忘却エンドロールファンタジーカテゴリ紹介

素敵映画に出会えた時の感動をそのまま書き綴る、映画感想ブログ.

映画「魔女の宅急便(まじょのたっきゅうびん)」

 | ファンタジー  com(4) 
Tag:日本 宮崎駿 

魔女の宅急便
英題:KIKI'S DELIVERY SERVICE
製作:日本’89 112分
監督:宮崎駿
原作:角野栄子
ジャンル:★ファンタジー/青春ドラマ

【あらすじ】13歳になったキキは、魔女の掟に従い黒猫ジジと修行に旅立つ。一目で気に入った海辺の大きな街に降り立つが、街の人々はよそよそしく家も職も見つからない。そんな時、パン屋の女主人に気に入られ、店番をする代わりに部屋と電話を貸してもらえることに。彼女は空を飛ぶ特技を生かして配達屋を始め…。

久しぶりに再見。子供の頃にチラホラ見たのと20歳くらいの時にきちんと見たきりだったのかな?
ジジが大好きで、キキと話せなくなるエピソードがショックすぎて、その後のことをすっかり忘れてました(使い魔やめたのかと思い込んでた)
でもそんなトラウマ?があったにもかかわらず、ラジオからの主題歌ながれる月夜の飛行シーンで一気に引き込まれてしまいました。
箒で飛ぶことしかできない(しかも下手くそ)のに旅立つ無鉄砲な少女と、危うい運転でも当たり前のようについていくジジ。そして箒で風を感じながらの飛行シーンの素晴らしさなどなど、目を離せない要素が目白押しでした。
そしてワクワクの旅立ちから突然のトラブル、目覚めたら誰もが行ってみたいと思えるような素敵な海辺の街の登場ですよ。魅力的な登場人物と魅力的な舞台、それらを支えるジブリの技術力にため息しかでません。この緻密な背景を描くのにどれだけの手間と時間かかるというのか…。

少女の成長物語としても王道で、見ていて安心感がありました。悪人は出てこないものの13歳の少女が一人で乗り越えるには大変なトラブルはいくつかあって、彼女はそれを持ち前の優しさと無鉄砲さ、出会った人々の助けによって一歩ずつ前に進んでいきます。
ホント”魔女”なのが不思議なくらい普通の女の子で、地味な黒い服を気にしてこれでもかというくらい目立つ赤いリボンをつけてるところが可愛いです。その反面、箒で飛ぶ時にかぼちゃパンツと生足を見られても全く気にしないアンバランスさ!(笑)
あと、トンボ君に最初やたらとツンケンしてたのは、たぶん父親が礼儀正しく物腰が柔らかいタイプだったから比較してしまったんでしょうね。優しくて礼儀正しいところを知ってからは態度も変わって、きっと小さい頃は「パパのお嫁さんになる!」とか言ってたんだろうなと想像してしまいました。

そして、今回気になったのがキキがスランプに陥るきっかけの一つである「かぼちゃとニシンのパイ」の味。カボチャと魚の組み合わせ自体馴染みがないし、孫も嫌ってるしどんな味なのか想像できません。
一応調べてみたところ、舞台のモデルとなった国はスウェーデンらしく、そこでよく食べられているのはオレンジ色(緑もある)の水っぽいカボチャらしいんですよね(雑に調べただけなので間違ってる可能性大)
で、スウェーデンのカボチャのパイにはスパイスを効かせてあること、そして大漁のニシンが獲れるこの国ではニシンの酢漬け料理がポピュラーだということを考慮すると、やはりこのパイかなり”大人の味”なのでは?
ただ、日本で手に入るニシンと違い、現地で獲ったニシンは臭みもなく身がしまっていて美味しいらしいです。それに酢漬けのニシンとかぼちゃのパイはドイツ移民により実際に作られていたそうですが、あのお婆さんは割と裕福そうだったので酢漬けではなくオイル漬けのニシンだった可能性も。オイル漬けの白身魚とかぼちゃのクリームソース仕立てのパイだと思えば美味しい気がしてきました。…きっと事あるごとに贈ってきて孫も飽きてたんだろう!
ちなみに見た目がゲテモノなスターゲーザーパイはイギリス料理なので別物でしょう。

脱線しすぎたので軌道修正。やはりこの作品の一番好きなところはジジですね。黒猫と言えばジジを思い出すくらいには印象に残っていて、今回再見してどのシーンのジジも可愛いと再確認できました。表情豊かなところは普通の猫ではない感じがするのに、ふと見せる猫らしいしぐさにグッときます。キキに言われてぬいぐるみの振りをするエピソードも可愛いし、ふとんで丸くなってるところも可愛い。そして声も可愛い(ムーミンのミイの声優さんか!)
何よりラストで使い魔として側にいるというのがわかってホッとしました。一言もセリフはなかったけど、キキの魔力が弱まっていた間のそっけなさを見ると言葉がわからなくなっただけでなく契約による恩恵(他の動物の言葉がわかるとか知力とか)も弱まっていた可能性があるので、普通にキキの箒に乗って飛んでる時の様子から元通り(もしくはパワーアップ)になったと思えました。インタビューされてる時の猫っぽい威嚇は、たぶん契約してない人たち目線なので普通の猫にしか見えないということかと。
長年のモヤモヤが解決して、再見して本当に良かったです♪

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映画「リザとキツネと恋する死者たち」

 | ファンタジー  com(4) 
Tag:ハンガリー 

読み:りざときつねとこいするししゃたち
原題:LIZA, A ROKATUNDER/LIZA THE FOX-FAIRY
製作:ハンガリー’2014 98分
監督:ウッイ・メーサーロシュ・カーロイ
ジャンル:★コメディ/ファンタジー

【あらすじ】1970年代のハンガリー、ブダペスト。元日本大使未亡人マルタの専属看護師リザは、大好きな日本の恋愛小説のような恋を夢みて孤独な毎日を送っていた。そんな彼女の寂しさを紛らわせていたのは、彼女にしか見えない幽霊の日本人歌手トミー谷。だが、リザにモテ期が到来して…。

日本の狐憑きをモチーフとしたハンガリーのコミカルなファンタジー。
日本人歌手の幽霊トミー谷と楽しそうに踊るリザが可愛い!そんな彼女が日本の恋愛小説にあるような出会いがしたいと、オシャレしてハンバーガーショップに出かける様子も微笑ましいよね。
割とホラーな展開なのに、コミカルに徹してとぼけた雰囲気を醸し出してます。若干中だるみはあったものの、ラスト不屈のゾルタン刑事による愛の救命処置のくだりは、それまで映画に興味がなかった周りの家族も手を止めて見入るほどでした。現実での戦いと、あの世に近い場所?での戦いがリンクしてるところが素晴らしい。

リザを手に入れようとした彼のやり方は許せないけど、それでも今まで彼女に寄り添って彼女の好きなもので励まし支えてきたことは事実なんですよね。つい健気だなぁと絆されそうになります。
ラストの様子からも歌と踊りが本当に好きなんだろうし。なんだかんだで完全敗北してよかったんじゃないだろうか?
きっとあのまま彼女を手に入れても心までは手に入らないと苦悩してたと思う。
そう考えるとゾルタンはリザだけでなく彼も救ったのかもしれない?

