐい引き込まれました。
あろうことか裁判の途中で録画が途切れたけど、運よく家族が前に録画したDVDがあって助かった(笑)
もう、病院内での謀略や駆け引きがすごいんですよ。医者になる勉強をして医者として過ごしてきて、いったいいつ駆け引きの仕方なんて覚えたのやら!
それが出来ないと生き残れない世界なのかと思いきや、高潔な大河内教授のようなひともいます。駆け引きなんてまったく通用しない、自分の正しいと思うことを貫き通す、理想の人という感じ。
こういう人が実際にどれほどいるのかはわかりませんが、このドロドロした作品の中で、彼の歪みない言動は観ていて気持ちいいものがありました。
彼を知っていて、あれだけの才能があって、なお汚い手を使おうとする五郎は、案外小心者なんですね~。
でもまあ、そんな選挙中にお母さんに連絡を取らなかったのは、やはり自分が誇れることをしてないと自覚していたからでしょうか。でも一人では耐えられないから、愛人に甘えてたのかな?
彼に強硬手段を勧めたり、段取りをつけ、彼の取り巻きをその気にさせたり、この悪女もいい味出してました。
あと、五郎を教授にするためならいくらでも出すという義父がいいんですよ。もはや金持ちである事がアイデンティティという感じで、「あっちが権力なら、こっちは金や!」と謎のプライドを賭けた勝負になっていくのが面白い。
さしずめ五郎は競走馬?
でも、一方で旦那どころか父親にすら”どうでもいい”扱いされている、影の薄い五郎の奥さんが切なかったです…。
五郎の対照的な存在として描かれる里見も両親的な存在でほっとさせられたんですが、彼より彼の部屋から一望できる大阪城が印象に残ってしまいました。
優しそうな奥さんと可愛い息子と大阪城…これだけでもう財前五郎に勝ってる!(笑)

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映画「青い鳥(2008)」観ました

 | 社会派ドラマ  com(3) 
Tag:日本 

青い鳥(2008)
製作:日本’08
監督:中西健二
原作:重松清
ジャンル:ドラマ

【あらすじ】東ヶ丘中学2年1組に臨時教師の村内先生がやってきた。彼は着任早々、転校した野口の机を教室に戻させ、その机に向かって「野口君、おはよう」と語りかける。過ちを忘れ去ろうとしていた生徒たちは動揺し…。

地味だけとよかったです。
吃音者の先生が、いじめた側の責任を言葉少なめに語っていて、それが至極もっともな内容で納得できました。説教くさくはなくて反発することなく聞いてられるんですよね。邦画はこういうのが下手な作品が多いからちょっと意外。
あと、先生の”本気の言葉には本気で応える”という態度が真摯で素晴らしい。反省文を書かせて終わらせようという教師たちとは違うし、ふと普段の自分の事を反省させられます。
苛立つ彼らが、先生のもっともなお話をあんなふうに聞けるのかという疑問もありますが、一対一で相手の目を見て、本気で聞こうとするあの姿勢を見れば、やはり納得できてしまいます。
相手はあの大きな先生だし、本気で向き合われたら、たとえ周りに仲間がいたとしても一人と変らない。自分がただのかんしゃくを起こしている子供だと気付いてしまうのでしょう。
忘れてはいけない、その責任を受け入れた子供たちの迷いがふっきれた表情が印象的でした。
重いテーマながらラストは爽やかだし、考えさせられ、気付かされる作品だったと思います。学校などで見てほしい!

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映画「ミシシッピー・バーニング」観ました

ミシシッピー・バーニング
原題:MISSISSIPPI BURNING
製作:アメリカ’88
監督:アラン・パーカー
ジャンル:★サスペンス/ドラマ

【あらすじ】1964年の夏、公民権運動家行方不明事件の捜査のため、ミシシッピーにやって来たFBI捜査官ウォードとアンダーソン。だが、その町では人種差別が公然と行われており、KKKや保安官等らが捜査妨害を図る…。

小さいころから何度か目にしていて、あの白マスクの連中が火をつけて回るシーンばかり印象に残り、半分ホラー映画だと思ってました。
初めて最初から最後まで通して観たけども、やはり現実はホラーより恐ろしい…!
KKKはもちろん、普通の農家のおばさんやおじさんも普通に怖いです。当然のように「彼ら(公民権運動家)が死んでも自業自得」だと言ってしまうなんて…。周りに合わせないと自分も危険というのもあるかもしれないけど、目がマジっぽくて怖かったです。
ほとんど戦争?…ナチスと大差ないように思えました。
「憎しみはうまれつきじゃない、教えられたの」というセリフからも、アメリカの人種差別の根深さを感じます。

