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素敵映画に出会えた時の感動をそのまま書き綴る、映画感想ブログ.

映画「殺しが静かにやって来る(ころしがしずかにやってくる)」

 | 西部劇  com(2) 
Tag:フランス イタリア 

殺しが静かにやって来る
原題:IL GRANDE SILENZIO/LE GRAND SILENCE[仏]
製作:イタリア・フランス’68 102分
監督:セルジオ・コルブッチ
ジャンル:★西部劇

【あらすじ】賞金稼ぎロコに夫を殺された未亡人ポーラが、“サイレンス”と呼ばれる男に復讐を依頼する。この町では仕事を奪われ野盗となった者たちが、町の権力者ポリカットによって次々と賞金を懸けられていたのだ。自らも賞金稼ぎの非道には思うところがあるサイレンスは、さっそくロコに狙いを定めるが…。

舞台設定とキャラクターがとても魅力的な異色西部劇でした。
まず舞台が、賞金稼ぎによる合法的な殺人がまかり通っていた時代の、雪に覆われた町スノーヒルというのが他の西部劇とは一味違います。
賞金首はポリカットの策略によって仕事を奪われた貧しい町人たち(無実の人もいるらしい)で、賞金稼ぎは金儲けのために人間狩りをしています。山に籠っていた賞金首たちが食料を求めて降りてきたところを皆殺しにしたり、家族を騙して「殺しはしない。牢に入った方が安全だから」と油断させて騙し討ちにしたりと、法のもとで好き勝手やるサマは無法者よりも性質が悪い。

そこで登場するのが主人公のサイレンス。彼は遺族に雇われた殺し屋で、相手を挑発して銃を抜いたところで正当防衛により賞金稼ぎたちを殺していきます。
殺し屋なのに嫌な感じが全くしないどころか、悲しい過去を背負う姿は完全にヒーロー。町に新しくやってきた保安官も、賞金稼ぎたちより彼を信頼していました。
この保安官バーネットさんもいい人で、何よりも大切な愛馬を食料として野盗に奪われたのに、この村の状況を知って野盗たちを守ろうとするんですよね。もうすぐ恩赦が出るからと、村のはずれに大量の食料を置いて悪さしないよう伝えたり。
また、サイレンスに依頼したアフリカ系アメリカ人のポーラも素敵で、肌の色の違う二人による美しいラブシーンが印象的。

敵である悪逆非道な賞金稼ぎロコと判事兼?銀行家のポリカットも文句なしの悪人で、雪の町を血で染めていきます。
けれど、その血を流すのは誰か…それは最後まで見ないとわかりません。
正直このエンディングには茫然としてしまって、これがあるから手放しにおススメはできないんですよね。だからと言ってこの作品の好きな部分を全否定するようなものでもなく…なんとも言い難いエンディングでした。

ただ、終わった時に流れるテロップの内容はどうなんでしょうね?
実際にあった事件を元にしてるのかな?と思って調べてみたところ、そう書いているのは日本語の記事ばかりで信用していいのかどうかわかりませんでした。私が思うに、真実なのは賞金稼ぎによる人殺しが横行していた時代があったということだけじゃないかと…。
もし元となる事件について詳しく書かれている日本語以外の記事があるなら教えてください!

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映画「さらばバルデス(さらばばるです)」

原題:THE VALDEZ' HORSES/VALDEZ, IL MEZZOSANGUE/CHINO
製作:アメリカ・フランス・イタリア’73 97分
監督:ジョン・スタージェス
原作:リー・ホフマン
ジャンル:★西部劇

【あらすじ】野生馬を捕らえて売るチノ・バルデスの元に、仕事を探して旅する少年ジェイミーが一夜の宿を求めて訪れる。最初は怖がっていたものの、一緒に過ごすうちに馬を愛するバルデスの生き方に惹かれ、ここで働くことに。だが、バルデスが牧場主の妹キャサリンと恋仲になったことで牧場主の不興を買い…。

野生馬を捕らえて売るチノ・バルデスと、仕事を求めて流れてきた少年ジェイミーのひと時の交流と人生の転換期を描いた渋めの西部劇。
もうしょっぱなから画が素敵で引き込まれました。青空をバックに荒野の高台を馬に乗った少年が旅する様子だけで画になる!
そして泊めてもらうことになった家で、夕飯の支度をするブロンソンの背中がカッコいいんだなぁ。彼の顔(先住民との混血)を見て「料理されるのは自分かも…」とビビッて逃げ出そうとする少年も微笑ましくて、親子のように年の離れた二人の交流を見てるだけで楽しめます。

自由に駆ける馬を捕らえるのは残酷に感じるけど、バルデスもジェイミーも馬を愛しているんですよね。美しい種馬を宝物だと言って荒野で自由にさせているし、二人とも馬を見る眼差しに愛情が。
彼がやらなくても別の誰かが捕まえて売るだろうし、それなら自分が大事に人との付き合い方を教えた馬を信頼できる相手に売る方がいいと考えたのかな?
彼なら自分が売った馬をぞんざいに扱われたらライフル片手に乗り込みそうだし(笑)

そんな孤高の男バルデスの優しさを感じ取り、一時の宿の予定が彼のもとで働きたいと言い出す少年。健気に「納屋の掃除もするし薪も割るよ!」とアピールされたら、バルデスじゃなくても絆されちゃいますよねぇ。まるでずっと前から一緒にいたみたいに、バルデスの傍でお手伝いしているジェイミーが可愛くて癒されました。
14歳くらいだったと思うけど、この年で一人別の町に行って働き口を探すのは普通のことなのかな…。映画はかなり端折った雰囲気で、ジェイミーが主役と言うにもバルデスが主役と言うにも、ちょっと中途半端なんですよね。原作ではどんな感じだったんだろう。

後半はバルデスと美しきヒロイン・キャサリンとの恋愛模様と、腹違いの兄の嫉妬(世界一美しい俺の妹とか思ってそう)による対立が描かれます。ここら辺は昔ながらの恋愛劇という感じでそんなに嵌らなかったものの、ヒロインの可愛さは目の保養になりました。ブロンソンと結婚5年目くらいの頃ですねー。お熱い。
あと、そこまで強硬手段に出ないだろうと思っていた牧場主が、私的に(バルデス的にも)許せない暴挙に出たので終盤は辛かったです…。バルデスが宝物の馬との別れを済ませた後、撃ち合いをやめて去っていったのも、自分が意地になって馬がこれ以上傷つくのが耐えられなかったのかもしれません。
最後までジェイミーのことは気にかけていたところが良かったです。

