原題:MEMORIES OF MURDER
製作:韓国’03 130分
監督:ポン・ジュノ
ジャンル:★サスペンス/ドラマ
【あらすじ】1986年10月23日、ソウル南部の農村で手足を縛られた若い女性の無惨な変死体が発見される。同様の手口で次々と犠牲者が増えていき、地元刑事パクらは苛立ちを募らせていた。ソウル市警から派遣されたソ・テユン刑事に自分たちのやり方を否定され衝突する中、ついに一人の有力な容疑者が浮上し…。
ぐいぐい引き込まれたんだけど、この見終わった後のモヤモヤ感をどうすればいいの…!と思っていたら実際の事件をもとにした作品だったんですね。そりゃあ未解決事件を無理やり解決することはできないわ。
80年代の韓国の農村地帯を舞台にした作品で、警察の不正捜査が横行してるから結構腹の立つシーンも多かったです。でも、どこの国でも一昔前は(場所によっては今でも)こんなもんだっただろう。殴って何日も眠らせないで、追い込んで追い込んで自白させる…。
犯人を捕まえられないことでマスコミに叩かれるし、新たな犠牲者が出るのを止められず自責の念も沸いてくる。おそらくまともに眠れない日々が続いていて、刑事だって人間なんだから壊れていくのは仕方がないのかもしれません。
まあ”犯人をでっちあげても連続殺人事件は止まらない”というのがわからなくなってしまった刑事を、いつまでも現場の捜査に関わらせておくのもどうなんだという感じですが、警察も人手不足なんだろうねぇ…。
片田舎の刑事に対し、証拠がすべてだと自白強要を白い目で見ていたソウルの刑事が、やがて同じように犯人を挙げられない焦燥感から壊れていくのが哀しい。
いちおう犯人は誰か考えながら見ていたんですが、頭のいい犯人なら現場に残っていた精子が本人のものとは限らないよなぁと思ったり。ほら、近所に変態っぽい人がいたし採取しようと思えばできるのでは?
最近はマスコミも騒がしくなってきたし、ソウルから派遣された刑事はなかなかやり手みたいだから、そろそろ危ない橋を渡るのはやめようかと別人の精子を用意。捕まってもDNAは一致しないから潔白を証明できる、ということかも。
また、唯一の目撃者クァンホが容疑者ヒョンギュの写真を見たとたん、虐待されていた頃の恐怖の記憶がよみがえったのも、事件目撃の恐怖が引き金になったからかなぁと思いました。
…すっかり事件が風化した頃、たまたま現場の近くを通りかかって遺体のあった用水路を覗き込むパク。近所の子供がやってきて思いがけない言葉を聞き、今もどこかでのうのうと生きている犯人を見定めようとするかのように画面の方を見つめるラストが印象的です。未解決事件の恐怖を感じました(去年、真犯人が判明したらしいけど、ずいぶん前に別件で無期懲役になってた上に本件については時効だった模様)。
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原題:ROOM
製作:アイルランド・カナダ’2015 118分
監督:レニー・アブラハムソン
原作:エマ・ドナヒュー
ジャンル:★サスペンス/ドラマ
【あらすじ】5歳の誕生日を迎えたジャックは、狭い部屋に母親と2人で暮らしていた。天窓から見える空を眺め、不自由な暮らしではあったが大好きな母親といつも一緒だ。彼にとって部屋の中が世界の全てだったが…。
小さな部屋で暮らす仲良し親子の様子は微笑ましく、まさかこんな流れになるとは思いませんでした。貧しい家庭なのかと思っていたら食べ物など必要なものは外から届けられているようで、戦時中なのかはたまたSF作品なのかと序盤からミステリアスで引き込まれます。
それからどんどん嫌な予感がしてきて、これから彼らがどうなってしまうのか文字通り目が離せませんでした。
前半は5歳の少年ジャックの目から見た世界が描かれていて、薄暗い小さな部屋と小さな天窓、そして見慣れた家具とテレビなど、大好きなママと二人だけの世界が広がっています。テレビで見るようなものが手に入らなくて癇癪を起すことはあるけど、不幸かというとそうでもないんですよね。
ママは一緒に遊んでくれるし、犬を飼いたいという夢も持っている。家具に挨拶をして、テレビアニメの真似をして髪を伸ばすなど、とても子供らしい姿を見せてくれます。
一方、優しい母親としてジャックと接していても、常にどこか思いつめたような目をしていてやつれ気味のジョイ。中盤にかけて彼女が何を抱えていたのかがわかり、彼女がいかに精神力を削られてきたのか、そしてジャックによってどれだけ救われてきたのかが伝わってきました。序盤からの彼らの生活の印象がガラリと変わった瞬間です。以下ネタばれあり!
ジャックが生まれるまで、あの部屋で彼女はただの”もの”だったんですよね…。騙されて捕まって、すべてを奪われて犯人の所有物になってしまった。
それが、ジャックの存在によって”もの”から”母親”になって人間に戻れたわけです。さらに、ジャックを守り抜くという決意と、いつかジャックだけでも逃がそうという目標が生まれ、同時に生きる希望を得られたんだと思います。
だからこそ、中盤になって脱出のためジャックを危険にさらさなければならない彼女の心情を思うと…。外の世界を知らない5歳になったばかりの息子を、自分のすべてである息子を犯人と一緒に送り出すなんて辛いなんてものじゃなかったはず。「ママなんて嫌いだ」と泣きながらミッションの練習をするジャックに、心を鬼にして何度も練習させるジョイの様子に胸がつぶれそうな思いがしました。
そして、ジャックの初めてのお出かけ。トラックの荷台で怯えながらも、初めての空に目を奪われるシーンが印象的です。ママの言いつけを守れず、3回目にしてやっとジャンプできた彼がなんとか絞り出した「ヘルプ!」の声。通りがかりのおじさんが気付いてくれてよかった…!
何と言っても幸運だったのは優秀な警官に保護されたことですよね。運転席のおじさん警官だけだったら絶対に気付けなかったと思います。人生最大のミッションをやり終え脱力しきったジャックとの事情聴取シーンでは、思わず「伝われ、伝われ!」と念じてしまいました。
おそらく生まれて初めて何時間も母親と離れていたジャックが、夜になってやっと”部屋”が見つかり母親と再会するくだりは涙腺にきました。7年の監禁生活が終わって、やっと家族の元に戻れることになったジョイと、今までの世界が全て崩壊して新しい世界に踏み出さなければならなくなったジャック。映画としてはここまでで半分くらいで、救出後のことが描かれているのがこの作品の特徴でしょう。
監禁され犯人の子供を産んだ女性と、犯罪者の血を引く息子…世間の目が彼らを傷つけるのは目に見えています。ジョイの両親も例外ではなく、最愛の娘が帰ってきて嬉しいはずなのに、孫の顔を直視できず娘ともまともに向き合えない父親の姿は、もし同じ立場ならと考えると責められなかったです。
戸惑いながらも娘に寄り添う母親と、当事者ではないからこそジャックと自然体で接せられる再婚相手や近所の子供がいたことが救いでした。
ここでは描かれなかったけれど(テレビ版でカットされた可能性もあり)、ジョイがスマホを息子に見せないでと切れていたので、きっとマスコミやSNSなどで酷いことを書かれたり、いたずら電話などもあったのだと思います。やっと解放されて元に戻れると思っていたのに、両親は離婚し、父親には距離を置かれ、心無い人々の誹謗中傷や好奇の目にさらされることになった…。
とくに母親であるということはジョイにとってアイデンティティそのものであり、母親になることで生まれ変わった(蘇った)と言っても過言ではありません。そんな彼女にとって、母親失格の烙印を押されるということは生きる資格がないと言われているのも同然です。よりどころを失い、魂をずたずたに引き裂かれたジョイがああなってしまうのも仕方ないと思えました。(少し唐突に感じたけども)
そもそも犯人が赤ん坊を取り上げなかったのは、息子を守るためにジョイが抜け殻ではなく従順になったとか、DNA鑑定により足がつくリスクを恐れたとか、いちおう自分の血を引いているからとかそんな理由からでしょう。
何はともあれ、生殺与奪を握る犯人が気まぐれで見逃しているんです。犯人にとっては所有物に過ぎない自分が何か意見して、わざわざ状況を変えるようなことをできるでしょうか。犯人が子供を取り上げようとしたなら必死に「誰かに育ててもらえるところへ」と頼むと思いますが、そうでないなら命よりも大切な赤ん坊を、一欠けらも信用できない相手に預けるなんて私なら絶対にしません。
もし犯人が了承したとしても、自分の目で息子が無事保護されるところを見届けることはできないし、犯人にとっては自分と行方不明者を繋ぐ手掛かりである赤ん坊を、わざわざ届けに行くメリットはありません。殺して処分する以外の選択があるんでしょうか?
