原題:EL ULTIMO TRAJE(THE LAST SUIT) 製作:スペイン/アルゼンチン’2017 93分 監督:パブロ・ソラルス ジャンル:★ドラマ/ロードムービー
【あらすじ】ホロコーストを生き延び、アルゼンチンで生きてきたユダヤ人の仕立屋アブラハム。娘たちと上手くいかず高齢者施設に入ることになった彼は、ふと母国ポーランドで別れた親友との約束を思い出す。その名を口にすることも憚っていた国へ帰ることを決意した彼だったが、そのためにはドイツを通らなければならず…。
洗濯ものをたたみながら見てたら朝から涙ボロボロ出てしまった。ホロコーストを生き延びた主人公が、約70年ぶりに親友に会うため故郷へ向かうロードムービーです。 この主人公の爺ちゃんがいい性格してるんですよね。孫に商売相手との駆け引きみたいのを伝授してたらしくて”家族写真を撮りたい爺 vs 新しいスマホを買いたい孫” の対決が面白かったです。自分より一枚上手な孫に「だからお前は好きなんだ」と喜んでるし(笑)
そんながめついユダヤ人の彼ですが、ホロコーストでの傷で切断の危機にある右脚を抱え、娘たちには高齢者施設に入れられそうになり人生の危機に。そこで思い出したかつての約束、そして懐かしの我が家…。家族に何も告げず母国ポーランドへ向かいます。
途中で出会う人々とのエピソードが劇的じゃないところが良かったです。 ただの優しい人達ではなくて、助けてもらった恩だったり、楽しい時間を過ごせたから友人としてだったり、ドイツ人も変わってきていることを知ってほしいからだったりと理由があります。看護婦さんは老い先短い老人への優しさと同情かな?(思ってたより面倒なことになりそうだと表情からうかがえました 笑) それに手助けするのも自分が無理なくできる範囲で、爺ちゃん自身にできることがあるならまずそれをやるのを待って(娘と和解できなかったのも彼らしい。お金はたぶん貰えたんだろうけど)、それでもダメなら手助けするという感じ。
そんな一期一会の出会いを通し、主人公の中で止まっていた時間が動き出します。 夢で彼の過去が判明していき、初めて彼の口からホロコーストでの”直接その目で見た出来事”を赤の他人であるドイツ人女性に語られるくだりの重みが半端なかったです。 でもそれを話せた彼の表情は少し柔らかい印象で、この旅は彼にとって必要なステップだったのだとわかります。このエピソードとラストで泣いてしまったんだけど、伴う感情はまるで違って鑑賞後は温かく優しい余韻が残りました。
原題:PLEASE STAND BY 製作:アメリカ’2017 93分 監督:ベン・リューイン 原作:マイケル・ゴラムコ ジャンル:★ドラマ/ロードムービー
【あらすじ】ソーシャルワーカーの支援を受け、自立に向けて奮闘していた自閉症のウェンディ。大好きな「スター・トレック」の脚本コンテストがあると知り、彼女は応募のため執筆を始める。しかし、書き上げた頃には期限ギリギリで、郵送では間に合わないため彼女は直接ロサンゼルスまで届けることを決意し…。
おぉ、ダコタ・ファニングだったのか。大きくなってて気付かなかった…。それに自閉症の役に成りきっていたから、あまり俳優が誰かとか気にならなかったです。 にしても「スタート・レック」は大人気ですね~。もしかしてお金を盗まれてバス代がなくなってしまった時、「スター・トレック」の脚本を届けなきゃいけないんです、と大声で言っていたら誰か助けてくれてたかも(笑) 全体的に良かったけど、スタートレック好きな孫がいるらしき老婦人が、事故の後一度も出てこなかったのが引っかかってしまいました。ここ省略したら、亡くなったと取られても仕方ないよ?
でもまあ、それでもロードムービーとして成長物語として良く出来た作品だったと思います。良い人も悪い人も無関心な人も出てきて、ままならない旅にいつの間にかウェンディのことを応援している自分がいました。 毎日、暗記した予定通りに行動して何とか日常生活を送っていた彼女が、予定と違うことをするというのはものすごく勇気がいる事だったはずです。しかも一人(と一匹)で街を出てロサンゼルスへ行くなんて初めてのこと。どれくらいバスに乗ればつくのか、バス代がいくら必要かもわからないまま出発して、しかも途中でバスを下ろされてしまうなんて! バスの運転手やチケット売り場の人などは、別に悪意があるわけじゃなく仕事(他のお客様に迷惑をかけられない)をやっていただけなんだけども、状況を知っているとちょっと冷たすぎないかと思ってしまうくらいでした。
でも一方で、お金を騙し取られそうになっていた彼女を助ける老婆がいたり、落とした原稿を拾って持ってきてくれるソーシャルワーカーの息子がいたり、怯えさせないためにクリンゴン語で話しかける警官がいたりしてほっこり。 何より何も言わずについてきてくれた小さなナイト、チワワのピートに癒されました。バスでおしっこしちゃったり、途中で疲れて歩けなくなったりしてたけど、ピートが傍にいてくれたから頑張れたんだよね。終盤、自分一人でもやり遂げようと思えたのも、ピートとの旅が彼女に勇気をくれたからだと思えました。
あと、何気に役立っていたのが、アルバイト仲間がくれた音楽集。街のさわがしい音に過剰反応してしまう彼女にとって、この音楽が鎧であり安心感を与えてくれるものだったことが、iPodが盗まれたことで鑑賞者に伝わります。音楽集をもらった時はめちゃくちゃ素っ気なかったけど、たぶん内心とても喜んでいたんだなぁと。 この旅でお姉さんからの信頼も得られたし、スタートレック仲間も増えたし、職場には彼女のよき理解者もいるし、彼女の明るい未来を信じられるラストでした。
そして、彼女だけでなく姉のオードリーにとっても特別な出来事だったというのが、個人的には一番心に残りました。序盤で久しぶりに会ったウェンディの発作を目の当たりにして、車の中で泣いてしまうくだりが切なくて…。「自分が至らないせいで妹を傷つけてしまう」と、彼女自身も苦しんできたんですよね。 妹との思い出がつまったピアノさえも遠ざけようとしていた彼女が、この出来事をきっかけに妹を信じる強さを手に入れ、我が子を抱いてみてと渡すラストが感動的でした。