他の登場人物も個性的で楽しかったし、日本好き外国人による日本描写が許せるなら楽しめる作品だと思います。

映画「ジュマンジ(じゅまんじ)」観た

ジュマンジ
原題:JUMANJI
製作:アメリカ’95 104分
監督:ジョー・ジョンストン
ジャンル:ファンタジー/アドベンチャー

【あらすじ】新居に越してきた姉弟ジョディとピーターは、屋根裏で古いゲーム盤”ジュマンジ”を見つける。何となく始めてしまうが、それは盤に書かれた事がそのまま現実に起こってしまう呪いのゲームだった。やがて、ゲームからアランという男が現れ…。

そういえば結構ヘビーな導入なんでした。26年は辛いなぁ…(涙)
ケンカ別れして、再会叶わず無念のまま…というのも、帰ってきたら見慣れた場所がことごとく変わり果てていて大切な人たちは…というのも辛すぎて涙が出そうでした。
なのでその後、ちゃんと現実と向き合ってゲームを終わらせようと奮闘する姿に若干違和感が…。あんまりそこに時間を割くわけにはいかないんだろうけど、設定が重すぎるのがなぁ。せめて両親の消息は調べる時間がなかくてわからない、くらいにしてほしかったです。

とはいえ、ゲームを終わらせるために姉弟、そしてアランのかつてのガールフレンドと一緒に奮闘する様子は良かったです。負け犬だったアランが子供たちにのせられ、背中を押され、そんな子供たちを守る側に成長していく。26年で身体とサバイバル能力は成長したけども中身は子供とほとんど変わらなかった彼が、初めて涙を見せたピーターを励まして抱きしめるシーンは感動的でした。
そして、彼を臆病者と罵りながら鉄砲を撃ちまくるハンター。たぶん父親役と同じ方ですよね?
呪いのゲームというだけあって、どのマスに止まっても悪い事ばかり起こるし、色んな人の人生を滅茶苦茶にしているものの、クリアできれば元通りにしてくれる…。一体誰が何の目的で作ったのか気になるところです。
もしかしたら、アランの父親のような厳しい父親が軟弱息子を鍛えるために作ったのかも?

動植物のアニマトロニクスやCGなんかは時代が感じられましたが、当時の最新技術だろうし、この手作り感がいいんですよね。ライオンさんとお猿化したピーターが可愛い!
あと、内容が具現化するゲーム盤ジュマンジ自体が魅力的。お金持ちのお坊ちゃんだったアランも一目で気に入ってました。
海外にはああいうカッコいいゲーム盤があるんでしょうか。私はプラスチックや紙などの安っぽいゲーム盤しか見たことがないので、ちょっと欲しいなぁと思ったり。

ラストはハッピーエンドでゲームに関係ないジョディとピーターの両親まで助けられそうな雰囲気で終わってましたが、まあ可愛いキルスティン・ダンストちゃんが嬉しそうだったからいいか。目に聡明さが宿ってる少女という感じでオーラを感じたし、本当に可愛かった!
キルスティンとR・ウィリアムスのファンには嬉しい作品でした。

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映画「ゴースト/ニューヨークの幻」観ました

 | ファンタジー  com(9) 

ゴースト/ニューヨークの幻
原題:GHOST
製作:アメリカ’90 127分
監督:ジェリー・ザッカー
ジャンル:★ファンタジー/ロマンス

【あらすじ】強盗に襲われ不測の事態に陥ったサムは、最愛の恋人モリーにも魔の手が迫っていることを知る。彼はインチキ霊媒師オダ=メイの力を借りて彼女を守ろうとするが…。

いちおう感涙祭第三弾。何故か投票されてると思い込んで再見しました。なければ投票するつもりだったし、今から投票でもまあいいよね?
字幕版は初めて見ました。すごく面白かったです。
まずデミ・ムーアがめっちゃくちゃ可愛いですね~。細くて長い首に黒髪ショートカット、涙で濡れた顔も整っていてお人形さんみたい。
しかも、負けず劣らず可愛いにゃんこを飼ってるんですよ。この前再見した「暗殺者」と比べるとにゃんこの出番は少ないけども、ちゃんと活躍してました。

次にゴールドバーグさん演じるインチキ霊媒師が良いキャラしてるんですよ。序盤でちょっとウルっとさせておいて、彼女の登場で一気にコミカルになってきます。嫌々ながらメッセンジャーの役目を任されたのに、途中からもう主人公の相棒としてしっくりくるようになってます。
一晩中ヘンリー8世の歌とか、霊の間で噂になって霊だらけになるくだり、断腸の思いで大金を寄付するエピソードなどが面白かったです。彼女がいなかったら、この作品の評価はまったく変わっていたと思う。

そして最後に、SFXの使い方が上手いんですね~。話題になってる技術を使ってみたくて使ってるんじゃなくて、その技術の特性を理解して作品の中で意味のある使い方をしています。序盤からして本人が事態に気付く描写の使い方が上手いし、彼女に危険が迫っているのに何もできないもどかしさ(ここで猫ちゃん大活躍!)がひしひしと伝わってきます。
そして、そういう状態だからこそ行きかう電車をぴょんぴょん飛び移って人探ししたり、他人の秘密も知ることができるんですよね~。コインを動かすシーンや地獄からのお迎えなど、SFXが効果的に使われている印象的なシーンが多かったです。
ラストが妙に血みどろで雰囲気に合わない気もしたけど、それも許せる面白さでした。

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映画「ミッドナイト・イン・パリ」観ました

ミッドナイト・イン・パリ
原題:MIDNIGHT IN PARIS
製作:スペイン、アメリカ’2011 94分
監督:ウディ・アレン
ジャンル:★コメディ/ファンタジー/ロマンス

【あらすじ】ハリウッドの売れっ子脚本家ギルは、小説家に転身しようと処女小説の執筆に励んでいた。婚約者イネズと憧れの地パリを訪れるが、イネズの男友達ポールが楽しい気分を台無しに。ひとり真夜中のパリを彷徨っていると、一台のクラシック・プジョーが現われ…。