そんなミシシッピーで、ハックマン演じるFBI捜査官アンダーソンが犯人逮捕のために奮闘する姿に痺れました。ある種の諦めと(言葉で言っても通じない的な)、不屈の意思と、静かな怒りと悲しみ。彼の表情からそれが伝わってきて、最後まで目が離せません。
「真の敵は貧困」というセリフが印象的。
また、ペル保安官補の奥さんもステキです。あの立場で、良心に従う事ができるなんて…!
でも、どうしてこういう時、狙われるだろうと予想できるはずなのに護衛をつけないのか…。これは完全にアンダーソンの失態だったと思います。二人の間に愛が芽生えていく過程はよかったのに、どうして気付かないかなぁ。
終盤、怒り狂ったアンダーソンが手段を選ばず捜査を強行。…映画としては迫力があってドキドキしたけど、こういうやり方でしか解決できなかったのが哀しい。
ラスト、哀しくも力強いゴスペル「WalkOnByFaith」が心に残ります。

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映画「海と毒薬」観ました

 | 社会派ドラマ  com(4) 
Tag:日本 

海と毒薬
製作:日本’86
監督:熊井啓
原作:遠藤周作
ジャンル:サスペンス/ドラマ

【あらすじ】毎晩のように米軍機による空襲が繰り返されていた昭和20年5月。医学部の研究生、勝呂と戸田は、物資も薬品も揃わず多くの患者に満足な治療が行えない中、教授たちの派閥争いに組み込まれてゆく。そんなある日、捕虜8名を使った生体解剖実験を手伝えと教授たちに言われ…。

これは疲れました…。
モノクロで生々しさがアップしてるような手術シーン(生きた動物を使ったらしい…)も重苦しい空気に押しつぶされそうになるんだけど、やはり人間的な感覚が麻痺してきている医者たちの言動の方が精神的にきます。
葛藤を抱える勝呂と対照的に描かれる冷淡な戸田は、何も感じなくなってしまった事に疑問を覚えている分、少しは人間味を感じるんですが(実は一番心が弱かったのかも?)、そんなところはとっくに通り過ぎてしまったという感じの教授が…。今から殺そうという若者を前に、ニコニコ笑いながら対応する様子には寒気を覚えました。
看護婦たちも、好きな人のためとか復讐の為とか、生体解剖した遺体の側で平気で話しているのが恐ろしい。殺し屋にも見えた教授ですら、手術室に戻ろうとして逡巡したあげくにやめたのに…。女が一番怖いのか!?
患者を”物”扱いするのは日常茶飯事だし、戦争で死が間近にあるというのも描かれていて、心が休まるのは勝呂が海を眺めるシーンぐらいでした。手術室の床を流れる水の音や、生体解剖実験後に響く赤ん坊の泣き声など、音の使い方も印象的。
良心というものの脆さを見せ付けられた二時間でした。
しかし、ゴーグルなしで手術とか、サンダルみたいな履物とか、滑りやすそうな床とか、血をぬぐったガーゼを床にポイポイ捨てていくのとか…別の意味でも怖い映画です。しかもリアリティを追求して、血液はスタッフから採血したものを使ったとか…。今じゃ考えられないですね。

映画「天使の入江」観ました

天使の入江
原題:LA BAIE DES ANGES
製作:フランス’63
監督:ジャック・ドゥミ
ジャンル:★ドラマ

【あらすじ】パリで銀行員として働くジャンは、同僚に連れられ初めてカジノを訪れる。だが、一晩で年収の半額を手にしたことから、彼はギャンブルの魅力にとり憑かれてしまうのだった。父親に追い出され、南仏でカジノ通いを始めた彼は、ブロンド女性ジャッキーと意気投合し…。