原題:SEEKING A FRIEND FOR THE END OF THE WORLD 製作:アメリカ’2012 監督:ローリーン・スカファリア ジャンル:★ロードムービー/ロマンス/パニック
【あらすじ】小惑星衝突まであと3週間。周囲の人間が酒やドラッグに溺れる中、普段と変わらぬ生活を送るドッジは、隣人の奔放な女性ペニーと初めて言葉を交わす。イギリスにいる両親のもとへ行くため、かつての恋人オリヴィアに会うため、ふたりは旅に出るが…。
GyaOで鑑賞。終末ものなのに、かなりのほほんとしたロードムービーで、見てると感覚が麻痺してくる不思議な作品でした。 地球滅亡を前の反応は人それぞれで、ひたすら酒とドラッグとセックスに溺れる人がいれば、これまでと変わらない日常を貫く人、絶望して自殺しようという人もいます。こう書くと殺伐とした様子を思い浮かべると思いますが、妙にあっけらかんとしてるんですよね。 たまに思い出したようにしんみりするものの、目の前に迫る滅亡という事実が実感できずに戸惑っているという感じ。…まあ、突然滅亡するとか言われても「ワケわかんない!」となるのは当然か。 そもそも、この地球滅亡というのは舞台装置に過ぎず、まるで性格の違う男女が旅を経て惹かれあうロマンスものであり、人生において大切なものってなんだろうと考えさせる作品なんですよ。 快楽に溺れる人たちだって、カフェで接客しながら、歌って踊って突拍子もない新メニューを考えたりと、大切な場所で楽しい時間を分かち合っていたし、ニュースキャスターやドッジが雇った家政婦さん、途中出会う警官も、もうすぐ滅亡するからといって自分の仕事が無意味になるなんて思ってません。 ドッジとペニーのように、大切な人と過ごす時間こそ大切だと考える人もいて、人生において大切なものというのは人それぞれなんですよね。 そんな彼らを見ていると、自分ならどう過ごすだろうかと否応なく考えさせられました。 きっと、ドッジに拾われたあのわんこも、彼らと一緒に過ごした時間は幸せだったんじゃないかなぁ。 ドッジと父親の和解エピソードや、ラストの二人の語らいはウルウルきたけども、不思議と最後まで暗くならず幸せな気持ちで観ることができました。 スティーヴ・カレルとキーラ・ナイトレイの演技も素晴らしかったです。 ちなみに、原題の意味は「世界の終わりに友達を探して」で内容通りのタイトルですね~。
原題:MONSTERS 製作:イギリス’2010 監督:ギャレス・エドワーズ ジャンル:★ロードムービー/ロマンス/モンスター
【あらすじ】2009年、地球への帰還目前の探査機が上空で大破し、メキシコの北半分が地球外生命体によって危険地帯となる。6年後、アメリカ・メキシコ両軍による封じ込め作戦が続けられる中、現地を取材中のカメラマン、コールダーは、社長令嬢サマンサをアメリカまで送りとどける事になり…。
ロマンスのカテゴリに入れたいくらいですね~。モンスター映画だと思って観てたら思わぬ着地点に涙が…。 ロードムービーや海洋ドキュメンタリーが好きな人にはおススメです。生命の神秘とふたりの切ない恋の相乗効果で、好きな人にはたまらない作品になってます。 モンスターの幼体を宿す動くキノコや、終盤の街の廃墟感、地球外生命体の神秘を目の当たりにするシーンなど、不気味で不思議な世界観がありました。 新作「ゴジラ」の監督さんか~。正直、最初はCGが微妙でどうなる事かと思ったけど、低予算なりに見せ方が上手ですぐ気にならなくなりました。 まあ、主人公達が惹かれあうまでの経緯がぜんぜん足りない気もしたけど…。 でも、 生活の為に戦場カメラマンみたいな事をしているコールダーが、少女の遺体を前に一瞬迷った挙句コートをかけて花を手向けるシーンとか良かったです。 その前に、彼女に「ひとが不幸にならないと成り立たない商売ね」みたいに言われて、「君のお父さんがかわいそうな子供の写真にいくら出すか知ってるか?幸せな子供の写真なら?」と返すところが効いてた。 彼も不幸な人を撮るためにカメラマンになったわけじゃないという事です。 それに、見方を変えると物事がまったく違って見えるという事の伏線にもなってると思います。 危険な陸路で彼らを護衛してくれる現地の人が、「モンスターたちは刺激しなければおとなしい。軍が攻撃してる時はとても危険だ」 と話していて、気をつけなければならないのがモンスターではなく味方の軍の攻撃だというね…。 共存の道を感じさせるものがあるんだけど、軍の空爆?でやはり台無しに。
ややネタバレかもしれないけど、このモンスターズというタイトルが示すのは、地球外生命体ではなくアメリカ軍のことで、かなり反戦映画というか、アメリカ軍批判的なところのある作品でした。 この作品で人が死ぬ原因は、ほぼ軍による攻撃で凶暴化したモンスターによるものか、市民を巻き込んだ軍の攻撃によるもの。もちろん、主人公達の運命を決めたのも…。 ラストの恋が盛り上がったところで悲しすぎる事実に気付かせる構成も、余韻が残るし訴えかけるものがあります。 「第9地区」とかが肌に合わなかった人なら楽しめるかも。
原題:GRACE IS GONE 製作:アメリカ’07 監督:ジェームズ・C・ストラウス ジャンル:★ロードムービー/ドラマ/戦争
【あらすじ】シカゴのホームセンターで働くスタンレーのもとに、イラクに出征中の妻グレイスの戦死の報が。気持ちの整理がつかない彼は、12歳の長女ハイディと8歳の次女ドーンにその事実を伝えることができず、ドーンが行きたがっていたフロリダの遊園地を目指して家族旅行を始め…。