今回のファンタジー企画最後の作品。再見が続いてたので、最後が未見のこの作品で良かったです。(イラストはいつか追加します)
これほど自然に流れるように時を超える作品は珍しいですね。見た目的にはあまりファンタジーしてないんですが、(視聴者も)すんなりこれを受け入られる感覚がとてもファンタジーでいいんですよ。
すんなりと言っても、最初の主人公の驚きようはあんぐりって感じですが(笑)

なんというか、かの時代の芸術家たちの浮世離れした雰囲気が、主人公の夢への陶酔感と見事に溶け合って、観ているだけでその空気に酔ってしまいそうなんですよね。
これはギルが惹かれるアドリアナの夢が叶った時にも感じられることで、女優さんの演技も上手くて、不思議な高揚感でフワフワした気持ちになっている時を思い出します。
でも、そのフワフワにいつまでも浸ってないで、ちゃんと考えて、気付いて、決断した主人公が描かれるところがまたいいんですよ。夢想の楽しさから、自分の足で立って目標に向かって行く時の万能感みたいな、別の陶酔感に切り替わります。
真のヒロインと美しい夜のパリを歩くシーン(「ブロードウェイと銃弾」を思い出した)も印象的で、夢を追う人々が集まるこの街が舞台だからこそ魔法が存在できるんだなぁと思えました。

一番の謎は、どうしてまったく合わないあの二人が婚約したかってこと。身体の相性が良くて、お互いにそこそこ裕福だったからという理由しか思いつかない…(苦笑)
それと、ギルはアドリアナの書いた本の結末まで読む日が来るんだろうか?
彼女のその後が書かれているだろう本には触れずに終わるのも、この作品らしくて良いと思います。

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映画「ティモシーの小さな奇跡」観た

 | ファンタジー  com(11) 
Tag:ディズニー 

ティモシーの小さな奇跡
原題:THE ODD LIFE OF TIMOTHY GREEN
製作:アメリカ’02 125分
監督:ピーター・ヘッジズ
ジャンル:コメディ/ファミリー/ファンタジー

【あらすじ】医者から子供ができないことを告げられたジムとシンディ。ふたりは自分たちの理想の子供について書いたメモを庭に埋め、子供への思いを断とうとする。だがその夜、ティモシーと名乗る脚に葉っぱが生えた少年が現れ、彼らをパパ、ママと呼ぶのだった。彼らは、ティモシーを自分たちの子として育てることを決意する。

ファンタジー企画参加の2作品目は、またまたディズニーの実写映画です。子供ができない夫婦の元へ、彼らが描いた理想の子供が現れるというお話。
彼らが本当にいい人たちで、”自分たちの子供はこんな子だ”と楽しそうに思い描きながらメモに書き出していって、その気持ちと一緒に庭に埋めるシーンでは泣きそうになりました。
ティモシーが現れてからは、心配しすぎて過干渉になったり、父親や姉を見返したくてサッカーの試合でティモシーを自慢材料として見てしまうこともあったけど、子供のために悩んで、反省して、勇気を出したりしていくうちに、親として、人間として成長していくわけです。
先は読めるものの、ティモシーが一目惚れした女の子と秘密を共有し、ふたりで創りあげた世界が「テラビシアにかける橋」みたいで惹かれました。

ただ、いい作品ではあるものの、あまりにティモシーが理想的な子供であり、完璧な天使なので、あのふたりへの試練みたいなものとしてみると「神様、甘すぎじゃない?」と思ったり(劇中でハッキリ神の奇跡と描かれてるわけではない)。
しかも、そこでふと「A.I.」のデイビットを思い出してしまったんですよね。もしティモシーとデイビットの中身が入れ替わったらどうなるだろう?…と考えてみたら、どうしてもハッピーエンドが想像できない!
ティモシーと違って、デイビットは”子供は成長して親離れするものだ”ということを知らない…それを望まないようインプットされているんでしょう、きっと。
どちらもざっくり言えば”望まれたとおりの理想の子供”なのに、ティモシーはなんでも持っていて、歪んだ人間作ったせいでデイビットは幸せになれないのか…と思ったら、デイビットが不憫で不憫で…(涙)

一方ティモシーの方は、演じている子が本当に可愛らしく、その容姿だけで映画の評価に「可愛い加点」するところでしたよ。ずるい!
リトル・ランボーズ」のリーみたいな、ちょっと癖のある悪ガキっぽい子で、自分たちの子供として受け入れるまでにもう少し時間を割いていれば、夢から醒めずにこの優しいファンタジーの世界に浸れたかも?

ですが、そこまで考えて「ティモシーにとっても、これは試練だったのでは?」と気付いたら、また妄想スイッチが入りました(笑)
例えばデイビットみたいな哀れな存在に「現世で誰かを幸せにできたら魂をあげるし、生まれ変わることもできるよ」とチャンスをあげたとか。もちろん、天使として修行してから行うので、ティモシーのように完璧すぎてもおかしくない!
そう思ったら、醒めた気持ちも少しは戻ってきました。

他に気になった点としては、あのふたりが開発した鉛筆のメリットや将来性をもっと伝えてほしかったです。ぜんぜんアップで見せないし、どこが気に入られたのかわからなかった。
ちなみに、原題の意味は「ティモシー・グリーンの奇妙な人生」。傍目からみると確かに”奇妙”だけど、本人はそんなこと思ってないんだろうな。邦題はわかりやすくて普通に良かったと思います。

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ファンタジーアニメ企画 今敏作品「パプリカ/千年女優」再見

 | ファンタジー  com(12) 
Tag:日本 

『パプリカ』(日’06 今敏監督、筒井康隆原作)

「パーフェクトブルー」でこの監督の描く”醜さ”に耐性ができたおかげか、なかなか楽しめました。初見はテープが悪かったのもあって寝ちゃったもんなー。
夢を共有できる機械が盗まれて悪用されたのを何とかしようとする話と、セラピーを受ける刑事が過去と向き合う話が同時進行するんですが、監督お得意の現実妄想が入り乱れる映像の奔流が楽しいんですよね。普段使ってない部分の脳を刺激されてる感じ(笑)
刑事さんのパートも、映画への愛とノスタルジーが伝わってきて良かったです。というか、このエピソードがないと中身スッカスカかも…。
でも実は一番好きなのが主題歌「白虎野の娘(←youtubeへ)」で、これを聴くとパプリカみたいに夢の世界を駆け回りたくなります。

『千年女優:CHIYOKO MILLENNIAL ACTRESS』 (日’01 今敏監督)