マスコミの心無いインタビューのくだりは本当に腹が立って殴り飛ばしたくなりました。精神的なケアがまだ必要な時期に(薬を持っていたので通院していたはず)あんな無神経なことを言うなんて信じられないです。実際に、この作品の原作に影響を与えたフリッツル事件(wikipediaにリンク)では、パパラッチが自宅に侵入する事件があったようで、マスコミは被害者やその家族・知人に接触してはいけない法律を作った方がいいと思いました。
それでも見終わる頃には心穏やかになれたのは、やはりジャックのおかげですね。まさか序盤の”髪にパワーが宿る”というエピソードがここで生きてくるとは。ジャックのまっすぐな愛情と、少しずつ広い世界に歩み出していく様子に、少しずつ良くなっていくと希望を持てました。
彼にとってのすべてだったあの部屋とのお別れも印象的で、変わり果てた部屋で「縮んだの?」と狭さに驚いたり、思い出のこもった家具たちにひとつずつ触れてお別れを言っていく姿にはしんみりしました。
彼らへの悪意がなくなったわけではないだろうけど、きっと大丈夫だと信じたいです。

読み:ねむれぬよるのために
原題:INTO THE NIGHT
製作:アメリカ’84 115分
監督:ジョン・ランディス
ジャンル:★サスペンス/ミステリー
【あらすじ】不眠症に悩んでいる工学技師エドは、妻の浮気現場を目撃してショックを受ける。気晴らしにラスベガスに行けと同僚に勧められていた彼は、深夜に思い立って一人ロサンゼルス国際空港へ。すると、黒づくめの男たちに追われる美女ダイアナと遭遇し、彼女を車に乗せて逃走することになり…。
これは嵌りました。なんだろう、言葉で表し難い面白さというか…。感想書きにくい(汗)
言うなれば不眠症のおじさん版不思議の国のアリス…?
メルヘンなイメージは一切ないんですが、夜のベガスの街で出会う人々がどことなくシュールなんですよ。ヒロインのお兄さんはエルビス・プレスリーの大ファンで、エルビスの写真やポスターが飾ってある部屋は異空間のよう。めちゃくちゃ愛のこもった彼の愛車、白いキャデラック・エルドラド・ビアリッツも、なんだか現実味のなさを増してます。
それを勝手に借りて運転するのが、冴えないけど変に肝が据わってる主人公エド。肝が据わってるのか、あまりに自分の世界とかけ離れていて感情がついていかないのか、それとも眠いだけなのか…。人生初だろう出来事の連続なのに、ふらりふらりと上手く渡っていく主人公は、なんとなくアリスっぽく感じられました。
他にも船にいるマッチョ男とか、”女王様”みたいな黒幕、その手足となって動き回る手下たち(ボスが取引してる時にそばでポリポリお菓子食べ続けてるのが可愛い)、ベガスの街に立つ娼婦たちなど、大人のワンダーランドが描かれています。殺伐としているのにどこか夢の中のようで、どことなく心地よさも感じられました。ところどころに散りばめられたユーモアも私好み!
派手な展開はほぼなくて、平坦とも言えるのでかなり人を選ぶ作品だと思います。
あと印象に残ってるのが映画だかドラマの撮影現場に行くシーン。電話を掛けようとしたらセットの電話でスタッフに「ふざけてるの?」と言われるし、壁にもたれかかろうとして壊わしたり、石に腰かけれて壊わしたり…。しまいには開き直って壊れた石に座り続けるところがやっぱり肝が据わってるというか、細かいところはどうでもよくなってるみたいな。
そんな気だるい雰囲気の満ちた作品の中で、ジェフ・ゴールドブラム演じる主人公と、ミシェル・ファイファー演じるヒロインが走り回るのがいいんですよね。エドは本当に通りすがりの一般人で、特殊な能力なんて一つもないのに、どうにも彼女を放っておけなくて助けてしまう。そこがカッコいい!
劇的な展開がなくてもささやかに確実に二人の心が近付いていっているのが伝わってきて、そういうところが大人な雰囲気でよかったです。

原題:APT PUPIL
製作:アメリカ’98 112分
監督:ブライアン・シンガー
原作:スティーヴン・キング
ジャンル:★サスペンス
【あらすじ】ロサンゼルス郊外。スポーツ万能で成績優秀な高校生トッドは、授業でホロコーストに興味を抱き自主的に関連書物を読んでいた。そんなある日、たまたまバスで乗り合わせた老人の顔に見覚えがあり…。
おぉ、これは怖い…。序盤から不穏な空気が流れてたので青春ものとは違うだろうなとは思っていたけど、まさかこんな怖い作品だったとは。後でスティーヴン・キング原作と知って納得です。
以下、ネタバレありの感想になるので未見の方はご注意ください。
暗い好奇心から始まった、16歳の少年トッドと元ナチス将校ドゥサンダーの関係。ファーストコンタクトのシーンはまだ楽しかったんですよ。不穏な雰囲気はブラフだったのかな?と思ってしまいそうなやり取りで。ただ話が聞きたいがために、郵便受けに何度も指紋採取の粉を振ったんだと話す様子は、さすが成績優秀な生徒という感じはあってもまだ子供だなと思えました。
でも、証明するには8つも指紋が必要なんだ~と話していた彼が、実はすでに10以上の指紋を採取していて、自分に何かあればあんたの秘密は公になるんだと不敵に笑うあたりからもう…。この子、すでに素質があるよ…!と怖くなりました。
その後も彼の行動はエスカレートしていって、ホロコーストの悪夢に取り憑かれながらも、他人を支配する喜びを知っていきます。ドゥサンダーにナチス将校のコスプレをさせて、行進の訓練のように命令する様子は完全に陶酔してました。当時、ドイツ人としてあの時代、あの国にいたら、嬉々として親衛隊に入ってたと思う…。
ドゥサンダー自身も彼と時間を過ごすことで過去が蘇ってきて、目つきが変わってくるんですよね。トッドの目つきも怖かったけど、さすが熟練の俳優さん(マグニートーやガンダルフの人)だけあって凄みが違いました。
おそらくこの二人は根底から似ていて、同族嫌悪しつつもどこか共鳴していたんだと思います。ドゥサンダーは過去を忘れたがっていたし「どうしようもなかった」と従うしかなかったことを強調していたし、トッドは悪夢に苦しんでいました。でも、苦しむと同時に陶酔や高揚感は間違いなくあって、それが麻薬のように彼らの心を捉えて離さないように見えるんですよね。
それがあの殺人によって一気に侵食してしまった…。ドゥサンダーは運命によって助かった命を捨てることになったけど、それができたのはトッドがいたからじゃないかと思ってしまいました。自分の分身となったトッドがいたから、秘密を抱えたまま死んだのだと。
ラスト、自分の秘密を暴きそうな人間をいともたやすく支配し、なんでもできると断言するトッドは、恐怖の存在であるとともに破滅の予感をはらんでいました。きっとたくさんの人を不幸にして、自分自身もどうにもならない状況に陥って絶望しながら死ぬんだろうな…。せめて第二のトッドが現れないように、と願わずにはいられませんでした。
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原題:REMEMBER
製作:カナダ・ドイツ’2015 95分
監督:アトム・エゴヤン
ジャンル:★サスペンス/ドラマ
【あらすじ】最愛の妻に先立たれ、認知症が日々悪化している90歳の老人ゼヴ。彼は友人マックスから託された手紙を頼りに、ある使命を一人で果たそうと養護施設を抜け出す。その手紙には、かつてアウシュヴィッツ収容所で看守を務めていた男のことが書かれ…。
珍しく邦題が良いですね。「REMEMBER」だけだとさすがに味気ないし、他作品と被りそう。
この作品は私の嫌いな要素を含む復讐モノだったんですが、自分でも驚くほど楽しめました。理由は色々あって、とりあえず認知症の主人公ゼヴの危なっかしさは、なかなか他では見られません。復讐どころか一人旅も危ういレベルで、オチが見えてても主人公の一挙一動にハラハラしてしまうんですよね。道を尋ねても道順を覚えられず、何度「ご案内しましょうか?」と手助けされたことか!