映画「ミネソタ無頼(みねそたぶらい)」

ミネソタ無頼
原題:MINNESOTA CLAY
製作:イタリア・フランス・スペイン’64 95分
監督:セルジオ・コルブッチ
ジャンル:★西部劇

【あらすじ】無実の罪で投獄されたミネソタ・クレイ。日に日に視力が弱っていた彼は、自分の無実を証明するために脱獄し、故郷へと向かう。だが、そこは保安官の座を得た無法者フォックスが我が物顔で町を支配していた。クレイを憎むフォックスは、彼を今度こそ地獄に突き落とそうと動き出す。

これは久々に痺れる西部劇でした。
まず主人公が私的にとても好感度高いです。脱獄囚だけど無実の罪で投獄されてたし、無血脱獄でドクターとの友情がキラリ。脱獄してきてどこにやってきたかと思えば、故郷の町というのが人間らしい。
しかも、脱獄囚だということをわきまえていて色々と配慮できる人だし、なんというか奥ゆかしいんですよね。亡き妻に生き写しな娘ナンシーと、その娘にぞっこんな若者の未来を陰ながら応援する姿にしみじみ。最後まで”育て親の親友”として娘を想いやってました。

一方、彼と敵対するフォックスのキャラも良かったです。力づくで保安官の座につき、町から高額のみかじめ料を巻き上げる男で、美女に翻弄されることなく引き際も心得ている悪党でした。
とくに、主人公を憎んでいた理由がとてつもなく個人的すぎるのが逆に良かったです。一般的には小物だと嗤われそうな理由ですが、それだけこだわっているというのが今までの行動からもわかります。終盤、主人公を倒すためにナンシーを盾に使った時は、本当に心の底から”本物”だけを求めていたんだなぁと感動してしまいました。
だって、普通なら良くも悪くも意識しそうなものなのに、まったく眼中にないんだもの。こういうところがとても好き。

西部劇らしくクライマックスも盛り上がります。眼病を患う主人公が音を頼りに、暗闇に紛れて複数の敵を次々と倒していくのがカッコいい(暗くて映像もよく見えないのに!)。そして、酒場で待つフォックスは銃声が聞こえるたびに外の様子が気になって、それでも今から出ていけば自分が撃たれるだけだから待つしかないと手元のグラスに意識を戻そうとする。…が、再び銃声が響き…というのを繰り返す描写が素晴らしい。
張り詰めた空気がありありと伝わってきて、このシーンだけでも見る価値あると思います。

ラストは予想外すぎて笑えてきたんですが、たまにはこんなのもいいですよね。
ピースを組み合わせられるペアネックレス?の使い方とか、裏切りは女のアクセサリーと言わんばかりの悪女の矜持なんかも良かったです。
ちなみに原題は主人公の名前「ミネソタ・クレイ」です。クレイと無頼じゃ”い”しか被ってないよ(笑)

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映画「殺しが静かにやって来る(ころしがしずかにやってくる)」

映画「奴らを高く吊るせ!」観ました

奴らを高く吊るせ!
読み:やつらをたかくつるせ!
原題:HANG 'EM HIGH
製作:アメリカ’68 114分
監督:テッド・ポスト
ジャンル:★西部劇/サスペンス

【あらすじ】牛泥棒の濡れ衣を着せられたカウボーイのジェドは、裁判もなしに、ウィルソンたち9人の男によって縛り首にされる。だが奇跡的に助かった彼は、判事から保安官に任命され彼らの逮捕を命じられる。千載一遇のチャンスと次々リンチ犯を見つけ出し、保安官として対応していくが…。

いきなりクリント・イーストウッドが死にそうな展開で驚かされますね。直前まで、河を渡れない仔牛を抱っこして運ぶという微笑ましいシーンだったのに…。復讐に燃えるあまり(?)目が曇ってしまった人間の恐ろしさが主人公視点で描かれます。
だからこそ、普通の復讐モノにはなりません。復讐モノがやや苦手な私でも安心して見られました。
そもそも、当人が顔をハッキリ見ているので、魔法が存在する世界でもなければ復讐相手を間違えるということもないしね。ジェドは元敏腕保安官で人間観察も得意だし。

運よく通りかかった保安官に助けられ、きちんと正式な手続きで無罪となった彼は腕を見込まれ連邦保安官に。もっとも自分をリンチした9人への復讐心があるから、断るはずもないと見込んでのこと。街の判事が最初から一筋縄ではいかない感じをプンプン匂わせてます。
引き込まれる導入から、さらに興味を引いたのが誤って無実の人をリンチしたと青ざめる9人の描写でした。復讐者が復讐される側に回った時の心理を丁寧に描いているし、復讐というテーマを多角的に見られるのがいいです。どうしても片方だけの描写中心になりがちですから。

そして、復讐心にかられたジェドも、過去の自分のように”裁判もなしにリンチする”ということは絶対にしません。少しくらいは正当防衛になるのを期待してるところはあったと思いますが、ブレることがなかったです。
とくに、悪党にそそのかされて牛泥棒をしてしまった若者二人(初犯で殺してないと自供&捕まってから悪党に加担しなかった)と出会ってからは、復讐の炎も下火になっていきます。街の人たちも判事も処刑を楽しんでいたり、自分の都合で処刑を行っているところがあって、リンチをする人々とそう変わらないことに気付いてしまったから…。

終盤はヒロインとくっついたり(めっちゃしつこい男だった 笑)、保安官のバッジを返そうとしたけど結局続けたり、復讐相手2人のことは描かないなど中途半端な気もしたけど、処刑された青年二人のことを考えると自然な流れでした。
復讐心が人間の判断力を低下させてしまうこと。彼女が復讐のために一生を捧げるのを見てられなかったこと。リンチを止めるには結局のところ法の秩序が必要なこと。それらを実感しての決断だと納得できます。
見ごたえある作品で、クリント・イーストウッドの魅力も堪能できました。おすすめです。

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映画「襲われた幌馬車」観ました

 | 西部劇  com(6) 

襲われた幌馬車
原題:THE LAST WAGON
製作:アメリカ’56 99分
監督:デルマー・デイヴィス
原作:グウェン・バグニー・ギルガット
ジャンル:★西部劇

