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素敵映画に出会えた時の感動をそのまま書き綴る、映画感想ブログ.

映画「チャイナ・シンドローム」再見

チャイナ・シンドローム再見
『神様、どうか…!』
製作:アメリカ’79
原題:THE CHINA SYNDROME
監督:ジェームズ・ブリッジス
ジャンル:★サスペンス/ドラマ

そういえば前回は93分番組で観たんだったということで、やっと完全なものを再見。
時期的なものもあって、以前より緊張と恐ろしさ倍増でした。
昔、チェルノブイリ原子力発電所事故の再現ドラマのようなものも見たんだけど、ごく普通の人たちの”恐れ”というものが怖いんですよね。働くのは原子力について詳しく知らない者が大多数で、起こるかわからない事故よりも、職を失う方が怖いし、事故になったらどうなるかより想像しやすい。それに、まさか事故が起こる危険があるのに会社が”続けろ”というわけがない、という思いもあります。そんな、自分の中にもある”本当の危険から目を逸らしてしまう、身近なことへの恐れ”を恐ろしく思いました。
一方、原発のすぐ側に住んでるわけではない会社のお偉いさんは、おそらく専門家でもなく、投資が無駄になるとか、運転が遅れたらどれだけ損をするかの金勘定しか頭にありません。
そういう部分が全く同じで、これが事故の前に描かれていたという事に改めて驚かされました。
あと、事故の原因が経費削減(検査しないで結果捏造)のせいだったというのは、「タワーリング・インフェルノ」を思い出します。危険度は天と地ほどの差がありますが…。
また、真実味があるという点だけではなく、もちろん映画としても見ごたえがありました。なんといってもジャック・レモンの演技が素晴らしいですし、カーチェイスや篭城などサスペンス・アクションだけで見ても楽しめます。証拠となる資料を受け渡すため建物に入ると、閉まったドアガラスに追跡者(車)の姿が…!というシーンにはドキッとしました。
やるせないラストと、最後に映るカラーバーが印象的です。

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「チャイナ・シンドローム」観ました

映画「サンシャイン・クリーニング」観た

 | 社会派  com(8) 

サンシャイン・クリーニング
製作:アメリカ’08
原題:SUNSHINE CLEANING
監督:クリスティン・ジェフズ
ジャンル:コメディ/ドラマ

かつてチアリーダーだったものの、今は問題児の息子オスカーを抱えたシングルマザーのローズ。妹ノラは未だ自立できず、父親は怪しい商売に手を出す始末。ローズは割のいい仕事と聞き、妹と事件現場の清掃業を始めるが…。

最初の現場清掃のシーンはウギャー!!!ってなりました。マスクもゴーグルも手袋もしないで、血痕をブラシでゴシゴシするとか!!…内容を知らずに観たら、この展開にギョッとするでしょうね。
彼女たちが頑張ってる姿には励まされたものの、「リトル・ミス・サンシャイン」ほど明るくもないし盛り上がりもないしで、少し期待はずれでした。観ていて、スカッと元気になれるタイプではなかったかな。
でも、亡き母の出演したドラマのワンシーンを初めて観て涙するシーンや、天国と繋がる車の無線で母に話しかけるくだりはじんわりきました。
ただ、火事を起こした張本人がさっさと旅立っちゃうのはどうなんだろう。家族は納得してるんでしょうけど…。仕送りするつもりなのかな~?
あと、リンがあれっきりだったのも気になります。

映画「アラバマ物語」観ました

 | 社会派  com(8) 

