原題:EL LABERINTO DEL FAUNO/PAN'S LABYRINTH 製作:メキシコ・スペイン・アメリカ’06 監督:ギレルモ・デル・トロ ジャンル:★ファンタジー/ドラマ/ホラー
【あらすじ】1944年、内戦終結後のスペイン。母カルメンと新しい父親ビダル将軍の元へやってきた少女オフェリアは、ゲリラの鎮圧にあたる冷酷な父を嫌っていた。ある夜、彼女は妖精に導かれ、迷宮で牧羊神パンと出会う。彼は、オフェリアが地底の魔法の国のプリンセスの生まれ変わりだと言い出し…。
もうすぐ次の企画なのに肝試し大会6作品目。ホラーっていうよりファンタジーですけど。 この雰囲気好きですね~。「不思議の国のアリス」を思いっきりダークにした感じ。 中盤に出てくる化け物だけは悪趣味(見方によっては遊び心があって可愛い?)で、このために万人受けしない作品になってる気もします。でも、登場シーンは短いので、キモいモンスターが苦手な人でも頑張れば観られるかな。 その他のファンタジー要素はほんのり怖い雰囲気があって、昔のマペット系モンスターを思い出しました。彼らより、オフェリアの義父の方が怖いかも。 現実の殺し合いとダークファンタジーのバランスが素晴らしい作品ですね。それでいて、オフェリアの母親と弟への愛情や、ゲリラに協力するメルセデスたちの悲しみなんかも良く描かれていて。 ラストの解釈も色々あるようですが、わたしは妖精たちの姿や王妃様の姿に、とくに意味はないと思ってます。よく不思議な存在が”子供たちが信じないと存在できない”っていうのがあるじゃないですか。あれって、人間とコンタクトを取れる形になる事を”存在できる”と言ってるだけだと思うんですよ。大昔から姿のない不思議な存在はあったけれど、人間が誕生してから、人間の想像した名前や姿かたちを借りる事で、人間と関わるようになったみたいな。 なので、オフェリアの読んでいた本や、彼女の記憶から姿や物語を借りて、ファンタジーを必要としていた彼女を救ったんじゃないかと。 幾つかの別れが悲しいものの、私的にはハッピーエンドとして観られました。好きな作品です! ちなみに、原題は「ファウヌスの迷宮」。ギリシャ神話のパンに対応するのがローマ神話のファウヌスなんだとか。
関連記事 「クロノス(1992)」観た 製作:アメリカ’89 原題:THE ADVENTURES OF BARON MUNCHAUSEN 監督:テリー・ギリアム 原作:ゴットフリート・ビュルガー ジャンル:★アドベンチャー/ファンタジー
【あらすじ】18世紀後半の「知性の時代」、ドイツはトルコ軍の攻撃に晒されていた。そんななか、劇場では『ミュンヒハウゼン男爵の冒険』が興行されていたが、突然本物のバロンを名乗る老人が乱入。彼は、今回の戦争の原因は自分にあると主張。一座の娘サリーや女優らに頼まれ、街を救うと宣言するのだった。
すごいファンタジックな反戦映画でした。「ほら吹き男爵の冒険」はぜんぜん知らないんで原作もそうなのかはわかりませんが、バロンが夢と希望の象徴、サリーが未来を担う子供の代表というところでしょうか? そんな夢と希望の象徴のごとく描かれるバロンも、この世に絶望して死にたがってるというのがなんとも…。死神さんが忍び寄るたびに、少女サリーが追い払います。(弱いな死神!) 冒険するたびにバロンが若返るという設定も面白いですね。最初に向かうのはなんとお月様!スケールが違います。 そこには首を取り外せる王様と王妃様がいて、王様の方は頭と体(主に下半身)の意見が一致せずケンカばかり。バロンを救うため、王妃の頭が変な声をあげながらベッドから抜け出してくるんだけど、サリーが汚いものを見るような目で一瞥するのがウケた。女の子はあんな顔しちゃいけないよ! 実は、よりによってここだけ子供の頃に見た記憶があって、この作品だったのかと懐かしくなりました。 他にも、一度見たら忘れられないのが、ユマ・サーマン演じるヴィーナスの登場シーン。例の貝から生まれる絵画の再現で、実写化したらバカっぽい雰囲気になるかと思いきや、意外とサマになってました。バロンとの空中ダンスシーンも幻想的で素敵。 またか、と眉間に皺を寄せて連れ戻そうとするサリーも健気で可愛いです。 他にもいろいろあるんだけど、ハチャメチャしつつも、どこもかしこも凝ったつくりで 、この世界観を味わうだけで楽しい作品でした。