クリント・イーストウッドが音楽担当らしいです。鑑賞後に知ったのでぜんぜん覚えてないけど、そう言えばEDは早送りせずにしみじみ聞いてしまった。 妻に先立たれた夫であり、母親を亡くした娘たちの父親であるスタンレーを、ジョン・キューザックが熱演。 奥さんの声が入った留守番電話に旅先からメッセージ(弱音)を残すのが切ない…。 何も知らず戦地へ行った母を心配し、夜眠れなくなってしまった長女ハイディに、「眠れない時はパパを起こせ、話ができるだろう」とスタンレーが言うシーンがよかったな。いい父親です。 隠れてタバコを吸っていた彼女に、タバコを買い与えて一緒に吸い、ゲホゲホむせてみせて、「やめたほうがいい」と娘に言わせるくだりとか、機転が利いて普通に感心してしまいました。
一番良かったのは、ドーンとお母さんの約束です。ネタバレしない方がいいと思うので詳しくは書かないけど、この約束のおかげでラストは涙腺が…。 こういう心が繋がるような約束は、時には何よりも助けになりますね。 ただちょっと気になったのは、終盤の家族の会話シーンがセリフなしだったのと、ケンカ別れ?したスタンレーの弟と仲直りしたシーンが少しも描かれなかったのが、さらっと流しすぎて物足りない。 あと、ムダにフィルムがレトロ風なのが意味不明だった。 ちなみに、原題の意味は「グレースはもういない」と直接的で、この邦題はけっこう良かったと思います。
原題:THE DARJEELING LIMITED 製作:アメリカ'07 監督:ウェス・アンダーソン ジャンル:★ロードムービー
【あらすじ】長男フランシスの提案で、インド北西部を走るダージリン急行に乗り合わせた次男ピーター、三男ジャックのホイットマン3兄弟。バイク事故で瀕死の重傷を負ったフランシスは、疎遠になっていた兄弟の結束を取り戻そうとしていたのだ。それぞれに問題を抱えた3人はすぐに衝突してしまうが…。
遅くなってしまったけど、ファミリー企画最後の作品です。 リッチな3兄弟のゆる~い珍道中がツボにはまって割と楽しめました。っていうか、ロードムービーだから評価甘すぎかも(笑) 家族との絆を取り戻そうと立ち上がった兄の寂しがり屋っぷりとか、うざいくらいの仕切り屋っぷりが良いですね。他の兄弟も後先考えてなくて、毒蛇を買ったり、突然車内で香水のビンを割ったり(鼻は大丈夫か)、何考えてるかわからないんですけど、そのかみ合わなさが独特の雰囲気を生み出してます。 インドの列車っていうのも異国情緒があるというか、新鮮でいい。 ドリンクサービスのついでに額に染料をつけていったり、列車が迷子になったり。 彼らがジェネリック大国インドに来て真っ先にやったのが薬を買う事っていうのも(笑)
気になったのがフランシスの怪我で、河に飛び込んだ後のシーンで右目が真っ赤になってて、本当に感染症になったんじゃないかと心配になりました。終盤、兄弟の前で初めて包帯をとった姿を見せるシーンがあるけど、あの時ちゃんと巻きなおしたの? あと、心臓マッサージもせずに諦めるのも引っかかるし、ここら辺はかなり強引な流れでした。
登場した母親には、こんなんだから彼らがこんなに不安定なんだと納得。愛してないわけじゃないんだろうけど、母親に向かないタイプです。 そんな母親と父親の思い出のカバン(重荷)も投げ出して、兄弟の絆があるから大丈夫と前進し始めたのはよかった。 変な儀式のシーンとか、なんなのその踊りという感じで可愛かったし(笑) 列車の室内を横から映すシーンが楽しくて、列車以外の人たちの様子もまるで列車の中みたいに表現してたのが面白くてセンスあります。飛行機に乗ってるアルビノの人とか、家で待ってる妊婦とかね。 ヘビが乗務員にちゃんと飼われてるのがわかるし、何気にビル・マーレイ(冒頭乗り遅れた人?)も虎もいてサービス精神旺盛です。 ラストの「オー・シャンゼリゼ」の曲も何故か合ってました。 個性的な兄弟と、冒頭とラストが素晴らしい。
原題:멋진 하루(英語題:MY DEAR ENEMY) 製作:韓国’08 監督:イ・ユンギ 原作:平安寿子 ジャンル:★ロードムービー/ドラマ
【あらすじ】失業中で貯金も底をついた女性ヒスは、一年前に別れた男ビョンウンに会いに競馬場へやって来る。彼に貸したままの350万ウォンを返してもらうためだ。だが、相変わらずの能天気な甲斐性なしの彼を信用できず、彼女は金を工面してくるというビョンウンに同行し…。
あらすじを読んで「集金旅行」みたいだと思って鑑賞。集金旅行ならぬ、借金旅行でした(笑) 原作者は日本人で、「集金旅行」のずっと後に書かれた短編らしいです。わざわざ結婚式ネタ入れてるから、オマージュなのかな。借金を返せない男が知り合いの女たちを訪ねて金を貸してもらうという、どうしようもない話に見えて、観てみたらなかなかどうして良作でした(本国ではウケなかったらしいけど)。 ヒロイン視点でこの”どうしようもない男”を見ていくんですが、女社長やホステス、シングルマザー、姪っ子などなど、色んな人たちとのやり取りを見ていくうちにその印象が変わっていきます。 確かに、口先ばっかりの女の扱いが上手いダメ男なんですが、人の心を穏やかにする何かがあるというか、憎めないんですよ。いつも人の良いところを見ていて、大らかで怒るという事がなく、夢に向かって前向き(楽観的ともいう)に生きています。 そんな彼だから、みんな快くお金を貸してくれるんですよね。訪ねた女性たちは恋人だったとかではなく、困っていたら助け合うのが当然という間柄なんです。 最初は刺々しい様子だったヒスも、しだいに表情が和らいでいって、ビョンウンの優しさに涙を流したり、自分の事を話しだしたり…。 ロマンスの予感はまったくしない分、彼らの間に出来ていく穏やかな繋がりが心地よかったです。 BGMもない中、車を運転するヒスの表情の変化を静かにとらえたラストが秀逸。まるで思い出の写真のように張られた、新しい借用書のラストカットも印象的でした。 ちなみに、原題の意味は「素敵な一日」で、英語題は「わたしの親愛なる敵」です。英語題の方がしっくりくるかも?
