原題:MOLLY’S GAME 製作:アメリカ’2017 140分 監督:アーロン・ソーキン 原作:モリー・ブルーム ジャンル:★実話/犯罪ドラマ
【あらすじ】女子モーグルのトップ選手として活躍していたモリー・ブルームは、五輪目前に試合中の事故により選手生命を絶たれた。その後、バーでバイトをしていた彼女は、ひょんなことから高額の掛け金が飛び交う非合法のポーカー・ゲームでアシスタントをするようになる。やがて、自らカジノの運営に乗り出し…。
物語は彼女が逮捕されるところから始まり、弁護士とのやり取りの中で彼女がどうやって闇ポーカーの経営者として成り上がったのかが描かれます。客の集め方やポーカーのルール、違法と合法の境目など情報量がかなり多かった割に混乱しませんでした。初監督作品とは思えないくらい見やすかったです。 原作が自伝なので美化されてる点もあるかもしれないけど、波乱万丈で危うい彼女の人生に引き込まれました。
最も惹きつけられたのが、モリーの子供時代を演じた少女の目ですね。父親を心底軽蔑しているという冷めきった目が素晴らしい。演技だとわかっていても、この子は本気で誰かを軽蔑したことがあるのかも…と思ってしまいました。 目が印象的なシーンは二つあり、どちらも重要なシーンなので、目だけで彼女の孤独と心の闇を伝えきったこの子の演技は素晴らしかったと思います。
目が印象的なシーンの一つは、背中が痛いと父親に訴えたのに無視され、結局何時間にも及ぶ背骨の手術に至ったというエピソード。手術後、ベッドの上から無言無表情で父親を見つめるモリーの目にゾクりとさせられます。 もう一つは父親が撮ったホームビデオ。娘に将来の夢や尊敬する人なんかを質問するんだけど、彼女は冷めた答えばかり繰り返します。他人を信用せず、自分で成し遂げる事にしか価値を見出せないという彼女の性質が、こんな幼い頃にはもう決まっていたんですよね…。
情報量が多くてもわかりやすかったのは、物語のメインが”彼女がどうして闇ポーカー経営を続けようとし、逮捕後は保身のため顧客の情報を売らなかったのか”にあるからだと思います。私的にはファザコン女性の心理を探るのは楽しかったし見ごたえあったけど、アングラな世界の仕組みや裁判での痛快な展開を望んでた人には若干物足りないかも? それがなくても、一介のウェイトレスから闇ポーカーのオーナーにのし上がっていく様子は面白いんですけどね。勉強熱心で、知らない単語は何でも検索して調べ、理解してものにしていく現代の才女。やってることはともかく素直にすごいと思えました。
そこで気になってくるのが、それだけ才能があるのに何故リスクの高い闇ポーカーを続けようとするかです。ある程度まとまったお金ができたら、さっさと畳んで別のビジネスでも何でも生きがいを探せばいいのに…。 ギャンブルでやめ時を見失って破滅する男なんかも描かれていて、彼女自身できればそれを止めたかった様子なのに、自分自身も同じ轍を踏むのかと。お金や情報など管理を怠ればたちまち破滅しかねない立場なので、睡眠時間を削ってでも自分で仕切るために麻薬にも手を出すという本末転倒さ。 でも、それも終盤の父親との再会で謎が解けます。
このままでは何もかも失うことになる彼女の前に、ふらりと現れた父親。初めてまっすぐに娘と向き合い、普段なら3年かけるセラピーを3分でやってやると心理学者らしいやり方で父娘のわだかまりをほぐしていきます。…プライドの高い彼にはこれが精いっぱいの償いなんでしょうね(遅すぎるけどな!)。 モリーさえ気付いていなかった過去のトラウマに終止符を打ち、父親が不器用なりに自分を愛していたんだとわかったことで迷いを捨てたモリーの眼差しがいい。子供時代の子の眼差しとの対比によって彼女の意思の強さが際立ちます。
以下、ネタバレ注意! 刑務所に入れば有名人だったこともありレイプされる可能性は高いと弁護士に言われ、取引に応じれば没収された全財産が戻ってきて新しい人生をやり直せるが、断ればさらに没収された財産に対する多額の税金を納めなければならない。 そんな状況でも、取引に応じず自分の罪を認めたモリー。 理由は、FBIが欲しがっているHDDには多くの顧客情報が入っており、もしそれが漏洩すれば顧客だけでなくその家族も破滅するかもしれないから…。
正直に言えば、マフィアの報復が怖いからという理由の方が説得力はあるのだけど、少なくともここで描かれるモリーは家庭の崩壊の悲しさを知っているし、愛する家族に顔向けできないようなことはしないと思えました(ポーカー経営で違法行為を行ったのは10年間のうち最後の半年だけ。身を滅ぼすほど入れ込まないないよう客を説得したりもしてた)。 「私はこれからもモリー・ブルームだ」というようなことを言っていたから、取引に応じたら証人保護プログラムで別人として生きていかなければならなかったということでしょうね。つまり家族とももう会えなくなってしまう。
裁判の顛末はあっけないほどさらっと描かれますが、割と弁護士さん寄りの視点で見ていたので納得できました。個人的には、裁判での痛快な展開より、バイトの雇い主やプレイヤーXの悔しがる顔の方が見てみたかったかな。 ラスト、彼女のその後を見せるのではなく、引退に繋がった事故の後に自分で立ち上がる力強い姿を見せるのが良かったです。
関連記事 「ア・フュー・グッドメン」観ました(アーロン・ソーキン原作) 読み:こっほせんせいとぼくらのかくめい 原題:DER GANZ GROE TRAUM LESSONS OF A DREAM 製作:ドイツ’2011 114分 監督:セバスチャン・グロブラー ジャンル:★ドラマ/学園/スポーツ
【あらすじ】19世紀後半、フランスに勝利し反英感情が高まる帝政ドイツ。イギリス留学から帰国した青年コンラート・コッホは、名門カタリネウム校にドイツ初の英語教師として赴任する。規律と服従を強いられた生徒たちを変えようと、彼は授業にサッカーを採り入れるが…。
子供たちが可愛く、年相応な感じが出ていて良かったです。 抑圧的な教育の元、服従が美徳とされ鬱憤を弱者に向けていた子供たち。イギリス帰りのコッホ先生とサッカーとの出会いによって、初めて子供らしい表情を見せてくれます。
実話を基にしたスポ根物や学園ものは案外とんとん拍子に行くことが多いですが、そこは頑固なドイツらしく上手くいったと思ってもしっぺ返しを食らって諦めかけたり。 それでも子供たちの絆やコッホ先生の人徳によって”勝利”を勝ち取る展開は熱かったです。まあ、いきなり「偉大なスポーツだ!」は手のひら返しすぎだと思うけど(笑) 翻訳のせいかな?