ネタバレ注意!
今監督にしてはクリーンで一般向けの作品。
大好きな女優・千代子のドキュメンタリーを撮りにきた立花たちが、彼女の昔語りに引き込まれていくのを回想シーンに入り込んでしまう事で表現するのが面白いですね。終いにはヒートアップして、彼女の映画を何度も何度も観て台詞も覚えている立花が、彼女を助ける役になりきって妄想の中で共演!
これは憧れの俳優さんがいる人ならドキドキするんじゃないだろうか。
千代子が大切な人を追い求める情熱・経験をすべて演技に活かしているというのも伝わってきて、ぐいぐい引き込まれます…が、40分くらいのところで飽きました(汗)
彼女が彼を追いかけて、立花がそんな彼女の後を追うパターンの繰り返しなので、少しくどいかも。
でも、最後の最後の台詞には痺れました。さすが女優!という気持ちと、その裏にある深い想いに涙…。
相手が目の前にいない場合、そのいない相手を追い求める自分を好きだと言える(全肯定する)のは、相手を愛しているのと同義だと思います。もう会えないと心の奥底では気付いていて、それでもその想いは無駄じゃない、否定しないし風化もさせない。彼のおかげで女優になれたんだから、彼からもらったものをすべて自分の血や肉にして、一緒に生き続けたい…という事だと思いました。
老婆の姿で描かれる”不安”に押しつぶされなかったのも、長年引き立て役だった女優に「あなたはいつまでも若いまま」と言わしめたのも、自分を好きになることで彼への想いを保ち続けたからでしょう。
「もう彼の顔も思い出せない…!」と泣き崩れたのも、彼女の本当の姿だったと思います。

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映画「マリス・イン・ワンダーランド」観た

 | ファンタジー  com(0) 
Tag:イギリス 

マリス・イン・ワンダーランド
原題:MALICE IN WONDERLAND
製作:イギリス’09
監督:サイモン・フェローズ
ジャンル:ファンタジー/ドラマ/ロマンス

【あらすじ】夜のロンドン。追われていたアリスは走り出したタクシーと衝突する。ボスの誕生パーティに急いで行かなければいけない運転手ホワイティーは、気を失った彼女をとりあえずタクシーに乗せて走り出してしまう。気が付いた彼女は記憶を失っており…。

GyaOで鑑賞。舞台を現代のロンドンに置き換えた、ドラッグと欲望にまみれた街のちょっとブラックな「不思議の国のアリス」です。アリスを演じる女優さんはキレイだし、ブラックなアリスの世界がとても興味深い作品でした。
ただし、英語がわからないと面白みはあまりないというか、伝わってこないかも。どうやらスラングだらけで韻を踏んだ台詞が多く、字幕じゃよくわからないんですよね。
でも、アリスの世界のキャラクターがことごとく大人の世界の住人になっていて、なおかつそれが結構嵌ってて、その変貌ぶりを見るだけでもなかなか楽しかったです。
何者かに追われる記憶喪失のアリスや、腕時計を2本つけたタクシー運転手、紅茶が大好きな売春宿の女主人、ちょっとおバカな双子のガードマン、常に煙を漂わせてるジャンキー、血の色が大好きなゲイの麻薬組織のボスなどなど。
裁判の下りはむしろこっちの方がしっくりくるかも(笑)

人間の生首を飾ったりとブラックな作品ですが終盤はかなりファンタジーしていて、しかも恋愛や情愛などloveな展開で終わるのが意外。二本の腕時計が二人を結びつけるところはロマンティックだし、アリスの秘密にも驚かされつつ、胸が温かくなるような笑顔でほっこり。
現実のイギリスなどで社会問題になっている事が盛り込まれていて、おふざけもあるけど最後まで大人向けでした。
ちなみにタイトルは原題通りで、maliceには”悪意”という意味があるので「不思議の国の悪意」って事ですね…わかるようなわからないような?

TV映画「アメリカン クリスマス・キャロル(1979)」観ました

アメリカン クリスマス・キャロル(1979)
原題:AN AMERICAN CHRISTMAS CAROL
製作:アメリカ’79
監督:エリック・ティル
原作:チャールズ・ディケンズ
ジャンル:★ファンタジー/ドラマ

【あらすじ】ニューハンプシャー州のある街で暮らす強欲な老人ベン・スレード。クリスマスの前日にも関わらず、彼は容赦なく街の人々から家具などを差し押さえ、街の労働者の肩を持つサッチャーも解雇してしまった。そんな彼の元に、今は亡きビジネスパートナーのレーサムが現れ…。

あけましておめでとうございま~す、と言いつつクリスマスな映画の記事をアップするズレたブログですが、今年もどうぞよろしくお願いします。イラストはまた暖かくなってきたら描きます。
この作品は冒頭から老人の特殊メイクが少し安っぽくて、映像もTV映画っぽいなぁと思ってたらやっぱりTVMでした。主演のヘンリー・ウィンクラーさんはTVドラマの出演が多く、「穴/HOLES」のお父さん役もやってるみたい。覚えてないなぁ…。
でも、前回観た「クリスマス・キャロル」と比べても脚本や演出がかなりいいと思います。
原作を知らないから実はこっちの方が忠実なのかもしれないけど(作中にディケンズの初版本が登場するので、時代設定とかは違う)、スレードの子供時代から映していて彼がお金にこだわる理由が描かれていたし、改心していく流れも自然で説得力があるんですよね。
とくに、彼の葬式でみんなが踊り騒ぐ描写はあまり好きじゃなかったので、こちらの彼の遺品を競売にかけて長年の鬱憤を晴らす下りは、酷い事には変わらないけど実際こうなっちゃうだろうなぁというリアリティがありました。
それに、改心してからのお金の使い方も、きちんと使うべきところに使ってるので余計な心配はしなくて済んだし(笑)
クライマックスは彼の子ども時代の描写が生きる流れで、爽やかに終わるところも好感。
印象に残ったのは、若い頃に想いを寄せていた女性が現在幸せに暮らしている様子を見て、「前よりキレイだ」「幸せな女性は美しい」と精霊と話すところや、未来で息子を亡くした父親が家族に言った台詞…
「家族はずっと一緒にいられるわけじゃないが、離ればなれになっても愛された魂は消えない。だから約束してくれ、ジョナサンの事をずっと忘れないと」
悲しい思い出に蓋をするように過去の大切な人たちを忘れようとしていたスレードの事もあって、胸に沁みました。
地味ながら良質なファンタジードラマだったと思います。