関連記事 「集金旅行」観た 原題:It Happened One Night 製作:アメリカ’34 監督:フランク・キャプラ 原作:サミュエル・ホプキンス ジャンル:★ロードムービー/コメディ/ロマンス
結婚に反対する父親によって豪華船に監禁されていた富豪の一人娘エリー。恋人に逢いたくて脱走した彼女は、NY行きのバスで失業中の新聞記者ピーターと出会う。父親は懸賞金つきで新聞に広告を出し、それを読んだピーターは特ダネをモノにしようとエリーの旅の手助けをするが…。
クビになったのに仲間には自分から辞めてやったという顔をしつつ、やっぱりどこか放心状態なピーターとか、結婚に反対する父親から逃げるため河に飛び込む行動派なお嬢様エリーとか、最初から一気に引き込まれました。 そんな二人が出会って、衝突しながらも惹かれ合っていくというありきたりな物語なのに、何一つ無駄がなく、笑って楽しんで胸キュンしてと、この作品の影響を受けているだろう作品群のいいところ全部をぎゅっと濃縮してるというか、これが薄められて他の作品ができたというか(笑)、とにかく休む暇なく楽しめます。 ピーターがカッコいいんですよね~。特ダネのためとはいえ、あの世間知らずのわがままお嬢様をそつなくフォローして、上手くいかない事があっても、文句を言いつつ慣れない旅で疲れているお嬢様を気遣っています。 ギャングごっこに夫婦ごっこと、何だかんだで楽しそうだし、ヒッチハイクのくだりでお茶目な一面も見せてくれるし、これは惚れるのも当然! まあ、さすがにアイロンがけはねーよと思いましたが(笑) 一方、お嬢様の方は、若干猫背が気になってお嬢様らしくないなあとは思ったものの、つんけんしてても親切にされれば素直になるし、野宿中に彼がいなくて泣き叫ぶ姿を見たら、守ってあげなきゃという気持ちになっちゃいますよね。 おなかはすいていても不味いものは嫌と生のにんじん(野生?)を拒否してたのを、彼が自分のために頑張っている姿を見て思いなおし、素直にかじるくだりも可愛かった! 自分の過ちを反省して本当に娘の事を想って償おうとする父親や、ピーターの特ダネがデマだと落胆していたのに、記事を読みピーターの様子からすべてを?察して優しく声を掛ける編集長などもしみじみ良かったです。 ラストは、娘が幸せな結婚をしたのになんで父親は一人で酒盛り?と思ってしまったけど、鉦鼓亭さんに”淋しさを紛らす「ヤケ酒」”と教えてもらい、とても納得できました。本当に娘が大好きなんだね~♪
関連記事 第26回「素晴らしき哉、人生!」を観ませんか? 英語題:THE MAN WHO WIPES MIRRORS 製作:日本’03 監督:梶田征則 ジャンル:★ドラマ/ロードムービー
【あらすじ】定年間近のサラリーマン皆川勤は、事故で女の子を轢きそうになってからふさぎ込んでいた。そんなある日、ふと思い立って事故現場のカーブミラーを拭き、やがて全国のカーブミラーを拭こうと決意し…。
前に一度観てずっと心の隅に引っかかっていたというか、カーブミラーを見かけるたびに思い出してました。 これだけしゃべらない主人公も珍しいですよね。ただ黙々とカーブミラーを磨き、家族に問われても、TVカメラを向けられても、自分でも理由がわからないみたいに言葉が出てこない。結局最後まで彼の気持ちが言葉にされる事はないけど、お遍路みたいなものかも? 汚れたカーブミラーを見れば事故で失われた命や、加害者になってしまう恐怖が思い浮かび、磨いている間は心が安らぐ。磨かずにはいられないんでしょう。 そんな不器用な男がカーブミラーを磨く様子と、カーブミラーのある妙に美しい風景、そして周りで騒ぐ人々が淡々と描かれてます。BGMは単調なんだけども、一歩一歩着実に歩み続ける主人公っぽくてすごくいい。 非現実的なところもあるし、頼られてパニクって自分が事故に遭おうとするなどブレることもあったけど、ラストは主人公も、家族も、TVも、生きがいを探していた中年男性たちもみんな満足という感じで、なんかホッとします。 家のことは子供たち(すでに社会人)に任せて、理解できなくても夫と一緒にいる事を選んだ奥さんがステキでした。
製作:日本’79 監督:前田陽一 ジャンル:ロードムービー/ドラマ/コメディ
【あらすじ】同棲中の小夜子と晋作のところに、見知らぬ女が少年を連れて現われた。彼女の隣人・明美が坊やを残して駆け落ちし、置手紙に晋作をはじめ5人の父親候補の住所氏名が書いてあったというのだ。晋作は仕方なく父親探しの旅に出るが…。
「狐の呉れた赤ん坊」と似たタイトルなので、何かしら意識はしてるんだろうなぁと思ってたんですが、終盤ちょっと掠るくらいで赤ん坊も赤ん坊じゃなかった!(笑) 面白かったのに、このタイトルのせいで常に「狐の~」が頭の片隅にあって、どうしても比べちゃうんですよね~。 感動の種類が違うので(狐はぶわーっと、こっちはじわじわ感動)、なんとなく身構えてしまって感動できず…。完全に観る順番を間違えた! でもまあ、普通に面白かったとは思います。 修羅場の横で神田川を歌うラブラブカップルが登場したり、自分の子供じゃない証拠がほしくて遺伝について気にしたり、彼女の泊まる宿を探ったり、コミカルな描写が時代は反映していても古臭く感じないんですよ。 同じ部屋に泊まる事になって、女中さんの前で「もしかしたら、私たちの考えてる事って同じなんじゃないかしら」と佐代子の記念すべき初セリフを使う晋作。まったくこの男は…と笑わせておいて、ラストではガラッと変えてくるのもニクイ! 子供の前でタバコを吸うのは嫌でしたが、そういう時代だったんだろうと納得できました。 ラストももちろんいいですが、小夜子の母親が女郎だったと知り「きっと好きになった人との間に生まれたんだよ」と優しく声をかける晋作の成長が印象に残りました。 桃井かおりも可愛かったし、観てよかったです。