【あらすじ】保安官に連行されていた殺人犯のコマンチ・トッド。途中、幌馬車隊と合流することになるが、隙を見て保安官までも手にかけてしまう。さらに、子供たちが川遊びに行っている間に幌馬車隊はアパッチ族の襲撃を受け、トッドだけが生き残る。子供たちは生きるために彼を自由にするが…。

気持ちよく見終えられる西部劇でした。以下ネタバレあり。
子供たちと同じように、殺人犯のトッドを信じていいのか疑心暗鬼になりながら見られるので、この前のミステリー企画で見ても良かったかも?
なんせ冒頭から撃ち合いで人を殺してるし、かなり嫌な奴だけど保安官まで殺してしまうし、アパッチ族の襲撃で一人生き残った(車輪に手錠で繋がれてたのに!)なんて状況を見れば、信じていいものか迷うのは当然ですよね。むしろ、たった数分話しただけなのに少年ビリーとその姉ジェニーが彼を信用しているっぽいのにびっくりしました。…もう少し人を疑った方が(汗)

でも、荒野のど真ん中で馬車や荷物は壊され、いつアパッチ族に見つかるかわからない状況なら、どんなに怪しくても生き残る知識と技術を持つ彼に頼るしかありません。
白人でありながらコマンチ族として育てられた彼は、馬車の残骸から使える馬車をくみ上げ、無事な飲み水や食料、武器をかき集め、アパッチ族の目をかいくぐってなんとか無事に町まで行こうとします。
こういう時、言うことを聞かせるために武器を独占したり、知識を出し惜しみしたりするものですが、彼は自分を疑いまくってる相手に銃を渡したり、自分が死んだらあの場所を目指すんだぞと行き先をきちんと教えてくれました。
これくらい彼の行動を見てから「あ、いい人なんだ」と判断するならわかります。実際は約2名がとことん疑ってるんですが…。

この2名がお馬鹿さんで、蛇に襲われて悲鳴を上げて走り回ったり、むだに銃を使ってアパッチ族に気付かれたり足を引っ張りまくります。ここは若干イラっとしたものの、ピンチになったところをトッドや他の仲間がフォローする姿がかっこいいし感動なんですよね。
トッドは先住民を良く知っているから、二人の斥候を仲間の元へ帰さないために正々堂々正面から勝負を挑みます。戦士同士の戦いに野暮なことはできないと、相手側がちゃんと1対1で戦ってくれるところが素敵。
そして、蛇の毒で熱を出していた娘さんは、その腹違いの妹やトッド、ビリーらが分けてくれた残り少ない飲み水によって命を取り留めます。

この後の偵察でトッドとジェニーがイチャイチャしてるシーンは、ロマンチックなものの命懸けの偵察じゃなかったの?と思ったりもしたけど、ピンチを乗り越え殺人犯としてトッドが裁判にかけられる終盤はジーンときました。
ジェニーとビリーはもちろん、彼に反発し続けていた例の二人も「彼がいなかったら今の自分はない」と彼をかばうんですよ。「奪った命だけでなく救った命のことも考えて」とジェニーが訴えかけるくだりもグッときます。
その直前にトッド自身も熱く語っていて、裁判官?を務める将軍に南北戦争で何人の同胞を殺したのかと詰め寄るところも良かったけど、やはり彼との交流によって成長した子供たちの力強さに心打たれました。
さわやかなラストだったと思います。

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映画「ミスター・ノーボディ」観た

ミスター・ノーボディ
原題:MY NAME IS NOBODY
IL MIO NOME E NESSUNO
製作:イタリア・フランス・西ドイツ・アメリカ’74 115分
監督:トニーノ・ヴァレリ
ジャンル:コメディ/西部劇

【あらすじ】伝説の老ガンマンの前に現われた風来坊。彼は無敵と謳われたガンマンを自分の手で倒したいと語りながらも、老ガンマンとの対決を何故か避けようとする。そして150人のワイルドバンチを倒して伝説となるようお膳立てをはじめ…。

先が読めないユーモアあふれる作品。序盤で風来坊が雑魚敵に言われる「てめぇはツケが利くほど長生きしねぇ」というセリフから痺れました。画づくりもカッコいい!
とにかく主人公?の風来坊が何考えてるかわからないんですよ。伝説の老ガンマンと戦いたいのか、彼に150人のワイルドバンチと戦って死んでほしいのか、それとも…?

老眼鏡で目をしばたかせてる伝説の男が、150人の馬に乗ったガンマンたちと戦わなきゃいけないという状況に陥ったシーンの絶望感がすごかったです。主人公はサイコパスだったのか!?と、あの笑顔が怖く見えてきたり。
最後はそういうことか、と笑顔になれますが、ホント先が読めなかったです。

あと、途中出てくる遊園地みたいなところが面白かったですね。あの時代の西部って、意外と凝った出し物が多かったのかな。ミラーハウスでの対決とか、若干長かったけど西部劇としては斬新。
しかし、お墓にサム・ペキンパーって名前が…(笑)
ちなみに、ワイルドバンチは「荒くれ者」の意味で某作品のタイトルを意識しているだけでなく、アメリカ西部開拓時代末期に実在したギャング団の俗称らしいです。

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TVM「復讐のガンマン・ジャンゴ」観た

 | 西部劇  com(0) 
Tag:イタリア 

復讐のガンマン・ジャンゴ
原題:W DJANGO/VIVA! DJANGO
製作:イタリア’71 100分
監督:エドワルド・G・ミュラー
ジャンル:★西部劇

【あらすじ】トンプソンら3人の男が農場に押し入り、家にいた女を撃ち殺した。殺された女の夫ジャンゴは復讐を誓い、敵を追う。彼は手始めに、メキシコ人の山賊カランザが縛り首になるところを救い…。

導入からカッコよかったですね。悲惨な事件が起こるんですが、その拍子に落ちたオルゴールが鳴り始めて、その曲からキレイにOPテーマに繋がります。
で、本編もとにかくカッコいい。主人公ジャンゴがこれでもかってくらいカッコつけていて、ダイナマイトを投げつけられても優雅に拾ってたばこに火をつけ、ぎりぎりのタイミングで投げ返すシーンとか最高です。ベタすぎて笑えるのにちゃんとカッコいい!

