パトリシア・ハイスミスタグを含むお薦め映画

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映画「リプリー」観ました

リプリー
原題:THE TALENTED MR. RIPLEY
製作:アメリカ’99
監督:アンソニー・ミンゲラ
原作:パトリシア・ハイスミス
ジャンル:★ドラマ/青春/犯罪

【あらすじ】アメリカ人の富豪の依頼で、放蕩息子ディッキーを連れ戻しに憧れの地ヨーロッパへやってきたトム・リプリー。彼は大学時代の友人と偽りディッキーに近づくが、やがて彼の魅力に惹かれていく。だが永遠に続くかと思った幸せも、ディッキーの心変わりによって終わりを迎え…。

やたらと人気の「太陽がいっぱい」はあまり好きじゃないんですが(主に若かりしアラン・ドロンが)、先に観たこちらは好印象だったので、確認のためにも久しぶりに再見しました。
これって140分もある作品だったんですね…たぶん初見はテレビカット版で、改めてこの作品の濃厚さにやられました。とくに「リプリーズ・ゲーム」で彼のその後を知ってるので、そんな業の深い人生の始まりとして観ると、ますます切ない!

評判をみると、この作品を「太陽がいっぱい」のリメイクと勘違いして、こちらの方が原作に忠実なのを知らずに批判してる人が多くて悲しいです。
同一原作でも「太陽がいっぱい」は一つの作品として完成されてると思うし、こちらはこちらで原作をリスペクトした映像化作品として十分見応えあるものになってたと思うんですけどね。どちらの主演俳優も、彼らじゃなければ成り立たないくらい、見事にその作品のリプリーになりきっていました。

<以下ネタバレという名の妄想>
印象に残ったのは、ディッキーを殺した後、ホテルに戻った彼が、「グリーンリーフ様ですよね?」と尋ねられ、この先の人生が決まったシーン。
おそらく愛する人をその手で殺した彼が、フラフラしながら戻ってくるまで頭の中でぐるぐる回っていたのは、「何故あんなことを」という後悔と、「どうして彼が死んで、僕は生きている」という疑問だったと思うんですよ。
もしかしたら、ボートの上で殺されたのは自分かもしれない。けれど実際に生き残ったのは自分。答えなんか出ないはずだった疑問に、ディッキーと間違えられた瞬間「自分はディッキーを蘇らせることができるから生き残ったんだ!」という答えと、”自分の中に愛する人が生きている”という安心感を覚えたんじゃないでしょうか。

ディッキーに成りすまし、結構行き当たりばったりで保身に徹するリプリーの様子が(最初は)やけに楽しそうなのも、自分の身を守ることが、唯一この世にディッキーを蘇らせる方法であり、ディッキーの死を否定することで罪の意識から逃れられたからだと思います。
そうやって嫌な記憶を地下室に押しやって鍵をかけていたのが、ピーターの存在によって再び掘り起こされるんですよね。
彼に惹かれれば惹かれるほど、(同化したことで)ディッキーへの憧れが薄まるほど、そしてピーターが他の誰でもない”リプリー”を愛するほどに、犯した罪がリプリーを苛みます。
もしメレディスに連れがいなかったら、殺されたのは彼女の方だったかも。
静かで残酷な結末に、ピーターが最期に何を想ったのか(きっとディッキーを殺したかもしれないと一度は思いつつも、彼を信じただろうに)…それを考えると泣けました。

ところで、他の方のレビューの中に”ディッキーもゲイだった”というのがあったので、巻き戻しつつ自分なりに検証してみた結果、「どちらともとれる」という答えしかでませんでした。
いちおうリプリーを気に掛けていると思われる点としては…

  1. 1、風呂場でのことや列車で何度も「ぶきみ」なことをされても拒絶しないどころか、その後も平気で肩を組んだり、隣に座ったりしていた。
  2. 2、列車での「ぶきみだ」は自分に言い聞かせるみたいだったし、ボートでの「退屈だ」はこれ以上、リプリーのたわごと(ディッキーは心を偽っている)を聞きたくないという感じだった。
  3. 3、切れやすく、相手を病院送りにしたことがあるディッキーが、ボートでリプリーを殴ろうとして我慢した。

あと、ちょっと自信ないんですが、「太陽がいっぱい」のようにお金はリプリーが引き出していたなら、シルヴァーナが妊娠した時に堕胎手術費用を用意しなかったのは、リプリーに知られたくなかったからかも?と思ったり。
まあ、どれも友情なのか恋愛感情なのかは、観る人によって違ってきそうです。

でも、重要なのはゲイかどうかよりも、ディッキーにとってリプリーが特別だったかどうかですよね。
彼の周りに集まるのは、表面上は仲良くしてても裏ではフレディのように「彼に音楽の才能はない」と悪口を言っているような人ばかりで、みんな金目当てや良家のお坊ちゃまだから仲良くしてるだけだったんだと思います。
でも、リプリーはわかりやすいくらいディッキーが大好きで、「君のためならなんでもする」とさえ言っていました。
たとえそれが恋愛感情によるものだったとしても、ディッキーにとっては(初めての?)本音で話せる相手だったのではないでしょうか。

