忘却エンドロール戦争ドラマカテゴリ紹介

素敵映画に出会えた時の感動をそのまま書き綴る、映画感想ブログ.

映画「みかんの丘(みかんのおか)」

原題:MANDARIINID、TANGERINES
製作:エストニア/ジョージア’2013 87分
監督:ザザ・ウルシャゼ
ジャンル:★戦争ドラマ

【あらすじ】旧ソ連のジョージア・アブハジア自治共和国。ジョージアとアブハジアの紛争で多くのエストニア人が帰国する中、残ったイヴォとマルゴスはみかんの収穫を急いでいた。だが、家の前で負傷した両軍の兵士2人を見つけ、彼らを自宅で看護することに。やがて2人は意識を取り戻し敵の存在にも気付くが、イヴォが「私の家で殺し合いは認めない」と宣言し…。

オススメされたこの作品がちょうどGYAOで無料配信してたので見てみました。静かに染み入る作品でしたね…。
さっきまで殺し合っていた敵同士の二人、そして彼らを助け同じ家で介抱するエストニア人の老人イヴォ。イヴォにとって目の前にいるのは怪我人で、国や宗教なんてものは関係ありません。二人を家に置くことで自分の身が危険にさらされるかもしれなくても、近々ここも戦場になると分かっていても、怪我人を見なかったことにはしないんですよね。

そんなイヴォという人間に触れ、敵同士でギスギスしていた二人も次第に相手を敵ではなく人間として見るようになっていきます。この描写が丁寧でとても良かったです。よく知らない国のことで分かりにくい部分もあったけど(たぶん完全には理解できないだろうし)、最終的には”同じ人間なんだ”と素直に納得できました。

タイトルにもなってる”みかんの丘”の所有者である友人マルゴスも、何気ない一言がじんわり響きました。こんな状況になってもみかんを収穫しようとしているのは、お金のためじゃなくて大事に育てたみかんを腐らせたくないという想いからなんですよね。エストニア人の彼がどういう理由でアブハジア自治共和国に来たのかは分かりませんでしたが、その土地を愛し、みかんを育てた日々を愛していたんだなぁというのが伝わってきました。

ラストではイヴォがここに残り続けていた理由もわかり、この作品が一番伝えたかっただろうことをアハメドと鑑賞者に問いかけます。アハメドの質問にイヴォが茶目っ気ある答えを返し、笑い合う二人の姿が印象に残りました。

映画「人生はシネマティック!」観た

 | 戦争ドラマ  com(6) 
Tag:イギリス 

人生はシネマティック!
読み:じんせいはしねまてぃっく
原題:THEIR FINEST
製作:イギリス’2016 117分
監督:ロネ・シェルフィグ
原作:リサ・エヴァンス
ジャンル:★ドラマ/戦争/ロマンス

【あらすじ】1940年、第二次世界大戦下のロンドン。コピーライター部の秘書だったカトリンは、新作プロパガンダ映画の脚本家としてスカウトされた。ダンケルクの戦いでの双子姉妹の活躍を描く事になった彼女は、画家で傷痍軍人の夫を支えるため必死に映画を成功させようとするが…。

戦争と人生と映画をバランスよく描いた作品。
夢いっぱいのタイトルに惹かれて見たところ、いつ空襲で死ぬかわからない第二次世界大戦下ロンドンの描写が辛くて序盤は後悔しました。でも、そんな中でも人を愛し映画を愛する人々の描写が素晴らしく、最後には「見て良かった」と思えたんですよね。
ナチュラルな魅力のジェマ・アータートンさんと、安定のビル・ナイが好演してます。

実話を基にと言いつつ、制作者側の都合と映画の面白さのために変わっていくストーリー。
「大切なのは信憑性と楽観だ」をモットーに、いろんな人たちの意見を聞きつつ柔軟に物語を組み替えていきます。その”いろんな人たち”の中に双子姉妹が入ってないところが危ういものの、戦時中であること、そして彼らの「いい映画を作りたい」という情熱もあって応援できました。

とくにカトリンを脚本家にスカウトした情報省映画局の特別顧問バークリーの『人生の1時間半を捧げたくなるような映画を作りたい』という一言がグッときます。
戦意高揚映画だろうと、上からの注文で思うように撮れなかろうと、見た人が心から「見て良かった」と思える作品ができるならそれでいいんですよ。やはり映画に携わる人たちにとって一番の喜びはお客さんの笑顔なんだろうなぁ、とほっこりしました。

また、過去の栄光にすがる老俳優も良かったです。最初は我儘なおじいちゃんという感じだったのが、ズバズバ言うエージェントにお尻を叩かれ、カトリンに上手いこと乗せられて若き英雄くんの演技指導まで引き受けることに。
意外と扱いやすいおじいちゃんですが、さすが名優だけあって、彼を立てるために変えた脚本で一気に映画が魅力的に。劇中劇だけじゃ物足りなくて、彼らがつくった作品を見てみたいなと思えました。

残念だったのは、突然の死を二回も描いてしまったことですね。
一度目は本当に突然で戦時中というのはこういうものなのだと考えさせられたのに、二度目はお話の都合で死んだ感が強くて先が読めたし、一気に醒めてしまいました。まあ、それを乗り越えて人々の生活が続いていく描写はどちらも良かったんですが…。

とは言えラスト、映画館で観客たちと一緒になって自分の映画を楽しむくだりは感動的で、とくに思っても見なかったワンシーンにホロリとするところはもらい泣きしそうでした。(その前に泣きそうになったのが、主人を亡くして寂しそうに寝そべるわんこの姿だったり)
映画を作る映画が好きならお勧めです。

映画「戦場のアリア」観ました

戦場のアリア
読み:せんじょうのありあ
原題:JOYEUX NOEL
   MERRY CHRISTMAS
製作:フランス/ドイツ/イギリス/ベルギー/ルーマニア’05 117分
監督:クリスチャン・カリオン
ジャンル:★ドラマ/戦争

