ジャック・ドゥミタグを含むお薦め映画

素敵映画に出会えた時の感動をそのまま書き綴る、映画感想ブログ.

映画「シェルブールの雨傘」観ました

シェルブールの雨傘
原題:LES PARAPLUIES DE CHERBOURG
製作:フランス’63
監督:ジャック・ドゥミ
ジャンル:ミュージカル/ロマンス

【あらすじ】フランス北西部の港町シェルブールで、自動車修理工の若者ギイと傘屋の少女ジュヌヴィエーヴが恋に落ちた。だが、まだ17歳のジュヌヴィエーヴを心配する母親は、娘の幸せを願うあまり口やかましくしてしまう。そんなある日、アルジェリア戦争の徴集礼状がギィに届き…。

Gyaoで7月3日まで。
すべてのセリフが歌になってるミュージカルには抵抗ありましたが、ロマンス映画として楽しめました。
といっても、ストーリーは今観ると陳腐と言えるくらいありがちなもので、先が読めるんでちょっと飽きそうになったり。でも大筋は読めても、物語の中心が人物ではなくシェルブールという舞台に固定されているという面白さや、心理描写の丁寧さのおかげで、歌に慣れてきてからはグイグイ引き込まれました。
しかも予想を裏切る善人揃いだったんですよね~。

てっきり母親は「ロミオとジュリエット」の父親のようなタイプかと思ったら、確かに金持ち男が現れた時に期待はしてたと思うものの、実際に求婚されたら面食らってしまうんですよ。そして、口うるさく「ギイの事は忘れなさい」と言いつつ、彼からの手紙を捨てるような卑怯な真似はしません。(絶対捨てると思ってた私が荒んでる?)
それどころか、縁談の邪魔になる孫の誕生を喜んでおり、産着を買ってきてウキウキしてるほどです。子離れできないながら、いいお母さんだと思いました。

そして、お目当てだった「ローラ(1960)」の後日談がまた良いんですよ。
何を隠そう、ジュヌヴィエーヴに求婚した男というのが、失意の後、宝石商として成功したローランなのです。ずっとローラへの気持ちを引きずっていたのに、ジュヌヴィエーヴを一目見て世界が変わったとか、「超面食いなだけかよっ!」と思わないでもなかったけど、大人の余裕で断っても10年くらいは待ちそうな一途さでしたね(笑)
これは「ローラ」を観てると、彼を応援せずにはいられないと思います。でも、結局宝石で釣るのはどうなの!?

そんな彼に見初められたジュヌヴィエーヴも全然悪い子じゃなかったです。
この作品は浮気物だと聞いていて身構えていたんですが、こんなの自然の摂理であって浮気じゃないでしょ。借金抱えた家の17歳の娘に何を求めてるんだ!(17歳には見えないけど)
妊娠するような事をした時点で、妊娠した場合は子供のためにも側にいられない男が身を引くのは暗黙の了解だと思う。というかあの時、ギイが叔母さんにジュヌヴィエーヴを紹介してれば流れも変わってたのでは?
…まあ、若いから仕方ないけど。
とにかく、彼女の選択は愛する人との子供のためだし、思いっきり悩んでいるところが描かれていたので、むしろ彼への愛が深いものだったと思えました。

あと、おそらく昔から密かにギイを愛していたマドレーヌもいい子で、ジュヌヴィエーヴの結婚式を見て、喜ぶわけでも怒るわけでもなく、ギイが傷つく事を想って悲しみの表情を浮かべる控えめなところが好きです。
失意のギイを立ち直らせるための厳しさや、変わらぬ献身、長らく彼を見てきたからこその不安など、ギイと結ばれるまでの機微が、短時間で丁寧に描かれてました。
彼女には幸せになって欲しいですね。

