
原題:SAFE HAVEN
製作:アメリカ’2013 116分
監督:ラッセ・ハルストレム
原作:ニコラス・スパークス
ジャンル:★ロマンス/ミステリー/サスペンス
【あらすじ】身を隠すように長距離バスに乗りこんだ女が、自然豊かな港町サウスポートでバスを降りた。彼女はケイティと名乗り、他人と距離を置くように森の中のキャビンを借りて暮らし始める。だが、ひょんなことからシングル・ファーザーのアレックスと打ち解け、彼や子供たちと交流を深めていき…。
録画ストックにミステリーが見つからなかったのでGyaoで鑑賞。思いのほか感動しました。2019年10月19日(土) 23:59まで配信してるので、時間のある方はぜひ。田舎町で再出発しようとする女性ケイティと、最愛の妻を亡くした二児の父親アレックスのロマンスを軸に、彼女に付きまとう過去をミステリアスに丁寧な描写で綴った作品です。
冒頭から彼女に何かあることは鑑賞者にわかるようになっていて、最初は「情報を小出しにするだけでミステリーと言うつもりか?」とやや不安になりながら見てたんですが、見終わってみれば確かにミステリーで「ああ、そういうことだったのか」と今までの伏線を思い返して納得できました。
しかもわかりやすく提示された謎だけではなく、もう一つ隠し要素があって原作者&監督の見事な手腕にやられたという感じです。鑑賞後は爽やかな感動が。
さらに、その感動を裏打ちしているのが、それまで丁寧に積み重ねてきたケイティとアレックス一家との交流の描写なんですよね。アレックスには幼い息子と娘がいて、ロマンスの添え物になってないところが好感持てます。父と息子と娘、それぞれに思うところがあって、一人一人違う歩みで前へ進み始めるのが伝わってきました。
ケイティとの懸け橋になったレクシーちゃんの素直さと、母親の記憶があるからこそ素直になれないジョシュの二人がとても可愛かったです(あざとさが感じられない)。
亡き妻の手紙も良かったですよね。あれだけで奥さんの人となりが垣間見えるし、残された家族の彼女への想いの深さも納得できます。そして彼女が手紙に込めた願いも…。
ラストに明かされる秘密には驚きとともに愛を感じられました。意外と評価は低いみたいですが(前半後半ラストでジャンルが変わったみたいになるから?)、良質な作品だと思います。
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「あ、これ、俺のキャパ超えたわー」
原題:MIDNIGHT IN THE GARDEN OF GOOD AND EVIL
製作:アメリカ’97 155分
監督:クリント・イーストウッド
原作:ジョン・ベレント
ジャンル:ミステリー/サスペンス
【あらすじ】ジョージア州サバナを取材で訪れ、上流階級の人々が集まるパーティのルポを書く予定だったジョン。だが、そこで殺人事件に巻き込まれ、容疑者としてパーティの主催者ウィリアムズが逮捕される。事件に興味を持ったジョンは独自に調査を開始し…。
実際はこんなに長い作品だったのか…。たぶん30分以上カットされてたと思います。でも、作品の評判をみるにテンポが悪いそうなので、それを感じなかったということは編集し直した方が面白いということかも。
とりあえず、ミステリーと言うには無理がある気がしました。犯人がわかりきっているし、どうやって陪審員を丸め込むつもりだろう?という点しか謎がない(汗)
でも、法廷ものの面も持つ面白サバナ観察ドラマとしては面白いんですよね。濃い人たちが暮らすどこか不思議なサバナの街が魅力的で、続きを見たいと思わせてくれるんですよ。序盤で、空中に浮かぶように見える首輪を連れて散歩してるおじさんが出てきて「おぉ!?」となりました。
お気に入りはやっぱりドラァグクィーンのミス・シャブリですね~。自分を持った強い人で、彼女が動くと周りはそのペースに乗せられてしまう感じ。お上品なパーティに乗り込んできて男性陣の目をくぎ付けにしたり、法廷でも行動力がありすぎて判事に怒られたり。
この作品が実際の事件を基にしているらしく、彼女を演じたのもご本人なんだとか。いつも堂々としていて魅力的でした。
あと、霊媒師のおばさんはよくわからない人だったけど、この作品の不思議な雰囲気を作り上げるのに一役買ってます。彼女が死者の存在を意識させてくれるから、ラストにビリーと横たわるウィリアムズのシーンもすんなり受け入れられてグッとくるんですよね。「ヒア アフター」を思い出しました。
そんな濃い彼らを大らかに受け入れる主人公ジョンも良かったです。とくにミス・シャブリと一緒のシーンは彼女に押されつつもマイペースで、善い人なのが伝わってきます。ジョン・キューザックが魅力的な作品の上位に入るかも!
にしても、何度か映るお皿を両手に水平に持っている少女の像は何を象徴しているんだろう?
有名な彫刻家の作品「Bird Girl」のレプリカで、映画のためにわざわざ作ったくらいだから何か意図してのことだと思うけど…。天秤にも見えるから罰も平等にってこと?