アラバマ物語
製作:アメリカ’62
原題:TO KILL A MOCKINGBIRD
監督:ロバート・マリガン
原作:ハーパー・リー
ジャンル:★ドラマ

父親を尊敬し父の話しを聞くのが大好きな兄妹スカウトとジェム。その父が暴行事件の被告トムを弁護する事になり、黒人側についた一家に町の人々は冷たく当たるようになる。

久し振りに再見。内容を忘れかけて、いつの間にか社会派の固いイメージになっていたんだけど、思った以上に子供目線の温かいものでした。時間が経つと忘れるもんですね~。
まず、兄妹がほんと可愛いです。父親を名前で呼んだり、生意気言ったり。大人びてる瞬間があったと思えば、”ブー”の家の前で肝試しのようなことをして。
でも、どんな時でも、お兄ちゃんがお兄ちゃんしていて良かった!
妹のスカート姿をからかったりもするけど、いつも一緒だし、秘密の宝物も見せてあげるし。何より、何かあれば妹を守ろうとする姿に、あの素敵なお父さんを見て育っただけあるなぁと感心してしまいました。
妹も、お兄ちゃんとお父さんのことが大好きなのが、あのちょっと大人びた目から伝わってきます。素直で率直な言葉で大人もたじろがせてしまうところや、寝る前に父親に本を読んでもらうのが好きというところが可愛い。あと、終盤のハムの仮装には笑わせられました。
そんな彼らから見たお父さんもいい。全ては理解していなくても、しっかりわかってると思う。お父さんほどカッコイイひとはいないってね!
原題の意味は”マネシツグミを殺す事”。父親が「美しい歌声で楽しませてくれる無害なマネシツグミを殺してはいけない」と言っていて、ラストの伏線にもなっています。

映画「ライフ・オブ・デビッド・ゲイル」感想

 | 社会派  com(6) 
Tag:アラン・パーカー 

ライフ・オブ・デビッド・ゲイル
製作:アメリカ’03
原題:THE LIFE OF DAVID GALE
監督:アラン・パーカー
ジャンル:ドラマ/サスペンス

【あらすじ】テキサス州。もと大学教授で、死刑制度反対運動の指導者だったデビッド・ゲイル。だが今は、レイプ殺人の罪で死刑執行を3日後に控える身だった。そんな時、女性記者ビッツィーは、大金と引き替えに独占インタビューを許可され…。

これは観てる間はそれなりに引き込まれるんですけど、最後で「う~ん?」となってしまいました。
死刑制度廃止を訴えていると見せかけて、マスメディアやそれに振り回される人を批判してる気がします。
以下、ネタバレ注意。

まず、最後のいらんネタばらしなんですが、あれはたぶんビッツィーが自分を責めないように、わざわざ入れたんだと思います。
でも、デビッドが全てを計画したんだとすると、動機は死刑制度批判というより、「冤罪があったと証明できるか?」とTV番組で挑発されたからのような。コンスタンスが言っていたように、自分の頭のよさを誇示したいだけだったのでは、と疑ってしまいます。ビッツィーにそれをばらしたのも、誰かにそれを知っていてほしかったとも取れますよね。
そして、出て行った奥さんに届いた大金と、「何でもする女」からの謝罪の手紙!
あれじゃ、「俺は無実だったんだ。お前はまた信じなかっただろう?」と責めているようなもんですよ。しかも、彼女には自分の意思で死刑になったとは知らせてないだろうから、夫は自分に見放されて孤独のうちに無実の罪で死んでいったんだ…と思い詰めるのは確実。ほとんど復讐です。
まあ、結局彼自身も、彼をよく知るコンスタンスの手の平の上で転がされていたような気もしますが。
ビッツィーの救済措置なんか考えず、きっぱり二つ目のビデオだけで終わらせておけば、まだ死刑制度廃止について思いをめぐらせながら見終われたと思います。真相はどうだったかなんて、観る側の想像力に委ねればいいじゃないですか。
あんなトリッキーな手段、アメリカなら誰かやりそうだけど(笑)、実際にやるんじゃなくて映画にして訴えるのは、いい方法だと思うんですけどね。

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「ミシシッピー・バーニング」観ました

映画「エレファント・マン」観ました

 | 社会派  com(6) 
Tag:イギリス 

エレファント・マン
製作:アメリカ/イギリス’80
原題:THE ELEPHANT MAN
監督:デヴィッド・リンチ
原作:フレデリック・トリーブス、アシュリー・モンタギュー
ジャンル:ドラマ