ギャンブルにこうやって嵌っていくんだね…。
一瞬で大金が手に入ったと思えば、次の瞬間には帰りの汽車賃すら危うい。それが、新しい出会いでまた運が向いてきて、出会ったばかりの男女が夢のような時を過ごしたり、またお金に困ったり。
それをずっと繰り返しているんだけど、その間に「次の列車で帰る」と何度言っただろう?
「お金がほしいんじゃない。お金があっても賭けるもの」
どっぷりギャンブルに嵌っているジャッキーの言葉が、どれもこれも重みがあって、ギャンブル依存症の恐ろしさを感じました。
彼女と出会った事で、ギャンブルに嵌ってしまった者の惨めさ、苦しみを知ったジャンが、引き返さねばならないと決心した時、そこに”ジャッキーも一緒に”という気持ちが強くあり続けたのがよかったです。
彼らの道は長く辛いものだと思うけれど、きっとふたりなら(お父さんもたぶん協力してくれるだろうし)抜け出せると希望を持てるラストでした。
ちなみにタイトル「天使の入江:LA BAIE DES ANGES」は、ニースのカジノなどが建ち並ぶ海岸通りの海岸の名前だそうです。

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映画「台風騒動記」観ました

 | 社会派ドラマ  com(2) 
Tag:日本 

台風騒動記
製作:日本’56
監督:山本薩夫
原作:杉浦明平
ジャンル:ブラックコメディ

【あらすじ】巨大台風の直撃を受け、大きな被害を受けた海辺の小さな町。県会議員、町長、議長たちは、無事だった小学校をわざと取り壊し、国から一千万円の補助金を受け取ろうと画策していた。だが、大蔵省から監査官が来るという知らせを聞き…。

台風後の不正補助金申請にまつわる田舎町のあれこれを滑稽に面白おかしく描いた作品。…なんだけども、今もどこかしらで行われてそうで、あんまり笑えないかも?
まあ、この映画で描かれる不正役人は誇張・単純化されたお馬鹿さんばかりなのでクスクス笑えるシーンもあるんですが、やっぱり切実に困っている人たちを完全に無視して自分の利益の事ばかり考えてる人間には嫌悪感を覚えます。三島雅夫さんが演じる役の憎たらしさと言ったらもう!
どちらかというと、考えさせられる社会派作品でした。
芯のしっかりした女性教師と、彼女に想いを寄せるも、不正摘発できるほどの勇気はなかなか出せない代用教員。そして、彼の友人で「なんたらフィリップにそっくり」と言われる青年と、影のある花形芸者の、二組のカップルの恋模様は楽しめました。
イラストは、友人が子どもたちに「かたつむり」を歌っているシーン。子どもたちが喜ぶ様子に、小学生の頃、これと「ぶんぶんぶん」の歌詞の一文字一文字の間に「る」を入れて歌うのが流行ったのを思い出しました。昔から子どもに人気のある歌だったんですね~。
ラストに出る「災害の後には人災がやってくる」という言葉が印象的です。

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映画「招かれざる客」観ました

招かれざる客
製作:アメリカ’67
原題:GUESS WHO'S COMING TO DINNER
監督:スタンリー・クレイマー
ジャンル:★ドラマ

【あらすじ】旅先で運命の出会いを果し結婚を決めたジョーイは、両親の許しを得るため実家へ押しかける。しかし、突然黒人男性のジョンを紹介された両親は困惑し、明日の出発までに返事が欲しいと急かされ反感を抱く。まだ差別意識の強い時代、二人の意思は強かったが・・・。

これも再見。前半は笑えて、後半は熱い!
基本的にドラマ部分はディベート中心なので、「十二人の怒れる男」と似てるかも。
白人と黒人の結婚について、様々な考えを見せる様々な人々。リベラル派だった父親が猛反対するのが皮肉。それに、最初から最後まで反対してたのは黒人のメイドだったりします。「思いあがった黒人が一番嫌い!」と断言してたけど、実際にこういう人もいたんでしょうね。抑圧され続けて自分で自分を低く見てしまう。
前半はコミカルで、様子がおかしいのに気付いた父親が引き返してくるシーンとか笑えました。こんなにみんながみんな驚きうろたえる作品も珍しいかも(笑)
結婚と聞いて凍りついたような表情をしていた母親が、頬を涙で濡らしながら夫を説得するようになるまでの変化も見事。 好奇心旺盛な店員をクビにするシーンも迫力があって好きです。
登場すると場が和む牧師さんと、安定のポワチエさんの演技もよかった。
そんな中、娘のジョーイだけはハイテンションで空気読まずに突っ走ってましたね~。よくわからない娘です。この結婚で絶対苦労するだろうけど、できた旦那がいるから大丈夫かな?
ラストはお父さんが語りすぎな感じもありましたが、ジーンときて晴れやかな気持ちになれました。
原題の意味は「誰がディナーに来ると思う?」邦題はしっくり来るけど、真面目すぎる印象かな。そのためか、わたしも前半はコミカルだったと忘れてたし…。