最初見た時は、廊下で立たされてるみたいにお皿の水をこぼすなと命じられて罰を受けてる女の子の像かと思いました。首をかしげてるのが「あ~あ、またやっちゃった」みたいに見える(笑)
観終わって「あれ?」と思ったのは、ヒロインとして登場したイーストウッド監督の娘さん。出てきたはずなのに何のために登場したのかわからず、何をしていたのかもさっぱり思い出せません。幽霊だったのでは…と思ってしまいました。
いつか再見する時は、彼女の役割についても気にしながら見てみようと思います。
ちなみに原題の意味は「真夜中の善と悪の庭」。庭は少女の像がある墓地のことを指しているようです。
<2018/11/25>再見
たった1年で内容が思い出せなくなってしまったので再見。
やはりサバナの街がメインの作品ですよね。全体的なストーリーとしては流れがあまりよくない気がするし。
今回は友人のために頑張る弁護士さんに目が行きました。仕事を楽しんでいるところはありそうですが、友人を助けられるネタを掴んで大喜びしてるところが可愛くて、ちょっと可哀そう…。主人公とウィリアムズ、そして霊媒師のおばさんだけが真実を知っているんだよなぁ。
あと初見時に気になったヒロインさんの役割については、きっと主人公にとって”日常に帰る”ことを意味してたんですね。サバナでのあの出来事は全部闇に葬って、日常の世界に帰っていったと。だから彼女は事件には深く関わってはいけなかったし、最初と最後しか登場しないからこそ彼女に会って主人公がホッとできる。
再見して良かったです。
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原題:THE LONG GOODBYE
製作:アメリカ’73
監督:ロバート・アルトマン
原作:レイモンド・チャンドラー
ジャンル:★ミステリー
【あらすじ】私立探偵のフィリップ・マーロウは、昨夜、車でメキシコへ送った友人ロジャーが、妻殺しの容疑者で自殺したことを知る。友人の無実を信じる彼の前に、行方不明の夫を探し出してほしいという女性アイリーンが現れ…。
冒頭のにゃんこ大好きなマーロウに萌えました。夜中の3時にお腹にダイビングされて、嫌々ながら餌を用意しようとしたり、お気に入りのカリー印を買いに行ったり。別のしか置いてなくて、今度はどうするのかと思ったら、カリー印の空き缶に移し変えてからあげるという(笑)
探偵の飼い猫だけあって、しっかり見抜いて家出してしまうけどね!
それに、友情に厚い主人公って素敵です。警察に尋問されても飄々とかわし、ロジャーに金を盗まれたというギャング?に脅されてもビビッたりせず…。
いきなりガラス瓶で顔をぶん殴るシーンはゾッとしますね。普通ならあんな状況に耐えられません。なんであんなに肝が据わってるんだろう?
彼のどこからそんな自信が湧いてくるのか、それが一番のミステリーだったかも。
しかし、こういう探偵ものは主人公が一番信頼してる人物が黒幕だったりするんですよね。この作品も例に漏れずなんだけども、ラストにやけくそで踊るマーロウはぜんぜん格好良くないのに嫌いじゃないです。アンニュイな雰囲気が心地よい。…ミステリー的には、手紙と紙幣の入手経路を忘れてしまったので展開について行けなかったですが。あと、アイリーンは金持ちなんだっけ?遺産?
でも、多少分からないところがあっても、結局彼の帰る場所はにゃんこの元しかないと思うとニヤけてしまって(笑)
冒頭で行方不明になったままだけど、きっと傷ついたマーロウを癒しに戻ってきてくれるでしょう♪
ちなみに、タイトルは原作の「長いお別れ」から取っており、「ロング・グッドバイ」という主題歌も劇中に流れます。ラストの別れの事を言ってるんでしょうね〜。…決して、にゃんことの別れじゃない、はず!
にしても、シュワちゃんどこに出てたんだろう…。録画を消す前に知ってればなぁ。

原題:UNBREAKABLE
製作:アメリカ’00
監督:M・ナイト・シャマラン
ジャンル:★サスペンス/SF
【あらすじ】フィラデルフィアで131名が死亡する悲惨な列車追突事故が起きた。かつて有望なフットボールの選手だったデヴィッドは、傷一つ負わず唯一の生存者に。なぜ自分だけが奇跡的に助かったのか悩む彼のもとに、ある奇妙なメッセージが届き…。
何気に好きな作品です。初見は映画を良く見るようになった20歳頃で、オチがツボに嵌って大爆笑してしまったけど、改めて観たらしみじみと切ない作品でした。
まず、主人公デヴィッドの受けた心的外傷後ストレス障害と、それが家族に与えた影響がまざまざと描かれていて痛々しい。
なぜデヴィッドがそこまで”ひとり生き残ってしまった理由”について考えるのか、あの事故の壮絶さや、病院で目にした遺族たちの姿を思えば当然だと思えます。戦争や災害などでも、生き残った人が罪悪感に苛まれると言いますよね。まるで彼らの犠牲によって自分が助かったような、彼らの命も背負ってしまったような気持ちになっているのかもしれません。
彼らの分も自分が何かを成し遂げなければいけないと思っているのか、脅迫観念にかられるかのように理由を求める彼の姿が印象的でした。
そして、ニュースを見てすぐに父親の乗っていた列車だと気付いた息子。これだけで父親が大好きな事がよくわかるし、あの恐ろしい事故現場の様子を目の当たりにして、何時間も生死不明で連絡がつかない状況を体験したら、どれほどのトラウマを抱える事になるか…。
父親がヒーローであると聞いて誰よりもそれを信じようとしたのは、事故の後いつも不安を感じていたからだと思います。夫婦の間に溝が出来ているのも感じ取っていたでしょうし、パパが無敵(アンブレイカブル)のヒーローなら家族全員が抱える不安も吹き飛んで、以前のような仲良し家族に戻れると考えたんじゃないかな。
それを証明するために銃を向けるくだりの必死さが、そのまま彼の心の傷の大きさを表していて胸が痛みます。
そして、物語の鍵となるイライジャも切ない…!
ネタバレになりますが、デヴィッドとイライジャ、ヒーローと悪。その対比は冒頭から様々な形で示されていました。
再見で気付いたんですが、さかさま、左右対称、向かい合わせなどの構図が度々使われています。子供がさかさまになって遊んでいたり、主人公を中心に左右対称になるシーン、鏡に映った姿、デヴィッドとイライジャが向かい合うシーンなどなど。
何気に印象に残ったのが、デヴィッドが息子に新聞を見せるシーンで、鶏が向かい合うテーブルクロスのイラストが大写しになります。そして、デヴィッドの活躍を示す新聞記事で、片方の鶏が隠されるんですよね。
一対の存在でありながら、いずれは悪が滅びる…。イライジャは狂っていたとはいえ、確かにデヴィッドには悪を見抜く力が目覚め始めており、それを見出したのはイライジャです。そして、能力に目覚めてしまった以上、デヴィッドは悪と戦わずにはいられないでしょう。
これこそ彼の望んだ結末でした。
悪の手によって、多くの犠牲から誕生した苦悩のヒーローは、まさにアメコミの主人公。彼のその後を想像すると、少々唐突に感じるラスト(実話風)も余韻を残します。
イライジャの母親や、今後のデヴィッド一家の心情を思うと本当に切ない…!