【あらすじ】1914年、第一次大戦下のフランス北部デルソー。そこでは数十メートルを隔てて、ドイツ軍とフランス・スコットランド連合軍が対峙していた。やがて迎えたクリスマスの夜、妻と再会し塹壕で歌を披露したテノール歌手のニコラウスは、呼応するようにバグパイプの演奏を始めたスコットランド軍に歩み寄り…。

え、これもしや実話?実話を基にしてるの…?と思いながら鑑賞。マジで実話ですか…すげぇなぁ。奇跡とは人の心から生まれるもんなんだと痛感しました。宗教は争いをたくさん生み出してるけど、純粋な信仰心は奇跡や愛も生み出してるんですよね。戦争に勝つために信仰心を悪用する組織の人たちとの落差にうすら寒くなります。

クリスマスの夜に音楽と信仰心が繋いだ人々の心。死屍累々の戦場で敵味方関係なくクリスマスを祝うくだりは、何とも言えない奇妙な浮遊感がありました。まるで世界から切り離された場所のような。
昨日まで殺し合っていた相手なのに、顔を合わせて酒を酌み交わし話をしてみれば善き隣人なんですよ。相手も自分と同じ人間だという当たり前のことを肌で感じてしまって、戦争という悪夢から目覚めてしまいます。

戦争なんて悪夢のようなもの…。歯車が狂ってしまったのに、食い違いを直さず他の歯車の形を自分に合わせようとするようなものです。それがいかに馬鹿げたことか気付いてしまったら、そう簡単に元の狂った状態には戻れないですよね。
彼らが生み出した奇跡の時間に感動しつつも、そんなに仲良くしたら後が辛いのでは…と不安にならずにはいられなかったのですが、案の定上層部に目をつけられて過酷な戦場へ…。貨物列車の中から響く歌声にやるせなくなりました。

ところどころ誰がどの国の人なのかわからなくて乗り切れなかった部分はあったものの、こういう事実があったこと、美しい戦場のミサ、そしてご近所のにゃんこにドイツ兵とフランス兵がそれぞれ別の名前をつけて可愛がっていたエピソードなどが印象に残りました。
それぞれの国の塹壕を行ったり来たりするくだりはシュールだったなぁ。
観られてよかったです。

映画「ハクソー・リッジ(はくそーりっじ)」観た

ハクソー・リッジ
原題:HACKSAW RIDGE
製作:オーストラリア・アメリカ’2016 139分
監督:メル・ギブソン
ジャンル:★戦争/アクション/ドラマ

【あらすじ】アメリカの田舎町で育ったデズモンド・ドスはある日、事故に遭った人を助け、看護師のドロシーと出会う。第二次世界大戦が激化する中、彼は衛生兵として国のために戦いたいと思い立つ。だが「汝殺すなかれ」を信条とする彼は銃の訓練を拒絶し、上官や他の兵士たちはそんな彼を追い出そうとし…。

この作品のことは公開当時に何となく聞いていて「自分の手で殺さなくても、彼が助けた人たちが人を殺す」という矛盾を私がどう受け止めるのかなぁと思いながら鑑賞。うん、そもそも戦争で戦う人はほとんどが矛盾を抱えてるんだから、彼と変わらないよね。ほとんどの人は「殺したくないけど、生きるため、大切な人を守るために敵を殺す」という矛盾を抱えているはず。

彼は「戦争が人を殺すものだ」という事実を受け止めた上で、自分ができることをするため自ら戦場に向かいました。信念を曲げて他の人たちと同じように戦ったとしても、きっとすぐに死んでいたと思います。
生き残っても魂が病んでしまったら意味がない(守りたかった家族を傷つけてしまうから)と父親を見て痛感していたからこそ、周りの顰蹙を買っても信念を貫いたし、結果、それが隊の結束を強めた……。
何だかんだで理にかなった判断だったと思います。

勉強でも仕事でも、納得できない方法を押し付けられてやっても効率悪いですよね。衛生兵は必要な存在だし、銃を持たないからって信頼できないとは限らない。むしろできることは徹底的にやった彼は、強靭な精神力と体力でもって仲間を支えていました。
ここまでくると狂気と紙一重なのかもしれませんが、子どもの頃からずっと自分の中にある怒りや憎しみと向き合ってきたことを思えば納得できます。
自分の心と向き合えず、酒に溺れて家族に暴力をふるっていた父親。それを簡単に許すことはできないでしょう。でも、父親が上手く伝えられなかったことを、彼は全部ちゃんと受け止めてるんですよね。
軍法会議に押しかけて息子の権利を訴えた時、父親も同時に(少し)救われたんだと思えました。あの後、多少は他の家族とも向き合えたかなぁ?

しかし、彼の信念を受け入れた「良心的兵役拒否」というものに驚きました。こういうのって日本にもあるんでしょうか?
適材適所より精神論ふりかざしてそうだから無い気がする…。あったからと言ってちゃんと機能してるかどうかは国によって違いそう。でも、なければドスはどうしようもなかったわけだから、あるのとないのでは大違いですよね。
いつか良心的兵役拒否者しかいなくなったら、戦争の形も変わるんだろうか…と考えさせられました。

映画「ジョニーは戦場へ行った」観ました

 | 戦争ドラマ  com(7) 

ジョニーは戦場へ行った
原題:JOHNNY GOT HIS GUN
製作:アメリカ’71 112分
監督・原作:ダルトン・トランボ
ジャンル:★戦争ドラマ

【あらすじ】第一次大戦の中、四肢と顔に大怪我を負った青年が、野戦病院に運び込まれた。目も見えず、耳も聞こえず、喋る事もできないジョーは、自分に意識があることも伝えられず、ただ”生きる肉塊”として看護されていた。孤独と絶望の中、過去の幸せだった頃を思い返すジョーだったが…。