しかし、それもフレディによって(たぶん裏でも色々吹き込んでいた)、彼も金目当てなのではないかという疑念が生まれてしまった。実際リプリーは上流階級の暮らしというものに強い憧れを持っていたし、その正体は同級生などではなく、貧しい調律師でした。
一度は特別だと思った相手だったからこそ邪険にはしなかったし、失望も大きく、最終的には激しい怒りに繋がってしまったのかもしれません。

そう考えると、やはり冒頭の「最初に上着を借りていなければ…」というモノローグがやるせないんですよね。
リプリーとディッキーが出会ったことで、本当に多くの人が不幸になってしまいました。きっと幸せになれたのは探偵さんくらいのものでしょう。(父親もなんだかスッキリした表情をしてる気がするけど)
メレディスのその後は知りませんが、彼はその後ハープシコード奏者の奥さんと暮らすので(原作では違うかも?)、利用した後は別れたんでしょうね。さすがに殺してはいないと思いたいですが、やはり彼と出会って不幸になったひとりだと思います。
…色々と妄想が膨らんで楽しめる作品でした。

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「リプリーズ・ゲーム」観た(パトリシア・ハイスミス)

映画「リプリーズ・ゲーム」観た

リプリーズ・ゲーム
原題:RIPLEY'S GAME
製作:イタリア・イギリス・アメリカ’02
監督:リリアーナ・カヴァーニ
原作:パトリシア・ハイスミス
ジャンル:★サスペンス/ドラマ

【あらすじ】強盗殺人で数百万ドルの贋作絵画を手に入れ裏世界から身を引いたトム・リプリー。そんな彼の元に、昔の仲間リーブスが現れ、邪魔者の始末を強引に依頼する。一度はにべもなく断ったトムだったが…。

「太陽がいっぱい」や「リプリー」の続編の話の映画化です。
マルコビッチのリプリーがよかったですね。今までみた彼の中でも一番嵌ってた気がするし、ドロンのリプリーより謎の男って感じが好きです。
20年後という設定らしいけど、携帯電話が出てくるから舞台は現代でしょうか。はっきりとは言ってなかった気がするし、どうせなら携帯電話なしで曖昧なままにしておけばよかったのに。
で、リプリーは引退して豪邸(若干悪趣味 笑)で奥さんと幸せに暮らしてます。まあ、前からバイセクシャル匂わせてましたし、ちゃんと愛のある結婚生活を送ってるんですよ。
ハープシコード奏者の彼女といちゃいちゃ連弾するシーンとか、スフレが改心の出来だと奥さん&メイドの前で嬉しそうにする姿が可愛い。

→以下ネタバレ注意!

映画「見知らぬ乗客」観ました

見知らぬ乗客
製作:アメリカ’51
原題:STRANGERS ON A TRAIN
監督:アルフレッド・ヒッチコック
原作:パトリシア・ハイスミス
ジャンル:サスペンス

【あらすじ】テニス選手のガイは、列車に乗り合わせた男ブルーノに声をかけられる。彼は自分の憎らしい父親と、浮気を繰り返すガイの妻との交換殺人を持ちかける。相手にしないガイだったが、彼は勝手に計画を実行に移してしまい…。

犯行の瞬間の見せ方や、排水溝に落ちたライターを拾うまでの手の演技。犯行を思い返しながら少女を見つめる犯人と、息子が殺人犯だと言われても笑っている異常な母親。そして暴走メリーゴーランド…。
ストーリーやシチュエーションが(今観ると)ありきたりでも楽しめるのは、こういう印象的なシーンがあるからだと痛感しました。
まさしく”サスペンス映画”という感じです。

<再見追記:2015/3/14>
冒頭からブルーノがいかにも胡散臭さをぷんぷん漂わせてますね。交換殺人をするなら、片方が実行するのと同時に、もう片方がアリバイをつくるの必須ですが、そこを決めずに進めちゃうところがブルーノという感じ。一方で、ガイが忘れていったライターを目ざとく見つけて、計画の一部に加えてしまう機転の良さもあって。
そんなブルーノの性格がわかったところで、今度はあの母親でしょ。彼女の描いた絵が写されると一気にホラーに!(笑)
こりゃあ、ガイは相当ヤバイ立場に立たされるなと予感させられ、さらに奥さんも嫌な女なもんだから色んな意味で主人公に同情してしまいます。
この後、超理解のある将来のお義父さんと、品行方正な恋人、ミステリーとか好きそうな解説役の妹が登場しても、まあそれくらいのご都合主義はいいかと思えたり。…サスペンスの興奮を伝える映像も素晴らしいですし。
盗聴器や指紋照合が出来ない時代のようで、主人公の反撃らしい反撃は終盤のメリーゴーランドでブルーノと対決するシーンのみでしたが、それでも十分今でも通用します。
ただし、メリーゴーランドの方に向かって発砲するアホ刑事はどうにかして!
ラストはちょっぴり人間不信になってしまったガイよりも、ブルーノを失った両親がどんな様子か知りたかったかなぁ。さりげなく父親の方がショックを受けてそう。そして、あのお母さんは………。
想像すると怖っ!

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