関連記事 「フィッシャー・キング」観ました 「12モンキーズ」を観たら… 製作:日本’82 監督:大林宣彦 原作:山中恒 ジャンル:★青春/コメディ/ファンタジー
【あらすじ】面白かった。 ヒロイン役の小林聡美は現在とほとんど変わらなくてびっくり。顔の見分けが苦手な私でもすぐ気付いたくらいだからね~。演技が素晴らしくて、本当に中身が男の子になったみたいでした。途中、乳見せしつこいよとも思ったけど、あのあけっぴろげな様子があってこそだったのかな? 男の子の演技も地味ながらよくて、あの”なよなよ”をずっと観てたら冒頭の彼を忘れてしまいました。女の子座りができるとか! 俳優として”自分じゃない、性別も違う人間”を演じてるんだけど、その役柄も”自分じゃない、性別も違う人間になったキャラクター”だなんてややこしいですよね。その苦労やトラブルを面白おかしく描いていたと思います。 最後まで元に戻る方法を考えたり試したりはしてなかったし(笑)、彼らの秘密を知った友人もとくに役にたったわけでもないけど、青春っぽい悩みでいっぱいいっぱいなのも良かった。 ただ、冒頭とラストでモノクロ/カラーが切り替わる意味がよくわからなかったなぁ…。冒頭は良かったけど、確かな絆を築いた後にモノクロに戻ってしまうのは、なんかしっくりこないです。 最後にひとつ、イラストで「ん?」と思った方は、オンマウスプリーズ!
関連記事 映画まとめ感想「異人たちとの夏」 製作:アメリカ’84 原題:THE BRIDE 監督:フランク・ロッダム ジャンル:ロマンス/サスペンス
醜いモンスターに続き、女性の人造人間を造り出したフランケンシュタイン博士。イーバと名付けられ、博士が教育する事に。だが、彼女が自分のものではないと知ったモンスターは、屋敷を飛び出し、偶然出会った小人と共に旅に出て…。
何も知らずに観始めたんだけど、観たいな~と思っていた「フランケンシュタインの花嫁」…のリメイクでした(惜しい!) 完璧な美しさを持つイーバの役者さんに見覚えがあると思ったら「フラッシュダンス 」のヒロインですね。この作品でラジー賞もらったんだとか。まあ、完璧と言われると「ん?」って感じですが、当たり前の事ながら綺麗だし、そこまで悪くはなかった気がします。 作品としては、やや雑なものの、それなりに楽しめました。モンスターことヴィクターと、彼に友情とか、夢をあきらめない事、人生の素晴らしさなどを教える小人リナルドの、心温まる交流が良かったです。はっきり言って、ヒロインと博士のパートが邪魔だと思えるくらい、リナルドが良かったです。…あ、だからラジー賞なのか! 「お前みたいに優しくて良いヤツはいない。」とヴィクターを励まし、一緒にサーカスに入って、人々に受け入れられる事を教えたリナルドが、ホント良い味だしてました。 にしても、悪役の博士がド変態でしたね~。自分の手で死体を継ぎ合わせて作ったイーバに欲情するなんて! 彼の手伝いをしていた召使たちは、内心どう思っていたのか? 一人解雇されてたけど、口外されたらどうしようとか思わないんでしょうか。人造人間の話は信じなくても、ネクロフィリアだという噂くらいは広まりそうなのに…。