サッカーを通してクラスメイトに受け入れられた貧しい労働者の息子と、コッホ先生の教えと包容力によって本当の友人たちを得たお坊ちゃん、そしてスポーツ用品製造業の商才を発揮して父親の信頼を得た太っちょ君が印象に残りました。 ラストは子供たちの心からの笑顔にホロリ。DVDのパッケージはB級感あふれてますが良い作品です。 いちおう4月30日に見たので感涙祭参加作品ということで。
読み:れいるうぇいうんめいのたびじ 原題:The Railway Man 製作:オーストラリア・イギリス’2013 116分 監督:ジョナサン・テプリツキー 原作:エリック・ローマクス ジャンル:★ドラマ/戦争
【あらすじ】列車の中で出逢った女性パトリシアと恋に落ち結婚した初老男性エリック・ローマクス。幸せな結婚生活を送る2人だったが、彼女はエリックが第二次大戦のトラウマに苦しんでいることを知る。やがて彼が憎む日本軍の通訳・永瀬隆が今も生きてタイに暮らしていると知り…。
コリン・ファースとニコール・キッドマン主演の実話を基にしたドラマ。 序盤は男女二人が列車で出会って恋の予感な微笑ましい雰囲気で始まるんですが、結婚して彼がまだ戦争のトラウマを引きずっていると判明してからガラッと印象が変わります。ローマクスにとってかけがえのない最愛の人のはずなのに、過去に触れられそうになると冷たく突き放してしまう…。苦しんでいるからこその行動だと理解しつつ、このままでは一緒にいられなくなってしまうと行動を起こす妻パトリシア。短時間の中でこの二人の苦悩はしっかり伝わってきました。
彼の退役軍人仲間から聞き出した過去のエピソードは、「戦場にかける橋 」と同じく泰緬鉄道の建設にまつわるものです。”死の鉄道”と呼ばれ「枕木一本につき作業員が1人命を落とす」とまで言わしめた過酷な強制労働が行われたようですが、本作ではそこよりもローマクスが体験した執拗な拷問が中心に描かれています。弱った仲間たちを励ますため、部品を集めてラジオを作ったのをきっかけにスパイ容疑をかけられてしまうんですね。 そして彼のトラウマに深く根付いているのが日本軍の通訳の青年ナガセでした。拷問を行った本人よりも彼らの詰問を通訳し続けたナガセの方がトラウマと結びついていきます。
この作品を手放しにオススメできないところは、ナガセへの憎しみは持っていても、それが間違っているとローマクス自身が自覚していると伝わってこないところでしょうね。彼が書いた原作ではしっかりそこは強調していて、ナガセが小声で何度も彼を励ましていたことも書かれているそうです。でも、この作品ではそこが省かれていて、見終わっても戦時中のナガセの心情はほとんど伝わってきません。 また、実際は1年半もの間手紙でやり取りして和解しているのに、この作品では彼に決着をつけさせるために退役軍人仲間が自殺して、それをきっかけに復讐するつもり(に見える)でナガセに会いに行くという謎の改変が。自殺エピソードは観てる間も「え、実話を基にしてるんじゃなかったの?」と違和感がありました。こういうショッキングな脚色はいらないよ…。
とは言え、自分ではどうしようもできなかった憎しみや恐怖、トラウマを乗り越え、相手を許すに至った人がいたという事実には驚かされました。誰もがこんなふうに乗り越えられるわけじゃない、それどころかほとんどの人は向き合うことすらできないような出来事だと思います。でも、それでも実際に乗り越え、お互い心を許せる友人になれた人がいたという事実は、戦争の悲劇を減らすことに繋がると思えました。エンディングで実際の二人の様子に心打たれます。 脚色が気になるところもあったものの「真実を知り、分かり合うことが大切」というメッセージは伝わってきたので、見た後に事実関係を調べようという気になったわけだし、映画の役割はきちんと果たしていたかと。 永瀬さんのことをもっと知りたいですね~。
読み:ちりさんじゅうさんにんきぼうのきせき 原題:THE 33 製作:アメリカ・チリ’2016 127分 監督:パトリシア・リゲン 原作:エクトル・トバール ジャンル:★ドラマ
【あらすじ】2010年8月5日。チリのサンホセ鉱山で落盤事故が発生し、坑道の奥深くに33人が閉じ込められてしまう。30人で3日分の食糧しかなく、場所が場所だけに救出もままならない。次第に生存が絶望視されていくが、事故発生から17日目、ついに33人全員の生存が確認され…。
2010年のチリ鉱山落盤事故で閉じこめられた33人が救出されるまでを描いた作品。ドリルで一直線に掘っても半月ほどかかる地下700mの避難所に閉じ込められ、食料は30人で3日分という絶望的な状況なんですが、ラテンのノリのおかげなのか意外とリラックスして見られました。生存確認までが割とサクサク進みます。 それでも伝わってくる悲壮感は、地上の明るさと地下の薄暗さのギャップのせいでしょうか。夫や息子の帰りを待ちわびる人たち、僅かな食糧で不安と戦いながら過ごす男たち、そしてプレッシャーがのしかかる政府のお役人さんなど、事故に関わった人々をわかりやすく描いていました。
印象的だったのが、最後の食糧を分けて食べるくだりです。たった一つの缶詰を33人で分け、薄暗い場所で静かに食べていたところ「無性に~の作ったエンパナーダが食べたい」という言葉をきっかけに、それぞれの妻や母親が好物を持って現れるんですよ。チリの家庭料理エンパナーダや巨大バーガー、混ぜご飯?にしぼりたての牛乳など、明るい光と美味しそうな料理の幻想シーンが、ほんのわずかの間繰り広げられます。そして、小さなコップに分けられた缶詰のスープのようなものを啜った瞬間に現実に戻ってくるんですよね。 もう食べ物は尽き、ドリルの音も聞こえてこないという絶望的な状況でも、人間は夢を、希望を忘れないのだと伝わってきました。
そこから生存確認、連絡手段の確保、新しい食糧と一気に自体は好転するものの、そのままハッピーエンドといかないのが人間です。家族と映像を通じて話せたからこそ、このまま上手く脱出できるかわからないといった不安が付きまといます。そんな不安から些細なことでケンカになったり、みんなの心が離れそうになったり…。 でも、やっぱりラテンの血なのか、ドロドロしそうになっても前向きに乗り越えられるところがいいですね。 エンディングで見られる実際の彼らの幸せそうな笑顔を見ると、きっと実際にこんな感じだったんだろうなぁと思えました。 年齢も人種も関係なく強い絆で結ばれた彼らの友情が、いつまでも続いていきますように!
原題:RACE 製作:アメリカ・ドイツ・カナダ’2016 134分 監督:スティーヴン・ホプキンス ジャンル:★ドラマ/伝記/スポーツ
【あらすじ】名コーチ、ラリー・スナイダーと出会った黒人青年ジェシー・オーエンスは、大学の陸上競技大会で世界新3つとタイ記録1つを打ち立しす。オリンピック出場を目前としていたが、アメリカ国内ではナチスに反対してオリンピックをボイコットすべきだと世論が高まり…。
実在のアスリートの半生を軸に、ベルリンオリンピックでのナチスドイツの思惑や人種差別について描いていて興味深い内容でした。 題材にナチスドイツがあるとそれが中心になってしまいそうだけど、この作品ではかなり冷静な目線で描いていてバランスが良かったと思います。ヒトラーは2~3回画面に映るだけで、ユダヤ人迫害の様子も遠めにチラッと見えるシーンと、レースにユダヤ人を出すなと要求してきた時だけ。
一方で、アメリカ国内での人種差別もしっかり描いていて、とくに金メダル獲得は確実と思われている主人公ジェシーに対して、オリンピックの間だけのコーチが「黒人のくせに!(口答えするな)」と罵るシーンが印象的。史上初の金メダル4つ獲得を成し遂げたジェシーがパーティに呼ばれ、ホテルの入り口で「黒人はスタッフ用の入り口を使え」だなんてふざけた扱いを受けるくだりも憤りを感じます。 ベルリンオリンピックに出場すればドイツを認めたことになるとか、選手のチャンスを奪ってはいけないとか偉い人?が話し合っていたのに、肝心のアメリカ国民の間ではドイツと同じように人種差別がはびこっているという皮肉が利いていました。
また、人間ドラマ部分も丁寧に描いていて、元アスリートだった名コーチ・ラリーとの師弟の絆や、彼を支えた妻子との愛情、そしてドイツ人選手でありながら高潔なスポーツマンシップでジェシーと真剣勝負をしたロングとの友情が素晴らしかったです。ドイツ人すべてがナチスのやり方を認めていたわけじゃないし、彼のように命懸けでそれを伝えようとする人もいたんですよね…。彼の存在はジェシーにとっても救いになったと思うし、二人の友情が大会後も続いていたというのが一番感動しました。ナチスにも人種差別にも屈せず、スポーツの世界では自由を勝ち取った二人が熱い。しかもフィクションじゃないなんて。 スポーツって本来こういうものなんだよなと思いました。
関連記事 お気に入り映画「アンダー・サスピション」 原題:TRUMBO 製作:アメリカ’2015 124分 監督:ジェイ・ローチ 原作:ブルース・クック ジャンル:★ドラマ/伝記
【あらすじ】米ソ冷戦体制が始まり、赤狩りが猛威をふるっていたアメリカ。売れっ子の脚本家ダルトン・トランボは、極端な思想弾圧に真っ向から立ち向かう。しかし、公聴会での証言を拒んだために議会侮辱罪で収監。1年で最愛の家族の元へ戻るが、ブラックリストに載った彼に仕事の依頼が来ることはなく…。
ハリウッド・テンの一人、不屈の脚本家ダルトン・トランボの半生を描いた実話もののドラマ。とってもわかりやすくて、トランボさんの信念と家族との絆にうるうるしてしまいました。 彼が偽名でいくつもの作品を世に送り出していたことは何となく知っていたんですが、どの作品がそうなのか、どういう状況下で、何に支えられて、どのような経緯でできたのか知ると、その偉業のすさまじさが伝わってきます。「ローマの休日 」や「ジョニーは戦場へ行った 」「スパルタカス」などなど、見覚えある作品、しかも名作級ばかりで驚かされました。 アカデミー賞(原案賞)を取った「黒い牡牛」は未見なので、いつか見てみたいです。
公聴会での戦いをやめ、自分の最大の武器である作品で勝負するところはまさに「ペンは剣よりも強し」。アンフェタミン(覚せい剤)を飲みながらお風呂で執筆する様子は、命を削って書いてるという感じです。 同じペンを使っていても、戦うためではなく自分の地位を守るために(?)振るっていたコラムニスト、ヘッダ・ホッパー女史とは大違い。終盤で彼女をぎゃふんと言わせる展開にはスカッとしました。(あの後、干されたりしたんだろうか?)