しかも、それを演じているのが「サウンド・オブ・ミュージック」でトラップ大佐を演じたクリストファー・プラマーなんですよ。時折、自分が何でここにいるのかわからなくなり、不安げに亡き奥さんを探す姿が真に迫ってました。
以下ネタバレ注意!
私の嫌いな要素というのが、復讐モノに多い「(騙されて)復讐相手を間違える」ことで、この作品はある意味当て嵌っているし当て嵌っていないとも言えます。
実は、本当の復讐者は自称友人のマックスでゼヴはアウシュビッツの看守、つまり彼自身が復讐のターゲットなんですよね。もう一人、ゼヴと一緒に罪を逃れた看守仲間がいて、その男にたどり着けばゼヴは遅かれ早かれ真実を知ることになります。そして、警察沙汰になって必死に隠し続けてきた過去の罪を暴かれることに…。
復讐される側の目線で描かれる復讐モノって、結構珍しいんじゃないでしょうか?
しかも、本人は自分が復讐者のつもりなんだから皮肉です。
愛称”ゼヴ”がヘブライ語で狼を指していること、腕の番号を強調してることなど、彼の正体を匂わせる描写が結構あって、割と早い段階で気付きました。おかげで、彼がホロコーストについてどう感じているのか考えながら見られたんですよね。
ネオナチの男が自慢気にナチスゆかりの品を見せていた時、家族を殺した(と信じ込んでいる)相手を撃つために銃を入手した時、そしてイラストにも描いたアウシュビッツにいたユダヤ人に(看守だと思って銃を向けたことを)泣いて謝った時…。被害者側の目で自分たちの罪を見て、モヤモヤと言葉には表せない感情が湧いてきて戸惑っていたように見えます。
認知症は最初からかなり進行していましたが、旅を続けるにしたがって進行が早くなっているようでした。きっと心の奥底でかなりのストレスを受けていたんだと思います。…そして、ゼヴを襲うその不安が、ただの手紙に書かれた使命に縋りつかせたんじゃないかと。
覚えてなくても自覚していなくても、マックスが突き付ける過去の罪はゼヴを責め続けていたと思います。手紙に書かれた”復讐者”という役になりきることで、少なからず不安から逃れられたのではないでしょうか?
ラスト、子供にトラウマを残しそうな行動をとったことは残念でしたが、それ以外は見ごたえある作品でした。

原題:WHAT EVER HAPPENED TO BABY JANE?
製作:アメリカ’62 132分
監督:ロバート・アルドリッチ
原作:ヘンリー・ファレル
ジャンル:★サスペンス
【あらすじ】子供時代”ベイビー・ジェーン”と呼ばれ劇場を賑わしていた妹。その妹を見返す為に大女優にまでなったブランチは、ある日事故で車いす生活を余儀なくされる。ジェーンは姉の世話をして暮らすが、姉が自分を施設に入れようとしていると知って逆上し…。
ミステリー企画で見ようと思った作品です。映画に嵌りだした頃に見た作品で強烈な印象を残していたんだけど、ミステリーではなかったですね。
何をしだすかわからない怖さのある酒浸りのジェーンと、足が不自由でジェーンに頼らざるを得ない姉のブランチ。ジェーンを施設に入れようとしたのをきっかけに、ブランチの孤独と恐怖の日々(と言っても数日)が始まります。
まず、ジェーンの唯我独尊な性格を作った子供時代のエピソードから引き込まれました。人気子役でいつも拍手喝采を浴びていたジェーンと、家計を支える娘をあからさまに特別扱いする両親、そして完全におまけ扱いの姉…。ファンの前で「アイスを買って」とわがまま言い放題のジェーンは、幻滅されているのにも気付かず永遠に自分はスターだと思い込んでいます。この思い込みが彼女の転落人生を決定づけたようなものなので、せめて親がしっかりしてればと思わずにはいられません。
数年後の大逆転は当然と言えば当然で、ブランチの女優としての大成に、妹を見返すため血の滲むような努力を重ねたんだろうなぁとしみじみ。ここはある意味、理不尽な親のおかげかもしれません。結果的に、幸せになったとは言い難いけど…。才能が溢れているはずなのに誰も見向きもしないという現実とのギャップに苦しみ、酒浸りになっていったジェーンが哀れです。
ブランチが成功するまで二人の関係がどんなだったかは描かれませんが、きっと心の底から憎み合っているわけではなくても、仲良くはできなかったでしょうね。そして二人の人生を変える事故が起こって…。
その20年くらい?後の、ブランチを世話するジェーンの恐ろしい婆さんっぷりが強烈でした。ちょっと少女趣味が入った服装と歪んだ内面を表すかのような表情、中年太りした体でどたどた歩いて、姉に対してはまるで看守のように振舞います。
計画を知って逆上して食事におぞましい細工をするのが陰湿で、クロッシュ(料理にかぶせる金属製の蓋)を開けるのが怖くて食べられなくなるところなんて、見ていて可哀そうになりました。
でも、これくらい序の口なのがジェーンの怖いところ。糸が切れた凧のように好き勝手に振舞い始め、本当に何をしでかすかわかりません。大根女優と言われていたのは努力が足りなかっただけだとわかるエピソードもあり「リプリー」を思い出しました。家から出られないブランチの知らないところで、彼女ら姉妹の運命は崩壊に向かっていきます。
一方、純粋に芸能界復帰を夢見て歌うエピソードは切なくなりました。お金のため仕方なく伴奏を引き受けた太めの青年に乙女のように一喜一憂しているジェーンは、不気味なのに少女時代の面影も重なって見えます。凶悪な彼女と少女のままの彼女が入れ替わっているかのような不安定なジェーンを演じたベティ・デイヴィスの怪演に脱帽。
ラストの砂浜の姉妹のやりとりは残酷で哀しくて、それでいて少しほっとするものでした。ジェーンの「わたしたち、無駄に憎み合っていたのね」という彼女の穏やかな表情に、二人の間には確かに愛情が存在していたことがわかります。冒頭のアイスのエピソードにも繋がり、二人が赦し合えたことが救いになりました。