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原題:THE LINCOLN LAWYER
製作:アメリカ’2011
監督:ブラッド・ファーマン
原作:マイクル・コナリー
ジャンル:★ミステリー/サスペンス/ドラマ
【あらすじ】高級車リンカーン・コンチネンタルの後部座席を事務所代わりに、報酬しだいで犯罪者の利益も守るやり手弁護士ミック・ハラー。ある時、資産家の御曹司ルイスの弁護というおいしい話が舞い込むが、ルイスは頑なに無実を訴えて司法取引を拒否し…。
GyaOで鑑賞。とっても面白くて、最後まで息もつかせぬ緊張感で一気に見せてくれました。
タイトルのリンカーンって主人公が乗ってる運転手つきの高級車のことだったんですね(そういえば言ってた気が)。確かに運転手さんとのやりとりは印象に残るし、法廷より車に乗ってる彼の姿の方が印象に残るかも。
…まあ、良いタイトルかというと車の名前を知らない人間にはまったく通じないから微妙だと思うけど、原題がそうだからな~。気の利いた邦題を考えるのは難しいか。
しかし、これだけ面白い法廷ものを観るのは久しぶりです。
冒頭ではまるで詐欺師のような印象で、金のためなら依頼人が犯罪者でも構わないというダーティっぷり。
でも、父親の「一番怖いのは無実の依頼人だ。無罪以外は許されない」という言葉の通り、心ある弁護士ほど自分のミスで無実の人間に濡れ衣を着せてしまうことが怖くなるのかもしれない。やはり冤罪はあってはならないよね。
かといって麻薬の売人とか野放しにするのもどうかと思う…。取れるところからふんだくる主義みたいだけど、その金持ちは弱者をカモにしてることが多いので、結局のところ主人公も悪い事には違いない。
しかし、それがわかっていても、とある犯罪者を弁護して無罪放免にした事がある主人公の言い分が実にまっすぐで、「最低なのは検察と手伝った警官達だ。司法制度ってのはそんなもんじゃないだろう」の台詞で完全に痺れてしまいました。
詳しくは映画を観て下さい。ネタバレなしで観るほうが絶対面白いです。
事件の真相に迫っていくミステリーの醍醐味や、法廷の裏表で行われる冷酷無比な犯人との緊張感ある駆け引き、主人公の信念など、観応えあり。
犯人の動機部分がほとんど描かれてなくてクライマックスが若干弱い気もするけど、充実した2時間を過ごせました。
法廷モノ好きの方におすすめです。

製作:日本’65
監督:内田吐夢
原作:水上勉
ジャンル:★ドラマ
【あらすじ】昭和22年に青函連絡船沈没事故と北海道岩内での大規模火災が同時に起きる。火災は質屋の強盗殺人事件の犯人によるもので、その犯人のうち二人の遺体が転覆した連絡船から見つかった。函館警察の弓坂刑事は、事件の夜に姿を消した犬飼多吉の行方を追うが…。
いつか再見しようと思ってたらちょうどよい機会がめぐってきたので企画にかこつけて再見。しかも、藤田進さんの出演作を見ようという企画なのに、八重さんを描いちゃいましたスミマセン。でも後悔はしてない!
今回のお目当てである藤田さん演じる署長は、ホント渋くてかっこ良かったです。事前に”お茶を立ててた署長さん”と教えてもらってなかったらわからなかったと思うけど(笑)
ホント彼がいなかったらきっと捜査はグダグダでしたね。っていうか、DNA鑑定ができない時代であれは決め手にならないワケで、あの警察署はヤバイ。まあ、時代なんでしょうが。
で、イラストを描かずにいられなかった八重さんですが、なんか犬飼に出会った時からすでにテンションがおかしい。雷が苦手な犬飼をからかう様子はラリッてるようにしか(笑)
見知らぬ老婆にたばこを与える姿を見て一目ぼれしたのかな。本人的には証拠隠滅のつもりだったろうけど。
そして、惚れた男に大金をもらって救われて、辛い時は彼の優しさを心の支えにして、10年想い続けて神格化していったんですね。
じっくり再見してみたら、確かに彼女の想いが犬飼に届かないのは哀しい。彼女が必死に警察の目をかいくぐってきたおかげで彼の成功があるのに…。まあ、告げ口したら使ったお金を返さなければならなくなるかもしれないので、どちらにしろ彼女は苦労する運命で。でも、そう考えると犬飼という支えがあった分、今の方が幸せか。
あと、八重さんが娼妓になったのって、就職で悪い人に騙されたからなんですね?
遺体確認に来たお父さんが泣きながら「八重が村の娘たちとどこそこで働きたいと言い出し、信頼できるところと思って許したがひと月もしないうちに娼妓に」とか言ってたけど、初見では聞き取れてなかったみたい。
たぶん集団就職でいい働き口だと思って行ったら、怖い人たちに架空請求されて、払えないなら花屋で働け~という感じだったんでしょう。今でも外国人女性を連れてきて高額な渡航費を請求して娼婦として働かせる手口があるし。
一方、犬飼はというと、八重さんへの優しさはもちろん、脚が不自由?で身寄りのない流産をしたことがある女性を妻にしたのも、貧しい人たちに寄付したのも、同情はあっただろうけど、いざという時に自分をかばってくれる人が欲しかったんだと思う。
でも、そんな相手も信じられなくて…。
再見して、彼が火事や強盗、強盗犯殺しはしてないというのは信じられたものの、極貧を味わったというのも原因の一つとはいえ、誰も信じられなかったのは彼の心の弱さゆえだと思いました。
ただ、これだけは言いたい。「殺さなくても八重さんはあんたの秘密を守り通しただろう。そんな彼女を何故!」というふうに言ってた刑事さんも、取り乱してすがりつく八重さんを目の当たりにしていたら、「これじゃ仕方ないか」と思うはず(笑)
あれは何度見ても狂気ですね。犬飼じゃなくても、思わず突き飛ばして事故死させる可能性が数%はあると思います。
相変わらず私の中の八重さん像はヤンデレで、ラストで犬飼を海に呼び寄せたのは彼女だと思ってますが、もしかしたらそれも犬飼を助けるためで記憶喪失にでもなって別の土地に漂流してるかもと思ったり。
再見して、ますますこの作品が好きになりました!