家族の苦労もしっかり描いていて、別名で薄利多売作戦を展開している時期の妻と子供たちによる協力体制はすごかったですね。テキパキ自分の仕事をこなし、大人顔負けの仕事っぷりでした(笑) ダルトンの横暴が目立ってきてもあそこまで我慢できたのは、家族で苦難を乗り切るためというのもあったとは思いますが、元々父親が大好きだったからでしょう。 その前提があるからこそ、父親譲りの反骨精神と信念を持つ娘ニキに正面から批判され、妻にも指摘されたダルトンが目を覚ます流れも納得できます。自分の非を認め、面と向かって娘に謝るくだりは感動しました。
「我々の中には悪者もいないし善人もいない。全員が被害者だったんだ」というメッセージが力強く、裏切られたという想いがあった彼だからこそ胸に響きます。 「ローマの休日」で真実の口のシーンを書いた時は思うところがあったんだろうけど、密告者となったエドワード・G・ロビンソンの「役者は顔が商品だから、偽名で食っていける君のようにはいかない(うろおぼえ)」という言葉がグサッときたんでしょうね…。 主演のブライアン・クランストンが好演していて、これからトランボという名を聞いたら、彼の演じたインテリで頑固者で強い情熱と家族愛を持ったトランボが目に浮かぶと思います。 赤狩りに詳しくなくても理解しやすく、見ごたえある作品でした。
読み:ちぇんじりんぐ 原題:CHANGELING 製作:アメリカ’08 142分 監督:クリント・イーストウッド ジャンル:ミステリー/ドラマ
【あらすじ】1928年、ロサンゼルス。クリスティン・コリンズの9歳の息子ウォルターが忽然と姿を消した。5ヶ月の捜索の後、イリノイ州で見つかったという朗報が入るが、警察が連れてきたのはウォルターとは全くの別人だった。何度訴えても取り合ってもらえず、ついには親としての責任を逃れようとしていると言われ…。
化け物ばかりが出てくる作品。気合を入れて、やっと観る気になりました。 これが実話を基にしてるなんてにわかには信じられません。顔が判別できない状態ならともかく、そうじゃないのに5ヶ月程度で我が子の見分けがつかなくなるだなんて本気で言っているのか? 実際はこれっぽっちもそんなこと思っていないんでしょうが、そう決めつけるだけでどうにかなると警察が考えていたなら、それこそ頭がおかしいんじゃないかと。…ここまでなら大丈夫、というボーダーラインが長年の傲慢でわからなくなっていたんでしょうね。
主人公の気持ちになって見ていると本当にぞっとする状況でした。まさに”人間の皮を被った悪魔”が目の前にうじゃうじゃいて、知らぬ間に世界を支配されていた気分です。 他人の命や感情なんてまったく気にならないという刑事や医療従事者たちの顔が恐ろしく、彼らの理不尽な言動には強烈な怒りと恐怖を感じます。同じ人間だなんて信じられないし、信じたくない。 リアルな話のはずなのに、いつの間にかホラー映画を見ていたのかと錯覚するほどです。
ただひたすら息子に会いたい、抱きしめて安心したいという気持ちで、そんな化け物たちに立ち向かっていくクリスティンの強い意志にぐいぐい引き込まれました。アンジェリーナ・ジョリーはちょっと苦手だったんですが、この作品ではそれが気にならないほど熱演していたと思います。 彼女自身、母親としてクリスティンの気持ちが痛いほどわかって、自分のことのように演じていたのかもしれません。自分が腐った権力と闘っている間、息子も必死に怪物と戦っていたんだとわかって一筋の涙をこぼすシーンが印象に残っています。
そして、今も生きていると信じる彼女の「希望」という言葉。心からそう思っていると感じられる瞳のおかげで、この陰惨な事件を忘れ去りたいとは思わずに済みました。 鑑賞後、実際の「ゴードン・ノースコット事件(Wineville Chicken Coop Murders)」を調べてみたんですが、関係者の名前はすべて実名でほぼ史実通りだということです。でも、あまりに惨いエピソードは削られ、一つ都市伝説的なエピソードが付け加えられています。ここを史実通り描いていたらトラウマ作品になっていたと思うので、個人的には脚色してくれて助かりました。観られてよかったです。
関連記事 「真夜中のサバナ」観た 原題:THE IMITATION GAME 製作:イギリス・アメリカ’2014 115分 監督:モルテン・ティルドゥム 原作:アンドリュー・ホッジェズ ジャンル:★サスペンス/戦争/伝記
【あらすじ】1939年。ドイツ軍の暗号機“エニグマ”を解読するため、イギリスではMI6のもと解読チームが組織された。だが、その中で数学者アラン・チューリングだけは単独で解読マシンを作り始める。孤立を深めていく彼だったが、新しく加わったクロスワードパズルの天才ジョーンが彼のよき理解者となり…。
かなり見ごたえある作品でした。チューリングさんのことは全然知らなかったんですが、アップルのトレードマークのリンゴは彼にまつわるものだという都市伝説があるんですね。コンピューターの生みの親の一人であり、最強の暗号機エニグマを破った天才の生き様を115分にギュギュっと詰め込んでいたと思います。さすがアカデミー賞の脚色賞を受賞してるだけあるし、監督さんが事実に忠実であることを大事だとしながら”チューリングの感情”を最優先して描いたのが生きてると思いました。
若干分かりにくいと感じたのは、戦後である1951年と戦時中の描写にあまり違いがないところ。しばらく時間が前後してることに気付けませんでした。1951年におけるチューリングさんの決断は彼を描くには欠かせないものだけど、普通に時系列通りにやってもよかった気がします。結局、何であの刑事は最初チューリングを目の敵にしてたの?