【あらすじ】19世紀末のロンドン。21歳の青年ジョン・メリックは、その特異な容姿から“エレファント・マン”と呼ばれ、見せ物にされていた。そんなある日、外科医トリーブスの目に留まり、研究のために病院へ。やがて、メリックは一躍時の人となるが…。

頭の中に「エレファントマン」という単語が引っかかってて、気になって観てみました。
これって実話を基にしてたんですね…。こういう病気があったら怖いなというくらいの気持ちで観はじめて、最後は涙して観終わったんですけど、実際にこういう病気で苦しんだ人がいると思うと色々と考えさせられました。
「人を見かけで判断してはいけません」とはよく言うけど、第一印象は仕方がないとして、大事なのはその後のことですよね。
この作品では、”エレファント・マン”の姿が映されるのは、始まって30分以上経ってから。それまでの間に、彼がどのような扱いを受けてきたか、周りの人々がどういう反応をするのか、割と客観的に判断できました。
商売道具、化物、研究対象、何もできない厄介者、哀れな存在…そんな風に彼をみる人間を客観的にみることで、誰もが先入観のままに彼と接していることがわかります。
それは、彼が恐怖のあまり喋る事すら恐れるようになってしまったのも一つの原因なんだけど、それが解消されてからも先入観のままに彼を扱う人は後を断ちません。サーカスを思わせる音楽とともに、彼を見物しに来た人々が好き勝手やるシーンでは、その心無い姿にゾッとしました。
こんな行動をとる人は限られていると思うけど、実際に彼と対面したらトリーブスや奥さん、女優さんのように普通に優しく接するのは難しいでしょう。わたしもきっと傍観者になってしまうんだろうなと考え込んでしまいました。
気になったのはタイトルにもなっている彼の呼び名。彼の姿を見ても、どうして”エレファント・マン”なのかさっぱりわかりません…。

映画「デリー6:DELHI-6」観た

 | 社会派  com(2) 
Tag:インド 

デリー6
製作:インド’09
原題:DELHI-6
監督:ラーケーシュ・オームプラカーシュ・メヘラー
ジャンル:ドラマ

【あらすじ】NY育ちのローシャンは、祖国に帰りたいという祖母に付き添いインドの首都デリーへ。彼が最初に目にしたのは、都市伝説の黒猿が人々を襲っているというニュースだった。初めてのインドに戸惑う彼だったが、美しい娘ビットゥーと出会い…。

インド映画らしい活気にあふれた作品でした。
ちょっと大雑把というか、ぶちぶち途切れて、はっきりいって上手い映画ではないんですけど、インドへの深い愛情が伝わってくるし、街の賑やかな雰囲気を味わえます。
インドの古典「ラーマーヤナ」や、実際にあった黒猿騒ぎがベースになっていて、宗教や差別、警察の腐敗、結婚の問題などを取り上げながら、それでも明るく生きていくインド人の魅力を描いていました。とくに仲良しでやんちゃな少年二人組みが、この明るさに一役買ってたかな。
あと、NY育ちの主人公目線でみていくのが入りやすかったです。

後半は暗雲が立ち込めてくるんですけど、最初はみんな楽しんでいた黒猿の噂がエスカレートし、宗教対決に発展してくのが滑稽で恐ろしい。そのなかで、彼らの本来の姿を信じる主人公が伝えた、狂人の言葉が良かった!
『どんな欠片にも神の光がある。自らを覗いて見よ、神はお前の近くにいる。
神を愛するなら、皆を愛せ。それがこの信仰の定めなのだ』

そう言って、暴徒と化した彼らに鏡を突きつけます。
そして、そのくだりを活かしたエンディングが本当に素晴らしいんですよ~!!!
例の鏡のなかに、街の人々がひとりづつ顔を出し、笑ったりはにかんだり、ふと罪悪感を覚えたような表情を浮かべたり、目をそらそうとするのを思いとどまったり…。それぞれが”自らを覗いて見る”のですね。中には腹が立つほど憎たらしい人物もいたんですが、それを見たら、ふっと笑いがこぼれました。
監督さんは、本当にインドとそこに生きる人々が好きなんだと思います。
ちなみに、タイトルの意味は、デリーの郵便番号「110006」が”デリー6”と呼び親しまれていることから。