関連記事 「狐の呉れた赤ん坊」観ました 「集金旅行」観た 製作:アメリカ’07 原題:INTO THE WILD 監督:ショーン・ペン 原題:ジョン・クラカワー ジャンル:ドラマ/青春
【あらすじ】1990年ジョージア州。大学を優秀な成績で卒業した22歳の青年クリスは、家族に何も告げず無一文でアラスカへ旅立った。アレキサンダー・スーパートランプと名乗り、彼は様々な出会いと経験を重ねていく。一方、残された家族は音信不通の息子の身を案じ、祈る思いで帰りを待つのだったが…。
ラストにゾッとして、実話だと知って更にゾッとしてしまったんですが、ロードムービーとしては結構好きかもしれません。ヒッピーや労働者、おじいさんとの交流がいいんですよ。旅の原動力は親や世の中の偽善への怒りなのに、それを感じさせない温かい言葉と眼差し…。旅で出会った優しい人々が、彼を心配して家に帰そうとしたり引き止めようとしたりするのは、彼自身が優しいからなんだろうなぁと思えました。 ただ、残された家族の事とか色々考えると、あんまり主人公の事は好きになれないんですよ。 妹の言うように、彼は苦しみぬいて穏やかになった両親の姿なんて見てないんだけども、これは彼だけの問題ではなく、家族の問題でもあります。音信不通になられたら、もう両親の方から歩み寄る事ができないじゃない! でもまあ、アイデンティティを喪失して、自分が何者なのか分からなくなってしまった辛さや不安というのはひしひしと伝わってきました。彼が(独自の)倫理観でガチガチになってしまったのも、そうでもしないと自分がどんな人間かわからなくなってしまうからだろうし、両親のようにはなりたくないと強く思っていたからでしょう。 あそこまでアラスカに拘ったのも、その厳しい自然を生き抜くという儀式によって、初めて自分を確立し、両親と向き合う強さ(自信)を得られると信じていたからだと思います。 たぶん二度と観ないけど、美しい映像が印象的な忘れがたい作品でした。
関連記事 「デッドマン・ウォーキング」観ました(ショーン・ペン主演) キスシーンをきちんと描いたのははじめてかも? 製作:香港/中国/フランス’07 原題:MY BLUEBERRY NIGHTS 監督:ウォン・カーウァイ ジャンル:ロマンス/ドラマ
【あらすじ】NYのとあるカフェ。オーナーのジェレミーが焼くブルーベリー・パイを食べ、少しだけ心癒やされたエリザベス。だが、それでも別れた恋人を忘れられず、宛のない旅に出るのだった。点々と旅する中で、愛を求め愛に傷つく人々と出会い…。
ロードムービーと見せかけて、オムニバスに近かったような? 旅というより2回職場が変わっただけに見えるので、ロードムービーの醍醐味は薄いですが、その2つのエピソードはエリザベスのロマンスよりかは見ごたえあったかも(笑) まあ、嫉妬深い警官の夫のせいで妻が窒息しそうになるなんて、どこかで観たようなエピソード だし、ギャンブラーなナタリー・ポートマンはしっくりきませんでしたが。 で、メインのロマンスはというと…とにかく相手の男性が可哀そうでした。このエリザベスって女、性質悪くないですか? ジェレミーが自分に惚れてると確信した上で旅立ち、自分の事を忘れないように手紙を出して気を持たせるんですよ。元彼をきっぱり忘れてから彼と向き合いたいってことなんだろうけど、彼女がどこにいるのか電話をかけまくって探すジェレミーの姿をみたら、「計画通り」とほくそ笑んでいるエリザベスの顔が浮かんできてしまって(笑) 口にクリームつけて寝た振りまでしちゃうし、とんだ”子悪魔ちゃん”でした。 一応それなりに楽しめたけど、このカメラワークというか切り替え?は、せわしなくて好きになれません。
製作:アメリカ’73 原題:PAPER MOON 監督:ピーター・ボグダノヴィッチ 原作:ジョー・デヴィッド・ブラウン ジャンル:★ドラマ
【あらすじ】訃報欄を見ては遺族に聖書を売りつけるペテン師モーゼ。亡くなった知人の葬儀に立ち寄った彼は、娘アディを伯母の家に届ける事に。嫌々ながら旅を始めるが、やがてアディはペテンの相棒となり、奇妙な絆さえ芽生え始め…。
大好きな作品で、久しぶりに再見してみました。何度観ても感動、わたしのロードムービー好きの原点かも? お母さんの帽子をかぶって、仏頂面で生意気な口をきくアディが、もう可愛くて仕方がないんですよね。モーゼの詐欺の手口をすぐに覚えて実行、純粋無垢な子供の振りまでしちゃうんだから、天性の素質というよりほかありません。それでいて、貧しい人からは奪わないという、モーゼには欠けていたものを持っていて、このふたりは出会うべくして出会ったんだなぁと思わせます。 そんなアディも9歳の子供。モーゼが自分の本当の父親じゃないかと疑ってみたり、彼に恋人が出来れば嫉妬して仲を引き裂きます。それも手の込んだ方法で! やり方はやっぱりペテン師らしいんだけども、モーゼと一緒にいたい、離れたくない、という気持ちは表情にでていて、母親を亡くし、会ったこともない伯母の家に行くアディの心細さが、ひしひしと伝わってきました。 嫌々アディとの旅を始めたモーゼも、なんだかんだ言って彼女と息ぴったりになっているのがいい。アディがひとりでつくりものの月に座る写真を見つけ、じっと見つめるシーンでは毎回涙がこみ上げてきます。主題歌の「~あなたが私を信じてくれたら、紙細工の月も本物になる♪」という歌詞が効いてますよね。 最後まで”一緒にいる理由”が必要な、素直になれないふたりが大好きです。