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映画「ネコのミヌース」観た

ネコのミヌース
原題:MINOES
製作:オランダ’01
監督:フィンセント・バル
原作:アニー・M・G・シュミット
ジャンル:ファンタジー/ファミリー

【あらすじ】内気で取材ができない新聞記者のティベは、ある日、犬にほえられ木に登って降りられなくなった女の子ミヌースを助ける。だが、彼女は実は事故で人間に変身したネコの女の子だった。行くところがない彼女は、屋根の上を歩いている時にティべの家から魚のにおいをかぎつけ…。

gyaoで鑑賞。タイトルの「ネコの~」まで読んだ時点で即「見たいものリスト」入りでした(笑)
オランダを代表する児童書の映画化だそうです。
とにかくにゃんこが可愛いくて、子供向けのたわいないお話ですが、ネコ好きなら観て損はないと思います。
主人公は何故か人間になっちゃった元ネコの女の子なんだけども、町の猫たちと仲良しだから屋根の上でお話したりするシーンも多いんですよね。
おめめがまん丸で、むっくりした感じのにゃんこたちがたくさん見られて幸せです。
ミヌースがたまにネコになりきれてない感じもしたけども、それは演技よりも脚本の問題かな?
女の子と言ってもたぶん20歳くらいの役で、軽い身のこなしと緑のコートが可愛く、お鼻をすりすりする様子がとってもキュート。
でも、ネズミを食べようとするシーンは…(汗)
元ネコなので日中に人間の町を出歩くのは怖がるものの(犬がいるし)、魚屋さんがいると聞けば率先して出かける食いしん坊なところも良かったです。
そんな彼女が、ダメダメ新聞記者と二人合わせて一人前な日々を送り、女の子と友達になったり、冒険したり成長したり、人間とネコの間で揺れたりと、ほのぼのまったり見られる作品でした。
後半は助けた子猫たちがいるのに、証拠がない扱いされてたのがちょっと納得いかなかったけど、彼にはまったく取材能力がないってことだろうか…(笑)

映画「髪結いの亭主」観た

 | ファンタジー  com(9) 
Tag:フランス 

髪結いの亭主
原題:LE MARI DE LA COIFFEUSE
製作:フランス’90
監督:パトリス・ルコント
ジャンル:★ファンタジー/ロマンス/コメディ

【あらすじ】子供の頃から女の理容師と結婚したいという願望を抱き続けて来たアントワーヌは、中年にさしかかった頃、ようやくその夢を実現する。優しくて綺麗なマチルドを娶った彼は、幸せな日々を送っていたが…。

gyaoでやってたので久しぶりに再見。なんか好きなんですよね~。
またもやファンタジーに分類してしまったけど、ほぼ中年の妄想なんだからいいと思う(笑)
この中に描かれている登場人物の妄想じゃなくて(それでもいいけど)、普通の生活を送っている中年男性、中年女性が、こんな燃え上がるような恋いいなぁと思うような妄想が描かれてます。
だって、働かないで綺麗な理容師の奥さんといちゃいちゃ過ごす毎日とか、何年経っても運命の恋人のように扱ってくれる旦那とか(美貌が衰えない自分とか)そうそういないでしょ。
唐突なラストも、妄想の世界から現実に引き戻すためっていうか。
そんなわけで、非現実的な事がいくら起こっても全部許せてしまいました。

アントワーヌのマセた子供時代が可愛いです。憧れの理容師さんに少しでも近づきたくて、しょっちゅう伸びてない髪をカットしてもらいに行くという。その理容師さんが太めで肉感的なのも、いかにもな感じで良いです。
かがんだ時に頬に胸が当たるのが至福の時だったとか、彼女の体臭にうっとりしたとか、横チチ目撃して半日呆然としてたとか、ここはたぶんリアリティあるんじゃないでしょうか。監督の体験談だったり?
そんなわけで女理容師と結婚するのが夢なんだけども、それを言ったら父親にひっぱたかれるんですよ。
前に観た時は意味がよくわからなかったけど、「髪結いの亭主」というタイトルの意味が「ヒモ」のことなんですね。確かに働いてなかった!
でも、理解あるお父さんで、その後謝って「お前のなりたいものになっていい」と認めてしまうという…。
それが実現した時にショックで…な展開も笑えます(妄想なので)。
で、肝心のヒロインなんですが、これがもう中年男性にはたまらない色っぽさなんじゃないでしょうか。とにかく一挙一動が官能的です。ウェディングドレス姿でお客の髭を剃る姿も綺麗でした。
ラストの寂しげな雰囲気は、真面目にこの作品を観た人には痛々しく映るんだろうけど、ぜんぶ彼の妄想として観ると違う意味で痛々しいです(笑)

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映画「ブレス」感想

 | ファンタジー  com(0) 
Tag:韓国 

ブレス2007
原題:BREATH
製作:韓国’07
監督:キム・ギドク
ジャンル:★ファンタジー/ドラマ

【あらすじ】刑の執行が間近となり、絶望から手作りのナイフで喉を突いて自殺を図った死刑囚チャン・ジン。彼は声だけを失って再び刑務所に戻されるが、そこには彼を愛する若い囚人がいるだけだ。一方、夫の浮気を知り打ちひしがれていた主婦ヨンは、ニュースでチャンの事を知り衝動的に刑務所へ行き…。

gyaoで鑑賞。好き嫌いがハッキリ分かれるので、間違っても人には勧められない作品ですね(笑)
ジャンルをファンタジーにしたけど、不思議な出来事というよりは変な人の変な行動がまかり通ってるという意味でファンタジーです。
描かれてないところをあれこれ想像して補うのが好きな人には楽しい作品かも。
なんせヒロインがイカレ女だし、家事も育児も一時的に放り出したりするので、ヒロイン目線で観たら拒絶反応出そうです。

でも、個人的にすごく好きなんだな~。
というのも、この作品の真の主人公は観察者なんですよ。
満たされない思いを抱えた主婦と絶望する死刑囚の面会を、モニター越しに観察する保安課長(監督自身が演じてます)が変態チックでいいんです。
彼の見せ方も良くて、面会室が映るモニターに薄っすら反射して見えるめがねのオッサンと、面会時間の終了を知らせたりカメラを切り替える時の手しか映りません。
その謎の保安課長が、ヒロインを気に入ったのか特例で面会を許し、個室で直接会えるように計らい、彼女のやりたいようにやらせるんですよ。
このイカレ女が次に何をするのか、死刑囚の男が翻弄された果てにどうなるのか、自分が許してやるからやってみろと言わんばかりです。
そんな彼の視点からこのふたりを観ると、なんだかニヤニヤが止まらないんです(悪趣味!笑)

二人の出会いから妙な雰囲気があって、見知らぬ面会人にポカーンとしていた死刑囚に、突然「5分間死んだ事があるの」と自分が幼い頃の臨死体験を話し始め、彼もそれに引き込まれていくんですよね。
ヒロインの地味で疲れきった主婦という役作りも完璧だし、声が出ない死刑囚の表情の演技も素晴らしかったです。
仕切りの声を通すための小さい穴から彼女の髪を一本抜き、愛おしそうに手触りを確かめたり匂いをかいだりするシーンでは、「飢餓海峡」の彼女を思い出しました。
しまいにゃ彼に想いを寄せるゲイの青年に髪の毛を盗られそうになって飲み込むし(笑)
このゲイの青年の怖~い嫉妬も、この動きの少ない物語の中で良いアクセントになってたと思います。
彼も喋らないのは愛する男が喋れなくなったから?