全体的に痛快でコミカルなマカロニで、サービス精神旺盛です。かなり最初の方からクライマックスかよってくらいの銃撃戦があり、それが4回くらいありました。
それもただの銃撃戦ではなく、主人公が頭を使ってかわしつつ敵が翻弄されたところでお得意の連射!数の不利を覆していきます。

でも、丸腰の相手を撃つようなことはしなくて、基本的にはお人よしなところもよかったです。
妻の仇3人の元仲間だった男カランザを縛り首から救い出し、ジャンゴは敵の情報、そしてカランザは金のために手を組みます。即興コンビにしては息ピッタリで、それでいてベタベタはしてないギブ・アンド・テイクな関係なのがいいですね。
最後のどんでん返しは伏線がわかりやすすぎて、主人公がまったく気付いてなかったのが逆に意外だったけども、お人好しなところがあったのでまあ納得できます。

個人的には酒場の主人が良いキャラしていたので、あんな退場の仕方をして、その上それを主人公にも知られてなさそうなのが可哀そうでした。最後はジャンゴと祝い酒を交わしてほしかったなぁ。

映画「シルバー・サドル 新・復讐の用心棒」観た

シルバー・サドル 新・復讐の用心棒
原題:SELLA D'ARGENTA
製作:イタリア’78 94分
監督:ルチオ・フルチ
ジャンル:★西部劇

【あらすじ】富豪の依頼で、自分とも因縁のある相手を殺すため賞金首の待つ墓地に向った流れ者のガンマン。だが、そこに現われたのは小さな少年だった。事件に裏があると睨んだガンマンは少年を匿うが…。

「サンゲリア」の前の年にフルチさんが監督した作品。
グロホラーのサンゲリアとは別の方向性で面白かったです。8歳くらいの少年が可愛くてね~、ジェンマ演じるガンマンとのやり取りが微笑ましくて笑えました。
この少年、見た目はフリルとリボンつきの服を来たいいとこの坊ちゃんだし、口調も丁寧で育ちの良さがうかがえるんだけど、彼と親しい修道士が”撃たれる前に撃て”というタイプで、蛇の倒し方や護身の心得を教えられてるんですよ。
おかげでワイルドな一面もあって、坊ちゃん風の外見とのちぐはぐさがたまらない!
自分の命を狙っているガンマンたちに、ジェンマお手製の火炎瓶的な(銃で撃つとガスに引火する感じ?)ものを心底楽しそうに投げたり、こんなに楽しかったのは初めて!と嬉しそうに語ったりと、そこはかとなく狂気が垣間見えるというか(汗)

最初は因縁の相手の身内だからと冷たくしていたジェンマが、いつしか彼を息子のように世話しているのもいいですね~。彼をかくまった場所が馴染みの酒場兼娼館みたいなところで、少年と馴染みの娼婦の前で嬉々として手品を披露するジェンマが…(笑)
そして、楽しい時間を満喫した少年は、娼婦のお姉さんに「そうだ、ここを姉さんに買ってもらおう!」とか言い出すし。

ストーリーの方もなかなかで、二転三転する展開は飽きないし、最後にジェンマが名推理を披露して黒幕のたくらみを阻止する展開も痛快でした。
ラストはホントもう監督狙いすぎだろ!とつっこみたくなるくらい可愛い展開で、男性より女性におすすめしたい西部劇です。

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映画「小さな巨人」観ました

 | 西部劇  com(11) 
Tag:アーサー・ペン 

小さな巨人
原題:LITTLE BIG MAN
製作:アメリカ’70 140分
監督:アーサー・ペン
原作:トーマス・バーガー
ジャンル:★ドラマ/西部劇

【あらすじ】幼い頃に両親を殺されたジャックは、通りがかったシャイアン族に拾われ育てられる。体は小さいが勇気があると“小さな巨人”と呼ばれるようになるが、騎兵隊との戦闘で捕らえられ、今度は白人社会で生活することに。様々な出会いを通して、やがて彼はインディアン撲滅に異常な執念を燃やすカスター将軍と対峙する。

主人公ジャックは架空のキャラだけど、白人によるネイティブアメリカンへの迫害の歴史をまざまざと描いた作品。
惨たらしい虐殺シーンはマジで西部劇や白人が嫌いになりそうな描写で、よくアメリカでこんな映画が撮れたなぁと感心するほど。それでいて、主人公のキャラが人間味があって飄々としていてコミカルなところもあるので、140分なんとか観てられました。
ダスティン・ホフマンを初めとする俳優陣の演技も素晴らしく、ダレることのない話運びなど、良く出来た作品だったと思います。
印象に残ったのは、冒頭とラストで登場する121歳の主人公(のプルプル感)。これ特殊メイク?と判断しかねていたら、本当にホフマンが演じていたのね。この見事なシワと哀愁漂う姿が、ジャックの人生の壮絶さを表してます。冒頭とラストでは印象も違って見えました。

また、登場するキャラが全体的にデフォルメされた感じで、誘惑に弱い宣教師の奥さんとか、体の一部をいくら失ってもへこたれないペテン師、異常なまでに危険に敏感なガンマン、適応力のある女達、滑稽なほど傲慢な実在の人物カスター将軍など、長い物語なのにみんな印象に残ります。
シャイアン族の長老がとくに素敵で、いつでも優しくジャックを迎え入れる懐の大きさに感動。終盤『心の目を開かせてくれた盲目に感謝する』と、様々なものに感謝を述べて死すらも迎え入れようとする姿からは、後悔は少しも感じられません。彼なら予知夢も精霊との会話もできて当然と思えました。
見応えある作品だったと思います。

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映画「駅馬車(1939)」観ました

 | 西部劇  com(9) 
Tag:ジョン・フォード 

駅馬車(1939)
原題:STAGECOACH
製作:アメリカ’39
監督:ジョン・フォード
原作:アーネスト・ヘイコックス
ジャンル:★西部劇

【あらすじ】アリゾナのトントから、ニューメキシコのローズバーグ行きの駅馬車が発車しようとしていた。乗客は銀行家ヘンリー、婦人会に追い出された女性ダラスと酔っ払いの医者ブーン、ウイスキー行商人ピーコック、大尉の妻ルーシーの5名。そして、護衛として保安官カーリーと賭博師ハットフィールドがつき、出発するが…。