エレファント・マン」や「潜水服は蝶の夢を見る」を連想する、インパクトある作品でした。
戦争によって何もかもを奪われたジョーの現実と、家族や恋人との思い出、そして彼の苦悶が表れた夢を断片的に辿っていくような流れで、思い出が温もりや生きる喜びに溢れているほど、絶望がより深く、より暗く映ります。
モノクロとカラーの使い分けも効果的で、温かみのあるカラーからモノクロに切り替わる時、五感のうちのほとんどを失ったジョーの感覚が少しだけ想像できました。
だからこそ、お日様の温かさを肌で感じ取った瞬間や、嫌悪感を持たない看護師の手に触れた時、今がいつなのかわかった時の彼の感動が伝わってくるんですよね。
これほど「メリークリスマス」の言葉が感動的に思える作品はそうないでしょう。

また、序盤の恋人とのラブシーンも初々しくて、心から想い合っているのが伝わってきてよかったです。お父さん公認だし、微笑ましくって。
ただ、戦争に行くのを最後まで引きとめようとしていた彼女が、彼の夢の中でも何度も「行かないで」と繰り返しているのが、彼の後悔を表していて切なかった。家族を養うためというのもあったんでしょうね…。
そして、父親との想い出も全部良かったです。「この釣竿以外誇るものがない」とか言っていても、いざ息子がそれを失くして夜遅くまで探していれば「たかが釣竿じゃないか」と優しく声をかける…。いいお父さんです。
他にも、彼の内面の対話の相手として描かれるサザーランドのイエス様とか、彼を人間として扱った看護婦さん、彼に意識があるとわかった時の周りの反応など印象に残るシーンは多かったものの、一番印象に残ったのは、序盤の母親との思い出で、キッチンの片隅にいるひよこと猫とネズミのシーン!
弱肉強食の世界でも足りていれば仲良くできるのに、人間は足りていても独り占めしようとする奴らがいるから無駄な争いばかりしてるという…。そういう意味で入れたシーンなのかはわからないけど、妙に印象に残りました。

断片的なエピソードの積み重ねなので、感動が波のようによせてはかえす感じでしたが、最後の絶望感はけっこう驚きましたね。夢の中ではジョニーが笑っているシーンが案外多かったので。(おかげで暗くなりすぎずよかった)
「祖国に命をささげることは美しく輝かしい」という皮肉を込めた一文で締めくくられるところに、赤狩りに抗う監督の強い意思を感じました。
あと、入隊奨励のスローガン「ジョニーよ銃を取れ」をもじったという原題「Johnny Got His Gun(ジョニーは銃を取った)」もさすがです!

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映画「眼下の敵」観ました

 | 戦争ドラマ  com(14) 

眼下の敵
原題:THE ENEMY BELOW
製作:アメリカ’57 98分
監督:ディック・パウエル
原作:D・A・レイナー
ジャンル:★戦争/アクション/サスペンス

【あらすじ】第二次世界大戦中の南大西洋。トリニダードへ向け航行中のアメリカのバックレイ級護衛駆逐艦ヘインズは、浮上航行中のドイツVII型Uボートを発見する。まもなく駆逐艦と潜水艦の一騎打ちが始まるが、知力を尽くして戦う中、両艦長はたがいに尊敬の念を抱くようなってゆく…。

家族の使うvistaが不調で色々邪魔されつつ、なんとか描き上げました(汗)
「U・ボート」と双璧をなす潜水艦映画の金字塔だそうで、タイプは違えど見応えある作品です。
戦術をしっかり描いてるところは好みだったものの、駆逐艦vs潜水艦となると専門用語とかよくわからないところもあったかな(相変わらず見分けられるようになるまで苦労したし…)。
でも、潜水艦の艦長が酔って愚痴るあたりから20分間くらい(両艦長による)名台詞のオンパレードですごかったですね~。書き出したいけど多すぎて早々に諦めたくらい(笑)
どちらの艦長も好感が持てるし尊敬できる人柄で、アメリカ側もドイツ側もどちらも主役として描かれてるのがいい。とくにドイツ側は「U・ボート」を観た後なので、描かれていない部分も補完できて緊張感ありまくりでした。
そして何より、戦争で大切な人を失って戦争自体に静かに憤りを覚えながらも、祖国にいる人たちや部下を守るために全力で任務に当たる姿が素敵です。民間出の駆逐艦艦長が、的確に相手の考えを読んで裏をかき、部下からの信頼を得ていくところなんて痺れますね!
ドイツ人艦長も任務を遂行するために、不利な状況でも冷静に道を切り開こうとする姿がカッコいい。
ボカン、ボカンと派手にやってるのもあって、ハラハラドキドキ楽しめました。
ラストはいかにもハリウッド映画という感じで、戦争映画なのに爽やかなのはどうなの?と思わないでもないけど、一度観て”二度と見たくない、考えたくない”となるよりは、何度も観たくなって、その度に少しは考えさせられる方がいいのかも。またいつか再見してみたいです。

では、みなさま良いお年をお迎え下さいませ~!

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「U・ボート」観ました

映画「U・ボート」観ました

U・ボート
原題:DAS BOOT
製作:西ドイツ’81
監督:ウォルフガング・ペーターゼン
原作:ロータル=ギュンター・ブーフハイム
ジャンル:★戦争ドラマ

【あらすじ】1941年秋、ナチス・ドイツ占領下のフランス。歴戦の艦長と古参クルー、若者ばかりの水兵を乗せた「U96」がラ・ロシェル港から出航した。連合国護送船団の攻撃任務につく彼らを取材するため、若き報道班員ヴェルナー少尉も同行する。クリスマスには帰港できると信じ、荒れ狂う北大西洋での孤独な索敵行が続くが…。

