忘却エンドロール歴史・実録ドラマカテゴリ紹介

素敵映画に出会えた時の感動をそのまま書き綴る、映画感想ブログ.

映画「追想(1956)」観た

追想(1956)
製作:アメリカ’56
原題:ANASTASIA
監督:アナトール・リトバク
原作:ガイ・ボルトン
ジャンル:★ロマンス/歴史劇/ドラマ

【あらすじ】1917年、ロシア革命で殺された筈の皇女アナスタシア生存の噂が広まった。それに便乗しボーニンは、自殺を図った記憶喪失の女性アンナと出会う。彼女は自分を見つけるため、彼は金のために手を組むことになるが…。

過去に思いを馳せる老人か犯罪者の話かなぁ、と勝手に想像しながら鑑賞。…アナスタシア生存説のお話しだったんですね。以前、同じ題材をアニメで観ました。
女性を”気品あるレディ”に仕立てあげるというと「マイ・フェア・レディ」を思い出すんですが、「追想」の先生役は少し怖いけど優雅! スキンヘッドなのに貴族の中にいても違和感なく、ダンス姿も様になってました。
あの性格の悪い教授にヒロインが惚れたのは結構疑問だったのだけど、ボーニンなら納得です。
そして、記憶喪失によってアイデンティティも失ったアンナの苦悩も丁寧に表現されていたと思います。どんどん美しさと気品に磨きがかかっていくのも見ごたえがありました。

でも、やっぱり一番よかったのはマリア皇太后。何度も欲深な人間に振り回され一度は拒絶するも、それでも気になってしまう親(祖母)心とか。アンナの癖を知った時の隠しきれない喜びもいい。登場したのは後半からなのに、自然と彼女に感情移入していました。
ラストの決断とその表情も素敵です。

映画「革命児サパタ(かくめいじさばた)」観た

革命児サパタ
原題:VIVA ZAPATA!
製作:アメリカ’52
監督:エリア・カザン
ジャンル:★ドラマ/歴史劇

【あらすじ】1909年メキシコシティ。畑を奪われたメキシコの農民たちが、サパタを中心にディアス大統領に陳情にやってきた。だが、大統領は友好的な態度をとるものの具体的には何もしてくれない。やがて、サパタは革命家マデロに呼応して武装蜂起し、大統領追放に成功するが…。

革命のために闘うサパタや農民たちが、力強く描かれていました。
とくに、サパタが連行されようという時、周りの人々が静かに石を鳴らし始め、それに答えるかのように民衆が警察を取り囲みサパタを救出するシーン。
どこからともなく無言で集まってくる民衆は怖い!
いつの時代にも搾取される人々がいるけれど、集まって結束すればそれだけで”ちから”になるということがよく分かりました。
また、サパタの恋人ホセファもなかなかたくましくて、父親に結婚を反対されて嘆いたり逃げたりせずに、”父を納得させられる男になりなさいよ”という態度をとるところが素敵です。「私の愛した男なら、それくらい出来るわ!」という自信にあふれてる感じなんですよね。
念願の結婚式当日に、彼女の母親が銃弾ベルトを着けたサパタ(正装!?)と言葉遊びをするシーンも面白かったです。あれはメキシコの伝統とかなんでしょうか?
ラストは”メキシコ革命の成就”…とはいかないんですが、サパタの精神は農民たちに受け継がれていくのだなと思わせる力強いものでした。
イラストに描いた傍観者たちの姿が印象に残ります。

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映画「上海の伯爵夫人」観た

上海の伯爵夫人
つやつやのグランドピアノに映る華やかな社交界
読み:しゃんはいのはくしゃくふじん
原題:THE WHITE COUNTESS
製作:イギリス・アメリカ・ドイツ・中国’05
監督:ジェームズ・アイヴォリー
ジャンル:ロマンス/ドラマ/歴史劇

【あらすじ】1936年、上海。ロシア革命で故郷を逃れ、娘カティアのためホステスとして働くソフィア。彼女はある日、ある事件で家族と視力を同時に失い、酒びたりの日々を送っていた元外交官ジャクソンと出会う。彼女こそ夢の実現に必要な存在だと確信したジャクソンは、夢のバー”白い伯爵夫人”を開き彼女を迎えるが、やがて日本軍による上海侵攻が始まり…。