関連記事 「フランケンシュタイン(1931)」観ました 製作:アメリカ’90 原題:EDWARD SCISSORHANDS 監督:ティム・バートン ジャンル:ファンタジー/ロマンス
【あらすじ】完成間際に生みの親が亡くなり、手がハサミのまま山頂の屋敷に取り残された人造人間エドワード。セールスに来た心優しいペグに発見され、彼女の家で暮らす事に。やがて、町の人気者となり、彼はペグの娘キムに恋をするが…。
久し振りに観てみました。ちょっと思い出補正がかかってたみたいで、終盤は若干「あれ?」という感じでした。面白くなかったわけじゃないけど、想い出のままにしておいた方が輝いていたかも。 とりあえず、冒頭からティム・バートン作品とは思えない明るいパステルカラーの住宅街が並び、「お?」と思っていたら、そのすぐ目の前にそびえ立つ山の異様なこと(笑) 見た目的には鬼でも住んでそうな山なんですけど、実際にはピュアな人造人間エドワードが、一人で美しい庭を手入れしたりしながら暮してるんですよね。それに比べて、街に住む人々は裏表のある自己中心的な人ばかり。そのギャップが面白い。 例外的存在ペグは、わたしの記憶より素晴らしかったです。人気者から一気によそ者扱いになったエドワードに、「専属の美容師がいるんですもの」と言って何度も髪のカットを頼む優しさ! 出会うのが20年早かったら、キムじゃなく彼女と恋に落ちてたかも? でも、心優しい彼女も娘のキムも、男を見る目がないのが残念。心ここにあらずな旦那は、よそに女でもいるんじゃないかと疑ってしまいました。 キムの方も本当に悪い男に騙されてて、エドワードと出会ってなければどうなっていた事か。ラストは切ないものの、ふたりともかけがえのないものを手に入れて、雪景色もひときわロマンティックでした。 …どうしてよりによってハサミを手の代わりにつけてしまったのか、そんな不粋な事はとても訊けないです!
関連記事 「エド・ウッド」観ました 「バットマン リターンズ」観た 製作:イギリス・アメリカ’06 原題:PENELOPE 監督:マーク・パランスキー ジャンル:コメディ/ロマンス/ファンタジー
【あらすじ】イギリスの名家、ウィルハーン家の一人娘ペネロピは、先祖が魔女から受けた呪いによって豚の鼻で生まれた。呪いを解く唯一の方法は、先祖の同類”名家の人間”による真実の愛。母親に言われ、お見合いを続けるペネロピだったが…。
わりとあっさり目なお伽話でしたが、ふつうに楽しめました。ペネロピがキュートですよね。豚鼻でもぜんぜん可愛いです。 コメディなんで、その鼻を見た時の殿方の反応がダイナミック。ギャーと悲鳴を上げて、二階の窓をぶち破って爆走し、それをスニーカーをはいた執事がダッシュで追いかけて捕まえます(笑) 彼女を化物扱いする男には「そこまで?」と思いましたが、きっと金目当てで彼女に近づいた男には、そういう風に見える呪いなんでしょう。そう考えると、マックスも最初の段階で顔を見ていたらやばかったかも? 執事には終盤驚かされる事もあって、ロマンスとしてはやや弱かったけれどファンタジーとしてはなかなか。 呪いの本質がどういうものかという設定も良かったですが、あの母親が突っ走りすぎて逆に先が読めました。娘を守るためと言いつつ、自分のことばかり考えている彼女の姿は、妙にリアルなんですけどね~。 にしても、理解者っぽい父親も、結局は母親と変わらなかったと思うと哀しいものがあります。影薄かったし、金持ち設定を保つためだけにいたような…。 でもまあ、家出中に出会った女の子との友情や、ペネロピをつけねらう記者が見せる良心など心温まる瞬間もあり、ほのぼの笑って観られました。クリスティーナ・リッチが好きなら、より楽しめると思います。
製作:アメリカ’04 原題:NOEL 監督:チャズ・パルミンテリ ジャンル:★ドラマ/ファンタジー/ロマンス