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製作:日本’77
監督:市川崑
原作:横溝正史
ジャンル:★ミステリー/サスペンス
【あらすじ】古い因習がいまも力を持つ鬼首村にやってきた金田一耕助。だが、村に伝わる手毬唄の歌詞に見立てた殺人事件が発生する。捜査を始めた金田一と磯川警部は、由良家と仁礼家の因縁や、20年前に起こった殺人事件の真相に迫っていく。
「悪魔の手毬唄」は古谷一行版と、古谷さん2時間ドラマ版、そして石坂さん版という流れで観てきましたが(稲垣版は見たかも?)、これは1・2回観ただけじゃわからないですね~。トリックではなく犯人の心情が。
そんなわけで、石坂さん版を短期間で3回くらい観てしまいました。私的に異例のことだし、再見がまったく苦にならない!
脚本や登場人物&キャストの魅力と、変なところで画面が変わって毎度「え、ここで!?」と驚かされたせいかも(笑)
とくに、冒頭で誰かを探しに出たリカさんが落石に驚くシーンとか、唐突だし最後まで意図が謎でした…。凶兆?
あと、金田一が新事実を突きつけられて、すばやくアングルが切り替わるシーンを観て、アニメ「絶望先生」の元ネタはこれか!と思ったり。
手毬唄をワンテンポ遅れで教えてくれるお婆さんも印象的です。あの手まりの動きが妙に気持ち悪くて、でもお婆さんはとてもとても可愛くて、アンバランスなところが素敵。人形が鞠をつく映像では、鞠を人間の手で動かしているように見えたから、お婆さんの時もそうしてたのかも?
でも、最も惹かれたのは観るたびに印象が変わるリカさんでした。
→以下ネタバレ注意!
前に観た映画やドラマ版では彼女の心情がまったくわからず、「結婚させられないからって殺す事ないじゃない!」とか思ってたんですよね。村を出られず息子にも打ち明けられないなら、相手の親に「息子も恩田との子供だ」と嘘を吐くことだってできます。これなら夫に裏切られたと村人に知られることもないし。
それが今回の石坂版を観て、結婚させられないというのはただのきっかけで、本音は夫がよその女に産ませた子供の”存在自体が許せなかった”という事なのかなと…。
憎いというよりは存在を許せない、彼らが消えれば夫が浮気したという事実も消えるし、本当に自分は恩田に夫を殺された可哀相な未亡人になれる…そんな思いが深層心理にあったのかもと思えました。
里子が不憫だと言っていたけど、里子を見るたびに思い出すあの日の自分を憐れんでいるんでしょ、と思ったり。
そして再見では、「犬神家」のように彼女は放庵の悪意によって操られ、悪魔に魅入られ狂ってしまったのかとも考えました。
放庵がどこまで計画していたのかはわかりませんが、夫の秘密を彼女に教えたのも、この村に伝わる手毬唄(恨みのある由良家や仁礼家の娘が殺されるような歌詞)を記したのも彼であり、それがなければリカさんは殺人事件など起こさなかったでしょう。
もしそうなら彼女も可哀相なひとなのかもと少し同情してしまったりも。
それが3回目の鑑賞でまたまた覆ったんですよ。
やはり本当にわが子を想っているなら、彼らの恋人や親友たちを、あんなに計画的に冷酷に殺すなんてできません。ましては血のつながった兄妹を。
「犬神家」では他の兄弟は”敵”だったけど、この作品の子供たちは”親の事は関係ない”と仲良くできる、明るく優しい普通の子たちです。
この村は戦後荒んでいたというものの今の状態はそれほどには見えず、それもきっと彼らがいたからだと思うんですよね。
それを衝動殺人ではなく、かなり長期にわたって(民間伝承を読んだ時か、おりんの封書を手に入れた時から?)計画して実行に移し、その間、里子を殺してしまうまで一度も我に帰ることがなかったというのは、母親として人間として、どこか欠けていたんだとしか思えません。
悪魔にとり憑かれたというより、彼女自身の中に悪魔が潜んでいたのかなぁと…。
まあ、彼女がそんな女性だからこそ、里子の想いや息子の叫び、磯川警部の悲哀が胸に迫ってくるので、彼女はこれでいいんですけどね。
…しかし磯川警部の空回りっぷりというか、裏目感というか、頑張れば頑張るほど苦しめていたというのがホント切ないです。
リカさんはあからさまに彼を避けていたのに(笑)
その上、真実を知ってもなお変わらず彼女を愛し続けてるんですから…刑事向いてないかも!