こういう作品を観るたびに思うけど、潜水艦にだけは本気で乗りたくないです。
狭い、臭い、汚いと三拍子揃った劣悪環境で、1ヶ月も過ぎれば毛じらみが大流行。パンは元気にカビルンルンして、そんな生命力にさえ励まされる心理状態…。人間の生活できる環境じゃない!
表に出るたびに海水を浴びているのに、真水で髪を洗うこともできければ服も洗えない。そんな状態の人間が何人乗ってるのか知らないけど、想像も出来ないほどの臭いが充満しているのが画面から伝わってきます。(それに比べてドイツ商船は天国!)
しかも、戦闘が始まれば逃げ場がなく、見えぬ敵や海水・水圧との戦い。水圧で船体がミシミシと音を立て、ボルトが鉄砲玉のように弾け飛び、血が流れる…。とてもじゃないけど耐えられません。
終盤、九死に一生を得て浮上し、新鮮な空気を思いっきり吸おうとハッチの下に集まるクルーたちの姿が印象的です。
妙にリアルな汚さだと思ったら、原作者は実際に海軍報道班にいた方なんですね。実話ではないようだけど、艦内の様子は体験に基づくものなんだと納得でした。

そして、敵の攻撃を受けて沈んでからの展開も、恐ろしくて息が詰まるようでした。
状況を報告させれば、どこもかしこも壊れ、機能停止のオンパレードで、いるのは圧壊深度200mをとっくに超えた270mの暗い海の底。
こんな絶望的な状況なのに彼らは決して諦めないんですよね。…というか、諦めたって怖いものは怖いから、やれることがあるならやるしかない。頭をフル回転させて、体を動かして、恐怖を吹き飛ばそうとしているのかも。
一度は恐怖に混乱し、持ち場を離れたことがある機関士ハンスが、この時はひたすら自分の仕事に没頭して、不眠不休で機関部をよみがえらせていくのが頼もしかったです。
それもこれも艦長が常に最善を尽くしてきたからで、リーダーとしてみなを引っ張っていく姿には部下でなくても「一生ついていきます!」と忠誠を誓いたくなりました。時には冷徹に、時には人間らしい弱さや感情的な部分も見せる魅力的な人物です。
人間の諦めない力って偉大だなぁと、心底思いました。

しかし、そこで終わらないのが戦争なんですね…。虚しさしか残らないラストに呆然とするしかありません。

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映画「ワルキューレ(わるきゅーれ)」観ました

ワルキューレ
原題:VALKYRIE
製作:アメリカ、ドイツ’08
監督:ブライアン・シンガー
ジャンル:★サスペンス/ドラマ

【あらすじ】第二次大戦下、劣勢のドイツ。アフリカ戦線から奇跡の生還を果たしたシュタウフェンベルク大佐は、軍内部のレジスタンスメンバーたちから作戦を聞くが、成功の見込みがないと協力を辞退する。だが、ワーグナーの「ワルキューレの騎行」を耳にし、“ワルキューレ作戦”を利用することを思いつき…。

戦争ものだと顔が見分けられなくてついていけなくなることが多い私ですが、今回は大丈夫でした。うん、わかりやすいって素晴らしい!
ビル・ナイは言われないと気付かないくせに(私好みのおじいちゃんだなとは思ってた)、トム・クルーズはいつも一目でわかるんですよね。たぶん、若い頃から年を重ねていくのを見てるからだと思う。顔も特徴的だし。
で、トムの眼帯&軍服姿が意外とカッコよかったです。片目と指と手を失って、それでも自分にしか出来ないことに命を賭ける姿に痺れました。

家族の描写も、さらっと描かれているのに印象に残ります。とくに子供たちが無邪気に劇を始めるところ。
可愛い娘の顔をじっと見つめ、家族を危険に晒していいのかと思う一方で、この子たちが将来ドイツ人であることを恥じるような、ドイツ人であるために後ろ指指されるようなことがあっていいのかと、葛藤しているのが伝わってきて。
その後、息子がかけたレコードの「ワルキューレ」を聞いて、ハッと作戦をひらめくシーンも、画的に静かながらグッときます。

彼らが動き出してからもグイグイ引き込まれましたね~。一人の人間が怖気づいたり失敗したりすれば全てが台無しになってしまう…。その上、不測の事態が起こるのは当たり前で、それを機転と度胸で乗り切っていくスリルがたまらないです。”ヒトラーが生きているかどうか”という情報だけで状況が一気に変わってしまうのも面白かったし。
ただ、あの爆弾の説明を聞いていたら、会議の場所が変わった時点で威力が半減するのはわかってたと思うんだけどなぁ。最後のチャンスだったんでしたっけ?

処刑のシーンも印象的でした。ドイツ人はヒトラーだけではないという想いは伝わると、顔を上げて死んでいく姿や、主人公を庇って死んだ中尉…。シュタウフェンベルクの目を見て力強く頷く様子は「後悔はしていない」と言っているよう。
トムはドイツ人には見えなかったけれど、ぜんぜん気にならなかったです。
最後に彼の家族は無事だったとあって、心からホッとしました。

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映画「さよなら子供たち」観ました

 | 戦争ドラマ  com(6) 
Tag:フランス 西ドイツ 

さよなら子供たち
原題:AU REVOIR LES ENFANTS
製作:フランス・西ドイツ’87
監督:ルイ・マル
ジャンル:★ドラマ/戦争

【あらすじ】1944年、ナチス占領時代のフランス。パリからカトリック寄宿学校に疎開している12歳の少年ジュリアンの学校に、ジャン・ボネという少年が転入してくる。ジャンはなかなか級友たちと馴染もうとしなかったが、次第にジュリアンに心を開き始め…。

観ていて「ルシアンの青春」を思い出したけど、同じ監督の作品だったのか…。どういう気持ちで「ルシアン~」を撮ったんだろう。戦争さえなければ…という感じかな?
「さよなら~」の中では、生きていくためにゲシュタポに密告する人が描かれていて、ジュリアンは怒りを覚えるものの、たぶん憎んではいません。心のどこかで「生きていくためには仕方ない」という彼らの気持ちを否定できないんだと思います。…だって、誰だって貧困やゲシュタポは怖いもの。
森で迷子になった時は、ドイツ兵が学校まで送りとどけてくれたエピソードもあり、きっと戦争がなければ、みんな善き隣人だということを実感していたんでしょう。