そこは気になったものの、全体的にチューリングへの敬意が伝わってくる作品で、普段は演出かな?と疑うようなところも素直に受け取れました。実際に彼と話してたらかなり嫌な奴だと思いそうだけど、彼が好きでそんな反応を返してるわけじゃないというのが伝わってくるんですよね。むしろ、何で自分(チューリング)にわかるように話してくれないの?と思えてきます。天才ゆえの孤立をわかりやすく噛み砕いて描写してました。
そこに現れるキーラ・ナイトレイ演じるジョーンがまたいいんですよ。チューリングを演じてるのがカンバーバッチさんでいつもながら才気あふれる雰囲気なんですが、それに負けない存在感で良きパートナーとなっていく流れも説得力あります。子供の頃に自分を勇気づけてくれた言葉を彼女にかけるところが、ラストに繋がるのもよかった。 彼女が取り持って仲間たちと和解していくところも微笑ましかったけど、やや駆け足気味だったのは残念。というか「こんなやり方じゃいつまで経っても解読できない!」→「手伝わないチューリングのせいだ!」とか訳の分からない言いがかりをつけてくる仲間で、和解できたからと言って役に立つの?と思ったり…(汗)
暗号解読機の「クリストファー」も良かったです。まず見た目からすごいですよね。物々しいほど大きくてガシャンガシャンうるさくて、いかにも機械という感じです。インタビュー記事やWikipediaで調べたら、インパクト重視で大きくしたり配線などが見えるようにしたみたい。赤いケーブルは”血管”をイメージしていて、「クリストファー」の名前の意味を知るとラストのチューリングの苦悩と決断がますます切なくなります。 暗号解読までの流れも良く、「ドイツは愛で戦争に負けた!」と歓喜するくだりでは観てるこっちまで嬉しくなりました。
あと、法廷で自分が戦争の英雄だと言えば見逃してもらえたのかはわかりませんが、最後まで秘密を守ったのは責任感だけからではなく、切り捨てた人々のことを忘れられなかったからだと思います。家族を失おうという同僚とのやり取りは、解読成功時との落差でグサッときました。 悲しい幕引きだったけど、この作品を思い出すときは彼が”クリストファー”と一緒に成功を掴むところを思い出したいです。
ちなみに、タイトルの「イミテーション・ゲーム(模倣ゲーム)」はチューリングさんの論文「計算する機械と知性」の中で考案したテストの名前。邦題はちょっと冗長かな。
原題:PRIDE 製作:イギリス’2014 121分 監督:マシュー・ウォーチャス ジャンル:★ドラマ/コメディ
【あらすじ】1984年イギリス。不況の煽りで20ヵ所もの炭坑の閉鎖が決まり、炭鉱夫たちは4ヵ月以上もストライキを続けていた。ロンドンに暮らすゲイのマークは、いつも自分たちをいじめていた奴らが今度は炭鉱夫をいじめていると奮起。彼らを支援するため、仲間たちと募金活動を行い…。
実話を基にした作品。 炭鉱町を救うため、炭坑夫支援レズビアン&ゲイ会が立ち上がるっていうのがイギリスらしいエピソードです。でも、今まで自分たちをいじめていた政府や警察が、今は炭鉱夫たちをいじめているから、という理由で立ち上がったというのが「なるほど」という感じで、こうやって周りを見て協力すれば大きな力になるということを教えてくれました。 最初に立ち上がったマークから活動が広がっていって、彼が途中で投げ出しても仲間たちや新しい仲間が引き継いでくれる。何かを始めるというのは偉大なことです。
この作品では炭鉱町ディライスの人々が魅力的で、とくに最初から彼らに対して偏見を持たず、理解し合おうと歩み寄っていたおばさんたちが素晴らしいですね。好奇心もあったんだろうけど下卑た感じはなくて、すぐに打ち解けてしまいます。 それでもやはり彼らを敵視する少数派はいて妨害行動をとることも。 しかし、「ゲイは悪口を大切にする」 とヘンタイ扱いされたのを逆手にとって「炭鉱とヘンタイ」という炭鉱支援コンサートで一気に大金を稼ぐところはさすが。転んでもただでは起きないタフな生き方に勇気付けられました。
実話を基にしているため少々物足りないなぁと感じるところもありましたが、ラストのパレードは胸が熱くなります。実話だからこその説得力。現実でも、こんな風に受け入れ合い認め合うことができるんだなぁと嬉しくなりました。 全国炭坑労働組合の尽力によって、同性愛者の権利を認める議案が労働党大会で可決されたというのにホロリと来ます。
原題:INTOUCHABLES/UNTOUCHABLE 製作:フランス’2011 113分 監督:エリック・トレダノ、オリヴィエ・ナカシュ ジャンル:★コメディ/ドラマ
【あらすじ】失業手当をもらうため不採用の証明書をもらいに来た黒人青年ドリスは、パラグライダーの事故で首から下が麻痺してしまった大富豪のフィリップの介護人として採用される。遠慮なく本音で接するドリスにフィリップは心を開き、いつしか2人は固い絆で結ばれていく。
感涙祭第二弾は前から観たいと思っていたこちら。面白かったし清々しい感動がありました。 実話を基にした作品なんですが、スラム街に暮らすドリスと大富豪フィリップの接点は本当に偶然でしかなくて、でも出会うべくして出会った二人という感じがして運命ってあるんだなぁと思いました。 ホント、彼をよく採用しましたよね。脚に熱湯はヤバすぎ(笑)
まあ、そんなことが小さく感じられるほど周囲の反応にうんざりしていたということなんでしょう。ドリスは馬鹿ではないから教えればちゃんとできるし、何より忍耐強さがプロ並みかそれ以上。最初はお金のためだったろうけど、最終的には友達相手限定の忍耐強さだったろうし、フィリップとの友情がそれだけ深いというのが伝わってきました。
富豪のフィリップには心から素直になれる相手なんてほとんどいなかっただろうから、ずけずけ言うだけでなく人間としても裏表ないドリスに心を開いていくのも納得できます。パーティでクラシック音楽を聴きながらお互いのイメージの違いを楽しんだり、ドリスの好きな音楽でみんな盛り上がって、それを眺めているフィリップも幸せそうなのが印象的でした。ドリスにはその場の空気を変えてしまう才能があるのかも。
あと、絵画のエピソードも面白かったです。フィリップとの出会いで彼も得るものがあったというのを、わかりやすく伝えるエピソードですよね。ちなみにあの絵はドリスを演じたコメディアン・オマールさんが映画のために描いて、実際に1万1000ユーロの値がついたんだとか。
全体的にとても素晴らしい作品でしたが、娘のことは少し気になりました。じっくり描いたら別の映画になっちゃいそうなので、これくらいがちょうどいいんでしょうけど。 泣けはしなかったけども、ラストのドリスの心憎い配慮にはウルっときました。見られて良かったです。
原題:42 製作:アメリカ’2013 128分 監督:ブライアン・ヘルゲランド ジャンル:ドラマ/伝記/スポーツ
【あらすじ】1945年、ブルックリン・ドジャースのGMブランチ・リッキーは、一人の黒人選手ジャッキー・ロビンソンと契約を交わす。非難の嵐の中で実績を残していくジャッキーは、やがて背番号42のユニフォームに袖を通し、メジャーのグラウンドに立つ。
かなり地味な作品&主人公なんですがジーンときました。差別がまかり通っている時代に、最初の一人になるのは並大抵のことではないですね。 主人公は史上初の黒人メジャーリーガー・ロビンソン。ひたすら耐える役なので前半はとても地味です。 その分、彼を支える周りのゼネラルマネージャー・リッキーや記者、監督、奥さん、チームメートたちが描かれているので、それも含めて主役という感じでしょうか。 あと、耐えて耐えて耐えまくったからこそ、後半の一人爆発するシーンは胸に迫ります。その後のリッキーとのやり取りで、立ち向かう勇気を奮い起こす姿に痺れました。きっと、あんな風に言ってもらえたら一生その言葉を支えにできるんだろうなぁ。