金田一が「愛してらしたんですね」と問うラストが印象に残ります。
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読み:ぴくにっくあっとはんぎんぐろっく
原題:PICNIC AT HANGING ROCK
製作:オーストラリア’75
監督:ピーター・ウィアー
原作:ジェーン・リンジー
ジャンル:★ミステリー/青春
【あらすじ】1900年2月14日、ピクニックに出掛けた名門女子学園の生徒たちの内、ミランダを始めとする数名が忽然と姿を消してしまう。町の人々の必死の捜索もむなしく、手がかりのないまま一週間が過ぎるが…。
いかにも実話を基にした作品のようにみせかけて、(おそらく)創作だということでビックリしました。幻想的なのに妙に説得力あったから、本気で実際にあった事件なのかと…。
確かに、冒頭の少女たちの様子は浮世離れしてたけどね~。恋の話をしたり、詩を口ずさんだり、4人くらいで一列になってきゃっきゃしながら前の子のコルセットを締めたり、切り花がいっぱいの洗面台で美少女が顔を洗ってたり、もう甘美としか言いようがないその世界にうっとりしてしまいました。
美少女ミランダとルームメイト・セーラのやり取りはとくにキュンときて、「私以外も愛しなさい…ずっと一緒にはいられないかもしれない」というミランダの別れを予感させるセリフと、ミランダや生き別れの兄しか心の支えがない孤児セーラの不安げな表情が印象的。
ピクニックに行ってからも、野原で思い思いにくつろいで、ケーキを食べたり、お昼寝したり、本を読んだり、その光景はまるで絵画のよう…。
日の光の下、輝くようなミランダをみて、美しい女教師が「わかったわ。ミランダはボッティチェリの天使よ…」とつぶやく程で、そんなセリフにまったく違和感を覚えさせないんですよ。
それが次第に不気味さをみせ始め、彼女たちが岩山の奥へ引き寄せられていく展開はややオカルトめいていて、ぐいぐい引き込まれてしまいました。
↓以下、ややネタバレ。
ミランダに一目惚れして、彼女や岩山の事が頭から離れなくなってしまった青年や、親友を失った上に学園を去らざるを得なくなったセーラ、一人だけ生還するもクラスメイトの好奇の目にさらされる少女、酒を飲みながら涙する女校長など、この失踪事件の影響が徐々に学園に不協和音をもたらす展開は、静かながらスリルすら感じます。
少女たちが失踪したというよりは、まるで彼らが取り残されたように見えるんですよ。
消えた少女たちは永遠にあの時のままで、永遠に美しいんです(オールドミスも一人いるけど)
失踪事件の真相は最後まで描かれませんが、それでよかったと思います。
ちなみに幻の18章があるらしく、そこで彼女たちが失踪する描写がしっかり書かれているそうです。こちらのサイトで詳しく考察されているので、気になる方はどうぞ。
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よみ:ゆーじゅあるさすぺくつ
原題:THE USUAL SUSPECTS
製作:アメリカ’95
監督:ブライアン・シンガー
ジャンル:サスペンス/ミステリー
【あらすじ】マフィアと犯罪者一味によるコカイン争奪戦で船舶の炎上事故が発生。一味の生き残りヴァーバルが尋問を受ける。6週間前、銃器強奪事件の容疑者として集められた5人の男たちは、それをきっかけにチームを組み、やがて伝説のギャング”カイザー・ソゼ”の目に留まるが…。
ミステリー企画5作目。よくタイトルを耳にするものの観る機会がなかった作品で、滅茶苦茶期待していた大本命だったんですが…あまりに期待が高すぎたのか楽しめませんでした…。
この作品って、回想形式の構成上「オチに驚かされる」と言った時点で半分ネタバレしてるようなものなのでは…?
カイザー・ソゼの話が出たところでオチが読めてしまいました。ラストにも登場するあのシーン、カッコつけすぎ!
というか、あれだけ犠牲者出しておいてラストには結局顔バレしてるから、カッコつけてるあのシーンのあのセリフが見てて痛々しいです(笑)
登場人物の数はそこそこあるけども、ミスリードするためかそれぞれの描き込みは浅く、ストーリーにも引き込まれず。個人的には、ロマンスをもう少し掘り下げてくれれば、ラストのやりきれなさも増してそれなりに満足感を得られた気がします。
きっと、本当に全く何も知らない状態で、たまたまオンエアに出くわして観ていたなら、思いっきり楽しめたんだろうなぁ。
なんで10年くらい観る機会がなかったのか………残念です。
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原題:CERTIFIED COPY
製作:フランス・イタリア’2010
監督:アッバス・キアロスタミ
ジャンル:ミステリー/ドラマ/ロマンス
【あらすじ】南トスカーナ地方の小さな村で、英国作家ジェームズの新作「贋作」についての講演が行われた。聴衆の中にはギャラリーの女主人がいたが、メモを残し息子と共に退席する。やがて、彼女のギャラリーにジェームズが現われ、2人は散策に繰り出し…。
ミステリー企画4作品目。申し訳ないけど、何がミステリーだったのかすらわからなくてネットで調べました。わたしが思っていたのと全然違ってショックです…。
わたしの”顔認識能力の低さ”がここでも足を引っ張ってしまうとは!
てっきり二人は離婚した夫婦で、あの息子は、彼が話していた母子に何かあって、彼女が引き取ったとかそんな感じで、最後に母子と彼女の関係が明かされるのかと思ってたのに…。
調べたところによると、二人は途中から夫婦ごっこを始めたらしいんですよね~。
ちょっと違和感があっても、自信がないから自分の勘違いだと思って、夫婦なんだと素直に受け入れてしまいました。
だいたい、本当にごっこ遊びをしてたんだとすると、かなり始めのほうからヒロインが気持ち悪いおばさんにしか見えません(女優ではなく役が)。ずうずうしいというか、浅ましいというか…。
ジェームズもかなり嫌なヤツだと思いましたが、あんなのに付きまとわれたらあの態度も仕方ないですね。同情します。
むしろ、あそこまで付き合ってくれるなんて、いい人すぎ!
不毛な口喧嘩が長々続き、観てるだけで疲れる作品でした。
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原題:THE RAVEN
製作:アメリカ’2012
監督:ジェームズ・マクティーグ
ジャンル:ミステリー/サスペンス
【あらすじ】1849年、ボルティモアで猟奇殺人事件が発生する。それがエドガー・アラン・ポーの小説『モルグ街の殺人』の模倣だと気付いたフィールズ刑事は、ポーに捜査協力を要請。だが今度は、ポーの恋人で地元名士の令嬢エミリーが目の前で誘拐され…。
ミステリー企画の一作品目。
ポーの作品はひとつも読んだことがなく、謎の死についてもまったく知りませんでしたが、なかなか面白かったです。
ツッコミどころはあるものの(”あれ”をどうやって用意したの 笑)、この作品全体を覆っている”怪奇小説”の雰囲気が素晴らしくて、そこら辺はどうでもよくなってしまいました。きっと、彼の作品を知っている人には、小説と現実が入り混じったような世界観を楽しめるんだろうなぁ。
ただ、金田一のように一つ一つの事件のトリックを親切に説明してくれるわけでもないし、時々グロイシーンがあるし、犯人は影薄すぎなので、観ながら推理を楽しむようなミステリー作品ではなかったかも(彼の作品を知ってると違ってくる?)。
個人的に何が楽しめたかというと、主人公なみにサマになるフィールズ刑事と、冴えない飲んだくれポーの主役交代劇。途中までは「刑事が主人公だろ」というくらいだったものの、後半、期限が迫るにつれ、ポーの恋人への強い想いが伝わってきてグッときました。やっぱり主役は君だ!(涙)
実は、前日に「リミット」を観て余りの救いのなさにどんよりしていたんですが、共通点がありつつも、こちらはお義父さんとの和解も描かれ、刑事との命がけのコンビプレイ(信じていたからこそ飲み干せた!)もあり、悲しさはあったものの余韻に浸れました。
残念なのは邦題。「最期の5日間」はいらないですよね~。原題はポーの作品「ザ・レイヴン(大鴉)」かららしいけど、これはこれで日本人にはわかりづらいし…。「推理作家ポー」だけでよかったと思います。

昨日のコーヒーの出がらし…どうする、俺!?