しかし、終盤のゲシュタポのおじさんの怖いこと!
一瞬で生徒の中から真実を知るジュリアンを見つけ出し、不安を煽ってボロを出すように仕向けるんですよね。背中を向けているのに、ジュリアンがついボネの方を見てしまったのを見逃さない!
彼の中では「自分のせいで」とわだかまりが残っただろうけど、あれは仕方ないよ…。相手はプロだもん。

ラストの別れには胸が張り裂けそうになりました。ピアノ連弾や「チャップリンの移民」を笑顔で(終盤は物語に没頭して)観ていたシーンなど、幸せなふたりの様子が目に浮かんで、涙せずにはいられません。
静かに涙を流しながら、決してボネから目を離すことができない…。無言で手を振るジュリアンと、扉の前でじっと彼を見つめるボネ…。
冒頭で「ママと別れて疎開するなんて嫌だ」と、おでこのキスマークも気にせず今生の別れのように涙してたジュリアンが体験した、本当の別れ。
「この日のことは死ぬまで忘れないだろう」というモノローグに、この作品を撮らずにはいられなかった監督の心情がうかがえます。

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映画「西部戦線異状なし(1930)」観ました

 | 戦争ドラマ  com(8) 

西部戦線異状なし(1930)
原題:ALL QUIET ON THE WESTERN FRONT
製作:アメリカ’30
監督:ルイス・マイルストン
原作:エリッヒ・マリア・レマルク
ジャンル:★戦争/ドラマ

【あらすじ】第一次世界大戦時、ドイツ。教師の熱弁に感化され戦場に赴いたポール。彼を待っていたのは厳しい訓練と物資不足、死と隣り合わせの戦場だった。やがて、わずかな休暇をもらった彼は、戦場の実体を知らない人々を目の当たりにする。

以前、一度観て途中うとうとしたから感想書かなかったっぽい作品を再見しました。
驚くほど古さを感じませんね。あえて言うなら、冒頭の学生を扇動するシーンで”らんらんと光る目”を強調しているところが、サイレント時代の名残を感じます。
でも、私の苦手な軍服ばかりで見分けにくい戦争映画にも関わらず、話の流れもわかりやすくて、主人公の心情がするすると入ってくるようで最後まで一気に観られました。
志願したばかりの頃は、遊びに行けないと文句を言ったり、上官(元郵便配達員)に仕返ししたりと学生気分が抜けてなかったのが、実際に戦場に出てから直面する、死と、物資不足と、虚しさによって、瞬く間に表情が変わっていってしまうんですよね。
友人の死を見取り、彼のブーツが新しい所有者の元を転々としていく描写は、一瞬「呪いのブーツ!?」とか馬鹿なことを考えてしまったものの(汗)、若者たちが次々と死んで補充され、また死んでを繰り返していって、それが日常になってしまう恐ろしさを感じました。

戦場もまさに不毛という感じで、実際に戦っている彼らでなくとも「こんな事をして何の意味があるんだろう…」と虚しさを覚えます。
1930年の作品とは思えないような戦闘シーンの激しさもあって、目が離せませんでした。
桜の花を見て望郷の念を抱く若者や、ポスターの女優を見て「女の事を忘れてた」と平穏に暮らしていた頃を思い返す表情、死にゆくフランス兵と一晩過ごして敵が同じ人間であると思い知り、すがりつくように懺悔するくだりも印象的。
そして、故郷に帰った時に肌で感じた「世界が違う」ということ…孤独感もしみじみ伝わってきます。

彼の両親の反応の違いが印象に残ったんだけど、たぶん彼の親の世代は戦争の経験がないんでしょうね。祖父母の代は知ってるのかな?
酒場でまさに机上の空論を繰り広げる父親たちと、それを虚しく眺める主人公。
そんな彼に追い討ちをかけるように…。
気絶しているだけさと言っていた彼の表情がみるみる沈んでいくシーン、寂しげな後姿が痛々しい。
ラストはこれ以外ありえないという名シーンで、それゆえに「西部戦線異状なし」の言葉がグサリときます。たくさんの十字架と、それに重なる若者たちが振り返り振り返り歩いていく映像に涙が…。
戦争がいかに愚かで不毛な行為なのかが伝わってくる反戦映画の名作でした。

映画「戦略大作戦」観ました

戦略大作戦
原題:KELLY'S HEROES
製作:アメリカ’70
監督:ブライアン・G・ハットン
ジャンル:★戦争/アクション/コメディ

【あらすじ】捕虜のドイツ軍将校から、千万ドルの金の延べ棒が銀行にあると聞き出した連合軍アメリカ兵のケリー。彼は早速ビッグ・ジョーら仲間を集めて強奪計画を練り現地へ出発するが、そこはドイツ軍占領下にあった。

シニカルな笑いに溢れてました。
クスクス笑いながら観られるものの、何のために戦って死んでいくのかわからなくなっている兵士たちの、生きる意味への渇望みたいなものが感じられます。
何のために死んでるのかわからないよりは、黄金のために死んだ方がましだと感じられる状況なんでしょうね。どちらも危険なら、黄金目指す方が楽しそうだし。
ドナルド・サザーランド演じるM4シャーマン戦車部隊のお気楽なリーダー、オッドボール軍曹が良い感じです。指揮官の死を報告せずにダラダラやり過ごしてたとか、実際にいそうだし。
常に部下の事を考えているビッグジョー曹長もよかったなぁ。黄金なんかに目もくれず、でも結局部下の気持ちを優先してしまう。
そんな彼らの快進撃が上層部に知れて、「なんて戦意の高さだ!」と英雄扱いされるところは皮肉が利いてます。欲望の力はすごい!
一方で、地雷や銃撃戦で仲間を失った時のビッグジョーとクリントの表情が印象的。全て終わったあと皆どうしたのかなぁ?
クリントのキャラがいまいちつかめなかったけど(金が一番なのに妙にカッコつけてる)、全体的に面白い作品だった。タイガー戦車の重量感や、青春ものみたいなテーマ曲もサイコー。
以前嵌ってた「ガールズ&パンツァー」というアニメでこの作品へのオマージュがあったので、元ネタを観られて嬉しかったです♪
今回はBSで字幕版を観たけど、できれば山田康雄さんの吹き替え版も観たいかも。93分でもいいからオンエアないかなぁ。