でも、一番印象に残るのは、野球観戦に来た少年が父親や周りの大人たちの真似をしてニガーと叫ぶシーン。戸惑いながらも「自分もそうしなければならない」という気持ちになってやってる様子が印象に残りました。こうやって親から子へ差別意識が引き継がれてきたんでしょうね…。 その後、白人のチームメートと肩を組む様子に何か感じ取った様子だったのが救いでした。
耐える主人公というと重い作品と思うかもしれませんが、全体的に主人公を支える周りの人たちの優しさに思わず笑顔になれるシーンが散りばめられているので見やすかったです。 リッキーがハリソン・フォードだと最後まで気付きませんでした(汗)
原題:AWAKENINGS 製作:アメリカ’90 120分 監督:ペニー・マーシャル 原作:オリヴァー・サックス ジャンル:★ドラマ
【あらすじ】研究者だったセイアー博士は、ある神経疾患病棟の臨床医に間違えて応募する。渋々引受ける彼だったが、治療法もなく虚ろな人形の様になる患者たちを見て、なんとか救おうと立ち上がり…。
字幕版は観たことなかったなぁと思って再見。 ロビン・ウィンリアムズ演じるセイヤー博士の、研究者として人として魅力的な人物像と、抜け殻のようになった時と回復した時のレナードを見事に演じ分けたデ・ニーロの演技が印象的でした。 実話を基にしているそうですが、始まりが”研究員の募集と勘違いして応募した”というのが運命的ですよね。ミミズやら植物やらの研究を長年やってきた彼だからこそ、一見空っぽになってしまった患者の変化に気付けたんだと思います。不自然な態勢で眼鏡を持った女性患者を目にして、どうしてこうなったんだろう?とあれこれ試してみるところから、研究者のさががよく出ていました。
でも人付き合いは苦手で、味方してくれる看護師に対しても必要以上に親しくしようとせずに、飲みに誘われても(だったかな?)ほとんど逃げ出すような感じです。それでいて、患者の回復のために試したいことがあれば上に交渉する積極性もあって、患者やその家族への優しい気持ちと、研究者としての情熱が伝わってきて、見ていると応援したくなってくるんですよね。 それは周りで働いている看護師たちも同じで、回復の兆しが見え始めてからの嬉しそうな様子は、きっとこの仕事をやってきてよかったという気持ちに繋がったんだと思います。病棟が一気に明るくなって、見ているだけで嬉しくなりました。
レナードが目覚めてからは、セイアー博士との友情、母子の時間、恋と生きている実感など、短い時間で人生の、自由のすばらしさを伝えてくれます。再見なので、この後どうなるのかわかって切ない気持ちはありましたが、それでもこういう時間を持てたことは、レナードにとってかけがえのないものになったと思います。 この映画の最後に語られる事実は重く、せめてこれが治療法確立に繋がってくれればなぁと思いました。現在は(たぶん)症状を抑えられるケースが多いようですが、ハッキリとした原因は未だ解明されていないようです…。
原題:SECRETARIAT 製作:アメリカ’2010 123分 監督:ランドール・ウォレス 原作:ウィリアム・ナック ジャンル:★ドラマ/伝記
【あらすじ】1969年、アメリカ・バージニア州。競走馬の生産牧場“メドウ・ステーブル”のオーナーが病に倒れ、専業主婦となっていた娘ペニーは兄たちの反対を押し切り牧場経営に乗り出す。調教師ルシアンの協力もあり経営を立て直し始めた彼女は、1頭の仔馬と運命の出会いを果たす。
この作品ならあと20分長くても許せるね~。というか、前半の家族との衝突や牧場経営の立て直し、馬の成長部分はかなり端折られているので、そこら辺をしっかり描いてくれたら感動も3割増しだったかも? ただ、この作品は家族と楽しめるディズニー映画だし、123分でも長めにとった方なのかも(同じくディズニーの「戦火の馬」は146分もあるけど!)。物足りない分は想像力で補うしかないですね。
<この馬について知らない人にとってはネタバレあり!> 内容としては、実際に存在した伝説の競走馬セクレタリアトと、主婦から馬主に転向した女性ペニーの信念と成功を描いたドラマです。競馬ファンなら知らない人はいないという名馬セクレタリアトが人々を沸かせたレースシーンは、疾走感と迫力があって見応え十分。この”31馬身差”というのがいかにとんでもない記録なのか、競馬を知らなくても映像から伝わってきました。 30年経った今でも、この記録は破られていないそうです。
そして、主人公であるペニーさんの意志の強さには痺れますね~。普通の(けっこう裕福な家庭の)主婦だったのが、父親の言葉を信じ、自分を信じ、セクレタリアトを信じて競馬界を突き進みます。 牧場経営を独学で身に着け、父の代からいた悪徳調教師とはキッパリ縁を切り、自分と同じ負けず嫌いな調教師ルシアンと騎手のロンを見つけ出して味方につけるんですよ。彼らを口説き落とすエピソードは彼女の性格がよく表れています。 もとから綺麗な人なんだけど、自分の生きがいを見つけてからは生き生きと輝いてました。
また、脇を固めるルシアンやロン、黒人の厩務員エディや牧場事務のハムさんも魅力的です。 とくにペニーの父親の最も信頼する秘書ハムさんが印象的で、それに敬意を表してセクレタリアト(事務局)という名前をつけたほど。 大事な試合の前に落ち着きがない彼女が「私に役立てることがあまりにもわずかで」と言った時、ルシアンが「私もいつか君の半分でも役立てるように頑張ろう」と言ってあげるシーンがすごく素敵。思わずジーンときてしまいました。 そして、このルシアンを演じているのがマルコヴィッチさんだったとは…。どうりで親しみのある顔だと。 セクレタリアトの運命のレースの前に、今まで持ち歩いていた”負けた馬の記事”を全部燃やすところがグッときます。
全体的にとても感動したんですが、夫と兄の反対を押し切って牧場と一家とセクレタリアトの運命を賭けて突き進むペニーさんには、やや引いてしまうところもありました。無理をさせればセクレタリアトの命にもかかわることだったし、人間の都合で走らされて死んだりしたら…と思うことも。 でも、彼が本当に走るために生まれてきたような馬だと伝わってきたので、次第にそれも気にならなくなっていきました。 セクレタリアトは、例えるなら闘争心の固まりだった「ロッキー」のようなタイプ。お馬さんは賢い生き物ですし、レースの意味も、勝利の味も、人々の称賛の視線もぜんぶ理解していたはずです。 もしペニーが走るのをやめさせていたら、それこそ彼にとって”人間の都合で”自由を奪われたことになるとすら思えます。 ルシアンやロンが言っていたように、彼は本当に走るのが大好きなんだと信じられました。
残念ながら、オンエアでは実際のレース映像などは見られませんでした(DVD特典なら観られる)が、ペニーさんはカメオ出演しており、ちらほら画面に映っています。記者会見の時とか、応援席の時とか。
ちなみに、この映画だけ観るとセクレタリアトとの出会いが幸運だったとも取れますが、こちらの競馬に詳しい方の記事 を読んだら印象が変わりました。映画では描かれなかったセクレタリアトの先輩馬リヴァリッジのことも覚えておきたいです。 …その前に「セクレタリアト」が覚えられないどころか、すらすら言えないんですけどね!