原題:THE MOVING TARGET
製作:アメリカ’66
監督:ジャック・スマイト
原作:ロス・マクドナルド
ジャンル:★サスペンス/ミステリー
友人の弁護士アルバートの紹介で、失踪した大富豪サンプスンの捜索を請け負った私立探偵ハーパー。彼はサンプスンの周囲を調べていくうちに、犯罪組織が絡んでいると推測する。そんな時、サンプスン夫人のもとに大金を迫る脅迫状が届き…。
冒頭からポール・ニューマン演じるハーパーの魅力にやられました。寝起きに氷水で顔を洗ったり、コーヒー切らしてゴミ箱の出涸らしを見て悩んだり…なんか好きだ、こういうおじさん!
ところどころコミカルで、ハードボイルドなのにやや明るい雰囲気なのもいいですね。三枚目な探偵さんを観てるだけで楽しい。
奥さんに甘えすぎなものの、そこら辺はハードボイルドモノの主人公だから仕方ない?(笑)
朝、ウキウキして朝食を作っていたのに、彼が仕事モードに戻っていて、憎々しげに目玉焼きを潰すシーンが印象的でした。
ただ、頑張って観たんだけど、やっぱり途中で登場人物の顔と名前が一致せず付いていけませんでした。しかも、二回に分けて見たら、後半の鍵となる女性が誰だか思い出せないし…。
でも、ラストの犯人との対峙で、お互いに「やっぱりできない」となっちゃうところも好み!
ストーリーはぜんぜんわからなかったくせに大好きな作品になってしまいました♪
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製作:日本’77
監督:鈴木英夫
原作:横溝正史
ジャンル:★ミステリー
【あらすじ】昭和22年、集団毒殺で世間を騒がせた天銀堂事件。容疑をかけられていた椿元子爵が遺書を残して失踪、遺体で発見される。娘の美禰子の依頼で椿邸を訪れた金田一耕助だったが、間もなく玉虫元伯爵が殺され…。
オンエアしててわぁ~いと思って録画したものの、2時間だし、続きもやりそうにないし変だなぁと調べたらリメイクのTVドラマでした。古谷さんが老けてるよ!
という訳で、我慢できずに横溝正史シリーズ版を借りて観ました。
今回は出川刑事が登場で、日和警部が目立たなくなってますね。ちょっと残念。
金田一は相変わらずで、事件が起こると妙に楽しそうだし、逆立ちしてたら女中に「はぁ?!」って言われるし、ルーツを探りに旅に出ればその間に死人は増えるしで、いつも通りの金田一で安心でした(?)
人が多くて人間関係は把握し切れなかったけど、あき子と乳母がすごく印象的。
あき子は浮世離れした雰囲気が合ってるというか、もう何も考えたくない感じが複雑な境遇を匂わせてます。
「お嬢様!お嬢様!」と全てのものからあき子を守ろうとする乳母の過保護っぷりも、彼女の弱々しさを際立たせててましたね~。乳母の存在のおかげで、没落華族の時代錯誤な雰囲気も感じられてよかった。
逆に、依頼者でありながら傍観者になっていた美禰子は影が薄いです。表情に乏しいし、何を考えてるのかよくわからなかった。いる意味あったのかな?
ラストは、ドラマ版と違って最後には犯人が母親を許していたのにホッとしました。あき子はたぶん犠牲者だし、悪いのは全部あいつですよ!
そんなこんなで事件の背景はドロドロでしたが、金田一の「はぁ~っくしょい!」で終わらせてしまうのがなんとも(笑)
やっぱりこのシリーズ好きだわ。
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『不死蝶』(1978年、森一生監督)
前半、周りがうるさいところ頑張って観たんだけども、次男が殺された理由がよくわからなかったです。最初に殺されたじいさんが、結婚を自由にさせなかったために起きた事件なんでしょうか?
マリがどうやって母の無実を証明しようとしていたのかもよくわからなかったし。
とりあえず、せっかくの休みなのに金田一にパシられる日和警部が可哀相でした。
『黒猫亭事件』(1978年、渡邊祐介監督)
んにゃぁ~ん!っていうアイキャッチの音楽が良かった。OPもみゃ~んみゃ~んと猫っぽさ出てたし。楽器はテルミンでしょうか?
顔なし死体に「推理小説では~」と説明しだした金田一に、「これは現実の話だ、小説と一緒にしないでくれ!」と日和警部が怒り出すのが(笑)
「見込み捜査はいかん」と金田一に注意したりと、しごくまともな捜査をしているのに、結局、金田一にいいとこ取られちゃうのが哀しいね。
しかも、部下たちも金田一に頼りきり。それを一喝しつつ自分も説明してもらいたそうな顔をしている日和警部も可愛かったです。
犯人はぜんぜんわからなかったものの、物語にはちゃんとついていけて楽しめました。前編の最後に、いきなり古畑風に語りかけてくるのがウケたし。
でも、あんなことで殺された黒猫が可哀相…。
風間は金田一に捜査を依頼したり、最後は説得しにきたり、ホント中途半端に優しくて、確かにモテるだろうなぁと納得。ラストで、真の犯人はあなただと断言した金田一も男前でした。
…あれ、そういえば犯人が生き残るのって珍しくない?