ラストの再会と別れも切なくて余韻に浸れます。二人の子供がそれぞれフランソワーズとフランソワなのがね…(ホロリ)
ここで彼女は不幸そうだと思う方もいるようですが、彼女は最初から好きな男と離れている時は憂鬱そうにしてたし、クリスマスなのに夫は出張中?みたいだし、あのべったりだった母を亡くしたばかりで精神的に参ってたんだと思いたいです。でなきゃ、雪の降る寒い夜に、幼い娘を窓全開の車内に残したりしないでしょ。相当疲れてますよ、事故りそうですよ!
思い出に引き寄せられてシェルブールに寄ったら、幸せそうなギイに会って憂鬱MAXになってただけで、夫が帰ってきたら可愛い娘と愛する夫と、人が変わったみたいに幸せを満喫してるに一票!
だって、そうじゃないとローランが不憫だもの…。
たぶん「ローラ」を先に観てるかどうかで印象が変わる作品だと思います。

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「ローラ(1960)」観ました

映画「ローラ(1960)」観ました

ローラ(1960)
原題:LOLA:DONNA DI VITA
製作:フランス/イタリア’60
監督:ジャック・ドゥミ
ジャンル:★ドラマ/ロマンス

【あらすじ】仕事にあぶれたローランは、幼友達ローラに似た雰囲気の少女と出会う。そしてその矢先、10数年ぶりにローラと再会するのだった。初恋のひととの思いがけない再会に運命を確信するが、彼女は7年前に忽然と姿を消した恋人ミシェルを待ち続け…。

最初はケバイ女だなぁと思って観てたんだけど、彼女の母親としての素顔が見えるにつれ引き込まれてしまいました。主人公がちょっと頼りなげな根暗青年なのも私的に感情移入しやすくていいです(笑)
子供を学校へ送ったり、寝かしつけたり、主人公と再会して話してても子供から目を離さず、こまごまと母親としての描写が入り続けて、最後まで変わらなかったことに感動。さすが「子供のためにギャンブルやめて立ち直る!」と修行の旅に出た夫(恋人?)を7年も信じて待ち続けるだけあります。
強い母親であり、ダンサーとしても男たちを魅了してしまう彼女は、何事にもやる気がなかった主人公が生きる喜びを見出すのも納得なヒロインでした。
また、13歳の美少女を女手一つで育てつつ父親にふさわしい相手を探す女性や、みんなに甲斐性なしと思われている息子の帰りを待ち続けるお婆さんが良かった。母親がみんな素敵なんですよ。
それに、仕事ではふらふらしてる主人公も、彼女への態度や他の人との会話から他人への誠実さが伝わってきて好感が持てます。ついかっとなってヒロインに酷い言葉を投げつけてしまった翌日、きちん誠心誠意謝るのがよい。こういう描写は省略してはいけないよね。
モノクロの美しい映像が、ラストの切なさを際立たせてました。ローラ(ローランでした)のその後が語られるという「シェルブールの雨傘」もいつか観てみたいです!

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「シェルブールの雨傘」観ました
「天使の入江」観ました

映画「天使の入江」観ました

天使の入江
原題:LA BAIE DES ANGES
製作:フランス’63
監督:ジャック・ドゥミ
ジャンル:★ドラマ

【あらすじ】パリで銀行員として働くジャンは、同僚に連れられ初めてカジノを訪れる。だが、一晩で年収の半額を手にしたことから、彼はギャンブルの魅力にとり憑かれてしまうのだった。父親に追い出され、南仏でカジノ通いを始めた彼は、ブロンド女性ジャッキーと意気投合し…。

ギャンブルにこうやって嵌っていくんだね…。
一瞬で大金が手に入ったと思えば、次の瞬間には帰りの汽車賃すら危うい。それが、新しい出会いでまた運が向いてきて、出会ったばかりの男女が夢のような時を過ごしたり、またお金に困ったり。
それをずっと繰り返しているんだけど、その間に「次の列車で帰る」と何度言っただろう?
「お金がほしいんじゃない。お金があっても賭けるもの」
どっぷりギャンブルに嵌っているジャッキーの言葉が、どれもこれも重みがあって、ギャンブル依存症の恐ろしさを感じました。
彼女と出会った事で、ギャンブルに嵌ってしまった者の惨めさ、苦しみを知ったジャンが、引き返さねばならないと決心した時、そこに”ジャッキーも一緒に”という気持ちが強くあり続けたのがよかったです。
彼らの道は長く辛いものだと思うけれど、きっとふたりなら(お父さんもたぶん協力してくれるだろうし)抜け出せると希望を持てるラストでした。
ちなみにタイトル「天使の入江:LA BAIE DES ANGES」は、ニースのカジノなどが建ち並ぶ海岸通りの海岸の名前だそうです。