原題:ARGO 製作:アメリカ’2012 120分 監督:ベン・アフレック ジャンル:★サスペンス
【あらすじ】1979年11月イラン。民衆がアメリカ大使館を占拠して、52人の職員を人質にとる事件が発生。脱出してカナダ大使の私邸に逃げ込んだ6人の職員を救出するため、CIAの人質奪還の専門家、トニー・メンデスに白羽の矢が。絶望的な状況の中、彼は奇想天外な計画を練り上げ…。
すっかりあらすじを忘れていたので、まっさらな気持ちで楽しめました。 なかなか会えない息子と、同じ映画を見ながら電話する主人公メンデスが素敵ですね~。どんな時でも、いやこんな時だからこそ息子との時間を大切にするいいお父さんです。 そこから救出作戦のヒントをひらめくところも、さすがプロ。
協力的な特殊メイクアーティスト・チェンバースと、ノリノリな映画プロデューサーのレスターも好感持てます。自分の腕を買われたことが嬉しいし、こんなスリリングなことはめったに体験できないから、お金も名声も関係ないぜ!という感じが。完成するはずのない映画をあそこまで盛大に製作発表する度胸といい、彼らにとってはこの作戦自体が映画制作のようなものだったのかもしれません。 「アルゴ、クソくらえ!」を合言葉に一致団結するところが面白かったです。
一方で、6人が匿われている家のメイドが彼らの正体に気付いたり、革命軍は子供を使ってシュレッダーにかけた職員名簿を復元していたりと、時間が経てば経つほど危険は大きくなっていくのが伝わってきてハラハラ。 しかも、命がけで助けに来ても作戦を納得してもらうだけでも一苦労なんですよね。私ならいくら練習しても無理なので、そんな作戦じゃ命を捨てるようなものだと一蹴する気持ちもわかります。 でも、そこは優秀なエリートさんたち。お互い命がかかっている状況なので、腹を括ればどうにか出来ちゃうんですね~。
空港に着いてからは、もう手に汗握って祈るような気持ちで観てました。 緊張の面持ちでミッションに望むメンデスらと、一度中止になった作戦を元通り実行できるよう奔走する上司、そして復元される職員名簿…どれかひとつでもタイミングが違っていれば命はないという緊張感がたまりません。携帯電話がない時代は、電話の呼び出し音ひとつでサスペンスが盛り上がる! 飛行機が飛び立つシーンにここまで興奮したのは「飛べ!フェニックス 」以来かも。飲酒OKのアナウンスでホッとさせられるとは(笑) 彼女が亡命する様子が描かれていたのと、メンデスがこっそり「アルゴ」の見本を一枚持ち帰って、息子の部屋に飾るラストも余韻があって良かったです。
実際には、メンデスやアメリカのみなさんだけでなく、カナダの方々の協力があってこその成功だったようですが、それでも彼の勇気には感銘を受けました。 事実を上手く映画的に脚色してあって、楽しめる作品になっていたと思います。 SF映画「アルゴ」は完成していたらどんな感じだったのかなぁ?
原題:THE MIRACLE WORKER 製作:アメリカ’62 106分 監督:アーサー・ペン 原作:ウィリアム・ギブソン ジャンル:★ドラマ/伝記
【あらすじ】生後19ケ月で熱病に罹り、視力と聴力を失ったヘレン。両親の努力もむなしく、7歳になってもコミュニケーションを取ることは難しかった。そんな時、自身も盲目を克服した女教師アニー・サリヴァンが現れ、暗闇の中にいるヘレンを言葉という光で救い出そうとするが…。
とにかくヘレンの演技が素晴らしくて圧倒されました。本当に目が見えず耳が聞こえないかのような演技です。 そして、サリヴァン先生が食事のしつけを始めてからがさらにすごくて、『ヘレンVSサリヴァン』と題したくなるような壮絶なバトルを繰り広げてくれます(笑) スプーンを握らせてはヘレンがそれを投げ捨て、すかさず次のスプーンを握らせ…のエンドレスのくだりは、ふたりとも髪を振り乱して本気で闘ってるよう。 激しい演技のぶつかり合いに、もはや『このふたりすげー』としか思えなくて、演技を演技として捉えてしまうのはある意味物語に入り込めてないような気もするけど、それでも目が離せないんですよね。”演技合戦”と”ヘレンとサリヴァンの根競べ”がいい具合に重なって、本気度が伝わってきてるんだと思います。
試行錯誤しながら少しづつ指文字を教えていくくだりもよかった。それが物の名前だということも、自身が求めていたものだということもわからず、ゲームとして覚えていくヘレンと、言葉が彼女に光を与えると信じて根気良く教え続けるサリヴァン先生。 一方両親は、不安や寂しさ、哀れみなどを抑え込みながら、じっと約束の日を待ちます。今まで色んな人に匙を投げられて、もうヘレンが自分たちと同じ人間だとは考えないように…とさえ思い始めていた彼ら(主に父と兄だけど)が、一縷の望みをかけて待っているからこそ、サリヴァン先生の努力を応援したくなります。 ヘレンの兄の心変わりの描写はあっさりしていたものの(弟と同じ名前だったくらいだし、原作ではもっと出番が多そうなのに)、突然やってきた”その時”の描写も感動的でした。 特別なきっかけがあったとかじゃなくて、本当にふいに目の前が開ける感じ。どうして今までわからなかったんだろうと頭の中がクリアになっていくような感覚って、誰でも一度は味わったことありますよね。 その感動に打ち震える瞬間を、パティ・デュークが見事に演じてくれました。 …彼女の演技が突出しすぎて他の人が霞んで見えるくらいでしたが(汗)
しかし、この作品で描いているのはヘレンが言葉を理解するまでなんですね。原題の意味は「奇跡をおこす人」=サリヴァン先生のことだから、ここまで十分ともいえるけど…。ヘレンが社会福祉に身を捧げていく後編とかあれば喜んで観たのに!
関連記事 小さな巨人 「アリスのレストラン」観た 原題:THE DISH 製作:オーストラリア’00 監督:ロブ・シッチ ジャンル:★ドラマ/コメディ/実話
【あらすじ】1969年7月、最初の月面着陸へ向けてアポロ11号が宇宙へ飛び立った。月面歩行の瞬間を世界中に生中継するため準備を進めていたNASAだったが、スケジュールが遅れたために予定変更となる。その結果、オーストラリアの片田舎パークスの、巨大なパラボラアンテナ・通称「ディッシュ」がその大役を担うこととなり…。
かなり前に一度観て、ずっと記憶に残っていた作品を再見してみました。 やっぱりいいですね~。コミカルでほのぼのしてて、でもみんな同じように熱い想いを持っている。月面歩行の中継が行われた当時のことを知っている人なら、感動すること間違いなしです。 そうでなくても、冒頭から”宇宙を目指してきた人類の軌跡”を実際の映像と共に紹介していて、打ち上げシーンなどを見てると、それだけでテンション上がってきました。 しかも原題にもある巨大パラボラアンテナ「ディッシュ」も美しく、老人がそれを感慨深げに見上げるシーンから魅入ってしまいます。これを見たらアンテナ萌えに目覚めるかも?(笑) イラストは劇中何度も登場するディッシュの姿。朝昼晩と時間帯が違って、それぞれ違った美しさがありました。
また、原題の「ディッシュ」とは程遠い「月のひつじ」という邦題は、人口よりひつじの数が多いパークスの町で、月面着陸の中継を行ったことを指しています。微妙にピントがズレた邦題なんだけども、私の中では月とオーストラリアと「ディッシュ」がピッタリ繋がって記憶に残っていたから、案外良いタイトルということでしょう。 この邦題を目にすれば、あの大きなお皿の上で、オーストラリアの草原を眺めたり、夜空を見上げて宇宙に想いを馳せるシーンが目に浮かびます。 所長が亡き妻の夢を語っていたシーンもこの場所でした。名シーンです!