最後の〆がこれでよかったです♪
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製作:日本’77
監督:森一生
原作:横溝正史
ジャンル:★ミステリー
【あらすじ】岡山の鬼首村を訪れた金田一耕助は、滞在先で放庵という老人と知り合う。20年前にこの村で起きた殺人事件の話を聞くが、その後、彼は謎の失踪を遂げてしまった。やがて、村では凄惨な殺人事件が連続して起こり…。
「悪魔の手毬唄」は初めてなのでわくわくしながら観られました。
冒頭から手毬唄を歌う少女が雰囲気を盛り上げてます。美人も多いし、話数も多いし、期待が膨らみますね。
第一話はとても明るい雰囲気で、金田一は字が下手だと発覚したり、ちゃんと髪をガシガシ洗ってる描写があったり(笑)
不潔なんじゃなくて、フケ症だったのか…?
音楽なども明るい感じだったけど、一人の老婆の出現により暗雲が。雷雨とともに一気に不安を掻き立てられるのが素敵です。
…でも、一話の終わりはサンショウウオで、つい笑っちゃいました。
何気に日和警部が活躍してましたね。金田一にこの村の宿を紹介したのも、心に引っかかっていた未解決事件と彼を引き合わせるため。ひそかに想いを寄せる女将さんのためにも、金田一の手を借りて事件を解決するつもりです。こういうのいいなぁ!
ただ、日和警部が活躍するのは嬉しいんだけど、お約束的に彼がいると犯人がすぐわかってしまうという…。もともと動機も犯人もわかりやすい事件だと思うし。…原作ではどうなんでしょう?
でも、それがわかっているからこそ、切なさやもどかしさも増してました。気遣いが逆に辛そうだったり、「さっさと帰って来い金田一!」と叫びたくなったり(笑)
後半は里子の健気さにぐっときました。女将さんも美人だけど、一番好きなのは里子かな。
今まで観た作品と比べて、そこまで憎らしくて歪みきったひともいなくて(愚かな夫はいたけど)、事件解決後のやるせなさがたまらなかったです。金田一の「ボタンの掛け違いなんだよ」というセリフも良かった。
ちょっと出しゃばりなナレーション以外はとても良かったです。
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『本陣殺人事件』(1977年、蔵原惟繕監督)
オンエアの順番おかしくない?
日和警部と初対面だし、「八つ墓村」で死んだ奴が出てるよ(笑)
凝った密室トリックが面白かったものの、ところどころ設定が前観た二作と似てました。原作ではこれが最初の物語なんですね。
このシリーズでは、金持ちやカップルには必ず不幸が訪れる気がします。現代で言う”リア充爆発しろ”の精神でしょうか。今も昔も大衆が好むものは変わらない、と。
今回は、動機がとことん酷いのでいまいちでしたが、日和警部がだんだんと金田一を信頼していく過程が見られたのは良かったです。
しかし、すでに警察上層部は金田一に全幅の信頼を寄せているんですね。ここまでプライドを捨ててるとは…。駆け出し探偵だった頃の話とかないのかな?
『真珠郎』(1977年、大洲齊監督)
オープニングの語りは雰囲気あってよかったけど、蛍を口の中に入れて全身発光する真珠郎には思わず笑ってしまいました(当時はすごい技術?)。あと、役者はもう少し美青年に見えるひとを選んでほしかったような。
前半は、殺人鬼が野放しになる展開に金田一いらないんじゃ…と思って観てたら、見事に騙されましたね~。しっかりミステリーな展開になって唸らされました。
またもや自己中男が登場するんですが、今回は二人いて、血縁者でもないという…。行く先々で事件が起こる、呪われた探偵のせい?(笑)
お約束の自転車で転ぶシーンも見られたし、満腹だと頭が働かないので事件中は絶食してるという事実も判明。最長何日絶食したんだろ。
にしても、好きな人に頼まれたくらいで、生首持って走り回るなんて正気じゃないよね~。
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製作:日本’78
監督:池広一夫
原作:横溝正史
ジャンル:ミステリー
【あらすじ】岡山県の八つ墓村。その村ではかつて、欲に目がくらんだ村人たちによって八人の落ち武者が惨殺されたという。神戸に住む寺田辰弥は、この村の田治見要蔵が本当の父親だと聞かされ、この村を訪れる。だが、彼の出現と時を同じくして、恐ろしい連続殺人が再び村を襲い…。
この作品は前半は辰弥が主人公みたいでした。金田一は本当にこの村にふらっと立ち寄っただけなんでしょうか?
今回もやっぱりおどろおどろしさはあまり感じなかったんですが(要蔵の迫力が足りない?)、ここで出てくる田治見家も酷かったです。基本、自分のことしか考えてません。
要蔵はただの犯罪者だし、彼を可愛がるばあさん二人は他人なんてゴミくらいにしか思ってません。弱々しい兄妹なんて、他力本願で辰弥にぜんぶ押し付けようとしてるみたい。…春代も好きならもっと早く忠告してやれよ!
まあ、エキゾチック美人に釣られてきた辰弥が、それくらいで引き返すわけないのかな。超怖がってたわりに、美人にも遺産にもご執心でしたし…。
母親が息子に、あんな災いをもたらしそうなものを遺そうとしたのも変な感じでした。すべてはあのラストにつなぐため、見えない力に導かれてる?
でもまあ、とりあえず八つ墓明神の祟りじゃ~とか言ってるくせに、壊れた墓を一向に直そうとしない村人が一番変でしたけど(笑)
そんな中、日和警部がいい味出してましたね~。あの人が出てくると場が和んで、思いのほか楽しめました。憎めないキャラです。
この作品で一番怖いのは、実はラストの金田一だったり。あんな事が起きたのに「やはりこれは祟りってことかなあ。」と軽い口調で、ちょっと引きました。もう少しショックを受けてもいいと思うんだけど…。
犠牲になったのが若い娘さんだったら、もっと違う反応だったかもしれません?