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「渚にて」観た

映画「博士の異常な愛情/または私は如何にして心配するのを止めて水爆を愛するようになったか」観た

博士の異常な愛情
読み:はかせのいじょうなあいじょうまたはわたしはいかにしてしんぱいするのをやめてすいばくをあいするようになったか
原題:DR. STRANGELOVE: OR HOW I LEARNED TO STOP WORRYING AND LOVE THE BOMB
製作:イギリス/アメリカ’64
監督:スタンリー・キューブリック
原作:ピーター・ジョージ
ジャンル:★サスペンス/コメディ

【あらすじ】米軍基地の司令官が、突然ソ連の核基地の爆撃命令を出す。米大統領とソ連首相は電話で協議し、爆撃機に引き返すよう命じる。しかし、迎撃により無線を破壊された一機が目標に向かって直進し…。

久し振りに観たら、前に観た時はぜんぜんわからず★をつけてたんだなぁと呆れてしまいました。まあ、再見したい、してもいい作品に★つけてるから、これは”再見したい”方だったのかな。
まず驚いたのが、主人公をマンドレイク大佐だと思い込んでた上に、最終的に彼がイカレてリッパー将軍の遺志を継いだと思い込んでたという。何の映画を観たんだ、あんなにまともな人を!(笑)
超カッコイイけどイカレた将軍に対して、刺激しないように言葉を選んで健気に説得してましたよね~。電話が繋がらなかったり、コインが足りなかったり、この世が終わるかどうかの瀬戸際なのに笑えてしまう。脂汗を浮かべて頑張る姿が愛おしいです。
一方、邦題の博士についても忘れてたんだけど、観てたらすぐさま記憶が蘇ってきました。登場している時間は少なくても、確かにタイトルになるだけの存在感です。
でも、今度は邦題の意図がわからなくて、もやもや。今調べたら、監督が原題か直訳しか許さん!と言ったけど、「Dr.ストレンジラブ」じゃ観てもらえないからと、直訳という制約を逆手にとってこのタイトルにしたという事でした。さすがだね!
また、ゆるすぎる米政府首脳に対し、命がけで祖国を守り責任を全うしようと頑張る爆撃機パイロットが切ない。核爆弾にカウボーイのようにまたがりはしゃぎながら落ちていくシーンも泣けました。
映画を観終わって、最後に大佐と博士と大統領をピーター・セラーズが演じていたとわかってビックリ。全く気付かなかったよ!

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映画「デッドマン・ウォーキング」観ました

デッドマン・ウォーキング
製作:アメリカ’95
原題:DEAD MAN WALKING
監督:ティム・ロビンス
原作:ヘレン・プレジャン
ジャンル:★ドラマ

【あらすじ】ニュー・オリンズの“希望の家”で働くシスター・ヘレン。ある日、死刑囚マシューの”面接に来てほしい”という手紙を受けとり、彼と接見する事に。彼は残忍な殺人事件を起こしたが、彼女はマシューを一人の人間として見ようとし…。

ゾンビ映画かと思って観始めたら、実話をもとに死刑の実態を描いた社会派ドラマでした。
監督さんは死刑制度反対の立場らしいけど、反対派も賛成派も考えさせられる良い映画だったと思います。以下ネタバレ。

驚いた事に、この死刑囚マシューは本当に最低でクズなレイプ殺人犯なんですね。死刑制度反対の映画なら冤罪を扱うところですが、この監督さんは反対を訴えかけるのではなく、死刑というものをもう一度見つめなおす機会を与えてくれました。
シスター・ヘレンは「どうしてこんな男のために!」と周りにさんざん言われ、自分でも言っちゃったのに、最期まで彼の魂を救済するために彼と向き合います。
わたし的には、こんな奴を救う必要はないと思うので、その点では彼女に共感する事は出来ません。でも、彼のような人間に自分の罪を悔い改めさせた事には、本当に感動しました。自分の罪を認め、悔やんで、被害者や遺族や自分の家族に心から謝る気持ちがなければ、死刑なんて無意味だと思うから…。
スーザン・サランドンとショーン・ペンの演技が素晴らしいですね。途中から映画だという事を忘れるくらい引き込まれました。死刑について考えるなら、一度は観てほしい名作です。
ちなみに、タイトルの意味は”死者の行進”。死刑囚が処刑場に向かう時に、看守が言ってます。