で、彼女の次の行動が斜め上をいっていてもう笑うしかありません。彼に四季を感じさせてあげようとしてるらしいものの、春の歌を踊りながら歌いだした時は、ぜったい保安課長も笑ってたね!一緒に踊ってたし!(笑)
二人がキスしようとする寸前にブザーを鳴らしたり、思いっきり職権乱用で暇つぶししてます。
あと、秋をプレゼントした時、夫にバレて車で連れ帰されるんだけど、彼女が秋の演出に使った風景が夫と出会った場所で、それを夫に指摘されて運転を邪魔して軽い事故を起こすシーン…彼女はどういう気持ちでそんなことしたんだろう。シートベルトをしてなかった彼女だけ怪我してるし…。

終盤の狂気じみたキスは観る人それぞれの解釈があっていいと思います。
私的には、5分死んだ時の思い出を”快感”だと言っていた彼女にとって、あの出来事は生の素晴らしさを思い出させてくれる生まれ変わりの儀式みたいなものだったのかなと。
四季というのも、春から始まって冬になり、その後にまた”再生”の春がやってくるという事で、これから死ぬ彼に来世を信じさせたかったとか。(少なくとも最後に抵抗しなかったのはこの出来事の影響だと思う)
でも、基本的には彼のためとかではなく、自分の衝動に従っているだけだと割り切っていたように感じました。
浮気夫もやや可哀相になるくらい懲らしめられたし、面会の時しか笑顔を見せなかった彼女が、すべてをやり終えて家族と笑顔で過ごしてる姿はまるで魔女のよう(笑)
インパクトある作品でした。

映画「セブンティーン・アゲイン」観ました

 | ファンタジー  com(5) 

セブンティーン・アゲイン
原題:17 AGAIN
製作:アメリカ’09
監督:バー・スティアーズ
ジャンル:★青春/コメディ/ファンタジー

【あらすじ】高校時代はバスケットボールの花形選手だったマイクは、恋人スカーレットの妊娠を知って彼女との人生を選択した事をずっと後悔していた。それから20年、仕事も家庭も結婚も上手くいかない彼の前に不思議な老人が現れ、肉体だけ17歳に戻ってしまい…。

あらすじに書いたとおり、今の生活に不満たらたらな主人公が奇跡によって人生をやり直す系(若返る)です。
「またか」とは思ったけども、コミカルだし一生懸命な姿は好感持てるしで、かなり楽しめました。
最初は自分のためだったんですが、子供たちの実態を知ってすぐに自分の使命に気付くところがいいよね。やり直したいという気持ちは一緒でも、家族への愛情は忘れちゃいないわけで。他のこういう作品、とくに過去に戻る系は、家族の事をすっかり忘れてる事が多いから、私的にここが高評価につながりました。
そして、映画オタクの親友ネッドも面白くて、若返ったマイクといきなりバトルが始まったり(オブジェの剣の切れ味!)、女校長との意外な共通点が見つかって燃え上がったり、ちょこちょこ笑わせてくれます。
子供たちとの距離が縮まるにつれて、奥さんにも接近し、ついふたりの世界に入っちゃったところを子供に目撃されるシーンも楽しい。ダンスする姿を見た息子は凍り付いちゃうし、キスを目撃した娘と女友達たちに強烈なビンタをお見舞いされたり。さらにその後、別の理由でネッドに4回くらいビンタされて、本当に痛そう!
どれもベタな展開なんだけども、しっかり笑わせてくれる気楽なハートフルなコメディです。中身はおっさんという役をこなすザック・エフロンもよかった。
ネタバレってほどじゃないけど、ラストはそこはかとなく「天国から来たチャンピオン」を意識しつつも(?)、見事に爽やかハッピーエンドに仕上げてます。

映画「ヘンゼルとグレーテル(2007)」観た

 | ファンタジー  com(4) 
Tag:韓国 

ヘンゼルとグレーテル(2007)
原題:HANSEL AND GRETEL
製作:韓国’07
監督:イム・ピルソン
ジャンル:★ファンタジー/ホラー

【あらすじ】山道の途中、事故を起こしてしまったウンス。車を捨てて森の中を彷徨い、少女ヨンヒと出会う。彼女の案内で古めかしい洋館に辿り着いた彼は、ヨンヒの両親と兄妹、そして沢山のおもちゃに迎えられ…。

Gyaoで鑑賞。これはあれですね、以前企画で観た「トワイライトゾーン/超次元の体験」のイラストに描いたエピソードをモチーフにしてます。
あの短編の不気味さを「ヘンゼルとグレーテル」のエッセンスを加えて上手に膨らませ、なおかつ真相はオリジナル。「トワイライトゾーン」を知ってる人でも楽しめます。
童話の世界のようなおもちゃだらけの家に、不自然な家族の様子、閉ざされた世界…。
どこか違和感を覚えながらも、生まれてくる赤ん坊を抱くために、どうにか帰ろうとする主人公と、引きとめようとする彼らの駆け引きは、何気に緊張感ありました。
帰りたい気持ちを伝えるため、自分の物語をおとぎ話風に聞かせたシーンでは、長男が途中で割り込み、さりげなく脅しをかけるところが怖い!
子役の子達がみんな上手くて、残酷で計算高い一面と、親の愛を求める子供らしいひたむきさを併せ持つ、憎みきれないキャラクターになっているんですよね。とくに長女ヨンヒは、この異様な世界と現実世界(主人公)とを繋ぐ架け橋的な存在で、絶妙な演技をみせてくれました。
そして、中盤新たな不安要素も加わって、ミステリー仕立てで彼らの悲しい真実が明かされていきます。
これだけボリュームアップしているのに下手なリメイクよりよっぽどよく出来ていて、ほどよく怖いし、最後はじんわりあったかい気持ちになれる作品でした。

映画「ソラから来た転校生」観た

 | ファンタジー  com(0) 
Tag:日本 

ソラから来た転校生
製作:日本’2012
監督:近藤勇一
ジャンル:★青春/ファンタジー

【あらすじ】文化祭に向けて自主映画を作っていた女子高生マコトは、テーマ探しに苦心し、文才があるという転校生レイカに相談する。するとレイカは、自分は天使で、地上で行方不明となっていた天使であるあなたをソラへ連れ帰るためにやってきたと告げ…。