集中力がない時に見たので、最初の30分くらいで付いていけなくて最初から見直す破目になったけど、とても優れた群像劇でした。
駅馬車に乗り合わせた8名の道中を描いた作品なんですが、旅の様子や人間模様を無駄なく濃密に描いているんですよね。100分未満の作品とは思えないくらい、観終わった頃にはそれぞれの人生が見えてくるような。
実際にはそれほど彼らの背景を詳しく説明しているわけではなく、ダラスがなんであそこまで嫌われていたのかとか、ハットフィールドが何者だったのか、ルーシーがあまり幸せそうに見えない…などなど、色々気になる点は残ったものの、言葉以外の部分で丁寧に描写されているので、どことなく前から知ってる人のような感じがしてくるんですよ。
例えばダラスがどんな問題を抱えていようと、彼女が聖母のように赤子を抱く姿(銃撃戦時は必死に庇って!涙)、表情を見たら、深い愛をもった優しい女性なのだとわかるし、ハットフィールドが絶体絶命の時にルーシーにしようとしたことは、彼なりに彼女を本気で守ろうとしていたことが伝わってきます。頑なだったルーシーも、最後はダラスに心を開こうとしてたし。
大変な旅のなかで、それぞれの生き様を垣間見ることができました。

印象に残ったのは、ダラス以外では飲んだくれブーンと酒商人ピーコックさんですね。
ブーンの方は、何があって飲んだくれになったのかはやっぱり謎のままでしたが、医者として自分以外の健康と幸せを願ってるひとでした。終盤、リンゴーとダラスの行く末を見守る姿は父親のよう。
赤ん坊を取り上げなければならないという時になって、コーヒーをがぶ飲みして一生懸命、酔いを醒まそうとしてるくだりも良かったです。
そして、個人的に誰よりも好印象だったのが酒商人のピーコックさん!
安全のために”急がば回れ”を実行したかったのに、飲んだくれに目をつけられ強引に馬車旅を続ける破目になった気弱な人です。
でも、自分の身が心配な一方で、きちんと冷静に状況を見て、周りに対して思いやりのある言動をとっているんですよね。5児の父親として、出産直後のルーシーのために出発は遅らせたほうがいいと、控えめながらきっぱり意見するシーンはカッコよかったです。
彼が矢を受けたシーンでは本気で心配してしまって、この時代の映画らしく即行で矢を引き抜くシーンでは「うわぁー、やめてー!」と声をあげそうになりました(笑)
ダラスとリンゴーの行く末より、彼の無事が気になって仕方がなかったです。

インディアン襲撃シーンが有名らしく、当然見応えある映像で手に汗握ったものの(河を渡った時、馬車に水は入らないのかな?)、やはりメインは旅の中で描かれる人間模様だったと思います。名作でした。
ちなみに、原題「ステージコーチ」は、4頭の馬が引く屋根つきの馬車のことで、都市間などの長距離移動に使われたもの。駅馬車と乗合馬車の違いは、列車とバスの違いみたいなものなんですね、知りませんでした。

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映画「大いなる勇者」観た

大いなる勇者
原題:JEREMIAH JOHNSON
製作:アメリカ’72
監督:シドニー・ポラック
原作:レイモンド・ソープ 、ロバート・バンカー
ジャンル:ドラマ/西部劇

【あらすじ】1850年代の西部、ジェレマイア・ジョンソンはロッキー山中で狩りをして生きると決めた。厳しい自然やインディアン、猛獣と戦いつつも、ひょんなことから奇妙な出会いに恵まれる。口の利けない少年と言葉が通じない嫁との、穏やかで幸せな生活が始まるが…。

冒頭で報われない物語だと暗示しているし、凍死した男の死体と出くわしたりと不穏な空気が流れているものの、どこかほのぼのしていて油断してしまいました。
何度か描かれる”出会い”の描写が秀逸なんですよね~。俗世が嫌で山に来たと思われるんですが、そんな彼を待ち受けていたのは自然の厳しさだけではなく、さまざまな人との出会いだったりします。
サバイバル術を教えてくれたお爺さんは、「イントゥ・ザ・ワイルド」でもこんな人と出会えてればなぁと思えるような頼れる人生の先輩だったし、子供たちを殺されて気が狂ってしまった(たぶん最初は錯乱してたけど、墓を立てた後は冷静だったと思う)母親との出会いは、”一人で生きる”という彼の決意を簡単に壊してしまいます。
口が利けなくなってしまった幼い息子を彼に預けた(おそらく復讐に巻き込まないため)のは、彼が信用できる男だったからだけではなく、人恋しい気持ちを見破ったからかも。

その後も、先住民に襲われたという男を助け、復讐に巻き込まれた挙句に、なぜか英雄扱いされて族長の娘をもらったりと波乱万丈(笑)
言葉が通じない嫁と心通わせ、喋れない息子とも笑顔で意思疎通できるようになっていきます。
この”本当の家族”になっていくくだりが本当に幸せに満ちていて素晴らしいんですよ。言葉が通じない(嫁は英語を覚える気なし!)からこそ目と目でお互いを観察し、相手を思いやります。
擬似親子でクリケット?みたいな遊びをしてる様子なんて、ホント幸せな家族そのものでした。

しかし、そんなふうに人との出会いを大切にするジェレマイアだからこそ、時には不幸を呼び寄せてしまいます。
一度に全てを失ってしまった彼の抜け殻のような表情…俗世間を捨ててから彼が得たもっとも大切なものが”家族”だったと伝わってきて涙が溢れました。これからも彼は悲しみを抱えながら山で生きていくんでしょうね…。
西部劇というより、ひとりの男の人生を描いた良質なドラマでした。

ただ、この作品で描かれる先住民”クロウ族”のやり方はあまりに卑劣かつ冷酷で、違和感があって調べてみたところ、白人を敵対視してない友好的な部族だったそうです。
実話(1847年に奥さんを殺され、何十年もかけて復讐し続けた)を基にしており、伝承などを集めて小説にしたのでしょう。実際は、奥さんを殺されたということ以外は、映画(原作)とは違うかもしれません。
ロバート・レッドフォードの演技も素晴らしかっただけに、この部分には時代を感じてしまいました。

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映画「西部に賭ける女」観た

西部に賭ける女
原題:HELLER IN PINK TIGHTS
製作:アメリカ’60
監督:ジョージ・キューカー
原作:ルイス・ラムーア
ジャンル:★西部劇/ロマンス

【あらすじ】旅回りの演劇一座「ヒーリー劇団」は、花形女優アンジェラが問題を起こすたびに夜逃げをする貧乏一座だった。今回も男に貢がせるつもりが失敗して、借金から逃げてきたところだ。だが、今度はポーカーに大金と自分自身を賭け、流れ者のガンマン、メイブリーに負けてしまう。