映画「胡同(フートン)のひまわり」感想

 | 社会派  com(2) 
Tag:中国 

原題:向日葵
製作:中国’05
監督:チャン・ヤン
ジャンル;ドラマ

【あらすじ】1976年、北京の下町。文化大革命で強制労働にかり出されていた父親が6年ぶりに帰ってきた。画家の夢を奪われた父親は、9歳の息子シャンヤンにその夢を託す。だが、突然現れたそんな父親に、シャンヤンは反発を強めていく。

病んでる!
自分が手を怪我して(させられて)画家としての道を断たれたから、代わりに息子を画家にしようとするお話。
家に縛り付け、自分で受け止めて決断しなきゃいけない事も勝手にやって、さんざん息子の人生を奪った挙句、病んだ息子の絵を見て満足して「今まで家族のために尽くしてきたから、これからは自分の人生を歩みたい」とかテープを残して蒸発。でも、孫が生まれた日にはこっそり向日葵の花を置いていくという…。
ほとんど自分のために生きていたようにしか見えません!
そもそも、本気で画家になりたかったんなら、手の怪我くらい乗り越えてほしい。怪我したのって利き手のみだった気がするし…。
唐山大地震のシーンが痛々しかったです。

映画「再会の街で」観ました

 | 社会派  com(4) 

再会の街で
製作:アメリカ’07
原題:REIGN OVER ME
監督:マイク・バインダー
ジャンル:★ドラマ

マンハッタン。大学時代の友人チャーリーを街で見かけ、二度目にしてやっと言葉を交わした歯科医アラン。だが、彼は9.11テロで最愛の妻と娘を亡くして以来、すっかり心を閉ざしてしまっていた。彼を気に掛けるチャーリーだったが…。

チャーリーの苦悩はきっとわたしには全部はわからないんだろうけど、彼のような心に深い傷を負った人が実際に身近に居たら、アランのように彼のサインを見逃さず諦めずそっと側にいてあげることができるだろうかと思いながら観ました。大学時代のように陽気だったかと思えば、突然「一人にしてくれ!」と怒って去ってしまう彼の心は、映画のことだから冷静に観れても実際だったらきっとわたしにはわからないと思います。
だから彼を思いやって待つこともできるアランや、判事がチャーリーの妻の両親に言ったセリフに感動したんだけども、精神病院が”あんな場所”と断言される現状はどうなのかとも思ったり。結局、隔離施設に過ぎないんですかね?
さすがに街中で拳銃(空砲)を振り回したんだから、PTSDの治療くらいは受けたほうがいいと思いました。

ちなみに、原題の意味は「私を支配する」。「四重人格」の名曲のタイトル”Love Reign Over Me(愛が私を支配する)”から引用されています。
どうでもいいけど、チャーリーの使っている改造スクーター?と、彼が嵌ってる「ワンダと巨像」というゲームが妙に印象に残りました。

映画「ミッシング(1982)」観ました

 | 社会派  com(6) 

ミッシング(1982)
製作:アメリカ’82
原題:MISSING
監督:コンスタンタン・コスタ=ガヴラス
原作:トーマス・ハウザー
ジャンル:★ドラマ

南米チリに滞在していたアメリカ人夫婦チャールズとベス。ところが、突然のクーデターでチャールズは行方不明に。彼の父親エドワードがやってくるが、息子は自分の意思で隠れていると楽観的だ。だが、現地のただならぬ様子に思い直し…。