クリスマス・イヴのNYで、孤独を抱えた人々。仕事とアルツハイマーの母親の看病に明け暮れるローズ。度を越えた嫉妬で婚約者ニーナを追い詰めてしまった警官マークと、そんな彼に付き纏う老人アーティ。14歳の病院でのパーティを忘れられないジュールズ。彼らににささやかな奇跡が訪れる。
これも再見しようと録画していたものです。昔見た時は調子が悪くて内容が頭に入ってこなかったけど、今回はじっくり浸れました。いいですねー、このじわじわ感動がこみ上げてくる感じ! ここで起こる奇跡というのがとてもささやかで、それをつかむ事ができたのが、それぞれの優しさのおかげっていうのが心に染みます。それは、一人ぼっちで寝ている見知らぬ患者に心から「愛してる」と声をかけるだとか、居たたまれなくて出て行ったひとを追いかけるだとか、苦しむ老人の話をきいてあげるだとか、感謝の気持ちを伝えに来るだとか、そんなほんの小さな優しさ。それらの優しさが、周りの人を幸せに向かって歩きだせるようにして、それがめぐりめぐって自分にも還ってきます。 それまで描かれてきたそれぞれの孤独があるから、その小さな奇跡がとっても大きなものに感じられ、心があったかくなりました。 ただ、残念だったのはジュールズのエピソード。他と絡んでないし、彼の優しさは描かれないし、観終わってから名前思い出せないし、ネットで調べようと思ってもほとんどのサイトで省略されてるし(笑) もっと時間割いて、同じ病院という以外の繋がりも、もうほんの少しだけ多くてもよかったような。見逃しただけかな~?
製作:アメリカ’78 原題:HEAVEN CAN WAIT 監督:ウォーレン・ベイティ、バック・ヘンリー ジャンル:★ドラマ/ファンタジー
【あらすじ】交通事故に遭った、前途有望なプロ・フットボール選手ジョー。天界で目を覚ました彼は、自分の死が間違いだったと知る。天界は殺されたばかりの若き実業家の体を彼に提供。全く新しい人物となり、彼は再びフットボールの世界に乗り出す。
最初の展開が、お気に入りマンガ「悪魔という名の天使」とほぼ同じで、この映画からアイデアをもらって描いたのかとビックリしてしまいました。まあ、似たような話はよくあるんですけど。 でも、一時は気が逸れてしまったけど、観ていくうちにどんどん引き込まれて、いつの間にかマンガの事は頭から消えて楽しんでました。飄々としていて、すごく単純かつ素直な理由で”一時の宿”を決めてしまう主人公が大好きです。 殺人犯が側にいるという、かなりサスペンスフルな状況のはずなのに、今まさに生を謳歌している彼の眼中にはありません。主人公が見えない天使と物置で話す様子や、事業の方針をフットボールに例えて納得させてしまうシーン、いくら殺しても死なない(失敗してるだけ)主人公に脅える犯人など、コミカルに描かれていました。 そして、唯一事情を全て理解してくれた、フットボールの敏腕コーチも大好きです。最初は”ビョーキ”扱いしてくるものの、主人公得意の(?)サックスを聴いて、心から喜んでくれます。私たちからみると、主人公はずっと同じ人が演じているから彼は彼のままなんだけど、コーチから見たらまったくの別人。それを受け入れてくれた事と、主人公が頼ったのが彼だけというところに、深い友情を見ました。 最後、全てを悟ったコーチと、愛する人の存在を感じ取ったヒロイン。切ないながらも、心の奥がじんわりあったかくなるラストでした。 原題は「天国は待ってくれる」。他の関係ない作品と被ってしまうので変えたみたいですね。オリジナルの「幽霊紐育を歩く」もいつか観てみたいです。