お隣さん親子がいまいち中途半端だったけど、再見でもぐいぐい引き込まれる名作だと思います。
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原題:SNITCH
製作:アメリカ’2013 112分
監督:リック・ローマン・ウォー
ジャンル:★サスペンス/アクション
【あらすじ】運送会社を営むジョンの18歳の息子ジェイソンが麻薬密売容疑で逮捕される。売人の容疑を掛けられた友人が、誰かを密告すれば刑が軽くなるという制度を悪用してジェイソンを嵌めたのだ。最低10年の禁固刑と知り、ジョンは息子を救うために連邦検事キーガンにある提案をし…。
実話から着想を得た作品だそうです。
息子のために突っ走る親父が素敵でした。なんか評判があまりよくないようですが、大体はロックさんのド派手なアクション目当てで見たら地味だったというもの。割と現実的なサスペンスがお好きな方なら楽しめると思います。
まずこの作品で素晴らしいのは、アメリカで実際に行われている密告制度の恐ろしさを描いていることですね。麻薬密売容疑で逮捕された者は他の売人を密告することで刑を軽減できるんですが、無関係の友人に「ヤクを代わりに受け取ってくれるだけでいい。なんなら味見してもいいから。」と言って、荷物を受け取って開けさせるだけでいいんですよ。たった一度魔が差しただけで、最低十年の禁固刑です。
減刑するには売人を密告するか、友人を嵌めるしかない…。
そこで父親が立ち上がるんですね。離婚して離れて暮らしていた父親で、どちらかというと冷たい父親だったんだけど、覚悟を決めてからの彼はまさに父親。気高い精神を持つ息子に恥じないよう、法を犯すことなく息子を助けようと命がけで臨みます。
本当にどこまでが事実なんだろう?と言うくらい危険なことに身を投じるのですが、ド派手なアクションはなく地味に展開していくサスペンスがリアリティを保っていて、緊張感ありまくりでした。
息子との面会が二回あり、その時に感じる二人の間にある確かな絆に涙腺も緩みます。こういうのに弱いんだ…(涙)
しかも、この親子の話だけでも引き込まれるのに、彼に巻き込まれたもう一つの親子のエピソードも泣けるんですよ。元売人で、今は幼い息子と妻のために必死にまっとうな仕事で生活しようとしていた男性です。
雇い主だった主人公に対して恩を感じていたのに、強引に巻き込まれて恨み言を言いながらもなんとかやっていく二人の様子が良かった…。最後まで、行動の動機が友情とかではなく家族のためというのがいい。同じ目的のために一緒に戦う同志です。ラストも爽やかでした。
ちなみに原題の意味は「警察などへの密告者」。典型的なダメな邦題が残念。

原題:HEATSTROKE
製作:アメリカ’2013 91分
監督:イヴリン・モード・パーセル
ジャンル:サスペンス/アクション
【あらすじ】ハイエナの研究者ポールは、恋人タリーとアフリカの砂漠地帯に旅行に行こうとしていたところ、別れた妻の頼みで娘のジョーも連れて行くことに。タリーを嫌うジョーはまるで言うことを聞かず、すぐに家に送り返すことになるが…。
サバイバルものと思って観るとガッカリするかもしれないけど、何も知らずに観たら結構楽しめると思います。序盤の展開は意外性あったし、荒野の映像が美しいし、何より動物を悪役にしてないのがいい。
何でそんな行動を?と思うシーンや雑な展開もあったものの、情の深いタリーにいつしか感情移入していたのでスルーできました。
途中、彼女が何か訓練を受けているのか?というような戦いぶりを見せてくれますが、きちんと人の命の重さを感じてる描写もあって最後まで一般人っぽさは保ってます。それでいて決着をつける下りはさっぱりしていて痛快なんですよね。序盤はハッキリ言ってポールさんにもタリーさんに良い印象は持たなかったし、ジョーもあんまり可愛くないなぁとか思ってたんですが、後半になる頃にはすっかり好印象に。
とくにポールの描写がいいんですよ。娘と歩いてくる様子を、タリーが微笑みを浮かべて見つめるシーンとか。ラストにジョーも見たとわかりグッときます。
ハイエナの生態を研究しているポールの、「ハイエナの一番すごいところは、どんなに強い相手でも子供を守るために命がけで戦うところだ」という言葉が、彼女の力になっていたというのがいいですね。
荒野の真ん中で、仲の悪かったジョーとタリーが肩を並べているラストが印象的でした。

原題:THE CALL
製作:アメリカ’2013 94分
監督:ブラッド・アンダーソン
ジャンル:サスペンス
【あらすじ】わずかなミスで通報者を救えず、自責の念に苛まれていた911のベテラン・オペレーター、ジョーダン。仕事を辞めようと決意した矢先、拉致されて車のトランクの中から助けを求める少女ケイシーの緊急通報を受ける。今度こそ通報者の命を救おうと、的確な指示を与える彼女だったが…。
これは緊張感あって引き込まれました。ラスト以外は良かったです。
警察で通報を受けるオペレーターって、マジでキツイ仕事なんですね。命の危機に面している人からの通報で、どうすることもできず電話の向こうで亡くなってしまったり、ましてや自分のミスで救えなかったりしたら…。
ミスをしない人間なんていないですから、冷静になれば何故そんな馬鹿なことをしてしまったんだというミスを犯す時があります。この作品の主人公ジョーダンがまさにそれで、ありえないミスで相手を死なせてしまいます。普段なら絶対にしないミスを、絶対にあってはならないタイミングでやってしまう…。それで若い女の子が無残に殺されてしまったら、一生それを背負って生きなければなりません。
(緊急通報の録音は犯人の声が入った重要な証拠なんだけど、よく表沙汰にならなかったなぁ…)
彼女もそれで仕事が続けられなくなり、職場案内みたいなことをしていたんだけど、そこに拉致された少女(アビゲイル・ブレスリン)からの緊急通報が…!