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製作:日本’77
監督:工藤栄一
原作:横溝正史
ジャンル:ミステリー
信州財界の大物・犬神佐兵衛が莫大な遺産を残してこの世を去った。だが、彼の遺言は遺された者たちを争わせるような内容で、親族の間に緊張感が漂う。何か起こるかもしれないと、犬神家の顧問弁護士に雇われた金田一耕助だったが…。
映画版で忘れかけてるところを補完しながら楽しめました。
とくに、犬神左兵衛の人生については、いまいち理解できてなかったので、このゆっくりテンポ(4時間くらい?)がちょうどよかったかも。
全体的におどろおどろしさは少なくて(死体はモロ人形だし)、金田一のキャラ的にものん気なところが。でも、私的には結構好きですね~、古谷一行の方が石坂浩二よりイメージが合ってる気がします。各話の最後にいつもずっこけてる金田一に親しみが湧きました。
スケキヨの方も、マスクが違っていて随分と印象が違います。ぎょろりと覗く眼が見えない分、怖さは半減してたし、体の動きで演技しているせいか感情が見えて割と普通。
窒息しそうなのは相変わらずでしたが(笑)
彼が母親の着物に顔をうずめて匂いを嗅いでいるシーンでは、何事かと思いましたよ。そういえば入れ替わってたんでした。マザコンか…、ろくな兄妹いないな。
何気に、この作品で一番男前なのは、ひたすらお嬢様を守ろうとする猿蔵かも。きっと誰よりもお嬢様のことが好きなんでしょうね。左兵衛の命令なんて関係なく、彼女の幸せを心から願っているのが伝わってきました。
あと、どうでもいいけどアイキャッチのチャンチャララージャーン!がお気に入りです。
この作品は、探偵vs犯人ではなく、犬神佐兵衛vsこどもたちなんだなぁと、つくづく思いました。
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製作:フランス’07
原題:LE GRAND ALIBI
監督:パスカル・ボニゼール
原作:アガサ・クリスティ
ジャンル:ミステリー/ロマンス
【あらすじ】フランスの小さな村。上院議員の大邸宅で、招待客の一人である精神分析医ピエールが銃弾に倒れた。傍らには銃を手にした妻クレールがおり、警察は夫の度重なる浮気に耐えかねた彼女による犯行だとみる。そのパーティには、彼と不適切な関係にあった女性たちが集まっており…。
前にこの作品を元にしたドラマを観た気がすると思ったら、ポワロの「ホロー荘の殺人」ですか。探偵不在のミステリーで、むしろ愛憎劇メイン?
タイトルにあるアリバイですけど、それに一番貢献したのはあの無能刑事かも。探偵不在なのに、警察が無能って…。犯人がわかったのも、謎解きの結果じゃないですしね~。衣服の硝煙反応とか調べたんだろうか。
よくわからなかったのが、ピエールが自分の言った事を覚えてない事があって、それをいちいちメモする事。彼自身も脳だか精神だかの病気を抱えていたんでしょうか?
最後まで何のために登場したのかよくわからなかった患者のおばあさんも、記憶がどうたら言ってたし。あのおばあさんを一番愛してると言われていたピエールってマザコン?
なんだか被害者の事がよくわからないから、彼が原因で起きた事件なのにしっくり来ませんでした。
愛する男の遺言?だからと、あそこまでする彼女の心情も伝わってこなかったし。
とりあえず、暑いなか観るのには向いてなかった。マルトの猫は可愛かったけどね~。

製作:日本’76
監督:市川崑
原作:横溝正史
ジャンル:★ミステリー/サスペンス
【あらすじ】犬神財閥の創始者、犬神佐兵衛が亡くなり、遺言公開のため親族が集まる。だがその内容は、ある条件で恩人の孫娘、珠世に全財産を譲渡するというものだった。彼女が何者かに命を狙われ、名探偵・金田一耕助が調査に乗り出す。
あらやだ面白い!!
すみません、正直舐めてました。初めてまともに観たのは稲垣吾郎が主役のTV映画だったし、2006年の市川崑監督によるリメイクも、役者が中途半端に知ってる顔ばかりでコスプレしてるようにしか見えず、世界観に入り込めなかったんですよね。
この世界観は、原作やマンガとかじゃないと、違和感が先にたって入り込めないな~と思ってたのに、そんな予想を裏切ってこれは全然大丈夫でした。やっぱ、邦画はある程度古い方がいいわ!(私だけかも)
とにかく、登場人物全員がしっくりきました。この時代の空気と格好が馴染んでるというか。奇々怪々な事件がいつ起こってもおかしくないと思える雰囲気が素敵です。
ストーリーは(覚えられなくて)いつも初見みたいに楽しめるし、これは何度観ても飽きなさそう!
前から思っていた「金田一って事件解決するの遅すぎない?」という疑問も、今回はまったく湧いてきませんでした。
イラストはスケキヨさんとどちらにしようか悩んだけど、普通に金田一にしてみました。石坂浩二と大泉洋を足して2で割ったような顔に…(笑)
いつかこのシリーズをぜんぶ観てみたいです。
2018/06/08 再見
初見時も思ったけど、やっぱり何度見ても楽しめますね!
俳優陣の演技が素晴らしいし、不気味な演出も素晴らしい。割と日本的なホラー感が出ていると思うんですが、海外で評価されてたりしないんですかね?
とくに、珠代の正体を知った?松子が、佐兵衛の肖像画の前で絶望するシーン。彼女の周りが暗くなって、まだ佐兵衛の怨念が自分を支配していたんだと実感しているのが伝わってきました。
普通なら「あの時の自分は自分ではなかったようで…」なんて犯人が言ったら「ふざけんな!」となるところ、彼女の場合は自然と「佐兵衛に操られていたのかも…」と思えてきます。だから、4人も殺した松子に対して金田一をはじめとする周囲の人々がどこか同情的に接しているのを見ても納得できてしまうんですよね。
憑き物が落ちたというか虚ろさが漂う終盤の松子の表情が印象的でした。
あと、珠代は本当にお人形さんみたいに可愛いし、宿の女中キヨちゃんは元気で可愛いし、お琴の先生は別の世界に片足突っ込んでる感じが好き(笑)
「俺は犬神一族に勝ったんだあ!」も火傷メイクも気合入ってました。静馬と助清は戦争中は仲良くやってたみたいなのに、結局戦争がそれを歪めてしまったんでしょうか。
見るたびに発見がありそうな作品です。
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