やや時間を長く感じたけど、ほんのりコミカルなロマンスものの西部劇として楽しめました。
時間を長く感じた理由は、ヒロインの前半のバカ女っぷりが目に余るんですよ。本人は手練手管はお手の物と思ってるかもしれないけど、まったくできてないという(苦笑)
それで本人だけドツボに嵌ってるならいいんですが、一座の団長トムが彼女に惚れていて”彼女の借金=一座の借金”になってしまうんですよね。
仲間は役者の母娘と、おじさんの俳優と道具係くらいだったと思うんですが、解散ということになれば食べるのにも苦労しそうな状態。振り回される団員たちが可哀想で、華麗に衣装を着こなすソフィア・ローレンがヒロインでも笑って許せませんでした。

でも、再び彼女が問題を起こして、借金や殺し屋からの逃避行が始まってからは面白くなってきます。
自分自身と大金を賭けて負けた事をトムに言えないアンジェラと、その賭けに勝ったガンマンのメイブリー、何も知らず用心棒としてマドリーを歓迎するトム。
そんな緊張感ある三角関係も楽しめたし、先住民に襲われシャレにならない状況になっていくのも、冒頭のからは想像できない展開で見ごたえありました。
とくに、メイブリーとの関係に気付いてしまったトムの傷ついた表情と、落ち込んで夢も諦めてしまうところが哀愁漂ってます。どれだけ彼女を愛していたのか伝わってきて切ない…。

一方、メインキャラ以外もしっかり描き込まれていて、母親にいつまでも子ども扱いされるデラの描写も印象的です。20歳なのに少女のような役ばかりやらされているデラが、世の中の厳しさを目の当たりにして変化、成長していきます。
彼女を演じるのマーガレット・オブライエンは、「若草の頃」の四女を演じてたとかで有名な子役だった人なんですよ。実際の彼女と被る役柄だったということで、どうりで印象に残ったわけです。はまり役でした。

ラストは、アンジェラが「ほしいものは手に入れる」性分を思いっきり発揮して、なんとも豪快な解決方法を取ってくれます。この展開はホント予想もつかなかった、さすがキューカー監督!
これで前半のアンジェラへの評価も一気に覆ってしまいました。愛に生きる女、可愛いです。トムってば観る目ある!

ちなみに、原題の意味は「ピンクのタイツをはいた厄介者」かな?
小悪魔と訳している方もいるみたい。原題のままのタイトルの方が良かったかも…。

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映画「ブラッディ・ガン」観ました

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Tag:オーストラリア 

ブラッディ・ガン
やっぱり西部劇は青空だよね~。舞台はオーストラリアだけど。
原題:QUIGLEY DOWN UNDER
製作:アメリカ・オーストラリア’90
監督:サイモン・ウィンサー
ジャンル:★西部劇

【あらすじ】凄腕のガンマン、マシュー・クィッグリーは、アメリカから遥々海を渡り、腕の立つガンマンを求める豪州の大牧場主マーストンの元へやってくる。しかし、彼の目的が原住民アボリジニ狩りだと知ってマシューは取引を拒否。マーストンと対決することとなるが…。

邦題が地味というか、内容にあまり合ってません。原題の意味は「クィグリー、オーストラリアにて」みたいな感じですかね?
最初はぼーっと観てたんですが(後で最初から観なおしました)、ヒロインが過去を語るシーンで泣いてしまいました。ほんの短い、回想シーンすらない身の上話だったのに…。
クレイジー・コーラと呼ばれ、会話がかみ合わず主人公をロイと呼び続ける彼女が、どうしてそうなってしまったのか、それがわかって一瞬で彼女の印象が変わります。
その後も、普通かと思えばわざとおどけているように見えたり、本当に過去と現在の区別が付いてないようだったり、彼女から目が離せなかったです。
もちろんクィグリーも素敵で、ヒロインとのかけあいもコミカルで面白いし、射撃(狙撃?)の名手でも失敗は結構あって、完璧なヒーローじゃないところがよかったです。
砂漠で助けてくれたアボリジニや、匿ってくれた一家も、ヒーローとしてじゃなく友人として迎え入れてくれたから、巻き込まれても彼の事を恨んじゃいないんだろなぁ。
西部劇だけどドンパチやるばかりでなく、仕掛けておいた丸太やロープを射撃で上手く使いつつ敵を排除するという、彼の戦闘スタイルも面白かった。
西部かぶれの敵ボスも地味ながらよくて、相手にあえて銃を取らせて一騎打ちを楽しむ性格がラストに繋がって痛快です。
ラストは「愛し合う前に二つの言葉を言えといってたでしょ」の後のキスシーンがロマンティック!
「この映画では動物を傷つけてません」と注意書きで終わるところも好感持てました(崖から落ちたお馬さんがいたので)。
西部劇の名作だと思います!

映画「荒野の一つ星」観た

荒野の一つ星
原題:WANTED
製作:イタリア’67
監督:カルヴィン・ジャクソン・パジェット
ジャンル:西部劇

【あらすじ】新保安官としてグリーンフィールドにやってきたライアンは、初仕事から優秀な仕事ぶりをみせた。だが、彼の赴任により保安官になり損ねたロイドは、彼に人殺しの罪をかぶせる。ロイドの背後に市長ゴールドがいると知ったライアンは、彼らの悪事の証拠を掴もうとするが…。

イマジカ無料放送で鑑賞。「暴れん坊将軍」や「水戸黄門」みたいな、安心感ある時代劇という雰囲気でした。
主人公は強くて当然、ピンチに陥れば優秀な協力者が現れるし、美人とは当然のごとく相思相愛、最後はカッコよく勝って、悪は倒されハッピーエンド!
テンポがよく、ジェンマは自信たっぷりに決めてくれるし、正義の心を持った協力者たちもカッコよくて痛快です。
とくに印象に残ったのは、協力者である牧師と賭博師。
牧師さんは、銃が必要というジェンマに「自分の信仰を信じろ!」と厳しく言うんだけど、決まり悪そうにするジェンマに「とはいえこれは必要だな」と使い慣れた様子でローブの下から銃を取り出し、くるくるっと回して手渡すんですよ(笑)
カッコいいじゃんか、おっさん!
あと賭博師の方も、追われる身で路銀に悩むジェンマを見かけ、さりげなく目配せして、他人の振りをしながら助けるとかね。
しかも、偽証した女をひっぱたいて自白させるも、彼女が殺されそうになったら身を挺して庇うんですよ。別に恋愛感情とかあるわけでなく自然体で…こりゃあ彼女、惚れちゃうわ~。
ラストは死者と遺族についてとくに触れてなかったのが物足りないものの、ジェンマのアクションも堪能できて満足でした。