映画「ヒトラーの旋律」観ました

 | 戦争ドラマ  com(0) 
Tag:リトアニア ドイツ 

ヒトラーの旋律
一瞬だけお互いの立場を忘れられそうだったタバコ休憩。
原題:GHETTO
製作:ドイツ/リトアニア’06
監督:アウドリアス・ユツェナス
ジャンル:戦争/ドラマ

【あらすじ】1941年ナチ占領下のリトアニア。ユダヤ人のビルニュス・ゲットーを担当しているのは、芸術を愛するが冷酷な若きナチ将校キッテルだった。彼はユダヤ警察の隊長ゲンツを使い、ユダヤ人たちに劇場のステージでの上演を命じ…。

Gyaoで鑑賞。ネタバレもあるよ。
青年将校の気まぐれひとつで殺されかねないゲットーで、彼の思いつきから劇場を蘇らせ、死と隣り合わせの舞台をやる…という実話を基にした作品。
調べたところによると、すでに強制収容所でリトアニアのユダヤ人の大半が殺された後で、ドイツの物資不足を補うためか、生き残りをゲットーに集めて働かせていた時期の終盤頃が舞台みたいです。
働けば給料も支払われて、工場が稼動してからは食事にもそれほど困ってない様子だったのが不思議に見えました。

たくさんの死を見てきただけあってみんな生き残るために必死なんだけども、そんな中でも自分さえ良ければいいという人と、危険を顧みず同胞を救おうとする人たちがいます。
たくさんの人たちを救うために、ドイツにとって必要とされる生産性のあるゲットーでなければならないと、働けない老人や病人を選別して処分したゲンツの苦悩と覚悟に泣かされました。
そして、赤ん坊を助けるために身代わりになった女性にも…。
若き将校キッテルは、確かに残忍で狂っているけれども、彼を狂わせたのも戦争だというのが伝わってきます。時折見せる、年相応の表情、感情が哀しい。
ヒトラーなんてまるで尊敬していない彼が、唯一愛していたのは音楽だったのか…?
女性を撃った後の手が微かに震えていたように見えた事や、銃を棄ててサックスを持って行くのが印象的でした。
音楽がなければ観てられなくて、”命をかけた偽りのステージ”であっても音楽があるひと時は彼らにとって多少の救いになっていたというのが皮肉かも。彼の最後の置き土産は、そんな救いなんてかき消してしまうようなものだったけど…。

ところどころ(日本人には?)説明不足で状況がわからない事もあるものの、最後まで目が離せないものがありました。
ヒロインを演じる「暗い日曜日」のエリカ・マロジャーンをはじめ、キッテルやゲンツ、腹話術師やその相棒、金の亡者のヴァイスコフなど、俳優陣はみんな良かったです。
原題はゲットーで味気ないので、この邦題は良かったと思います。

映画「メンフィス・ベル(1990)」観た

 | 戦争ドラマ  com(2) 

メンフィス・ベル(1990)
原題:MEMPHIS BELLE
製作:アメリカ'90
監督:マイケル・ケイトン=ジョーンズ
ジャンル:★青春/戦争

【あらすじ】24回の白昼爆撃任務を遂行した唯一の爆撃機、メンフィス・ベル。故郷に帰るまで最後の一回の飛行を前に、若き乗組員達はそれぞれの思いで前夜を過ごしていた。翌朝、メンフィス・ベルと10人の若者は飛び立ち…。

以前は顔を覚えられず早々に諦めつつ見てしまったけど、今回は再見ということで、わりと把握できたと思います。
あまり深く考えると引っかかる部分はあるものの、敵も味方も次々と死んでいく異常な状況下、一兵士である彼らの目線で観ると、いつの間にか引き込まれてました。
自分が死ねば仲間も死ぬかもしれないし、またこの任務のために他の兵士が送られる…。彼らはただ、自分が頑張ればそれだけ戦争は早く終わると信じて、任務を遂行するしかないんですよね。
出撃前のパーティでのそれぞれの様子や、お守りへの執着、女性や犬との触れ合い、想いを綴った詩など、(初見では気付かなかった)それぞれの不安の表れもしっかり描かれてました。
一方で、このプロパガンダのための作戦を成功させる事しか頭にない上官がちょこちょこイラつかせてくれるので、ますます彼らへの感情移入がしやすかったです(笑)
出撃後は、B-17の中が主になりますが、しだいに緊張感が高まり、いつの間にか彼らが全員無事に帰れるよう願いつつ観てました。
印象的なのが、撃ち落とした敵機に巻き込まれ、味方機が墜落するくだり。不慮の事故とはいえ、やるせない…。彼は一生忘れられないでしょう。
民間人をなるべく巻き込まないよう危険をかえりみず目的地上空に旋回するくだりも熱いです。美化してるだろうし、その後、米軍は方針を180度変え、彼らも東京などで無差別爆撃に加わったようですが、この時は”任務だから”ではなく良心もあったと信じたい!
いろいろ頭をよぎりつつ、それでも「帰れる!」とはしゃぐ彼らの姿に目頭が熱くなりました。
帰還中も詩を朗読した彼が負傷してハラハラ…ラストまで目が離せません。
再見してよかったです♪

映画「戦場にかける橋」感想

戦場にかける橋
原題:THE BRIDGE ON THE RIVER KWAI
製作:アメリカ’57
監督:デヴィッド・リーン
ジャンル:戦争/ドラマ

【あらすじ】タイとビルマの国境近くにある日本軍の捕虜収容所。指揮官も肉体労働に使おうという所長に対し、英軍大佐はジュネーヴ協定に反すると抵抗を続ける。一方、米軍捕虜の海軍少佐は脱走に成功するが…。