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映画「クラッシュ(2004)」観ました

クラッシュ(2004)
製作:アメリカ’04
原題:CRASH
監督:ポール・ハギス
ジャンル:★ドラマ/犯罪

【あらすじ】クリスマスを間近に控えたロサンゼルス。さまざまな立場、さまざまな人種の人々がいるその街で、差別、偏見、憎悪が渦巻くなか、悲しみを抱えた人たちがぶつかりあう。

疲れる作品だと聞いていたので気合を入れて鑑賞。最初は頭がこんがらがったけど、なんとか大体のところは理解できたかも…?(汗)
冒頭から差別的な発言、行動を見せ付けて「うわぁ…」と思いました。今でもアメリカではこんな状況なんだろうかと考えてしまったけど、たまたまアメリカは様々な人種に溢れているから、怒りやストレスのはけ口が人種差別として現れているだけで、イライラして怒鳴ったり八つ当たりしたりするひとなんてどこにでも溢れてますよね…。なので、そういうトゲトゲした気持ちばかりで人間らしいふれあいを忘れ、他人を信じられなくなってしまった現代人を描いた作品として観ることができました。
印象に残ったのが、透明マントと事故車から救出のエピソード。透明マントは先が読めるものの、二人の天使の思いやりにホロリ。事故車からの救出は、人間の多面性というものを痛感しつつ感動で涙が。ちょっと話しただけで相手の本質を知ったような気になってはいけませんね。
それらと逆の意味で別の一面に気付いてしまう、聖母像と兄弟と母親のエピソードはきついものがありました。本人が気付いていないような人間の弱くて残酷な一面も、やはり”真実”だということでしょうか。
残念だったのが、サンドラ・ブロックのエピソード。階段から落ちてメイドに助けられるまでの心細さと不安をもっと見せてくれてもよかったと思います。ただでさえ出番少なかったのに…。
車の衝突と、人と人との衝突をかけた「クラッシュ」というタイトルが冴えてました。

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映画「セント・オブ・ウーマン/夢の香り」感想

 | 社会派ドラマ  com(2) 

セント・オブ・ウーマン/夢の香り
製作:アメリカ’92
原題:SCENT OF A WOMAN
監督:マーティン・ブレスト
ジャンル:ドラマ

ボストンの名門高校に奨学金で入ったチャーリー。ある日、同級生が校長の愛車にいたずらするのを目撃し、校長に犯人の名前を明かすよう迫られる。そんな時、バイトで孤独な盲目の退役軍人スレード中佐の世話をする事になり…。

噂どおり、タンゴを踊るシーンが素晴らしかったです。視線を動かさずに踊るのは難しいんだろうな。ラストでチャーリーを救うくだりもスカッとしました。
でも、全体的な感想としては、よくもまあここまで(性格的に)こじらせたなぁという感じ。善良なチャーリーとの数日間で立ち直れるのに、善良な姪夫婦の側で暮らしていてもダメだったのかと。…まあ、ろくでもない理由で自分のアイデンティティを喪失した彼からしたら、あの夫婦を見ても余計に惨めになるだけだったんでしょうけど。他人だったからこそ、かつての信念をなくす前の自分を重ね、素直に向き合えたって事でしょうか。
そんな気持ちもわからないでもないですが、それでも”私を嫌え!”という家族への態度には呆れてしまいました。自分は名前を覚えないくせに、チャーリーを”チャック”と呼んだらぶち切れっていうのもねぇ。
どうしても許せなかったのが、街中で車をかっ飛ばした事。誰か轢いてからじゃ遅いですから。止めないチャーリーも悪い。このシーンがなければ、素直に感動できたかもしれません。

映画「姉妹(1955)」観た

 | 社会派ドラマ  com(4) 
Tag:日本 

姉妹(1955)
製作:日本’55
監督:家城巳代治
原作:畔柳二美
ジャンル:★ドラマ

【あらすじ】伯母の家に下宿している姉の圭子と妹の俊子は、伯母夫婦に可愛がられながら仲良く暮らしていた。さまざまな境遇に暮らす人々と出会い成長していく姉妹。やがて、父が勤める山の発電所に人員整理の波が押し寄せ…。