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「ローラ(1960)」観ました
「ロバと王女」感想

映画「ロバと王女」感想

ロバと王女
製作:フランス’70
原題:PEAU D'ANE
監督:ジャック・ドゥミ
原作:シャルル・ぺロー
ジャンル:ミュージカル/ファンタジー

【あらすじ】愛する王妃を病で亡くした王様は、王妃の頼みで彼女より美しい相手としか再婚しないと誓う。そして、沢山の肖像画の中から選んだのは、なんと自分の娘だった。父親からの求婚に困惑した王女は、名付け親の妖精のもとへ相談に行く。

*ネタバレあり*
中世ヨーロッパ風の世界と浮世離れした登場人物、召使や馬は王国カラー(青や赤)に塗ったくられて、妖精や魔法の存在するおとぎ話の世界を演出しています。
亡き王妃の頼みからか、ただの面食いか。王様がたくさんの肖像画をはじいていった結果、いつの間にか王妃よりも美しく育っていた娘の肖像画が残った、というところで物語は始まります。お見合い用の肖像画なんて信用できないと思うんですけどね。
美しい王女(美人さんのカトリーヌ・ドヌーヴ)にさっそく求婚する王様。
「国王の言うことは聞くものだ」と、父親面で権力をかざします。
王女はちょっと困っているようでしたが、ここは軽蔑すべきでしょう。
妖精に相談したところ、無理難題を言って諦めさせる”かぐや姫作戦”を伝授してくれました。
しかし、本気モードの王様は次々と王女の望みを叶え、”太陽の輝きをもつドレス”も国の経済を支える”『金を産むロバ』の皮”さえも王女に贈ります。王女も「こんなにしてくれるんだから、結婚してもいいかも…」と迷い気味。
いや、頑張ったの召使だから。王様命令しただけだから!!
妖精も「父親と結婚するなんていけないことよ」と諭します。そして、てきぱきと王女にロバの皮を被せ、魔法の杖を与えて城から逃がすのでした。まるで、こうなると分かっていたかのように手際がいい…。

この後、赤の国に逃れてた王女は、汚い家で”臭いロバの皮”と人々に蔑まれて暮らし始めます。「なんで私がこんな目に…」とか悲しんでいるものの、魔法の杖があるので家の中には豪華な家具が並んでいるし、困ったことがあっても魔法で解決です。
そして、王子と出会い恋に落ちた彼女は、夢での逢瀬を果たし、指輪を仕込んだ手作りケーキをプレゼント。ついに王子は「この指輪がピッタリ合う女性と結婚する」と国中にふれ出すのでした。
国中の女性が大騒ぎし、”指が細くなる薬”なんてものも売り出されます。
でも、『指がただれた!』と騒いでいたところを見ると、この薬は指を溶かして細くするものみたいです。(怖いよっ!)
国中の女性が集まる中、王女は颯爽と最後に現れ、指輪がはまった途端にロバの皮を脱ぎ捨てます。そして、いい笑顔で太陽のドレス姿を人々に見せ付けるのでした。(なんだか演出が腹黒い…)

こうして王女と王子は結ばれ、父親がどうなったかといえば…。
なんと、妖精と結婚しているじゃないですか!?
どうやら彼女、むかし王様に振られたらしく、王女に協力したのも王様から遠ざけたかっただけの様です。まさか王妃の病も…!?
なんにせよ、そんなことで殺されたロバが可哀想でならない今日この頃。

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