<追記感想:2016/3/10> やっぱり面白いです。そして感動的! 感想は初見時とほぼ同じですね~。主人公が本当に好感を持てるキャラクターで、テンポ良く話が進んで色んなことが上手くいっても納得できてしまうんですよ。 会社の会議で重役たち?を納得させてしまっても、ヒロインと出会って3回目で両想いになっても、フットボールチームにすぐ打ち解けても、彼自身の頑張りと人柄が十分伝わってくるので、す~っと受け入れられます。 コミカルとシリアス、そしてロマンスとファンタジーのバランスも絶妙ですし。 あと、結構追い込まれた状況なのにラブラブな殺人犯ふたりに和みました。 ラストはどうなるかわかってても涙が…。とくにコーチが「ジョー、…ジョー」と呟くところは、二度も親友を失ったような気持ちなのかもしれないと思うと切なくて。 でも、元の肉体の持ち主がコーチと知り合いだったからそっけなく感じただけで、しばらく一緒に過ごせばヒロインに特別な何かを見出したようにコーチとの友情も元通りになりますよね! ふたりの友情は不滅です♪
製作:アメリカ’93 原題:GROUNDHOG DAY 監督:ハロルド・ライミス ジャンル:★コメディ
【あらすじ】聖燭節のお祭りを取材するため、嫌々田舎町へきた天気予報士のフィル。おざなりに仕事を終え、町を出ようとするが、吹雪で足止めされて一泊する事に。だが、翌朝目覚めると昨日とまったく同じ一日が始まり…。
ちょくちょくオンエアされていて、ちらほら何度も観た作品で、しっかり最初から最後まで観たのは初めてだったかな? 後半から覚えてませんでした。 内容は、自分の事しか考えてない嫌われ者のおっさんフィルが、なぜか聖燭節のお祭りの日から抜け出せなくなって四苦八苦するお話。 前半はやけくそになって好き勝手やる様子を、テンポよく見せていきます。前から気になってた美人プロデューサー・リタを口説こうと躍起になるところでは、失敗するたびに次の日にやり直すんだけども、編集でテイク1テイク2みたいにつなげていくところが面白い。けっきょく毎回口説けなくてビンタで終わるとこも、連続で見せられると迫力が凄いんですよね~(笑) でも、いくら好かれようと嫌われようと、朝起きれば何事も無かったかのように同じ一日が繰り返される虚しさ…。一度とことんまで絶望して、そこから新しい自分を発見していく過程は、案外考えさせられます。 読書やピアノなど新しい事に挑戦していくうちに、新しい自分を発見して、自然に優しさを見せるようになっていくフィル。一体、何年分の日々を過ごしたのかはわかりませんが、まるであの町が彼の故郷であるかのように変わっていき、周りも彼を受け入れていく様子に、あたたかい気持ちになれました。 原題は「グラウンドホッグデー」、ジリスの一種グラウンドホッグ(ウッドチャック)を使った春の訪れを予想する天気占いの行事のこと。邦題は評判悪いけど、わたしはけっこう好きです。
関連記事 「悪いことしましョ!」観た 製作:香港’03 原題:地下鉄 監督:ジョー・マ ジャンル:★ロマンス/コメディ/ファンタジー
【あらすじ】ある偶然から、胡散臭い結婚相談所を経営するヤッミンと出会った盲目の女性ホイヤ。だが彼は、新開発の痩せるジュースを飲んだ翌朝に失明してしまう。友人に八つ当たりし閉じこもる彼を、ホイヤは杖となり外に連れだすのだった。
時期外れにも程があるけれど、クリスマスの奇跡を描いたラブ・ファンタジーです。微妙にちぐはぐした感じがあり、サブストーリーの方はわかりにくかったりするんですが、ほのぼのラブストーリーにキュンキュンできました。 もう、二人が可愛いんですよね。街の音を言い当てるゲームをしているうちに、彼女の音ばかり気になってしまったり、触っただけで自分のものだとわかるようにシールを貼っていて、お互いにシールを貼り付けあったり、拒絶反応がぎりぎり出ないくらいのむず痒い恥ずかしさがツボ。 彼らの周りにいる人たちもいい人ばかりで、とくにホイヤの父親がナイスでした。ケンカした二人を引き合わせる方法がロマンティック! 娘想いのいい父親です。 あと、幼い頃に視力を失ったホイヤの描く、夢の世界が素敵です。一面の花畑に囲まれた駅にはオレンジでお手玉をするピエロがおり、到着したおもちゃの電車がビルの谷を走りぬける。原案が絵本だということで、ファンタジックな可愛い世界になってました。