製作:アメリカ’07 原題:WILD HOGS 監督:ウォルト・ベッカー ジャンル:★コメディ/アドベンチャー
【あらすじ】実業家のウディ、歯科医のダグ、小説家志望のボビー、パソコンオタクのダドリーの中年男四人組は、週末になると愛車ハーレーを転がし憂さを晴らしていた。そんなある日、ウディが自由気ままなロード・トリップをしようと言い出し…。
情けない中年オヤジたちがコテコテな笑いでおくるバイク珍道中でした。 邦題から、絶対に最近の邦画だと思っていたんだけど、まさかディズニーとは。内容があまり想像できないのは原題(”野生の猪ども”という彼らのチーム名。HOGSは大型バイクの意味もある)も邦題も変わらないけど…。ターゲットが団塊世代(より下のような…)なら、まあいいのかな? それはともかく、おっさんたちがいい味出してました。最初は、息子に完全にナメられてるダグとか、奥さんの尻に敷かれているボビーが面白いと思っていたんだけど、観終わった頃には断然ダドリーがお気に入り。まず、まともにバイクに乗れない人間がアメリカ横断しようってのがおかしいし、う○ち袋とか意味不明(笑) テントを燃やしちゃったり、そのせいでゲイの警官に付回されたり、バイクを騙しとられたり、敵に捕まったり、さんざんトラブルを引き起こしてしまうのに憎めないんですよね。運命の女性に出会って(内面的に)グッと男前になるところがよかった! 何気に一番のトラブルメイカーだったウディは、あの大爆発からそわそわキョドってばかりだったけど、最後に友だちのために立向う所なんかベタでいい。ラストは4人とも生き生きしていて、元気を分けてもらえました。 一番のお気に入りは、エンドロールの、酒場を失ったバイカー・チームがあるTV番組で…っていうところです。
いろいろと古臭いものの、そのノリが懐かしめるひとにおススメの作品。 あと、他にも「イージーライダー」や他の懐かしい映画へのオマージュがふんだんに盛り込まれているところが見所だったりしますが、わたしにはわかりませんでした。こちらの「お楽しみはココからだ~映画をもっと楽しむ方法 」さんの記事が詳しいのでどうぞ。
製作:アルゼンチン’04 原題:EL PERRO(BOMBO'N: EL PERRO) 監督:カルロス・ソリン ジャンル:★ドラマ
【あらすじ】ガソリンスタンドをクビになり、娘夫婦の家で肩身の狭い日々を送っていたフアン・ビジェガス。ある日、人助けをした彼はお礼に血統書付きの大きな犬”ボンボン”を贈られてしまう。娘に大反対されたため、彼は犬と一緒に車の旅を始め…。
お人好しなうえに流されやすい哀愁を帯びた優しい目のおじさんが、訓練士と一緒にボンボンを金儲けの道具にしてしまいそうになるお話。 おじさんと動物のまったりしたロードムービーなんてわたしの好きな要素ばっかりだし、ずっと前から一緒にいたみたいに仲良しなおじさんとボンボンも魅力的だったんですが、なんとな~く不完全燃焼な感じでした。嫌いじゃないですけど。
ネタバレですが、スピーチでうまく喋れなくなる訓練士の家の娘も、EDになっちゃって種付けができないボンボンも、原因は訓練士(と妻)のやり方に問題があると思うんですね。それで、ラストに家出したボンボンをおじさんが発見して(交尾中 笑)、ふたりで旅立ってハッピーエンドになるわけですが、わりと強欲そうに見える訓練士と話をつけたのかが気になって素直に喜べませんでした。 訓練士はこの業界では顔が広いみたいだし、話をつけずに勝手に大会に出たり種付けしたりしたら遅かれ早かれ彼の耳に入ると思うんですよ。一応、訓練代はこれからの稼ぎを山分けと約束したんだし、多少は大会などで稼がないと一緒に居られませんし…。 これからはおじさんも簡単には流されないでしょうが、カッとなりやすい訓練士のことを考えると不安の残るラストでした。
ちなみに原題はスペイン語で犬のこと。そして「なんて名前をつけたんだ」と呆れられていたBOMBO'Nは一口サイズのチョコの事で、「食べてしまいたいくらい可愛い子(女性に使う場合が多い)」という意味もあるらしいです。
追記(2011/8/18) 時間を置いてからまたこの作品のことを考える機会があったんですが、彼にはナイフがありましたね! 彼が細工を施したナイフはいいものらしいし、今ならボンボンという素晴らしい相棒がいる。これならお金持ちなお客と犬の話で盛り上がってナイフが売れる、という流れが容易に想像できます。 気がかりがなくなったのでお気に入りの★つけとこうっと♪
製作:フランス’05 原題:SAINT-JACQUES... LA MECQUE 監督:コリーヌ・セロー ジャンル:★コメディ/ドラマ