仲良し姉妹が魅力的でした。妹は良いものは良い、悪いものは悪いとハッキリ言える真っ直ぐな女の子で、姉は分別があってお姉さんらしいお姉さん。優しい叔母さんと面白い(?)叔父さんとのやり取りもあったかいし、色々な人との出会いや出来事を経験して、成長していく姿に爽やかな感動が。
妹と女の子の友だちのキスシーンがあったり、貧しい親子が姉妹の家族を信頼して「娘を買ってくれ」と頼むシーンなどが印象的でした。

意味がわからん!「恋するトマト」

 | 社会派ドラマ  com(5) 
Tag:日本 

製作:日本’05
監督:南部英夫
原作:小檜山博
ジャンル:ドラマ/ロマンス

【あらすじ】霞ヶ浦に隣接する田園地帯に、年老いた両親と暮らしている45歳の独身男性・正男。お見合いで失敗し、フィリピンパブで働くリバティには金を騙し取られてしまう。フィリピンで彼女を探し続け、いつしか無一文の浮浪者となるが…。

いやもう、何なのこの映画!?
未成年のフィリピン少女たちを人身売買して借金完済した主人公が、罪も償わず、若くて綺麗でよくできたフィリピン女性とハッピーエンドとかマジ意味わからん。
日本農家の嫁不足問題とか、結婚詐欺で大金巻き上げられて自暴自棄になって犯罪に手を染めるとか、家族と農業を愛するフィリピン女性と出会い農業への情熱を取り戻していく…などの展開は映画として理解できるが、ハッピーエンドはねーよ!
心を入替えたんなら自首して、人身売買撲滅のために警察に協力しろ!
だいたい、同郷の少女たちを売り飛ばした男を、日本まで追いかける女も理解できん。どんだけ日本人に都合のいい女なんだ。
とにかく人身売買の罪を実感してない登場人物にイラッとした。超絶トラウマ映画「ヒューマン・トラフィック」でも観て反省しやがれ!

…と、こんな感じで昨日は憤慨しながら就寝しました。せっかく楽しい映画を観ていい気分だったのに、可愛いタイトルに騙された!

映画「生きる(1952)」感想

 | 社会派ドラマ  com(10) 
Tag:黒澤明 日本 

生きる(1952)
製作:日本’52
監督:黒澤明
ジャンル:ドラマ

【あらすじ】30年間無欠勤の市役所の市民課長・渡辺勘治は、自分が胃癌で1年ももたないと知る。これまでの生き方を後悔した彼は、どうしたら変えられるか悩み続ける。やがて、市民から出されていた公園建設に関する陳情書を思い出し…。

未見だと思っていて、ずっと観たいと思っていた作品なんですが、見たことありました。といっても、ビデオの調子が悪くて何を言ってるのかよくわからない状況で見たので、今回が初見と言ってもいいかもしれませんが。
ということで、なんとなく新鮮味に欠ける鑑賞となってしまいました。でも、主人公が何と言ってるかわからないのは今回も一緒だったり。こういう時、外国人だったら字幕で見られるのに!
まあ、このぼそぼそ喋りが、この人の”人柄”と”絶望感”と”病状”をひしひしと訴えかけてくるんですけどね。どちらかというとオーバーな演技でしたが、セリフ聞こえないのでこれ位してくれないと内容がわからなくなりそう。
病院の待合室で末期胃癌の症状を聞かされ、だんだんと縮こまって離れていく主人公とか、涙ながらにしみじみと「ゴンドラの唄」を歌う姿、息子に打ち明けようとして聞いてもらえなかった時の表情、生きる意味を見出して「ハッピーバースデー」の歌のなか揚々と階段を昇っていく様子など、変わりゆく心情が表情や動きからしっかりと伝わってきました。
ただ、わたしのいつもの悪い癖で、最後が受付けなかったんですよね…。苦手な酔っ払いの大声を聞いてたら気分が悪くなってきて、感動どころじゃありませんでした。こんな自分が憎らしい!
条件反射的に録画を消してしまったけど、慣れるまでとことん見ておけばよかったなぁ。…イラストはネットにうじゃうじゃ転がってる名シーンから。

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