初見では衝撃を受けた記憶があるんですが、再見したら斎藤大佐の描き方が中途半端で入り込めませんでした。協力しないと病人も駆りだすと脅していたのに、結局どうなったのか曖昧なまま進めていたのが…。
まあ、病人使って死者が出たなら「(英軍)大佐が勝った!」とはならないだろうけど、斎藤が心変わりしたのが気まぐれか、良心か、何かに感化されたのかで人物像も変わってくると思います。言動が武士道とは程遠かったし、もしリメイクする事になっても、こんな役をやりたがる役者がいるんでしょうか?
(そもそも、ここに描かれているのは大嘘で、日本軍が作った線路、鉄橋は今も立派に役目を果たしているそうです)
いちおう爆破作戦側のシアーズの描写はコミカルさもあって楽しめたし、その分ラストもずっしりきて良かったけど、前のようには観られず…。
反戦は考えさせられたけど、英軍大佐は戦争でイカれたというより元からちょっとおかしなところがあったんじゃないかと思えてしまいました。

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映画「第十七捕虜収容所」観ました

第十七捕虜収容所
読み:だいじゅうななほりょしゅうようじょ
製作:アメリカ’53
原題:STALAG 17
監督:ビリー・ワイルダー
原作:ドナルド・ビーヴァン、エドマンド・トルチンスキー
ジャンル:★サスペンス/ドラマ

【あらすじ】第二次大戦中のドイツ。第17捕虜収容所で、”競馬”や”デパート”を仕切って儲けていたセフトン。だが、そこに独軍に通じるスパイがいるとわかった時、賄賂のおかげで優遇されていた彼が真っ先に疑われてしまう。孤立状態の中、彼はひとりでスパイを探し…。

前に録画してあって、リクエストがあったので先送りにしてた作品。
カラっとした笑いが重さを軽減していて観やすかったです。さすが、ビリー・ワイルダー!
なんとなく「大脱走」っぽかったけど、わたしはこっちの方が好きかな。
スパイだと疑われてリンチされるシーンなどは怖いものの、女優に恋焦がれるアニマルが登場するたびにガラっと雰囲気が変わって明るくなります。相棒が女装(?)して、女優に見間違えて愛の告白をするところとかサイコー!
ドイツの偉い人?も割と親しげに話しかけてくるし、ありえないくらいゆるい収容所なんですが、シリアスな時はしっかり怖い。ギャグとシリアスのメリハリがあるのが良かったです。

スパイは目に付く行動はとらないものだけど、怪しい奴がいたら疑ってしまうのも事実。これみよがしに”いい生活”を送っていたセフトンも自業自得なところがあるから、彼を疑う人々に怒りを覚える事はなかったです。
でも、そんなのものともせず今まで通りの自分を貫くセフトンはカッコイイかも。
ラストの解決の仕方が鮮やかでした。あれならドイツ軍も何も言えまい!

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映画「戦火の勇気」観ました

 | 戦争ドラマ  com(6) 

戦火の勇気
製作:アメリカ’96
原題:COURAGE UNDER FIRE
監督:エドワード・ズウィック
ジャンル:★ドラマ/戦争

【あらすじ】湾岸戦争で味方の戦車を誤射したサーリング大佐。罪悪感に苛まれていた彼に、名誉勲章候補者調査の命令が下る。湾岸戦争で戦死した女性兵士ウォーデン大尉を調査していくが、関係者の証言が微妙に食い違う事に気付き…。

久し振りに再見したら、思いのほかメグ・ライアンが男前でした。
以前観た時は、似た内容の「レスティング・プレイス/安息の地」の直後だったので、あまりノレなかったんですが、今回は引き込まれました。真相が何だったかというのも大事なんだけど、戦争の極限状態のなかで人間がどうなるのか、それによって受ける傷の深さというものをよく描いていたと思います。マット・デイモンのやつれ具合がリアルでしたね~。「カレン…いや、大尉が」と何度も言い直すのが、なんだか切ないです。
テンゼル・ワシントン演じるサーリング大佐も素敵です。軍服しか似合わないんですよ(少なくともこの作品の中では)。
贖罪のため、酒に頼りつつも”真実”を探す姿が痛ましい。戦争で傷ついているのは彼も同じなのに、むしろ傷ついたからこそ、遺された人たちの傷を少しでもと、辛い仕事をやり遂げられたんでしょうね。
黒澤明監督の「羅生門」にヒントを得て作られたそうですが、あれよりだいぶ見やすかったです(精神的な意味で)。ラストは清々しい感動を味わえました。

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「グローリー」観ました

映画「サラエボの花」観ました

サラエボの花
製作:ボスニア・ヘルツェゴヴィナ、オーストリア、ドイツ、クロアチア’06
原題:GRBAVICA
監督:ヤスミラ・ジュバニッチ
ジャンル:★ドラマ

【あらすじ】サラエボ。シングルマザーのエスマは、娘サラの修学旅行費を稼ぐためナイトクラブで働いていた。一方サラは、同じシャヒード(殉教者)の遺児サミルと友情を深めていく。だが、母が父のことを教えてくれず、次第に不満を募らせていき…。

内容を知って避けていた作品でしたが、そんなに重くないという事で観てみました。
かなり見やすかったです。母親の秘密についてはっきりと明かされるのは後半なんですが、それは娘が抱えるフラストレーションと、過去を思い出したくない母親の気持ちを表しているようで、真実を知ったときの衝撃をメインにしてなかったところが良かったのかもしれません。
娘サラの反応が自然でいいですね~。あまりにティーンエイジャーそのもので時々ムカついたけど、何も教えてくれない母親に反発するようになっていく気持ちはよくわかりました。
娘の修学旅行費を稼ぐため、きっと吐くほど怖いナイトクラブで働くエスマが泣かせます。沈黙を守るかぎり、娘には伝わらない苦労ですよね。辛そうにしている姿を娘に見せられず、独りで耐えている姿が痛ましい。
そんな彼女と惹かれあう、一見強面、でもよく見ると優しい目をしている用心棒のおじさんも素敵でした。たぶん、エスマを送って家の窓に娘の姿を見た時から、彼女の過去には見当がついていて、細心の注意を払って彼女の側にいたんだと思います。ラストのトラブルの後、大丈夫だったのかな?
あと、疲れ果てたエスマをあたたかく迎える親友も良かったです。工場の仲間からカンパを集めてきて、「もう安心よ。泣きたいだけ泣きなさい」と抱きしめるシーンで涙腺が…。
すべてを知って、父親への思慕の念を断ち切るように、サラが自らの髪を切り丸坊主にするシーンも印象的。ラストで笑顔を見せるエスマに希望が持てました。
ちなみに、原題はグルバヴィッツァで、もっとも激しい戦闘が行われた地区の名前だそうです。邦題はセラピーでエスマたちが歌っていた「砂漠にも花は咲く~」からきているみたいですね。エスマにとってのサラを示す邦題も素晴らしいです。