ここからがもう手に汗握る展開で、取り乱す少女を落ち着かせ、わずかな情報も逃すまいとトラウマも乗り越えて必死に対応する姿に痺れます。
少女の協力を得て手掛かりを見つけたり、発見しやすいようにその場にあるものを使って外部に気付いてもらおうとしたり。電話という生命線が、緊急時にいかに大切なものになるのか伝わってきました。
しかも、いくらオペレーターが的確な判断をして、被害者の協力が得られたとしても、それに気付いた一般人が正しい対応が取れるとは限らないんですよ。やっと見つけてもらえた!と思ったら、良かれと思って一般人がやったことで犯人に逃げられたリ、被害者の状況を悪化させてしまったり…。善意でやってるというのは分かるんだけど、思わず「バカー!!」と声に出してしまう程でした(笑)
終盤も「なんで戻って通報しないの?」という疑問は浮かんだものの、犯人の狂気や薄暗い地下室はホラー映画のようで恐ろしかったし、直接対決は手に汗握るものがありました。
ただ、ラストが…。確かに気持ちは分からないでもないけど、一過性の爽快感でしかないんですよね…。
<ネタバレ注意!>
あんな死刑確実な殺人犯のために自分の手を汚し、一生バレやしないかとビクつきながら生きるなんて割に合わないでしょう。
しかも、彼が死んだか確認しないと不安で(手の骨を折るとか、逃げ出そうと思えば逃げ出せそう)一度は現場に戻ってくるだろうし、死体があればいつ発見されるかもわからない地下室に放置するわけにはいきません。
さらに、あれだけやって警察が犯人を取り逃がしたということになれば、被害者の遺族が必死にメディアで情報提供を呼び掛けるだろうし、犯人の家族は一生”逃亡した殺人犯の家族”扱いです。
後になって、自分たちのやったことがいかに自己中心的なことだったか気付いても遅いんですよ。
せめて正当防衛で殺したように見せるくらいにしておけばよかったのに…と思ってしまいました(汗)

原題:PLAY MISTY FOR ME
製作:アメリカ’71 108分
監督:クリント・イーストウッド
原作:ジョー・ヘイムズ
ジャンル:★サスペンス
【あらすじ】カリフォルニア、モントレーの地方局でDJを務めるデイブ。ある日、いつも“ミスティ”をリクエストしてくる女性イブリンと、出来心から一夜を共にしてしまう。しかし、しだいに彼女の態度が常軌を逸してきて…。
怖いですね~。最初は浮気癖のある主人公が自業自得で「ざまぁ」とか思ってられたけど、だんだんとエスカレートしていって、彼の周りの人にまで危険が及んでくると、もうイブリンが怖くて怖くて。
元カノとイチャラブしてる後ろの木の陰にじっと立ってるシーンなんて「ヒェッ」って感じです(笑)
一つずつ見ればよくあるスリラーの要素なんだけども、彼女の存在感というか目のイっちゃってる感が素晴らしくて、「恐怖のメロディ」というタイトルに相応しい怖さを醸し出してました。
何といっても怖いのが、あれだけ異常な彼女が一度精神病院に入れられたのに、すんなり出てきたってことですよ。いちおうプロであるはずの病院の人たちを騙して、治ったと思わせることができたというのが怖い。異常さを隠した人間が、すぐ隣にいるかもしれないという恐怖ですね。
主人公も最初すっかり騙されていたわけで、彼女が今まで似たようなことをしてきたのかもしれないとすら思わせます。
デイヴの肖像画をハサミでザックザック切り裂くシーンが「サイコ」みたいにインパクトありました。
しかし、主人公の家の悪趣味なこと…。前半はずっとそればっかり気になってたし(笑)
どんなに色男でも、あの部屋を見たらドン引きですわ。でも、家政婦さんも刑事さんもとくに気にしてませんでしたね。私の好みじゃないというだけなのか?
あと、家政婦さんと刑事さんも結構いいキャラだったので、犠牲者になるべくして登場した感じはちょっと残念でした。
そして、イーストウッド監督の趣味なのか、野外ラブシーンが延々と続くのは(汗)
ああいうの見ると、マダニや蚊による感染症、被毒、犯罪者との遭遇なんかを想像してしまうので、まったくロマンティックに感じないんですよね~。ジェイソンがいたら真っ二つですよ。
イヴリンの再登場の方法は予想がついたものの、この作品が撮られた時代にはストーカーという概念すらなかったので、それを考えると初監督でこれは素晴らしいとしか言いようがないと思います。
きちんと最後まで観られて良かったです♪
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たぶん手に持ってるのはランプです(汗)
原題:THE BEGUILED
製作:アメリカ’71 101分
監督:ドン・シーゲル
原作:トーマス・カリナン
ジャンル:★サスペンス
【あらすじ】南北戦争末期、南部にある深い森の中。戦火を避け、自給自足の生活を送っていた女子学院に、負傷した北軍兵士マクバーニー伍長が運び込まれる。敵方の兵士であることに戸惑いながらも、彼女たちは彼を匿い介抱するが…。
面白かったです。もしかしてイーストウッド主演作品では「ダーティハリー」シリーズ並に好きかも?
蜘蛛の糸に必死に手を伸ばすがごとく、女たちに良い顔をするマクバーニー伍長。女心を掴むためなら、流れるように嘘を吐きます。フラッシュバックのように入る回想が効果的。
もうこの頃のイーストウッドにピッタリのはまり役で、自分で修羅場にしておいて追い詰められていく様が良く似合ってました(笑)
別に取り入るなら男の魅力以外でもよかったのに、モテモテだったからこういう方法しか思いつかないんでしょうね~(せめて的を絞れ!)。
また、彼が破滅するのは目に見えているとはいえ、彼女たちは想像の斜め上を行ってくれるから油断できません。
淡々としたモノローグなんて、最初からちょっと不気味だし。途中、下心見え見えの兵士たちを追い払う、学院長の気丈な姿には圧倒されるほど。
こちらも回想によって過去が垣間見えるんですが、それによって彼女たちの誰かが、すでに越えてはいけない一線を越えていたことが伺えます。
近親相姦、奴隷へのレイプ未遂、消えた兄…。
そんな秘密を抱えた閉鎖的な女の園で、怪我をした男がひとり暴れまわったらどうなるか?
闇夜に浮かぶ学院長の妖しい表情に、マクバーニーすら気圧されるメイドの怒り、そして彼が目覚めさせてしまった”女の狂気”!
学院長を中心とした女たちのたくらみにはゾッとしてしまいました。少女の最後の微笑みといったら…。
しかし、初めて”切断”して成功させちゃう学院長がすごいです。医学書を持っていたから、彼女自身かお兄さんが医療系の大学にでも行ってたんでしょう。
開放骨折?だったようなので、切断しなければ壊死の恐れがあるというのは本当だったと思います。戦場でも大した設備のないところで切断してたわけだし、一か八かの大勝負に出たわけですね。
それをマクバーニーにあんな風に言われたら、プッツン切れるのもわからないでもない…かも?
そんな風に思えるくらい、みんな演技も見せ方も上手かったと思います。
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原題:THE MAN WHO KNEW TOO MUCH
製作:アメリカ’56 120分
監督:アルフレッド・ヒッチコック
ジャンル:★サスペンス
【あらすじ】モロッコに家族旅行に来たベンは、バスで知り合った男の死に立ち会う。その時、某国の首相暗殺計画を知らされたために、息子ハンクを暗殺犯たちに誘拐されてしまうのだった。彼と妻ジョーは、警察の助けも借りず犯人を探し始める。
好きなんだけど、タイトルが覚えられない作品(笑)
事件が起こってからが見事ですね~。再見なのにすっかり忘れていて『人の良さそうな顔に騙された~!』となりました。息子のことを知って取り乱すジョーの姿にはウルウルくるし、してやられたベンの胸中を思うと…。
ただ、一度犯人のアジトに迫るところは、もうちょっとどうにかならなかったのかな?
警察に正直に話さなくたって、悲鳴や銃声を聞いたとか嘘をつけば突入できたのではと思ってしまいました。まあ、バレたら怒られるでしょうけど。
劇場でのジョーの葛藤も見事でしたね。何よりも大切なもののために、目の前で起ころうとしている凶行を見て見ぬ振りができるのか!?
そして、やはり見どころは終盤の「ケ・セラ・セラ」と坊やの口笛のくだり。この名シーンがあのおばさんの良心によるものだったなんてすっかり忘れていたので、余計に感動しました。
ラストは「まだいたのかよ!」なあの人たちがオチを持っていってクスリと笑わせてくれます。
しかし、思い返してみると主人公ろくに活躍してねー!