サブストーリーは、失恋した男女が(天使の計らいによって)間違って届けられたメッセージカードをきっかけに、心を通わせていくというもの。こちらはコミカルな要素はなく、せつない言葉の数々もあっていい雰囲気。でも、つながりが唐突でわかりにくいのが難点か。 それと、天使は姿を見せないほうがわかりやすかったかな(普通の青年なんだもの)。 ちょっと強引だし混乱するところもあるけれど、クリスマスに観たくなる心温まる作品でした。
読み:びっぐふぃっしゅ 原題:BIG FISH 製作:アメリカ’03 監督:ティム・バートン 原作:ダニエル・ウォレス ジャンル:★ファンタジー/ドラマ/コメディ
【あらすじ】幼い頃から聞かされてきた父親のおとぎ話のような冒険談。それを結婚式でも披露されてからウィルは父親と口を利かなくなった。3年後、父の病状が悪化したと報せをうけ妻と実家へ帰るが、そこでも”事実”を話してくれなくて…。
ビックリするほど心が和むファンタジー世界を堪能できました。見上げるほどの大男に隻眼の魔女、狼男につながった双子など、自分の昔話をここまで楽しく聞かせられるというのは凄い才能だと思います。まあ、息子が本当のことを知りたがっているのに、あそこまで頑なに隠そうとする父親の気持ちはよく分からなかったんですが…。 ”魔法”が解けてしまうような気がしたんでしょうか? でも、その解けかかった”魔法”をふたたびかけたのは、”親子の愛情”でした。 じんわりあたたかいラストが心に染みます。
関連記事 「マーズ・アタック!」観ました 読み:あくまのうつくしさ 原題:LA BEAUTE DU DIABLE 製作:フランス/イタリア’49 監督:ルネ・クレール ジャンル:★サスペンス/ドラマ
【あらすじ】勤続50年で退職を迎えるアンリ・ファウスト教授に、魂を狙う悪魔が囁く。しかし、一向に誘いにのらない彼に、痺れを切らした悪魔は無償で”若さ”与えた。それを満喫するアンリだったが、消えた”ファウスト教授”の殺人容疑をかけられ…。
わかりやすいのに意外と考えさせる内容で、なにより面白い作品でした。 主人公を陥れようとする悪魔メフィストフェレスが、自分で”二流悪魔”と言ってるだけあってけっこう間抜けで憎めないところがあるんですよね。仕事を忘れアンリの老いた身体で”人間の快楽”を堪能したりしてました。でも、飴とむちの要領でしだいにアンリの心を欲望まみれにしていく様子は、さすが悪魔といった感じです。 若さ、金、名誉…そして女に権力。 どんなに強い心の持ち主でも、これだけのものを与えられれば変わってしまうものですよね。 アンリたちが錬金術を発表し国中に金をばら撒いて喜ぶ国王たちや、これで世界中の飢えをなくすと言ってるアンリの姿が滑稽でした。
関連記事 「奥様は魔女(1942)」観ました 読み:ちゃいにーずごーすとすとーりー 原題:倩女幽魂 製作:香港’87(Iのみ) 監督:チン・シウトン ジャンル:★ホラー/ファンタジー
【あらすじ】雨で帳簿を駄目にした集金屋ニンは、宿代がなく寂れた蘭若寺に泊まることに。その夜、琴の音に誘われ美しい娘シウシンと出会い恋に落ちるが、彼女は妖怪に脅され男を誘い込む幽霊だった。ニンの優しさに彼女は役目を忘れ…。