主演がジャック・レモンだから明るいのを期待してたんですけど、冒頭からもう不穏な空気が漂っていて、そこでタイトルが”行方不明”だと気付きました。死体だらけの街に、直前に観た「ブレイブワン」の「人間は一線を越えれば簡単に人を殺せる」というセリフが頭の中でぐるぐる回る…!
のんきにアヒルを可愛がるチャールズの日常や、白馬が駆け抜けていく幻想的なシーン、聞く相手によって変わる状況を表現した映像や、チャールズを想うベスの回想。そんなシーンを観れば沈んだ気持ちも少し和らぐものの、捜せば捜すほど生存は絶望的だとわかってしまう二人を観ているのが辛かったです。
最初は真剣に心配しているように見えない父親も、危機感が募れば隠れていた息子への深い愛情が見えてきて、闘技場で呼びかけるところでは鼻の奥がツンとしました。普通に平和な場所で生活していたら、わが子がこんな恐ろしい事に巻き込まれてしまうなんて思わないものですもんね。ましてや、自分が信じていたものが背後に絡んでいるなんて…。
ラスト、怒りと悲哀を帯びた後姿が深い余韻を残します。

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「マッド・シティ」観ました

映画「シリアの花嫁」観ました

シリアの花嫁
製作:イスラエル・フランス・ドイツ’04
原題:THE SYRIAN BRIDE
監督:エラン・リクリス
ジャンル:★ドラマ

【あらすじ】イスラエル占領下のゴラン高原、マジュダルシャムス村。そこで暮すドゥルーズ派の人々は、シリアへの帰属意識から無国籍を貫いていた。そんな中、境界線の向こうへ嫁ぐ日を迎えた花嫁モナは浮かない顔をしていて…。

忙しいのもそろそろ終わりそうですが、疲れてるので難しいことは省いてサクっと感想いっちゃいます。
とにかく、花嫁モナの姉アマルが格好いい!
自身も家庭の問題を抱えていて、ひとりの時に泣いていたりするんですが、何よりも家族の絆を大切にしています。モナが笑顔で嫁げるように、バラバラになった家族をひとつにしようと奔走するんですね。
というか、家族の絆をかろうじて保っていたのは彼女だったようで、ロシア人と結婚して絶縁状態にあった弟とも手紙のやり取りを続けていました。一人で泣いていたアマルのもとへやってきて、どうしてここがわかったのかという問いに、アマルの手紙の一節を諳んじる弟ハテム。僕もこの手紙が支えだったと語るシーンは涙腺が緩みます。
手紙という家族の絆が心の支えとなり、彼らが挫けず頑張れたように、モナにも強く生きてほしいから”決して消える事のない家族の絆”を感じさせてあげたい。そんな想いが伝わってきました。

やがて、アマルの頑張りも報われ、しきたりやプライドに縛られていた父親はハテムの肩を抱いて和解。家族の強く温かく絆に、モナの表情にもアマルのような凛とした強さが…。
ラスト、一人でシリアに向かって歩きだすモナの姿と、”希望”という意味の名を持つアマルの笑みが深い余韻を残します。

映画「善き人のためのソナタ」観ました

 | 社会派  com(4) 
Tag:ドイツ 

善き人のためのソナタ
製作:ドイツ’06
原題:DAS LEBEN DER ANDEREN
監督:フロリアン・ヘンケル・フォン・ドナースマルク
ジャンル:★ドラマ

【あらすじ】1984年、壁崩壊前の東ベルリン。国家に忠誠を誓う国家保安省(シュタージ)の局員ヴィースラー大尉は、反体制的疑いのある劇作家ドライマンとその同棲相手クリスタを監視しはじめる。だが、しだいに彼らの生き方に心を動かされ…。

わたし的に、こういう作品のいちばん怖いところは、自分がそこにいたら確実に口を割るか滑らすかして、身近な人を裏切ってしまうだろうと、そんな”もしも”がありありと目に浮かぶところ。まあ、この時代にわたしが生きていても、シュタージに目を付けられることはない…と思いたいですけど。
そんなわけで、弱さにつけ込まれ悲惨な目に遭ったクリスタにはとても同情してしまいました。自分のファンだと励ましてくれた相手が、あんな形で目の前に現れたら、もう混乱と絶望であっさり心が折れてしまっても仕方ないな、と。ヴィースラーの最後の言葉が、ちゃんと彼女に伝わっていればいいんですが…。