【あらすじ】仲の悪い兄妹ピエール、クララ、クロードのもとに、母の遺言書が届く。そこに書かれた遺産相続の条件は、キリスト教聖地サン・ジャックへの巡礼路1500kmを兄妹一緒に歩ききること。彼らは遺産欲しさにツアーに参加するが…。
三兄妹を中心に、自分の事で頭が一杯で巡礼に意味なんて求めてない人々を描いた、歩くロードムービー。 とにかく最初は文句ばっかりケンカばっかりで、せっかくの美しい風景も台無しにしてしまうくらいの不協和音。電波が届く場所についた途端、みんなしてあっちこっち歩き回りながら携帯電話と話しているシーンでは、現代人の滑稽さが浮き彫りになってました。 でも、そんなちぐはぐな9人の背景が見えてくる頃(最初は説明が少なくて誰が誰だかわかりにくい)、だんだんと歩くのにも慣れて、人を思いやったり風景を楽しんだりする余裕がでてくるんですね。 なかでも、失読症(文盲?)の少年ラムジィに三兄妹の長女クララが読み方を教えてあげる様子が微笑ましい。いつも仏頂面だったクララの表情は和らぎ、字を読めるようになったラムジィも満面の笑みを見せてくれます。あれだけ大自然のなかで浮いていた彼らが、後半は嘘のように風景に溶け込んでいました。 また、途中ちらほら入る彼らが見た夢の光景は、ちょっと怖かったり幻想的だったりでなかなか面白かったです。アート的雰囲気は好き嫌い分れそうですが。 ラストは思わずうるっとしつつも、三兄妹の様子に笑顔になれました。彼らにこの遺言を遺したお母さんも、きっと笑顔で見守ってるんだろうなぁ!
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【あらすじ】リオデジャネイロの中央駅で代書業を営むドーラ。ある日、夫への手紙の代筆してあげた女性が、直後にバスに轢かれて死んでしまう。彼女は一人残された息子ジョズエを連れ帰り、色々あった挙句に父親のもとへ送り届ける事になり…。
ロードムービー大好きなわたしの心の一本。ブラジル映画は先日の「シティ・オブ・ゴッド」含め片手で足りるほどしか観たことがありませんが、その中でもこれが一番です。 オンエアがあったので永久保存しようと居間のレコーダーに録画したら、タイミング悪く家族にテレビを占領され、観るのが遅くなってしまいました。
それで久しぶりの再見となったんですが、冒頭からまるで覚えてないシーンがあってびっくりしてしまいました。ドーラが中央駅で代筆の仕事をしていると、目の前で万引きした少年(青年?)とそれを追う男が走り抜けていきます。しばらくすると外から銃声が。一瞬ビクっとするけれど、ドーラはそのまま何事もなかったように仕事を続けるんですよね。 98年製作で現代を舞台にしていたようなので、この頃でもこんな感じだった様子。「シティ・オブ・ゴッド」といい、リオデジャネイロっていったいどれだけ恐ろしい所なんだ、と思って調べたら、こんなものが出てきました。→「外務省海外安全ホームページ 在リオデジャネイロ日本国総領事館”安全の手引き (PDF)”」 95年から減少しているけれど、2009年で日本の約5倍の殺人事件が発生し、人口のことを考え合わせると約34倍!…もう日本から出たくありません。
話が逸れましたが、そんな場所で冷淡に生きてきたドーラと、(売人に騙された)彼女に売られかけた 少年ジョズエとの父親さがしの旅…しょっぱなから険しい道のりで目が離せません。 売人に騙されたといっても、金を受け取った時の笑顔は少年にとっても観てるわたしたちにとっても嫌悪を感じるもの。それでもジョズエが彼女と一緒に行こうとするのは、父親を探すためにはお金を持つ大人が必要だったからにすぎません。彼女にしてみても、このまま少年が殺されては寝覚めが悪いから命がけで救出したけれど、あとはお金を渡してバスに乗せてさっさと面倒ごととオサラバしたいという感じ。 ロードムービーだから、そんな二人でもしだいに心を通わせていくわけだけども、あれだけのことがあっても許して受け入れてしまうのは、やはりブラジルの人々の強さとおおらかさがあるからでしょうか。 手紙を通じて人の優しさや愛情に触れ、本来のやわらかな心を取り戻したドーラの笑顔が印象的でした。
ちなみに、冒頭の代筆依頼をする人々は駅にいた素人さんたちで、女優さんが机を置いた途端に集まってきて勝手に話し始めたとの事。そんなに文盲が多いということと、伝えたい言葉をたくさん抱えているという事に驚きました。
関連記事 「ダーク・ウォーター」観た 製作:アメリカ’85 原題:THE TRIP TO BOUNTIFUL 監督:ピーター・マスターソン 原作:ホートン・フート ジャンル:★ドラマ
【あらすじ】テキサスで息子夫婦と暮らす老女キャリー。気の強い嫁とは口論が絶えず、故郷バウンティフルを一目見たいという彼女の願いも無視されてきた。彼女は嫁のいない隙に家を抜け出し、年金小切手を持って故郷への旅に出るが…。
おばあちゃんが主役のロードムービー。 最初は嫌な嫁から逃げ出して自由を満喫するパワフルなおばあちゃんのお話なのかと思っていたけど違いました。 思いがけずバスに乗ることができて、本当に故郷に帰れるのだと実感した途端に溢れてきた狂おしいまでの郷愁。今まで押し込めてきた感情が涙と共にこみ上げてくるシーンに、一気に惹き込まれました。 たった一度でいいから、これから先あの嫁のいる家に閉じ込められてもいいから、死ぬ前にひとめ故郷を見たい。あの土に触りたい…! そんな思いが、一途に故郷を目指す彼女の姿からひしひしと伝わってきます。彼女の魂の根っこの部分はまだ故郷に繋がっている。 毎日をぼんやり生きている自分には、そんな彼女の”かけがえのないものへの想い”が眩しい…。 旅のなかで出会う人々の優しさ、そう簡単には変わらない嫁や、家族の大切さを知る息子。ままならないことがあっても、すべての”縁”が素敵なものなんだと思える温かいラストでした。