いろんな要素ぎっしりの娯楽活劇で、3作がっつり観れました。 見どころは、お気楽な雰囲気をかもしつつ二人の恋もしっかり描かれている事。中でも水がめに隠した主人公に空気を口移しするシーンは素敵です。 2作目のキスシーンもある意味ロマンチックでした。(でろでろ妖怪に変わってゆく彼女をキスで救った) でも、妖怪に遺骨を捕られ成仏できなくなった彼女が「助けて、遺骨を生家に戻せば生き返れるかもしれない! 」とか言い出したときには正直「あれ???」という感じでした。さりげなく付け加えて「助ける事=生き返らせる事」にすり替えたようです。しかも、何故生き返れるのか一切説明なし! …まあ、面白いからそんなに気にならないんですけどね。 もう一つの見どころは、妖怪たちの造形&動きです。特にゾンビみたいな奴のぎくしゃくした動きには、愛おしさまで感じました。(わたしだけ?) 他の連中も”モンスター・パニック映画”に分類したくなるような造形で、口がでかくて汚くて触手とかも飛び出しちゃって、モンスター好きには垂涎ものです。それらを魔術で派手に爆破していくのも爽快でした。
こんなにでろでろな妖怪ばかり出てきたのに、観終わって印象に残っているのが幻想的な彼女の姿だという事に驚きです。
読み:ふぇりーにのろーま 原題:FELLINI'S ROME 製作:イタリア’72 監督:フェデリコ・フェリーニ ジャンル:アート/ファンタジー
【あらすじ】イタリア北部で育ったフェリーニが二十歳になって訪れたローマの姿は、学校で教わったものよりはるかに活気に溢れ魅力的なものだった…。
あらすじ見ても何が何だか分かりませんね。簡単に説明すると、フェリーニが見てきたローマを取り留めなく思い出しているという感じです。 面白いかどうかと聞かれればよく分からないというのが本音なんですが、不思議と退屈はしませんでした。映像が賑やかで飽きないんですよね。 でも、”聖職者むけのファッションショー ”はとても楽しかったです。 それはもうパレードのように華やかで、聖職衣を身に付けたおじさんがスケートでくるりと回って去って行ったり、電飾やら骸骨やら出てきたと思ったら、ついには「紅白かよっ」と言いたくなるようなきらびやかな法王(みたいなひと)が登場!! …観覧席の方々は泣いていました。 とまあ、鈍い私はここら辺まで観てやっと”事実だけを描いているわけじゃない”と気付いたわけなんですが、結局”外気に晒された途端フレスコ画が消えてゆく”シーンはどっちなんでしょう? 実際にありえることなのかどうか…。無さそうだけど、世の中ビックリする事だらけだしなぁ。
関連記事 「青春群像」観ました 夕陽を見るたびに泣く男 読み:わるいことしましょ! 原題:BEDAZZLED 製作:アメリカ’00 監督:ハロルド・ライミス 原作:ピーター・クック ジャンル:★コメディ
【あらすじ】職場の仲間に嫌われ、想いを寄せるアリソンにも相手にされないエリオット。”彼女と付き合えるならなんでも捧げる”と呟いた彼の前に、美女の姿をした悪魔が現れる。魂と引き換えに7つの願いを叶えるという契約を交わした彼だったが…。
なんにも考えずにただ笑って観られるけれど記憶には残らないだろうなぁ、という感じでした。まあ、そういう映画も嫌いじゃないです。 ファンタジーの定番”悪魔との取引き”を扱っているんですが、コメディらしく主人公の願いは普通には叶いません。彼をあざ笑うかのように、足りない言葉通り正確に、そして言ってない部分は目茶苦茶に叶えてしまいます。 願いはすぐに取り消せるし7つも叶えられますが、それじゃあ「あなたを幸せにするつもりはない」 と言っているようなものですよね。 でも、騙されやすい主人公が気付くわけもなく、全部で5回”もしも”な世界を体験します。その中で見られる主人公の変わりっぷりが可笑しくて、ほとんどコスプレと化してます。でも笑える反面すごく歯がゆいんですよね。「変えて欲しい部分と、それに伴って変わる部分以外は今のままで」 と願えば良かったんじゃないかなぁ。