映画「モンテ・ウォルシュ」観た

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モンテ・ウォルシュ
原題:MONTE WALSH
製作:アメリカ’70
監督:ウィリアム・A・フレイカー
原作:ジャック・シェーファー
ジャンル:★西部劇

【あらすじ】牧場に雇われたモンテと相棒チェット。だが、時代の波は西部の町にも及び、同じ牧場で働いていた若者ショーティはクビに。チェットは金物屋の娘と結婚し、かつての恋人マルティーヌと再会したモンテも足を洗おうと考えるが…。

もう、泣いちゃったじゃないの!
おばさんが西部劇を観てボロボロ泣くのもどうかと思ったけど、冒頭のシーンを一人で繰り返されたりしたらもう泣くしかないでしょ。カウボーイでありながら、家畜を襲う狼を殺せない心優しい人なのに…それなのに一人になっちゃって…………ウォルシュさーん!!!(泣)
最初はのんびりほのぼのした雰囲気で、軽い感じにカウボーイの終焉を描いていくのかなぁと思ってたんですよ。料理の腕はいいけど体臭がきついコックを無理やり洗うくだりは面白かったし、恋人マルティーヌへのプロポーズは胸キュンでした。
ウォルシュの決意を表すような、荒馬の調教シーンは必見。馬ってこんなに暴れるものなのかという暴れっぷりと、町の破壊っぷり(誰が弁償したのかな…)は大迫力。振り落とされずにいるウォルシュさんもすごい(さすがに馬が倒れた時は下敷きにならないように自分から離してます)。
それが…経営難で解雇された若者ショーティーが道を踏み外したせいで…。「白馬を慣らしたぞ。男のプライドで」と、以前この馬の調教を諦めたショーティーに告げるシーンはマジで痺れました。
ジャンヌ・モロー演じるマルティーヌとの別れも、”資本”やハサミの小道具が利いていて、胸に迫るものがあります。
そしてラスト、カウボーイしかできない彼が去っていく姿が物悲しく、切ないメロディが心に染みました。
日本語のDVDもないし、永久保存決定です!

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映画「復讐のダラス(怒りの用心棒)」観ました

復讐のダラス(怒りの用心棒)
原題:IL PREZZO DEL POTERE
製作:イタリア'69
監督:トニーノ・ヴァレリ
ジャンル:西部劇/サスペンス/アクション

【あらすじ】1881年、南北戦争直後のテキサス州。人種差別がいまだ残るダラスを、大統領が訪れる。だが、大統領は何者かに暗殺され、ビルの黒人の友人が犯人として逮捕されてしまう。友人の無実を信じるビルは真相を解明しようとするが…。

ジェンマというと、かっこよくアクションで魅せる作品が多いと思ったけど、これは策謀や駆け引きがメインのサスペンスでした。
ケネディ暗殺を題材にしているらしく(登場するのは他の実在する大統領ですが)、事件のすぐ後にこういう形で疑惑を投げかけたのはすごいと思うし、ジェンマの復讐劇に政治的な駆け引きが加わって、いつもとは一味違う見ごたえある作品になってます。
大統領の影響で心を入れ替えた副大統領の命により、悪役どもを倒すのではなく封じ込める(ゆすりのタネを取り戻し、逆に弱点を握る)補佐官がステキ!
彼が目的のためなら感情も抑え任務を遂行できるひとだから、ジェンマの真っ直ぐな役どころが引き立つんですよね。
黒人の友人が大統領暗殺の濡れ衣を着せられようとしていた時、ジェンマの「彼は白人と黒人を同じだと言った大統領を尊敬していた。暗殺はそれだと困る奴の仕業だ!」というセリフが単純かつ的を得ていて響きます。裏をかいたり回りくどいことをしていた法廷で、一番説得力のある言葉でした。
ラストは、全てを明らかにしたいと一度は”ゆすりのタネ”を補佐官に渡すのを拒むも、秘密のままの方がいい事もあるという彼の言葉で、かつて北軍の父親に従わず南軍として戦った自分が(父親のために?)弁明を一切せずに服役した事を思い出したのか、「あんたに任せる」と返すシーンは痺れました。
多くを失い、虚しい気持ちを抱えながら、タバコに火をつけて汽車を見送るシーンが印象的でした。
邦題は何種類かあるみたいですね。個人的に「復讐のダラス」の方がお気に入り。原題の意味は「権力の代償」。こちらも渋いです。

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映画「馬上の二人」観た

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Tag:ジョン・フォード 

馬上の二人
原題:TWO RODE TOGETHER
製作:アメリカ’61
監督:ジョン・フォード
原作:ウィル・クック
ジャンル:★西部劇/ドラマ

【あらすじ】旧友の騎兵隊員ゲイリー中尉に、強引にグランド砦へ連れて行かれた保安官マケーブ。コマンチ族に連れされられた開拓民の家族を、交渉により連れ戻してほしいというのだ。気乗りしないマケーブだったが…。

実際はどうだったのかはわからないけど、拉致問題や偏見、エゴについて考えさせられる作品でした。惨い部分とコミカルな部分のギャップがあるものの、重過ぎないので観やすいです。
主役の一人マケーブが、悪徳保安官でけっこう嫌なヤツなのが面白い。最初はとても主人公とは思えなかったんですが、裏表はないし、最初から「この任務は気が乗らない、金のためならやる」ときっぱり主張して変えないので、後半にはちゃんとらしく見えるんですよね。
一方、正義感が強くて誠実なキャラを貫くゲイリー中尉も、まさしく西部劇のヒーローという感じでバランスが取れてます。彼の友人ならマケーブもそんなに悪い奴ではないんだろうと思えるくらい。
この二人の意見がぶつかったり、ぴったり合うのを見ていくうちに、いつの間にか西部劇における先住民の描かれ方、それを描いている白人について考えさせられていました。
救出後の開拓民によるあからさまな差別の描写はおぞましいものがあります。コマンチ族として生きてきた者を無理やり連れ帰ってきたくせに、その姿を見た瞬間にもう”厄介者”扱い。オルゴールの使い方も上手くて、少年の哀しい運命に胸が締め付けられました…。
でも、ラストはベルの粋な計らいもあって、明るい未来を感じさせるもので良かったです。もう一人の拉致被害者エレナのため、わざとキツイ事を言ってマケーブをたきつけたり。彼は追いかけられるより追いかける方が好きなんですよね(笑)
あまり評判はよくないようですが、考えさせられる良作でした。