抑圧された雰囲気のなか、静謐で気品溢れるラブストーリーが綴られます。
ただ、本当に”抑えた”感じなので、やや盛り上がりには欠けるかもしれません。
片や娘さえ幸せになれるならと考えがちなソフィアと、片やかつて思い描いた夢に逃避するジャクソン…。どちらも”自分の人生”には絶望している気がして、情熱というものが感じられないんですよね。
資金作りが”競馬”というのも投げやりですし、店が完成するまでの過程もほとんど描かれていませんでした。
そんな二人がいかにして最後の壁を取り払うのか…というのが見所でしょうか。
娘のカティアや義妹、謎の日本人の存在感もなかなかのものです。

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映画「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・チャイナ」3作観ました

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Tag:香港 

ワンス・アポン・ア・タイム・イン・チャイナ
読み:わんすあぽんあたいむいんちゃいな
原題:武状元黄飛鴻
製作:香港’91(Iのみ)
監督:ツイ・ハーク
ジャンル:★アクション/歴史劇

【あらすじ】19世紀半ば、西洋との不平等条約のことで祖国の将来を憂えるウォン・フェイフォン。医師であり高名な武道家でもある彼の元には、連日のように挑戦者が押しかけてきた。そんななか、血の繋がりのない叔母が西洋から帰ってくる。

小さい頃からジャッキー・チェンが大好きで、こんな人がお父さんだったらなぁ…なんてことを考えていた私ですが、他のクンフー映画はあまり観た事がなかったので今回の放送を楽しみにしてました。
一作目は人を見分けるのに必死で (だって、同じ様な服と髪型なんだもの) 楽しむ余裕がなかったものの、二作目からはウォン・フェイフォンの流れるようでキレのあるアクションを存分に楽しめました。
個人的にアクション映画には苦手な要素が多く(マシンガン、ムキムキマッチョ、スパイ、復讐etc...)心配してたんですが、杞憂に終わって嬉しいです。
ワイヤーアクションも大げさすぎなかったし、何かに気をとられる事なくクンフーの魅力を堪能できたと思います。
また、血の繋がらない叔母(父親の義妹?)との恋愛模様も可愛かったです。
ほぼ同い年のフェイフォンに「叔母上」と呼ばれるのを嫌がったり、護身術をならっていた時、壁に映った二人の姿がダンスしてるように見えてうっとりしたり、おくてのフェイフォンと2人きりのシーンに和みました。
機会があったら、また一作目を見直してみたいと思います。

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映画「十戒(1956)」観た

十戒(1956)
読み:じっかい
原題:THE TEN COMMANDMENTS
製作:アメリカ’56
監督:セシル・B・デミル
ジャンル:歴史劇

【あらすじ】奴隷たちの救世主誕生の予言を受けたエジプト王は、新しく生まれるヘブライの男子を残らず殺すよう命じる。しかし、母親によってナイルの河に流されたモーゼは、運よく王女に拾われるのだった。やがて、誰からも認められ王女ネフレテリの愛をも得た彼は、実の王子ラメシスに疎まれ…。

なんというか、宗教に興味がない人間が観ると後半は引きますね。
自分の思い通りになる人間(モーゼ)が現れるまでは、どんなに苦しむ人々がいても無視していたのに、それが現れた途端に言うこと聞かない奴は皆殺しって…。神様は怖いなぁ。
でも、前半の人間ドラマや美しい衣装などは楽しめました。
ラメシスがコロコロ態度を変えるのも笑えます。
モーゼが神の奇跡を起こすたびに自分も(部下の)奇術で対抗し、河が血で染まった時には「この聖なる水で清めてやる」みたいなことを言っていたのに、失敗したら神も奇跡も存在するわけがないという態度に変わってしまったり。…さっきまで自分も信じてたのに。
それとも、奴隷たちの神が本物で、自分たちの神が偽物のはずはないという傲慢さからきた自信?