美少女たちの瑞々しい魅力を描き出した短編ファンタジー。Gyaoで鑑賞。
地上で行方不明になった仲間を迎えに来た天使が、ひょんなことから”天使”の映画を撮る手伝いをする事になり、しだいに友情が芽生えていくお話。
とにかく女の子たちがキラッキラしてるんですよ。ストーリーは少女マンガそのものでありがちだけど、透明感溢れる少女たちもマンガから抜け出てきたような可憐さ。
ヒロイン役の子は新体操をやってるらしく、天使の格好をしてリボンをクルクルしながら舞い踊る様子は、本当に純粋無垢な天使みたいでした。
つくりものの翼と、白いひらひらした衣装、そこから覗く綺麗な脚がまたいいんだ。さすがJKって感じで(おっさん目線 笑)
ふたりできゃっきゃ遊ぶ様子はとても自然で、こういう女の子の笑い声っていいなぁと思ってしまいました。
友情と恋、夜中のプールや花火、そして別れと…?
青春ドラマの要素を短い時間にきれいにまとめあげて、後味爽やか。
”雰囲気映画”以上のものがあったと思います。

映画「ゴーストたちの恋愛指南!/ゴースト・オブ・ガールフレンズ・パスト」観た

 | ファンタジー  com(3) 

ゴーストたちの恋愛指南!/ゴースト・オブ・ガールフレンズ・パスト
原題:GHOSTS OF GIRLFRIENDS PAST
製作:アメリカ’09
監督:マーク・ウォーターズ
ジャンル:★ロマンス/コメディ/ファンタジー

【あらすじ】独身貴族を謳歌していた人気カメラマンのコナーは、弟ポールの結婚式のリハーサルで幼馴染みのジェニーと再会する。一方、色恋の師匠でもあった亡き叔父ウェインの亡霊が彼の目の前に現われ、間もなく3人のゴーストが現われると告げられるが…。

クリスマス・キャロル」の色欲バージョン!
これが予想に反してよく出来ていて、現代風に上手くアレンジしてあり観やすいし、コミカルかつ感動できる作品になってました。
まず主人公は強欲男ではなく、モデルの女の子たちを取っ替え引っ替えして、秘書にデートや別れ話の予定を管理させるクズなプレイボーイ。
そんな彼が、唯一の肉親である弟の結婚式に招かれ、そこで亡き叔父の霊と三人の女性の霊と出会っていき、何故彼が今のようになってしまったのか探っていくんですね~。
ベッドごと過去に移動したり(たぶん撮影にはベッド型の車を使ってる)、今まで付き合った女性すべてがずらーーーーーっと並ぶ空間に連れて行かれたり、涙やティッシュやとんでもないものが降ってきたり(笑)と、ファンタジーな演出が光ります。
「今まで泣かせた女の涙だ」、「女の涙が乾くまでに使ったティッシュだ」という師匠(叔父)のセリフもロマンティック!
とくに良かったのが”未来”の世界で、幸せいっぱいの人々と、孤独な自分と弟という対比は自然だし、主人公ほど極端な人生を送らなくてもあり得る未来なので想像しやすかった。
傷つくのを恐れて長年隠し続けていた本当の想い、そして弟を想う気持ちが、彼を改心に導きます。
改心した彼が過ちを正すために奔走する姿、心からの言葉、彼女への想いが本当であることの証拠にウルウル!
まさかの人物がブーケを勝ち取るラストも楽しく、笑って観終える事ができました。

映画「奥様は魔女(1942)」観ました

 | ファンタジー  com(4) 

奥様は魔女(1942)
タイトルバックの映像。お人形さんで、実際はモノクロでした。
原題:I MARRIED A WITCH
製作:アメリカ’42
監督:ルネ・クレール
原作:ソーン・スミス
ジャンル:★ファンタジー/ラブコメ

独立以前の17世紀アメリカで、火刑にされ樫の木に封印された魔法使いの父娘がいた。1942年、ひょんなことから封印が解け復活した父娘は、仇の子孫ウォレスが知事選と結婚を控えていると知り…。

魔女狩りから始まってどうなることかと思ったけど、本当に魔女なうえに、体を失ってもへっちゃらで、ほのぼのコミカルで楽しく観られました。
何せ、煙の姿で復活したのに、箒で飛べるわ魔法は使えるわ、何不自由してないんですよ。煙の姿で箒に乗る仲良し親子や、(彼らが隠れた)二本の瓶がおしゃべりする様子はけっこう斬新(笑)
惚れ薬のくだりはお約束なものの、ご先祖様の肖像画の使い方が上手くって、CGとかなくてもちゃんとファンタジーしてるんですよ。
長い事封印されていたので若者言葉がわからず、「何を話しているんだ?」とふたりで悩むシーンも笑えました。
いちおう悪い魔法使いなので、肉体を得るために火事を起こしたり、父親が主人公を陥れるやり方はちょっと怖かったりしますが、ふたりともなんか憎めないんですよね~。

魔女ジェニファーの復讐も、結婚が上手くいかない呪いをかけたり、ウォレスを虜にした上で拒絶しようと企んだり、ほんのり彼への想いが感じられるチョイスです。そのおかげか「愛は魔法より強いの」というセリフも説得力ありました。
お父さんもね~、怖いといえば怖いんだけど、「男は結婚すれば不幸になるのは当たり前」というセリフや、酔っ払って呪文が思い出せなかったりするところは普通のおじさん。娘に罰として樫の木に戻れと言った時だって、自分も一緒に戻ろうとするあたり良いパパさんという感じでした。

古い作品なのに、今まで観た「奥様は魔女」とはぜんぜん違って、新鮮な気持ちで楽しめました。
ジェニファーも可愛いし、これが一番好きかも!

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「悪魔の美しさ」観ました

映画「ハーヴェイ」観た

 | ファンタジー  com(4) 

ハーヴェイ
原題:HARVEY
製作:アメリカ’50
監督:ヘンリー・コスター
原作:メアリー・チェイス
ジャンル:ファンタジー/ドラマ/コメディ

グレンドーラの町。父の遺産で何不自由のない生活を送る未亡人は、現当主で弟のエルウッドのことで悩んでいた。彼にはハーヴェイという見えない巨大ウサギの親友がおり、誰彼構わず紹介しまくるのである。娘の嫁の貰い手がなくなると心配した彼女は、弟を精神病院送りにしようと決意し…。

いまだに続いてるファンタジー企画第6弾。一度はやめようと思ったんですが、参考画像が手に入ったし、書きたい事も整理できたので記事にしてみました。
ネタバレありま~す。
前半は病院スタッフの言動が怖くて引いてしまいました。彼らに病人(危険人物)認定されたら、家族の許可があろうがなかろうが、容赦なく病院にぶち込まれます。まるで犯罪者を扱うような言動で「これは風刺だから」と自分に言い聞かせながら観たものの、この時代のアメリカなら十分ありそうで笑えなかったです。