そして、どことなく可愛らしく描かれた登場人物たちが魅力的なんですよね。 偉人か夢想家か、どちらに転んでも町に名前が残るとそわそわハラハラしている町長と、いつもラブラブな奥さん、反抗期まっさかりの娘と、家族の誰よりも宇宙に詳しい息子。この一家にはホント和みました。 もちろんパークス天文台で頑張る所員も個性的で、「ジュラシック・パーク 」のサム・ニール演じる責任感の強い所長クリフ、奥手な電子機器担当グレン、NASA職員に対抗意識を燃やすアンテナ操作担当ミッチ、そして宇宙に想いを馳せるNASA職員のアルも、みんな宇宙を夢見ています。
ミッチはやや性格に難があるものの、やる時はやる男。真剣な表情でアンテナを操作する姿がカッコいい! すれ違うこともありながら、最後にはみんな気持ちを一つにして、人類の夢を支える一員として中継に全力を尽くす姿に痺れました。 その中継を今か今かとテレビの前で待ち構え、始まってからは目を皿のようにして映像を見つめる世界の人々の姿。そして、今の中継がパークスからだと聞いて歓声をあげる町の人々…。 観ているこっちも嬉しくなって泣いてしまいました。
ちなみに実話を基にしており、脚色部分は町の人たちのキャラクター設定と、勤めていた人数(実際は20人)、NASA職員との摩擦、停電事故くらいだったようだから、けっこう忠実な部類ですね。 実際のエピソードについては、こちらの「シネマの舞台裏 」というブログで大変詳しく紹介されていて参考になりました。とくに、パークス天文台がアポロ13号の生還にも一役買っていた というエピソードにはグッときましたよ~。映画を観ながら、ずっと「アポロ13 」のことを思い出してたので、繋がりがあって嬉しいです。
また、撮影は実際にパークス天文台で行われ、制御室の様子は当時を知る人がタイムスリップしたようだと驚くほど忠実に再現したんだとか。クリケットで遊ぶシーンなどは、実験を中断してまで撮影に協力してくれたという話もあって、パークスの人たちにとって本当にこの”ディッシュ”が誇らしいものなんだとわかります。(*例のごとく英語のwikipedia の翻訳を参考にしたので間違っている可能性あり) 観ている間、整備ミスやNASAに嘘をつくなどのエピソードは、脚色にしても彼らを馬鹿にしすぎでは?(アメリカ製作かと…)とチラッと思っていたので、本人たちが納得して忠実さよりも楽しめることを優先したのだとわかり、ますますこの作品が好きになりました。 心温まる良作です。
元気があったらいつか着色するかも。 原題:MARLEY & ME 製作:アメリカ’08 監督:デヴィッド・フランケル 原作:ジョン・グローガン ジャンル:ドラマ/ファミリー
【あらすじ】ジャーナリストのジョンとジェニーは、フロリダで新婚生活をスタートさせた。まだ子供を持つ気になれないジョンは、彼女に子犬を贈ることに。ジェニーは、一匹だけセール価格だったクリーム色のラブラドール・レトリーバーを選ぶ。マーリーと名付けて一家に迎え入れるが、彼は誰の手にも負えないほど元気が有り余っていて…。
「HACHI 約束の犬 」では泣けなかった私が、身構えてなかったのもあってか、こちらでは泣いてしまいました。 前から犬の躾けができない飼い主は嫌いで、この夫婦も飼い主としての努力と常識が足りないと思うんですが、あれだけ言うことを聞かないのに本当に辛い時にはそっと寄り添ってくれるマーリーを見てたら、ふと「人間以外でも脳の発達障害ってあるんだろうなぁ」と気付いてしまって…。 そう考えたら、教科書的なやり方でマーリーを自分たちに合わせるより、自分たちがマーリーに合わせる方がかえって良かったのかもしれないと思えたんですよね。 今まで躾けができないなら飼うな!とか思ってたけど、すべてが飼い主の努力不足とは限らないかもしれないと、考えを改めるきっかけになりました。
まあ、よくあの犬と同じ家で子供を育てる気になれたなとか、もっとしっかり避妊しろよとか、赤ん坊から目を離して仕事なんかとか(マーリーの方がしっかり見てたかも)、飼い主としてのマナーだけは守れよとか、色々思うところはありましたが…。でも、あんな厄介なわんこを最後まで手放さずにいるというのが、まず私には無理だし、それだけで彼らの絆の深さに感動してしまいました。 それに、考えてみれば一匹だけセール価格で売られていた時点で、おそらくジェニーはマーリーが問題児だと気付いていたと思うんですよね。だからこそ”安いから”という理由で買うような人には任せられないと考えて、自分が責任もって最後まで飼おうと決意したのかなと。(予想以上に辛くて弱音を吐いてたけど)
犬ではなく家族を中心に持ってきているのも好感が持てたし、夫婦のことや子供や仕事のことなど、プチセレブじゃなくても突き当たる普遍的な問題を描いていて良かったです。 邦題はいかにもコメディ風で、ここまで家族のドラマが中心とは思ってませんでした。 終盤のジョンの選択には驚いてしまったけど、アメリカでは普通のことなんでしょう。本人の意思がわからないのに独りで決めちゃうのはどうかと思うものの、(映画の中の)彼らの場合は本当に心が通じ合ってる気がしたので受け止められました。 猫派のわたしでも、犬との絆っていいなぁと思える作品です。
読み:らいとすたっふ 原題:THE RIGHT STUFF 製作:アメリカ’83 監督:フィリップ・カウフマン 原作:トム・ウルフ ジャンル:★ドラマ/アドベンチャー
【あらすじ】ソ連との技術競争の真っ只中。ロケットの弾道飛行に成功したアメリカの次の目標は、有人宇宙ロケットだった。空軍パイロットの中でも特に優れた資質“ライトスタッフ”を持つ男たちが宇宙飛行士を目指す中、イエーガーはひたすら音速飛行の限界に挑む。
ハリウッド白熱教室でもやってたけど、映像表現が色々と凝ってる作品でした。同じ訓練を受ける猿と人間の繰り返しの他に、投げるシーンから放物線のような飛行機雲、傾けたグラスのウイスキーと夕焼け、おしっこを我慢する様子の後に水撒き・注がれるお茶・ウォーターサーバーのタンク、舞い散る粒子に焚き火の火の粉と満点の星空などなど、私が気付いただけでもこれだけあったので他にもっとあるかも。どちらかと言うと静かな作品なので、こういうところで工夫して長時間楽しませてくれるんですね〜。
初見では登場人物を見分けるので精一杯だったけど、今回はほとんど大丈夫でストーリーに集中できました。 改めて観てみて印象に残ったのは、夫の帰りを待つ奥様方です。「彼女らに聞いてみたいわ。 夫が生きて帰らない確率が4回に一回だったらどうするかって」 という台詞がグサリ! 具体的な数字を聞くと彼らがどんなに無謀なことをしているかわかって、何が彼らをそんなにも惹きつけるのか考えずにはいられません。 私はずっと限界に挑戦したいという気持ちからだと思っていたけど、こちらの方のレビュー を読んだら、職業軍人としてパイロットになった彼らは生活のために命を張っていて、記録を競い合ったり宇宙を目指していたのは後付の理由だろうと仰っており、そういう見方もあるのかと目からウロコでした。確かに、軍人ってほいほい転職できなさそうだし、後は己れを信じて突き進むしかないですよね。
そうやって頑張れるのは愛する家族あってこそで、取材を無理強いされようとしていた奥さんに、嫌ならやらなくていい!とキッパリ言うエピソードは、支えてくれる奥さんへの愛情がよく伝わってきました。 このジョン・グレンと奥さんが仲良しでホント可愛かったです。吃音があり、時に”お高くとまってる”と誤解されることもある奥さんなんですが(この誤解が解けたとわかるのが、ロングショットでの会話だけなのが物足りない…)、そんな彼女の言葉をやさしい眼差しで受け止めるジョンとの濃密なラブラブ空間がもう…新婚さんですか?という感じです(笑) この夫婦だけでなく、奥様仲間もパイロット仲間もみんな、身勝手な役人たちや技術者、マスコミたちに負けまいと、お互い助け合ってました。