また、モーゼが十戒を授かりに山にこもっていた時、彼が帰らないんじゃないかと不安に駆られた民衆の「死ぬより奴隷として生きる方がましだ!!」というセリフには考えてしまいました。
同じ苦境にいても考え方は様々だろうし、実際に体験しなければどう考えるかなんてわからないけど、本当にそんなこと思うのだろうか?昔の人はプライドのために簡単に死ねるイメージがあって(上流階級だけかもだけど)、ちょっと疑問。

2018/03/15「十戒(1956)」再見

初見時と同じく、前半の人間ドラマは楽しめるけど後半はドン引きでした。力を誇示しないと信じられないってどうなの?と思うし、力さえあれば悪魔でも宇宙人でも信じそうなヘブライの民が…。実際、この神様は自分に従う人間以外はゴミ虫以下だと思ってるみたいだし。あと、今回はモーゼにも引きました。確かに王女は心根が美しい人ではないかもしれないけど、あそこまで追い詰めたのはモーゼでしょう。もう少し上手く立ち回れよと思ったし、会ったこともない王女をディスりながら自分をアピールする女のどこがいいのか理解不能。

映画「ココシリ」観た

 | 歴史・実録ドラマ  com(0) 

ココシリ
目が死んでるけど、チベットカモシカです。
原題:KEKEXILI: MOUNTAIN PATROL
製作:中国/香港’04
監督:ルー・チューアン
ジャンル:実録ドラマ/サスペンス

【あらすじ】1993年、中国最後の未開の地”ココシリ”。絶滅の危機にあるチベットカモシカを守るため、地元では密猟者を取締まる有志のパトロール隊が結成された。北京から取材にきた記者ガイは、命がけで密猟者を追うリータイたちに同行する。

人物像があまり描かれていなかったので、顔を見分けるのが苦手な私は誰が誰なのかわからなくなってしまいました。(私がぼやっとしていただけかもしれない。)
でも、密猟者によって打ち捨てられた何百頭ものカモシカの骨が荒野に広がるシーンでは、胸が詰まる思いがしました。
どうしてこんな酷い事ができるのか!?
と怒りが沸きあがったりもしたんですが、彼らも好きでこんな事をしているわけじゃないんですよね。
今日食べることもままならない状況になれば、私も同じことをしただろうか…と考えてしまいました。

映画「バリー・リンドン」観ました

バリー・リンドン
キスシーンより、触れる直前くらいが画的に好き。
読み:ばりーりんどん
原題:BARRY LYNDON
製作:イギリス’75 186分
監督:スタンリー・キューブリック
原作:ウィリアム・メイクピース・サッカレー
ジャンル:★ドラマ/歴史劇

【あらすじ】18世紀アイルランド。恋敵の英国将校に決闘を申し込み、相手を殺したと思い込みダブリンへ身を隠すことになったレドモンド。途中追い剥ぎに遭い、やむなく英軍に志願するのだった。その後も運命に翻弄されながら、やがて英国貴族にのし上がり…。

なんとな~く観始めたんですが、主人公が魅力的でもなく淡々としたストーリーなのにも関わらず、いつの間にか引き込まれていました。淡々としたのが結構好きなのもあるんですが、何よりこの時代が忠実に再現されているというのが素人の私にも何となく分かってしまう凄さ。そして空気のにおいまで伝わってきそうな映像美。…時間を忘れてしまいます。

面白かったのが、この時代流の”何でもかんでも決闘で解決しようとして、あまつさえ撃つ順番までコイントスで決めてしまう”滑稽さ。あからさまにビビッてるのに、プライドのために決闘を受けたり申し込んだり…しかも、後先考えてないから一体何をしたいのやら。
あとは貴族の間で流行っていた”つけぼくろ”が再現されていて驚きました。
部屋中の男女が白い顔に2コ以上ほくろをつけている様子は、はっきり言ってかっこ悪いのを通り越して不気味です
調べてみたら、つける位置によって意味があるんですね。面白いのでまとめてみました。

  • 額:威厳
  • 目元 : 情熱
  • 笑い皺の上 : 陽気
  • 頬 : 粋な洗練(英国男性の場合、左頬は“王党派”右は“中立派”)
  • 上唇の上 : キスの許し
  • 下唇の下 : 慎み
  • あごのふち : 謙虚

ビジュアルより時代考証を重視するなんて凄いなぁと思っていたら、監督がスタンリー・キューブリックだと後で知りました。納得です。

<2018/06/19 再見>

初見時も思ったけど、さして魅力的ではない主人公が偉業を成し遂げるわけでもない物語なのに妙に惹かれるんですよ。3時間あっても全然退屈しないのはキューブリック監督のマジックなんでしょうか?
後半なんてレディ・リンドンがいたからこそですよね。彼女がいなければバリー・リンドンは存在しなかったんだから、これはレディ・リンドンを描いた作品とも言えるかもしれません。

前半のバリーを見ると情熱的でまっすぐで、戦場でも当然のように負傷者を助ける姿から、勇敢で情に厚い男だというのがわかります。シュバリエと出会って涙ながらに事情を打ち明けるシーンは、彼が感情を露にした数少ないシーンの一つ。なんだかんだで本質は普通の善人だったんだと思います。レディ・リンドンはそういうところに惹かれたのかも?