実はベンは主人公じゃないの?タイトルにもなってるのに…。
最初の出会いに作為的なものを感じたのは奥さん。あの夫婦の目線に気付いたのも奥さん。アンブローズ・チャペルの真実に気付いたのも奥さん。暗殺を止めたのも、最後の計画の要も、息子のSOSを聞けたのもぜんぶぜんぶ奥さんのおかげ!
主人公の活躍って、最後の犯人を倒すところだけじゃね?
ここまでヒロインの引き立て役で、ジェームズ・スチュワートはよくこの役を引き受けたな~と変なところで関心してしまいました。
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原題:ZWEI LEBEN(TWO LIVES)
製作:ドイツ/ノルウェー’2012
監督:ゲオルク・マース
原作:ハンネロール・ヒッペ
ジャンル:サスペンス/ドラマ
【あらすじ】ノルウェーで母や夫、子供たちと幸せに暮らしていたカトリーネ。だが、1990年のベルリンの壁崩壊後、彼女の元にスヴェンという弁護士が訪ねてくる。戦後にドイツ兵の子を出産した女性への迫害について、ノルウェー政府を訴えるため彼女の母親に証人になってほしいと言うのだが…。
第二次世界大戦時に行われたレーベンスボルン計画を下敷きにしたストーリーには色々と考えさせられました。
ナチスに関する作品はたくさん見てるのに、まだまだ知らないことばかりです。
かつてドイツでは、人口増加と民族浄化のため、より純粋なアーリア人とされるノルウェー人女性との間に子供を作るよう推奨されてたんですね。レーベンスボルン(生命の泉)計画というもので、ドイツ国内やノルウェーにたくさんの母子保護施設が開設されたそうです。(他にも、占領地でアーリア人的特徴のある子供の誘拐も行われた)
でも、ドイツ兵の子供を産んだノルウェー人女性たちは、ドイツに子供を奪われ、終戦後はノルウェー政府によって「対敵協力者」として強制収容所に入れられてしまう…。
物語は、ノルウェー政府に損害賠償を求めるため、主人公の母親の証言が必要だという弁護士の出現で動き出します。
主人公の不可解な行動と頻繁に入る過去回想から、少しづつ浮かび上がってくる哀しい真実…。やがて判明する悲劇と、母親の受けた衝撃に涙せずにはいられません。
家族の心がバラバラになりつつも、今まで感じたものは本物だったと信じようとしていたのが救いでした。ママと呼べたこと、窓越しに見つめる母親の表情を観て、これは母と娘の映画なのだとわかります。
…主人公が、孫を乗せた乳母車を店の前に置いて離れるシーンがなければ、もっと確信持てたけど!
回想の入れ方がやや煩雑な印象だったし、ラストはハッキリと映像で描かない方が余韻に浸れたと思うものの(尾行の車のシーンだけで十分)、地味ながら観てよかったと思える作品でした。
原題は「ふたつの人生」。誰でもないということはないので、邦題は微妙です。
ちなみに、イラストは主人公が待ち合わせに使った公園なんだけど、大きな十字架が印象的でした。レーベンスボルンと何か関係ある慰霊碑か何かかもと思って調べるもわからず。ドイツのどこだったっけなぁ…。

原題:WAKOLDA
製作:アルゼンチン/フランス/スペイン/ノルウェー’2013
監督:ルシア・プエンソ
ジャンル:サスペンス/ホラー
【あらすじ】1960年代のアルゼンチン、パタゴニア。自然に囲まれた町で民宿を営むことになった夫婦は、最初の客としてとあるドイツ人医師を迎え入れる。彼は、実年齢よりも幼く見える12歳の娘リリスに興味を示し、彼女も彼を信頼するようになっていくが…。
<ネタバレあり>
ミステリーではないけど、ミステリアスな雰囲気のある作品でした。
まあ、ナチスに詳しい人なら早い段階で医師の正体はわかるんだろうけど、最初から最後までとある少女の目線で描かれているので、彼が何をした人間なのか詳しいことは描かれず「本当はとても怖いおじさんだった」という曖昧な不気味さだけが漂ってきます。
彼が言葉巧みにその家族に近づいていく姿に、何か恐ろしいことが起きるのではないかとハラハラしながら見てました。
ホラー的な描写はないのだけど、”少女や胎児を実験体としか見てない”という静かな狂気に、背筋が寒くなってきます。彼の手帳に描かれた詳細なスケッチやメモからも、”実験体”が自分と同じ人間であるということを一切意識してないのが伝わってくるんですよね。
そんな彼に丸め込まれ、良かれと思って自ら”実験体”になってしまう母娘が危なっかしい。
それと比べると父親はかなり冷静で警戒しているものの、やはり長年の夢に出資してくれるとなると油断してしまいます。…その金がどこからきたものなのか、考えもしなかったでしょう。
その父親の夢というのが人形の大量生産で、機械的に作られていく人形のパーツを満足げに眺める医師のシーンは、上手い暗喩だったと思います。「人形は全て同じにした方がいい」と彼を説得していたのも印象的でした。
実は、原題のワコルダはリリスのお気に入りの人形の名前で、彼女と医師の出会いも人形を拾ったのがきっかけ。
その人形は胸に心臓のからくりが埋め込まれた父親のオリジナル作品で、彼女は他と違うからその人形を選んだと言います。成長が遅れていて背が低い自分と同じだから。
だからこそ、それを治療してくれる”先生”を慕って信じてしまうんですよね…。
彼に限らず、悪意を持つ者はこうやって簡単に忍び寄ってくるのかもしれません。
淡々としながらも、じわじわと恐怖が迫ってくるのは、これが実話に基づいているからでしょうか。実際に逃亡中に実験をしていたかはわかりませんが、正体を隠してアルゼンチン人の一家と暮らしていたというのは事実だそうです。
鑑賞後、死の天使と呼ばれたナチス将校ヨーゼフ・メンゲレについて調べると、もっと恐ろしくなるかも。

なぜここで本気を出してしまったのか、自分でもわからない…。
原題:DUEL
製作:アメリカ’71
監督:スティーヴン・スピルバーグ
原作:リチャード・マシスン
ジャンル:★サスペンス
【あらすじ】取引先が休暇に入る前に商談を済ませようと、車を走らせていたデヴィッド。その道中、何気なく追い抜いたタンクローリーが、挑発するかのようにまた前方をふさぐ。イラつきながらもまた追い越したデヴィッドだったが、やがてタンクローリーは明確な殺意をもって彼を執拗に追いかけるようになり…。
勝負映画企画、最後の作品。スピルバーグ監督作品が連続してるのは偶然です。
ちょうどオンエアがあってピッタリな作品だと思ったら、原題は「デュエル(決闘・勝負)」なんですよ。まさしく勝負映画の代表みたいな。
ずっと前に一度見たきりなんですが、追い越したのがきっかけで目をつけられたのかと思いきや、どう見ても最初から「次すれ違った奴で遊んでやろう」と考えてたように見えたのには驚きました。タンクローリーという凶器をもったシリアルキラーというところでしょうか?