そして、わたしには真似できないポーカーフェイスで、多くの人を追い詰めてきたヴィースラー。仕事への幻滅と(今さら?)、初めて知った世界への感動から、彼らを守る側になっていく様子が心温まります。たぶん、現実はこんなに甘くはないんでしょうけど、慣れない事を一生懸命にやろうとする彼の眼が今までと違って優しくて(ブレヒトの詩集を朗読するシーンとか)、余計なことを忘れてこの物語に入り込むことが出来ました。

驚いたのは、終盤にドライマンが自分の盗聴記録と、それに関わった局員のデータを簡単に閲覧できたということ。これって復讐されたりするんじゃないの?と不思議に思ったんですけど、実際はシュタージの腐敗というのはほぼなかったようで、だからこそ堂々と公開してるんですね。ドイツでこの作品は”よくできたファンタジー”として高く評価されているようです。
ちなみに原題の意味は、ドイツ語でも英語でも”他人の人生”。う~ん、邦題は頭を使わずに決めた感じがプンプンしますね。

映画「ナイロビの蜂」観ました

 | 社会派  com(10) 
Tag:イギリス 

ナイロビの蜂
製作:イギリス’05
原題:THE CONSTANT GARDENER
監督:フェルナンド・メイレレス
原作:ジョン・ル・カレ
ジャンル:★ミステリー/ドラマ

【あらすじ】ケニアのナイロビ。ガーデニングが趣味の英国外務省一等書記官ジャスティンには、アフリカで精力的に救援活動を続ける妻テッサがいた。彼女の活動には深く関わらない彼だったが、ある日、彼女が何者かに殺されて…。

居間の大きいテレビで画面が揺れる作品を観たのは初めてだったようで、酔いまくって二日にわけて観ました。しかも内容が重いし、誰も信じられないし…。彼がテッサと話すシーンと、子供たちの笑顔のシーンでだけ温かみというものを感じて、最後まで観られた気がします。
テッサがちょっと無謀すぎて(妊娠中なのに…)感情移入できませんが、そんな彼女を理解しようと追い求めるジャスティン目線のテッサは美しいんですよね(本当に妊娠してたんだ!)。スーツ姿で事なかれ主義を貫いてきたジャスティンが、汚れたシャツでアフリカを飛び回るのも素敵。彼と彼の深い愛を堪能できた作品でした。
利益のためなら人の命なんて顧みない企業のやり方については、ほんとうにありそうで恐ろしくなってしまいます。一方では、黙って自ら飛行機を降りて主人公を見送る少年もいたりして、人間の心ってこうも違いがでてしまうものなんだとつくづく悲しくなりました。
ラストのジャスティンの行動は賛否両論ありそうですが、わたし的にはあれは彼の”選択”というわけではなく、彼女のこころを辿る旅の終着点があの湖だっただけという気がしたので受け入れられました。

ちなみに原題は”誠実な園芸家”とか”いつも庭弄りをしているひと”というような意味。自分の事(庭)以外には無関心な人々(ジャスティン)を指しているようです。
また邦題の方は、蜂がトレードマークのスリービーズ社と、相手を刺して命を落とすミツバチのように、命がけで告発しようとしたテッサたちを指しているんでしょうか。印象的だし、なかなかいい邦題だと思います。

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映画「ディープエンド・オブ・オーシャン」観た

 | 社会派  com(12) 

ディープエンド・オブ・オーシャン
製作:アメリカ’99
原題:THE DEEP END OF THE OCEAN
監督:ウール・グロスバード
原作:ジャクリン・ミチャード
ジャンル:★ドラマ

1988年、ウィスコシンシン州。写真家ベスは幼い息子ヴィンセントとベンを連れ、高校の同窓会に出席する。だが、目を離した隙に三歳のベンがいなくなってしまった。必死の捜索もむなしく、手がかりも掴めぬまま9年が経ち…。