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Tag:ジョン・フォード 

三人の名付親
原題:THREE GODFATHERS
製作:アメリカ’48
監督:ジョン・フォード
原作:ピーター・B・カイン
ジャンル:★西部劇/ドラマ

【あらすじ】西部のならず者三人組、ボブ、ピート、キッドは、銀行襲撃に失敗し灼熱の砂漠に逃亡した。保安官スイートの追撃を受け、三人は水を求めて砂漠をさすらう。そこで、身重の女を乗せた幌馬車を発見した彼らは、水がほとんどない状況で赤ん坊を託され…。

タイトルとはかけ離れた展開からはじまって、どうなるのかと思ったけど、なかなかの異色西部劇でした。
冒頭で、姪夫婦と出会わなかったか保安官の妻にたずねられるんですが、その姪夫婦が起こした不幸な事故がきっかけで、三人は赤ん坊を世話することになるんですね~。見事な展開です!
ここにたどり着くまでの間に、この三人が根っからの悪人ではないことがしっかり描かれているので(超がつくほど仲間想い)、生き残った赤ん坊を守ろうという流れにも違和感ありませんでした。…まあ、なんでそんな奴らが強盗なんて、と考えると変ですが(笑)
赤ん坊の世話なんてしたことがない彼らが、水がほとんどない状況の中、育児指南書や聖書を片手に、赤ん坊にグリースを塗ったり、サボテンを搾ったり、子守唄を歌ったりする姿がほほえましい。
後半は宗教色が強いものの、すっかり父親の顔になってしまった彼らの魅力と、赤ん坊の将来を考えるにつれ自分の生き方を見直す心理描写、砂漠でのサバイバルの緊張感で、ぐいぐい引き込まれました。
ただ、ラストは時代的なものなのか、ジョン・ウェインだけいいとこ持ってきすぎなのが気になっちゃいましたね~。別にロマンスの予感とかいらなくない?
三人の友情を胸に、この子を立派に育てるぞと空に誓うような感じで良かったような。母親に誓った時みたいに。

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映画「弾丸を噛め」観ました

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弾丸を噛め
原題:BITE THE BULLET
製作:アメリカ’75
監督:リチャード・ブルックス
ジャンル:★西部劇

【あらすじ】1900年初頭の西部。賞金2千ドルの1120キロ耐久レースが始まろうとしていた。馬を乗りかえることは許されず、定められた過酷なコースをゆく死のレースだ。アメリカ中が注目する中、一癖も二癖もある猛者8人が各地から集まり、闘いの火蓋は切って落とされる…。

これは素晴らしくわたし好みの西部劇ですね!
過酷なレースってことで、馬がかわいそうで観てられないシーンもありましたが、作品自体は心から観てよかったと思えるものでした。
ロードムービー並の穏やかな道中で、動物愛護の精神を持ったクレイトンや、大金を自分の優勝に賭けてたのに彼が参加する事になって焦る親友マシューズ、周りに力を示したい粋がった若者や、ひどい虫歯で涙目なおじさん、過酷なレースに似つかわしくない美人さんなど、8名の参加者の交流が爽やか。
とくに、登場から動物をいじめていた、ケツを蹴っ飛ばしてやりたくなるような若者が、クレイトンに指導され、最後には彼を父親のように慕うとこがよかった。美しきケイトにもきちんと謝ったし、成長が見られるっていいよね!
ただ、最初はレースなんて馬には何の意味もないと言っていたクレイトンが、何故参加する気になったのかはよくわかりませんでした。保存してあるから、いつか確認せねば!
そして、彼とマシューズとの友情もいいんですよ。べたべたしすぎず、言わなくても気持ちが通じるみたいな。最後にヘロヘロになりながらもある行動にでたクレイトンの姿に涙が…。

邦題は原題の直訳ですが、原題は熟語で”苦しみに耐えてやりぬけ”という 意味。 でも、ある登場人物がやむをえない事情で弾丸を噛んでおり、終盤、怪我の痛みに顔をしかめる彼に「弾丸を噛んで耐えろ」と言うシーンがあるから、間違ってはいない気もします。というか「こんな弾丸は初めてだ。人の役に立つなんて」と、レース仲間との絆を感じさせるエピソードでは、タイトルの意味を考えて感動してしまったので、むしろ直訳でよかったと思います。
のんびりした作風や、友情が好きな方にはお勧めです!

映画「決断の3時10分」観ました

 | 西部劇  com(4) 

決断の3時10分
製作:アメリカ’57
原題:3: 10 TO YUMA
監督:デルマー・デイヴィス
原作:エルモア・レナード
ジャンル:★西部劇/ドラマ

【あらすじ】ベン・ウェイド強盗一味による駅馬車襲撃が横行するアリゾナ。その場に居合わせても何もできなかった牧場主ダンは、ベンが逮捕された時、ユマへの護送を手伝う事に。生活のため、200ドルの謝礼目当てでそれを引き受けた彼だったが…。

痺れました。異色西部劇で、人死にもドンパチもあるんですけど、心理戦というか、心理描写に重きを置いた作品ですね。
ウェイドが妙に男前なんですよ。犯罪者だけど礼儀があって、女に優しいけど部下の死には冷淡。敵であっても認めた相手には敬意を払う。…という感じで、怖い人のはずなのに、いつの間にか気を許してしまいそうな親しみやすさがあります。そんな彼だから、ダンとの駆け引きが面白い。ジッとしてる時間のほうが長いのに、ぐいぐい引き込まれました。
一方、彼と比べると情けなくて、どちらかというと悪党面のダン。息子達の前で強盗事件を見守る事しかできず、奥さんには遠まわしに”息子達の尊敬できる父親でいて”と言われてしまいます(息子の安全より大事か?)
最初は報酬目当てで引き受けた護送だけど、ウェイドとのやり取りの中で、彼の誠実さと信念が見えてきます。あのウェイドの巧みな話術によろめきかけ、死の恐怖にさらされて、それでもなお信念を貫く姿がカッコイイ!
ラストのウェイドの行動も、ダンを真の漢と認め、敬意を払っての事ですよね。ダンの決断の成果だと思います。
爽やかな感動を味わいながら、頭の片隅では「脱獄のために、また部下が苦労するんだろうなぁ」と思ってしまいました(笑)

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