でも後半は、幻覚だと思われていた”ハーヴェイ”が、辞書を介して会話したり、耳用の穴の開いた帽子の存在、小銭入れ紛失によって良い流れになるなど、ハーヴェイの存在をほのめかすあれこれが素晴らしい。
ハーヴェイの姿が見られるのは肖像画だけで、それを描いた画家とのやりとりを想像すると楽しかったです。きっと最初は見えなかったけど、エルウッドと話すうちにだんだんと見えるようになって、最後には院長みたいな優しい目をしながら描いていたんだろうな。
終盤、弟を思う姉の愛が染みます。まあ、あれだけバカをしでかした連中に「注射一本で治る」なんて言われても信用できる訳がないんですが、彼女はそれを信じた上で「治っても弟が別人のようになってしまうのは嫌だ」と決断したのが素敵です。
エルウッドとハーヴェイを中心に、ハチャメチャに騒いでいたひとたちが、最後には幸せそうな安らかな表情を浮かべていて、なんだか温かな気持ちになれました。

ただ、エルウッドは酒の量を控えないと本気で人が変ることになるのでは…と一抹の不安が。お姉さんがちゃんと頼めば大丈夫だとは思うけど…。
しかしながら、コメディだから、風刺だからとは思ったものの、”ファンタジーだから仕方ない”とは一度も思わなかったところは、とても素晴らしかったと思います。

映画「テラビシアにかける橋」観ました

 | ファンタジー  com(16) 

テラビシアにかける橋
原題:BRIDGE TO TERABITHIA
製作:アメリカ’07
監督:ガボア・クスポ
原作:キャサリン・パターソン
ジャンル:★ファンタジー/アドベンチャー/青春

田舎の町の貧しい家庭に育った小学5年生の少年ジェス。孤独な日々を過ごしていた彼は、隣家に引っ越してきた想像力豊かな少女レスリーと出会い仲良くなっていく。やがて小川を越えた森の中に、ふたりだけの空想上の王国“テラビシア”をつくり上げ…。

もう3月ですが、もう少し続きます。ファンタジー企画第4弾!
あの場所と、子ども達の信じる心が描き出すファンタジー世界が素晴らしかったです。
森が応えてくれているかのように、鮮やかに広がっていく想像の世界。最初は逃避の場所なんだけども、後半いじめっ子だった女の子と似たトロールが仲間として現れるなどの変化が。自分の心と向き合う場所でもあるんです。
こんな想像の世界を共有できる親友レスリー。彼女に自分と同じ部分を見出す瞬間が印象的です。彼女の感想文に想像力を掻き立てられ、彼女がつむぐ言葉に引き込まれていくのを、目に映る魚や彼女の口元からでてくるあぶくで表現してました。
ちょっと前までは、大好きな音楽の先生に見とれて、歌うのも忘れてたくらいなのに、彼女と出会ってからは少しづつ自信をつけ、先生への態度が男前に変わっていくのも良かったです。(音楽の授業では、いじめっ子もいじめられっ子も関係なく、みんなで楽しそうに歌っていて、この先生が地味に凄い!)
↓以下ネタバレ注意!

終盤の事件はショックでしたが、ご丁寧に2回もそれをにおわせるシーンを入れてくれたし、そもそもあのロープで行き来し始めてからハラハラしっぱなしだったので、ショックな反面、酷い話ですが「メイベルじゃなくて良かった…」とホッとした部分もあったり。
やっぱりキケンがあるものを”楽しいもの”としてだけ描くのは引っかかるし、何より映画的に意味のあるものだったのでなんとか受け入れられました。
今までジェスが知らなかった大人たちの優しい一面が、彼を少しづつ悲しみから引き上げていくのを、短い時間ながらしっかり描いてます。お父さんと担任教師の優しさが…(涙)
想像の世界も素敵だけど、それを共有する人がいるからこそ素晴らしいんだと気付いたジェス。あの美しい世界を蘇らせたメイベルと彼の笑顔に胸がいっぱいになりました。

映画「赤い風船」観ました

 | ファンタジー  com(6) 
Tag:フランス 

赤い風船
原題:LE BALLON ROUGE
製作:フランス’56
監督:アルベール・ラモリス
ジャンル:★ファンタジー

【あらすじ】モンマルトルの町。ある朝、登校中の少年が街灯に絡まった真っ赤な大きい風船を拾う。彼はその風船を気に入り、大事に大事に扱っていたが…。

チャップリン作品のオンエアに合わせて、一人サイレント映画祭りをやってたんだけど、これはサイレントじゃなかったわ。セリフが極端に少ないだけで。
でも、借りて良かったです。まさか風船に萌える日が来るとは!
とにかく真っ赤な風船に胸キュンでした。主演の男の子も普通に可愛いんだけど、たとえ誰が演じていたとしても、私はこの風船以外目に入らなかったと思います。
いちおう何も知らずに観るのが一番いいと思うので、未見の方は以下のネタバレ感想は読まない方がいいかも。

最初は風もないのによく揺れる風船だなぁと思ってたんですが、少年が風船を誇らしげに見せびらかしながら学校へ行ったり、雨が降れば強引に大人の傘に風船を入れて守ったりする微笑ましい光景に、とくに気にせず見ていました。
それが、母親によって風船を屋外に出されて「これは少年は泣いちゃうかも」と思っていたら、何故かフワフワと中空に漂い続け、少年が窓を開けたとたんにすす~っと近寄って来たんですよ。もう、その瞬間に「やられた!」と思いました。
少年が大事に大事に扱っていたせいなのか、最初からそういうものなのか、まるで子犬のように風船が少年にじゃれつき始めます。風船なんて丸くて紐がついてるだけのものなのに、近寄ったり離れたり周りをふわふわしたりしているだけで、十分すぎるくらい風船の気持ちが伝わってくるんですよね。はっきり言って、少年より演技の上手い風船でした(笑)
舞台であるパリの雰囲気も良く、生活感あふれるモンマルトルの町並と細く入り組んだ通路、遠くに見える立派な建物などが魅力的です。
その町に溶け込むように、ガラクタ市で少年が女の子の肖像に目を留めたり、風船が鏡に映る自分の姿に興味を示したり、青い風船を持った女の子と出会って風船同士がじゃれあおうとしたり…。これが普通のペットならなんでもない光景なんだけども、風船であるというだけでこんなにもファンタジックで楽しいものになってしまうとは!
終盤は自分がどれだけ風船を大好きになっていたのか思い知らされました。たった30分程度の作品なのに、この胸の痛みは…。幼い頃、自分の風船が割れてしまった時のなんとも言えない寂しさがよみがえってくるようです。
ラストは主人公以外の子供が可哀相だったけど、きっと少年を赤い風船のいるところに連れて行って、きちんとお別れがすんだら帰ってくるだろうと思えました。
名作です。

ちなみに、同時収録の「白い馬」も良い作品ですが、ラストに想像の余地があまりなくて、残された家族が可哀相になってしまいました…。こちらを先に観とけばよかったなぁ。

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