映画「ハート・ロッカー」観た

 | 戦争ドラマ  com(10) 

ハート・ロッカー
製作:アメリカ’08
原題:THE HURT LOCKER
監督:キャスリン・ビグロー
ジャンル:アクション/サスペンス/戦争

【あらすじ】2004年、テロの脅威が続く混沌のイラク・バグダッド。アメリカ陸軍ブラボー中隊の爆発物処理班に、新リーダーとしてジェームズ二等軍曹が赴任する。任務明けまで常に死の危険が孕んでいたが、彼の行動は破天荒なもので…。

疲れました。全体的に観やすくしてあったとは思いますが、やっぱり戦争映画は精神的に疲れます。
とりあえず常に彼らが感じている恐怖が、爆弾処理をするのでも、それのサポートをするのでも、夜道を走るのでも、肌にピリピリときましたね。爆弾処理中は、野次馬の中にテロリストが混じってるかもしれないから、不審な動きがあればいつでも引き金を引けるようにしていて(実際ならとっくに撃ってそうだけど)、戦争してるんだと重苦しい思いがしました。
また、心安らぐはずの家に帰っても、それが実感できてないというか、今でも戦場の音が聞こえ続けているんじゃないかという様子にも胸が痛みます。目の前にわが子がいても、どこか遠くに感じているような雰囲気がありました。
きっと、ここで描かれている以上に苦しんでいる人がたくさんいるんでしょうね…。
タイトルの意味は、兵士が使うスラングで”究極の苦痛に晒される場所、いるだけで心が痛む場所”だそうです。また、イラク駐留兵士の間では、爆弾の炸裂のことを指すとか。

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「K-19」観た

映画「海の牙」観た

海の牙
おんまうすぷりーず!
製作:フランス’46
原題:LES MAUDITS
監督:ルネ・クレマン
ジャンル:サスペンス/ドラマ/戦争

【あらすじ】第二次大戦末期。南米へ逃亡中のナチ高官の潜水艦が、負傷者手当てのためフランス海岸の村から医師ギベールを誘拐する。やがて、ドイツ降伏のニュースが伝わってくるが、艦内ではゲシュタポが主導権を握り…。

潜水艦を舞台にしたサスペンスってなんかいいですね。
古い作品なんですが、いかにして周りを出し抜こうか、どう生き抜こうかと腹をさぐりあう、登場人物たちの緊張感がたまりません。主人公で部外者でもあったギベールの視点で描かれているのもいいですね。どうにか逃げ延びようと、常に周りを観察している感じが伝わってきました。
また、モノクロの映像は美しく、コーヒー豆の袋が破けて隠れ場所がばれてしまうなど印象的なシーンも多かったです。
ただ、わたしが顔を覚えられなかったせいかよくわからないんですが、ナチ高官たちの関係というか、それぞれの立場が良くわからなかったです。娘を残して逃げようとしたお父さんって結局なんだったの?
それがわかればもっと楽しめたかも。
原題は「呪われた人々」という意味。邦題は雰囲気でつけたんでしょうか?
ちなみにフランスで「ジョーズ」は”海の牙”というタイトルだそうです。

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「パリは霧にぬれて」観た

映画「戦火のナージャ」観た

 | 戦争ドラマ  com(2) 
Tag:ロシア 

戦火のナージャ
製作:ロシア’2010
原題:UTOMLYONNYE SOLNTSEM 2
監督:ニキータ・ミハルコフ
ジャンル:ドラマ/戦争

【あらすじ】1943年5月。大粛清に乗じて、元恋人の夫で革命の英雄であるコトフを陥れたKGB幹部のドミートリ。だが、反逆罪で銃殺された筈の彼が生きていた。捜索を命じられたドミートリだったが、彼に匿われていたコトフの娘ナージャもそれを知り…。

過去イラストを見ていたら、無性にナージャを描きたくなって、続編を観ちゃいました。イラストは回想シーン。
三部作だそうで、「太陽に灼かれて」の7年後が舞台になってます。でも、前作から16年ぶりの完成で、ナージャは同じ子を使ってるので年齢が可笑しな事に(笑)
まあ、それは気付かない振りをしてあげるとして、前作とはまた違う雰囲気の作品に仕上がってました。戦争の酷さを全面に出しているような。
なかでも、ナージャの乗る赤十字の船での惨劇と、コトフが前線で体験した15分間の戦闘。そして、ナージャが「自分が(神に)生かされたのは父親を探すため!」と自分に言い聞かせなければならなかった出来事は惨たらしく、人間の愚かさをまざまざと描いていました。
エピソード一つ一つは印象的で見ごたえがあるものの、第二部でひと段落つくこともなく、途中でぶつっと終わっていて残念。第三部と併せて見ないと評価しづらいものがあります。
また、ふたりには神様がついてると言わんばかりの奇跡が何度も起こりすぎて、ちょっとありがたみなくなってますね。幾つかの困難は彼らの努力で乗り越えて、ここぞという時に彼らの想いに応えるように奇跡が起こるほうが良かったと思います。
ちなみに、原題は「太陽に灼かれて2」です。

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