けれど、命を懸けた決闘で金のための不正が行われたこと、英軍でもプロイセン軍でも強奪などがまかり通っていたこと、賭博師となって目の当たりにした貴族社会のくだらなさなど、世の中の醜い面を見るうちに彼は変わっていきます。彼自身もそれに染まっていってしまうんですよね。
浮気現場を目撃されてすぐさま奥さんと仲直りしたのも、彼女に見限られれば自分自身には何の力もないと思い出したからでしょう。もはや金と権力がすべて。

それを多少なりとも変えたのは自分の分身ともいえる最愛の息子。こんな醜い世の中のことなんて知らずに育ってほしいとばかりに、嘘っぱちの英雄譚を語り、望みは何でも叶え、彼の安泰を保証する地位を得ようとなりふり構わなくなっていきます。破滅のきっかけとなった母の助言が憎たらしい!
こんな家庭でも息子が優しく育ったのが奇跡というか、やはりレディ・リンドンの愛のたまものでしょう。天国で待っているから、ケンカしないで仲良くねと、最後まで家族のことを思っていた幼いブライアンの姿に涙が…。

終盤、ブリンドンとの決闘で、再びビビりまくりな相手と対峙するビリーという図が見られるのが面白い。ちょっと前まで絶望して飲んだくれていた彼が、まっすぐにブリンドンを見据えます。
うっかりミスで一発無駄にしたブリンドンに対し、わざと地面を撃ってチャンスを与えるところも、波乱万丈な人生を乗り越えてきた者の矜持を感じました。
ブリンドンが見てきたバリーがクズなのは事実だけども、どんな経験をしてきたかなんて彼は知らないし、同じ状況に置かれてビリーのように這い上がれる人なんてごくわずか。偉業を成したわけではなくても、凄い人物であることは事実です。
ラスト、淡々とサインしながら、ふとバリーの名を目にして手が止まるレディ・リンドンの姿が印象的でした。

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映画「MUSA‐武士‐」感想

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Tag:中国 韓国 

MUSA武士
読み:むさ
原題:MUSA
製作:韓国/中国’01
監督:キム・ソンス
ジャンル:★歴史劇/ドラマ/アクション

【あらすじ】1375年、明の誤解により流刑に科せられた高麗の遺臣団。しかし蒙古軍の襲撃に遭い、砂漠の真ん中で取り残されてしまう。高麗に帰ろうとするも再び蒙古軍に遭遇した彼らは、成り行きから明の姫を救い出し蒙古軍と対立する。

何で「武士」なんだろう、という事をネットで調べると色々出てくるのですが、武士の起源なんてちょっと聞きかじっただけでは分からないので、気になる人は自分で調べてみてください。
他にも「砂漠で遭難してるのに何で昼間に歩くの?」とかいう疑問もあったんですが、(1)昔は情報伝達手段が限られてるので砂漠の知識がなかった。(2)夜は魑魅魍魎や獣がいて危ないと考えた。(3)明かりを持ってうろつくと狙われると思った。(星明りでも歩けそうだけど) …という理由くらいしか思いつきませんでした。
うーん、いったいどういうつもりだったんだろう。
まあそれはそれとして、作品としてはとても良かったと思います。特に姫が好きですね、慣れない状況に迷いを見せている感じが。きっと王族らしく振舞えと教えられてきただろうから、こんな緊急事態で何処までそれを守れば良いのか分からなかったと思うんですよ。だから時々我がまま言ってる事に気付かなかったり。でも基本的にはとても優しくて寛大な人で、助けた村人に「疫病神」呼ばわりされても怒ったりしないんですよ。
今まで闘ってるチャン・ツィイーしか見たことなかったので、ちょっと新鮮でした。

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