また、初見で印象に残っていた飛行パイロットとしての道を貫いたイエーガーのエピソードもやはり素晴らしかったです。宇宙飛行士のメンバーが仲間たちと一丸となって戦っているのに対し、彼はストイックなまでにひとりで限界に挑み続けます。 でも、彼にとっても奥さんの存在は欠かせないもので、違う場所で違うものを目指していても、彼らはみんな根っこは同じ。”ライトスタッフ:正しく優れた資質を持った者”であり”扱いにくいテストパイロット”であり、”共に戦う仲間”なんでしょうね。 「最高のパイロットは?」「目の前にいるさ」がお決まりの台詞のゴードンが、終盤にふと真剣に語り出したシーンからも、それがわかります。 彼のイエーガーに対する尊敬の念にはホロリときました。
ちなみに、もう一つ印象に残ったエピソードで、ガスの乗ったポッドのハッチが開いた原因について調べたところ、現在では、「確率は低いがあり得た事故」という事になっているそうです。 彼はとても信頼されている宇宙飛行士だったそうで、それを知ってなんだか嬉しくなったり。ただ、皮肉にも彼が亡くなったのは”ハッチが開かなかったため”なんだとか。運命のいたずらですね…。 色々調べるきっかけにもなって、再見して良かったです。
原題:SOUL SURFER 製作:アメリカ’2011 監督:ショーン・マクナマラ 原作:ベサニー・ハミルトン、シェリル・バーク、リック・バンシュー ジャンル:★ドラマ/青春/実話
【あらすじ】カウアイ島。家族や親友に囲まれ、母親に人魚だと言われるほど海とサーフィンが大好きな13歳の少女ベサニー。だが、プロへの夢に一歩近付いたという時、彼女はサメに襲われ左腕を失ってしまう。家族の支えもあり、すぐにサーフィンを再開したベサニーだったが…。
主演がアナソフィア・ロブちゃんだとすぐに気付けました。濃い顔だから覚えやすい(笑) 実話ものなので安心して観れると思っていたら、なんだか最初から海中からの画が不穏で、夜のサーフィンのくだりでは何か起こるのではとハラハラ。 そして、安心させてから一転、心臓がぎゅうっと縮むような出来事が。 人間って脆いですね…サメがパクッとやっただけで、さっきまであった腕がなくなってしまうなんて。 突然の悲劇の知らせを受けた家族の衝撃は、それまで丁寧に家族の様子を描写していたのもあって、まるで自分の事のように感じられました。あの元気な少女の青白い顔を見たら、不安で立っていられなくなるかも。 親友アラナの叫びも胸に刺さるようで、この時点で涙ボロボロになってしまいました。
たった13歳の少女がここから、ここからどうやって立ち直っていくのか? やはり家族や親友、そして「行き詰ったら見方を変えてみなさい」と言ってくれた先生の存在が欠かせません。もちろん彼女自身の強さやサーフィンを愛する気持ちによるものも大きいけれど、彼女がいくら強くても、周りに支えてくれる人がいなければサーフィンを続けることはできなかったと思います。 彼女が頑張りたい時はそれをサポートし、落ち込んだ時はそっと見守り、マスコミが押し寄せたらしっかり守る。一緒に笑って、一緒に泣いて、一緒に戦ってくれる家族と親友が、どれだけ彼女に勇気を与えてくれたことか。 ボランティアの時、自然と孤児の少女に優しさを分けてあげられたのも、彼らが自分にしてくれたようにやっただけ。傷ついて不安で仕方ない時、どうしてもらったら心が癒されたのか、彼女は周りの人たちの優しさからそれを学んでいました。 そして、海やサーフィンの楽しさを教えることで、自分がいかにそれらが大好きだったのか、その自分の大好きなものでどれだけの人たちを励ますことが出来るのか、塞がり始めていた世界が一気に広がるんですね。
終盤の大会での描写は素晴らしく、彼女たちが海に魅せられる理由がわかります。 後から調べて知ったんですが、このシーンの撮影には本人がスタントとして出演していたそうで、どうりで佇まいや動きの切れが違うわけです。アナソフィアちゃんのシーンではCGで片腕を消すという撮影方法をとっているので、重心が微妙にズレているような気がしないでもない。(サーフィン経験なしで、毎日4時間ベサミー本人に指導を受け1ヶ月でサーフィンを習得した彼女は素晴らしいけどね!) 大会後のインタビューで「今なら両腕で抱きしめるより、多くの人を励ますことができる」 と力強く答えた彼女の笑顔に感動しました。 あと、「人生はサーフィンに似ている。波に飲み込まれたら また次の波に乗ればいい」も名言だと思います。 EDではBritt Nicoleの歌う「Set the World on Fire」にのせて、ベサミー本人が怪我後サーフィンの練習をしている時の映像などが流れ、本当にあったことなんだなぁとしみじみ感動できました。 勇気を分けてもらえる作品だと思います。 ちなみに、タイトルの意味は、勝つことを目的としない、波に乗る真の喜びを知るサーファーのことだそうです。
『イップ・マン 序章』 香港’08、ウィルソン・イップ監督 【あらすじ】1930年代の中国広東省佛山。家族と共に平穏な日々を送る詠春拳の達人、イップ・マン。その実力と人格で人々の尊敬を集め、挑戦しに来る武術家たちに負けることはなかった。だが、日中戦争が勃発し…。
gyaoで鑑賞。序盤からくすくす笑わせてくれました。実話というより伝記で、脚色満載なんだろうけど、カッコよければすべてよし! 普段紳士で物腰穏やかだけども、いざとなれば目にも留まらぬ速さで相手を牽制。そんな彼に惚れこむ人が多いのも頷けます。 道場破りサンチャウと戦うシーンも面白くて、奥さんにモノを壊さないでね!と釘を刺されてたのに、さっそく壺を割られ、サンチャウが「弁償する!」と言って戦闘を続けるのが笑えた。 「パパが反撃しないと物が壊れるって」と伝言があって、そこから半分本気出して戦うところはめちゃカッコよくて、ギャップにくらっときます。 でも戦時中のエピソードで、それしかない人たちから仕事奪っちゃダメでしょう(仁の心らしい)。 あと、実際はイップ・マンから家や財産を没収したのは日本軍ではなく共産党政府らしいけど、日本人の中にも中国人の中にも、愚かな人と信念を持った人が平等に描かれてるのは好感持てました。
『イップ・マン 葉問』(2010) 【あらすじ】1950年、イギリスが統治する香港。家族と共に広東省佛山より移住してきた詠春拳の達人、イップ・マン。家族を養うため、詠春拳の武館を開いて弟子をとる事に。だが、香港では武館開設のための掟があり…。
前作からそうだったけど、完全に「ロッキー 」でした(笑) でもイップ・マンの人柄と、アクションが見所だからね。 貧乏で武館のチラシを絵が好きな息子(10歳くらい?)に描いてもらっているシーンがちらっとあって、ほほえましい。 サモ・ハン・キンポーと小さなテーブルの上で戦うくだりは痺れました。テーブル板が割れて、空中回転した挙句両者とも並べられた椅子の上に着地のシーンはカッコよすぎでしょ。 ワイヤーアクションだとわかるものの、そこまでぶっ飛んでないから素直にかっこえーと見惚れちゃいます。 後半は、英国ボクサーとの対決でまさにロッキー状態。それでも十分楽しめました。 ラスト、小さいブルース・リー役の男の子が登場してニヤっとさせられます。 ちなみに、これらの作品の他に同じタイトルで「誕生」「最終章」がありますが、別の監督が撮った別のシリーズのようです。主演も違うけど、ところどころキャストが同じで見てて混乱するらしい(笑)
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