そういえばむかし読んだファンタジー小説?で「残り二つを言うまで自分が危険な目に遭わないように」 「最後の願いは自分が無事で若いうちに叶えさせてくれ」 と願った後、何百年も3つ目 (この小説では3つまで) の願いを言わないでいるキャラクターがいたのを思い出しました。 …この映画では分厚い契約書があって、願いを言える期間が定められているので全然関係ないんですけどね。
関連記事 「恋はデジャ・ブ」観ました 読み:なるにあこくものがたりだいいっしょうらいおんとまじょ 原題:THE CHRONICLES OF NARNIA: THE LION, THE WITCH AND THE WARDROBE タムナスさんのひげ忘れた…。 製作:アメリカ:’05 監督:アンドリュー・アダムソン 原作:C・S・ルイス ジャンル:ファンタジー/アドベンチャー
【あらすじ】戦争から逃れ田舎の家に預けられたペベンシー兄妹。ある日、末の妹ルーシーが衣装ダンスを通り抜け、魔法の国ナルニアに迷い込む。ホーンという不思議な生き物と友達になった彼女は、悪い魔女が人間の子供を狙っている事を知る。
小学生の頃に全巻読んだはずなのに、”衣装だんすの奥が異世界”という事しか覚えてませんでした。 前半は兄妹全員がナルニアへ来るところまではメルヘンな雰囲気が出ていて良かったです。 特にタムナスさんは好きですね。なんかこう、全身からメルヘンな (彼一人でもナルニアのファンタジー担えるような?) オーラが漂ってます。雪の中で裸にマフラーって、見てる方が寒くなりそうなファッションも素敵です。最後の方でしてるルーシーのドレスと同じ緑色の高そうなマフラー (ポケット付き!?) も良いですが、やっぱり彼には赤いマフラーが似合ってます。
さて後半ですが、どうもついていけない感じがありました。 あの子供らに、何でそんなに期待出来るのか? ナルニア国民にとって四人は”船首の女神像”や”アミュレット”の様なものだったんでしょうが、へっぴり腰で剣を振るう長男が軍の指揮を執るのにはちょっと無理があったんじゃないかと。結局、けりをつけたのはライオンだし。 まあ、最も戦場に似合わなかったのは裸マフラーのタムナスさんでしたけどね。
読み:うーるひゃくぱーせんと 製作:日本’05 監督:富永まい ジャンル:ファンタジー/ドラマ
【あらすじ】ゴミ捨て場で気に入った物を持ち帰り、コレクションするのが日課のおばあさん姉妹。ある日、赤い毛糸玉を持ち帰るが、その糸を手繰って女の子が迷い込む。編んではほぐしまた編んでを繰り返す少女に、二人はアミナオシと名付け…。
不思議な雰囲気のファンタジー映画だと思っていたら、強烈な一撃をくらってしまいました。 気に入った物を拾い大切に使っていた、変わり者おばあさん姉妹。ふたりはまるで子供のようにガラクタたちを愛でています。そこに妖怪アミナオシが加わり、彼女達の生活は引っ掻き回されてゆくのですが、この子がかなりバイオレンスなんですよ。 黙々と編み物をしてたかと思えば、突然…『また、編み直しじゃぁぁぁぁぁ~!!!』 と、まるで空襲警報のように叫びだします。もちろん、夜でもお構いなしに。 その上、姉妹に大切にされ”こころ”を持つようになり対抗してきたガラクタたちを、編み棒攻撃と回し蹴りで無残な姿に… この闘いのシーンは、軽くホラー仕様となっております。 これってホラー映画? と危ぶむ私に、更なるショックが襲い掛かりました。 こんな目に遭ってさぞ悲しんでいるだろうと思っていた姉妹が、なんと自らガラクタを破壊しているじゃありませんか!?
どうやら姉妹は、過去のある出来事により殻に閉じこもっており、これらの破壊行為は前進する為のものらしいのですが…なにも、ここまでしなくても。 妖怪とか出してるなら、”八百万の神”とか”もったいないの精神”とか取り入れても良かったのでは? と思ってしまいました。
« NEW .