ちなみに、バスで隣りに座る優しい女性テルマを演じたのは、先日観た「ゆりかごを揺らす手 」で怖~いペイトンを演じたレベッカ・デモーネイ。まるで気付かなかった…。
記事と関係ないけれど、イチゴが赤くなりました! 1.5cmくらい。そのまま食べられるのかな? あと、今ちょうど懸賞でアロエの鉢が当たりました。 クリスマスのサプライズ~☆
製作:アメリカ’06 原題:LITTLE MISS SUNSHINE 監督:ジョナサン・デイトン/ヴァレリー・ファリス ジャンル:★ドラマ/コメディ
アリゾナ州に住む問題だらけのフーヴァー一家に、ゲイで自殺未遂の伯父フランクも加わった。そんな時、9歳の妹オリーヴに美少女コンテスト出場のチャンスが。旅費節約のためボロいミニバスに乗りこみ、一行はカリフォルニアへ向かう。
いやぁ良かったですね。かなり期待して観たんですが、ほぼ期待通りでした。 なにが良かったって、あのおんぼろバスをみんなで押すところ! どんな時でも、あの瞬間にみんなの心が一つになるんですよ。バスが壊れて良かった~(笑) あとは、兄妹の組み合わせが可愛い。冒頭から何もしゃべらず無愛想な兄なんですが、母が悲しんでいる時は妹に「抱きしめてこい」と指令を出したり、逆に自分が悲しんでいる時には妹がそっと寄添ってくれたりと仲良しでした。 ロードムービーで”沈黙の誓い”というと「ハリーとトント 」が思い出されます。(ロードムービー大好き!)
そして、孫想いのおじいちゃんもいい! コンテストが近づいてきて「負け犬になりたくない。パパは負け犬が嫌いだから…」と涙を浮かべるオリーヴに(もうこの時点で泣ける!)、「負け犬とは、負けるのが恐くって、何もやらない奴の事だ」 と励ますおじいちゃんの表情が優しく頼もしいんですよね。おじいちゃん直伝のダンス にも大笑いでした。直前のコンテスト風景で、大人の振りをする(させられている?)気味の悪い美少女たちを観て不愉快になっていたのが、あの面白くて暖かいダンスによって嘘のように晴れやかで楽しい気分に早変わりです。 でも、こんないいおじいちゃんなのに何故かヘロイン常用者。納得できる理由も言ってなかった気がするし、ヘロイン常用者らしい演技もしていません。わたしがオリーヴの母親なら、娘がうっかりヘロインに触ったりしないよう、おじいちゃんの部屋には入れないだろうし…。(仲良しなのはいいけどね) これじゃPG-12も仕方がないと思える描写は個人的にマイナスでした。
ラスト、一家がおんぼろバスに乗り込んでいく清々しい表情が印象的。最初から最後まで家族がひとつにまとまることを望み、それぞれを支えてきた母親シェリルに拍手を送りたい気持ちになりました。
製作:台湾/日本/フィリピン/フランス’09 原題:台北星期天 監督:ウィ・ディン・ホー ジャンル:★ドラマ/コメディ
【あらすじ】台湾に暮らすフィリピン人出稼ぎ労働者ダドとマヌエル。彼らは日曜日には台北の教会で同胞と顔を合わせ、家族へ荷物を送ったりして異国での寂しさを紛らわしていた。そんなある日、ふたりは道ばたに捨てられたソファをみつけ…。
よりによって不倫相手の誕生日に別れを切り出し、傷つけてしまったと自己嫌悪に陥るダド。そして、追いかけていた同郷出身の美女に馬鹿にされ、落ち込むマヌエル。そんな時、ひょんなことから理想のソファを拾い、お金も車も無いから、はるばる(本来バスで行き来する距離 )寮まで歩いて運ぼうとするお話。
門限を破れば強制送還もありえる肩身の狭い出稼ぎ労働者が、異国の街をさまよいます。ただ「仕事の後、寮の屋上のソファでビールを飲みながら星空を眺めたい」という小さな夢のために…! 男ふたりがさまよう系の話が好きな私としては、かなりツボでした。 しんみりしつつもどこか楽観的な雰囲気が混在する作品で、早く帰りたいダドと並々ならぬ執念でソファを持ち帰ろうとするマヌエルがおりなす珍道中です。 せっかく同郷のよしみで車に乗せてもらえそうになっても、ソファを一日置いていくなんてできないと断ってしまったり。ダドがこっそりリサイクル屋(?)にソファを渡しても、取り戻そうとして迷子になったり…(というか既に迷子だったけど )。他にも様々なトラブルに見舞われながら、なんとしてもソファを持ち帰ろうと奮闘します。
ついに門限に間に合わなかった彼らが見る、ひとときの夢、ソファに揺られて歌うシーン が幻想的で楽しかった。(このシーンがあるから録画を消せない!) 「自分には家族も恋人もいない」とこぼしていたマヌエルでしたが、いつもとなりにはダドがいて、ラストには新しい夢も見つけられてよかったです。幸せな気分になれる作品でした。 ちなみに英語題「PINOY SUNDAY」とは”フィリピン人の日曜日”、台湾語題「台北星期天」は”台北の日曜日”という意味だそうです。
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