それだけでも怖いのに、さらに怖いのは相手の運転手の顔が見えないところ。最初から最後まで、ガソリンスタンドで見かけたブーツと、窓から出す左手くらいしか見えません。まるでタンクローリー自体が悪意を持って追いかけてくる怪物のようで、不気味さを際立たせていました。
これほど悪役としてキャラが立っている車は他にないかも(笑)
また、基本的に主人公が追われているだけの映画なのに、最後までまったく飽きさせないのもすごいです。カフェで客の中にあの運転手がいるかもしれないという緊張感、ふと背後に現れたり人目も気にせず突進してくる恐怖、逃げられない状況でトンネルの向こうからヘッドライトを点灯し近づいてくる不気味さなど、ぐいぐい引き込まれるんですよね。
デヴィッドを精神的にいたぶる敵のいやらしさもさることながら、何も知らないスクールバスの子供たちのウザさがまたイライラや緊張感を煽ってきます。
カメラワークや構図も凝っていて、タンクローリーがあそこまで怪物じみて見えるのも撮り方が上手いからだと思いました。音が怪獣みたいだったし!
<結末まで書いてるので未見の方は注意!>
終盤ついに覚悟を決めて、タンクローリーとの真っ向勝負に出るデヴィッドはカッコよかったです。眼鏡をかけて、シートベルトをしめる姿は、カウボーイハットとガンベルトで決める決闘前のガンマンのよう。
途中ピンチに陥りながらも、最後はギリギリの勝負に出るところは痺れました。ただのセールスマンなのに頑張った!
ラストも印象的で、荒野の真ん中で呆然としている姿を見ると、列車の音で恐怖に目を覚ました彼が思い出されます。きっとこれから先ずっとトラウマに悩まされるんでしょうね…。
勝負映画企画のおかげで、この作品を再見する良いきっかけになりました。リクエストして下さった方、本当にありがとうございます♪
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原題:REBECCA
製作:アメリカ’40
監督:アルフレッド・ヒッチコック
原作:ダフネ・デュ・モーリア
ジャンル:★サスペンス/ミステリー
【あらすじ】リビエラ旅行にホッパー夫人の付き人として来た少女は、英国紳士マキシムと出会い、恋に落ちる。そして、帰国することなく彼の後妻としてイギリスの屋敷に向かうのだった。だがその屋敷には、マキシムの死んだ前妻レベッカの影が付きまとい…。
色々と後味が悪いけど、先の読めない展開の連続で見応えありました。
まず、ヒロインを演じる女優さんがすごいんですよ。最初は”恋する少女”のようだったのが、屋敷に来て怯える子猫のようになり、そしてすべてを知って(状況が良くなったわけじゃないのに)女としての自信を得て生き生きしだすなど、別人のように変わっていくのが面白かったです。
逆にマキシムの方は、個人的には最初から最後まで魅力を感じず、彼女がどうしてこの男に入れ込むのかよくわかりませんでした。終盤になって彼の心の内がわかってからは、普通の男になってマシだと思えたけど、やはりただの”キレやすい自己中な中年”にしか見えません。
で、中盤に主役級の存在感を発揮するメイドはホラーでしたね!
一目見ただけで”奥様”を見下しているとわかる表情、たまりません。この目の演技には「嘆きのテレーズ」のお義母様を思い出しました(笑)
とくに、仮装パーティーの衣装選びでスッと助言する時の悪意のオーラは怖すぎです。ある意味、飛び降りを唆すシーンより怖くて、ヒロインはよく気付かなかったなぁ。
しかし、本当に怖いのはこのお人じゃないんですよね…。
以下ネタバレがあるので、未見の方は映画を先に見た方がいいですよ~。
なんと言っても、この作品で一番悪魔的なのは、亡き奥様レベッカでしょう。一度も姿を見せる事なく、鑑賞者に強烈な印象を残してくれます。さすが真の主役!(ヒロインは最後まで名無しだし…)
マキシムを手の上で転がし、貴族社会を嘲笑い、最後の最後まで悪意と絶望を彼に遺していく執念には、何ともいえぬ恐怖を感じます。
一体どうしてあそこまで世の中を憎むようになったのか?
何が彼女を破滅に駆り立てたのか?
もしかしたら可哀想な人だったのかもしれません。最後まで憎しみに溺れながら、救われる事なく死んでいったと思うとね…。主人公たちの幸せも、彼女の不幸の上に成り立ってると思うと後味が悪いし、きっとあの二人も長く続かないだろうなぁと思ったり。
それでも最後まで目を離せないのは、ヒッチコック監督の手腕によるものでしょう。観てよかったです!
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原題:THE NEXT THREE DAYS
製作:アメリカ’2010
監督:ポール・ハギス
ジャンル:★サスペンス/犯罪/ドラマ
【あらすじ】愛する家族と幸せな毎日を送っていた大学教授ジョン・ブレナン。だがある日、妻ララが殺人容疑で逮捕されてしまう。妻の無実を信じて奔走するジョンだったが、3年後ついに裁判で有罪が確定。絶望したララは自殺を図り、ジョンは脱獄のスペシャリスト、デイモンに教えを請う。
(若干ネタバレ!)「すべて彼女のために」のリメイクを、93分番組で観ました。…41分カットかよ!(笑)
でもスピーディで面白かったです。オリジナル版で引っかかった部分はすべて改善されてて、やっぱそこ気になるよね~と思ったり。
<注意:以下はあくまで93分版の感想です>
まずは母子の愛情がオリジナル版よりハリウッドテイストでした。脱獄の方法を伝授してくれたおじさんが「これができなきゃ諦めろ」と言っていたものの1つ「(いざという時)子供を置き去りに出来るか?」が終盤のオリジナルエピソード(だよね?)に繋がって、よりいっそう彼らの逃亡成功を祈ってしまいます。
オリジナル版の「ママ」と心を開く感動シーンは、可愛く変更されていたけど若干薄味かな?
刑務所では無表情で完全無視だったのが、再会でほんのり安心して、ラストで刑務所での台詞に繋がるので、ワンクッションある分、感動が薄まってしまったかも。いいシーンではありましたが。
この作品ではむしろ父子の関係が気になります。父親が何をしようとしてるのか子供心に察していて、バンに侵入する後姿を黙って見つめているシーンが何とも言えない…。父親が悪い事をするところなんて見せられたら子供は傷つきますよね。しかも、母親のためなら黙っているしかない。共犯者みたいなものです。それすら気付いていないところが彼の終盤の決断にも繋がっていて、良くも悪くも今は妻しか見えてないというのが伝わってきました。
また、中盤の資金調達で麻薬密売人のアジトを襲撃するくだりで、彼らが組織と深く関わっていないのが伺えます。みかじめ料?とかは払っていたと思うけど、彼らをどうこうしたからと言って報復されるようなものじゃないのが警察の捜査方針からわかるので、逃亡後の不安要素が1つ取り除かれました。
そして、終盤のゴミ袋の件ですが、これは上手く逆手にとっていたと思います。オリジナル版を見た人も未見の人も痛快かも。
主人公はこれが初めてとは思えないほどの手際の良さでした(笑)
事件の真相も最後の最後にほのめかすところが良かったです。
他にも細かいところでオリジナルのネタがあって、とくに母娘と知り合うエピソードは意外と印象に残りました。息子が女の子と仲良くなるんだけど、パーティに行った時は二度と会えないかもしれないってわかってたのかな~?と想像すると切ない。
41分カット編集が何気に上手くて最後までグイグイ引き込まれました。いつかフルで……見ないかもしれない(笑)
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原題:SEEKING JUSTICE
製作:アメリカ’2011
監督:ロジャー・ドナルドソン
ジャンル:サスペンス/アクション
【あらすじ】ニューオーリンズの高校教師ウィルは、愛する妻ローラと平凡ながら幸せな毎日を送っていた。そんなある日、彼女が何者かに暴行され、重傷を負って病院に運ばれる。激しく動揺するウィルの前に、謎の男サイモンが現れ奇妙な提案をしてきて…。
Gyaoで鑑賞。普通に面白くてぐいぐい引き込まれました。やっぱりニコラス・ケイジは上手いです。
公開時にちらっと感想などを読んで、そんな怪しい人に頼む?と思っていたんですが、何気に詐欺の手口を使っていて、あれじゃ頼んじゃうなぁと納得でした。殺人を依頼したわけじゃなく、チョコ菓子2個買うだけですもんね。直接的じゃないほど罪悪感が薄れるってテレビで言ってた(たとえば冷蔵庫に現金を置いておいても盗まれないけど、ビールだと盗まれるみたいな)。
そして、忘れた頃にやってくる見返りの要求…。ここは「運命のボタン」を思い出しました。
簡単な要求からだんだんとエスカレートしていくわけですが、あれで使えるか確認してるんでしょうか?
顔と電話番号と指示を覚えて、怪しまれないように尾行するなんてアホな私にはできそうもありません。パニクって不審者丸出しで尾行した挙句に、相手に気付かれて通報されそう(笑)
使えないと判断されたら処分されちゃうんだろうかと考えたら、一人で怖くなってしまいました。
高校教師であるウィルにはそれくらい軽いですが、後半にみせるなかなかの判断力と身体能力はよくあるB級サスペンスっぽいかも。でも、妻があんな目に遭ったんだから守れるように鍛えていてもおかしくないし、そこまで超人的でもない。
スリップするトラックに轢かれそうになったり、手下が轢かれてずるずる引きずられたシーンは本気でゾッとしてしまった!
奥さんも結構動じないひとで、奏者なので元からプレッシャーには強そうなものの、真相を知って浮かべた不安そうな表情が自分も戦うこと前提という感じでちょっと怖い…。
立ち直るために護身術を身につけただけでなく、精神的にも”戦う女”になっていて、マジでウィルと自宅にいる時しか気が休まらないんだろうなぁと思ったら切なくなりました。
何故ウィルが嵌められたのかがよくわからずモヤモヤしてしまったけど、最後まで緊張感があって見ごたえあるサスペンスだったと思います。
サイモンの気まぐれでターゲットが増えていったら、手が足りるとは思えないんだけど…。最初に死んだレイプ犯は本当にレイプ犯ってことでいいんだよね?
ちなみに、タイトルの「ハングリー・ラビット(空腹のウサギは跳ぶ)」は組織の暗号で、法に従わず人間性や理性、正義に従うという意味(空腹=人間性、ウサギ=理性、跳ぶ=正義、を表す)。原題の意味は「正義を探して」。
<追記:ネタバレ考察>
色々推測した結果、サイモン(組織?)がやっていたのは、彼らのような人を誘惑して犯罪者を始末させ、その殺人の決定的証拠を押さえて逆らえない駒を増やすというもので、一度頼ったら一生抜け出せないシステムだった事。
ウィルは、ターゲットと話そうとした挙句に正当防衛で殺してしまったため、ビデオが脅迫のタネとならず、組織の秘密を知る不穏分子として始末しようとした…という事で納得できました。

原題:FAMILY PLOT
製作:アメリカ’76
監督:アルフレッド・ヒッチコック
原作:ヴィクター・カニング
ジャンル:★サスペンス/コメディ
【あらすじ】富豪の老婦人に取り入って、唯一の遺産相続人である息子を探し出す事になったインチキ霊媒師ブランチ。彼女とその恋人ジョージの調査により、まもなく宝石店を営むアーサーを見つけ出す。だが、アーサーには裏の顔があり…。
例の93分番組で再見。
30分ほどカットされていたにもかかわらず違和感なく観られたし、ジョージの声を当てているのが山田康雄さんでピッタリ。もしかしたら初見より楽しめたかも?
冒頭からヒッチコックという感じが全くせず、ヒッチコック作品の金髪ヒロインは苦手なのに、このブランチはとても可愛かったです(当時40歳とか!?)。ジョージとの夫婦漫才なやり取りとか、ラブラブなところが良かった。
事故後、顔を踏んづけられても、ふらふらでも、道が悪いところはお姫様抱っこしてあげるとか紳士すぎ!
コミカルながら序盤の展開は先が読めなくて面白かったし、犯人カップルも意外と憎めません。アーサーが彼女を心からは信用してないと臭わせる宝石の隠し場所もいいですよね。最初にあれを考えた人って誰なんだろう?
司教様や依頼者の老婦人がどうなったのかいまいちわからなかったけど、素人探偵なのになんだかんだでアーサーにたどり着くところとか、ブランチの霊媒の仕事っぷり、犯人の前で芝居をうってチャンスをうかがう彼女の度胸、ラストの機転の良さなど、このコンビの魅力で最後までぐいぐい引っ張ってくれました。
ユーモア満載なこの作品がヒッチコックの遺作というのもよかったです。最後まで映画を楽しんで撮っていたんでしょうね~。彼の作品の中で一番好きかも!
ちなみに、ファミリー・プロットとは「一族の墓地」の事で、「家族計画」の意味も含まれているようです。
再見追記(2017/06/05)
オリジナルの121分版を観ました。私には長すぎるかなと思ってましたが普通に楽しかったです。でも、TV版でカットされていたのがどこだったのかわからなかった(笑)
大筋を覚えていても初見時のように楽しめて良かったです。ヒッチコックの登場シーンも気付けたし。
アーサーが彼女のことをどう思っていたかについては、逆に謎が深まりましたね。ダイヤの隠し場所は秘密にしていたのかと思いきや、彼女に「シャンデリアの飾りが増えるぞ」と話していたので、後でちゃんと話したようだったし。今回の彼女の大失態(司祭様を隠そうとして失敗)について、捕まった後に彼がどう反応するのかなぁ…。意外とラブラブだったし醜態をさらすのは嫌いっぽいので、案外かばい合ったりするのかな?
やっぱりヒッチコック作品の中で一番好きですね~。
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原題:THE SADIST/PROFILE OF TERROR
製作:アメリカ’62
監督:ジェームズ・ランディス
ジャンル:サスペンス/ホラー
【あらすじ】車で野球観戦に出かけた教師仲間3人は、車の故障で寂れた修理工場に立ち寄る。だが、周辺に人は影はなく、屋内を調べると食べかけの温かい食事が。そこへ銃を手にした若い男女が現れ、金目のものと車のキーを奪った挙句、早く車を修理するよう脅すのだった…。
Gyaoで鑑賞。前半を倍速で観られてたら名作に感じたかも!?
犯人が小物臭溢れるバカップルというのも、隙だらけなのに主人公たちが何も出来ずにぐずぐずしているのも、リアリティ溢れてたんですが、その分、終盤までかなりスローテンポ。主人公たちが精神的に追い詰められていく様子をじらすように描いてます。
最近の作品に慣れていると、前半は結構辛いものがあるかも…。割と慣れてるわたしでさえ「あと20分短いか、前半を倍速で観られたらなぁ」と思ってしまったくらいなので。
でも、最後まで観てよかったです。なんせ、どんでん返しもないのに衝撃的!
予想もしなかった展開でありつつ、アメリカのド田舎ならありそうだと納得できるものでした。
ちゃんと伏線もあったしね~。
犯人と出会わなければ行っていたはずの、野球のラジオ中継が効果的に使われており、ラストはなんともいえない余韻が残りました。
ちょい役のにゃんこも可愛いです!
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