子供を誘拐された母親の苦悩が全面に出ているけれど、この作品の中心は兄弟の絆。ラストまで本心を表に出さず、黙って静かに主張し続ける兄ヴィンセントに泣かされました。
彼の出ているシーンは少ない方だし、出ていてもあまり話しません。ただ、両親をみる時の寂しそうな目、自分が手を離したせいだと誰にも言えず独りで苦しむ彼の表情。その寂しさの裏返しである反抗的な態度が、雄弁に彼の心情を語っているんですよね。
そして、もうひとり末の妹がいるんですが、彼女にいたってはただ画面の隅に存在するだけ。末っ子の方が観たら、彼女の扱われ方にも涙してしまうかもしれません。
この二人の描かれ方は、そのまま両親の関心の薄さを表しているようでした。

後半、ある偶然から思いもよらなかった事実が判明します。
誰かが幸せになろうとすれば誰かが辛い思いをする。彼らの気持が痛いほどわかるから切ない…!
強引に幸せな家族を取り戻そうとする夫を見て、やっと冷静さを取り戻したベスの決断。わずかな記憶から絆を実感し、受け入れてみようとするサム(ベン)の決断。そして、不安な表情なヴィンセントの告白。終盤は涙なしには観られません。
「ずっといるのか?」というヴィンセントの問いに、サム(ベン)が「わからない」と正直に答えたことに、これからの両家族の関係に希望が持てました。

序盤から感情を揺さぶられるシーンが幾つもあり涙をこらえるのが大変でしたが、ところどころ感動が途切れる感じがあって、心の機微を丁寧に描いているとは言い難いかも?(15分カット版ですが)
タイトルは「深い海の底」。原作の邦題「青く深く沈んで」のほうがぐっと来ます。
ちなみに、終盤に「アイ・アム・サム」でわたしが引っかかってしまった一人夜歩きと同じシーンがあったりしますが、年齢や場所や見守るひとの立場とかわたし的にはぎりぎり納得できる範囲でした。

映画「そして、私たちは愛に帰る」観た

 | 社会派  com(2) 
Tag:ドイツ トルコ 

そして、私たちは愛に帰る
製作:ドイツ/トルコ’07
原題:AUF DER ANDEREN SEITE
監督:ファティ・アキン
ジャンル:★ドラマ

【あらすじ】ドイツ、ブレーメン。定年を迎え、同じトルコ出身の娼婦イェテルを囲い孤独を紛らわすアリ。息子ネジャットは戸惑うが、彼女がトルコにいる娘アイテンのために頑張っていると知り、好感を抱く。一方、アイテンは政治活動に身を投じており…。

BSで何度かオンエアしていたけれど、重そうなのでずっとスルーしていた作品。先日、例の93分の映画枠でオンエアがあり、吹替えだったらということで鑑賞しました。
ドイツとトルコ、二つの国にまたがった、すれ違う三組の親子の死と愛と再生のドラマです。登場人物はわがままだったり、冷たかったりと共感しづらいし、すれ違い展開も強引なくらい。でも、遠く離れて暮していても、心が離れてしまっても、死によって引き裂かれても、愛によって繋がっているんだなぁと強く感じさせる作品でした。
物語の発端となる2つの死。そのおおもとの原因とも言える、ドイツにおけるトルコ人移民問題と、トルコに対するEUへの加盟論争などの社会情勢については、ぼんやり「そんな事があったのか」というくらいにしかわかりませんでした。
でも、娘の死のきっかけとなったアイテンを、娘の想いに応えるように赦し、救おうとしたスザンヌ。そして、軽蔑に値することをしてしまった父のなかに、深い愛情と孤独をみつけ、迎えに行くネジャット(冒頭はこのシーンから始まる)の”愛”。言葉にすれば簡単なんだけども、そこにたどり着くまでには絶望や悲しみ、怒りがあって、それを乗り越えてやっと迎えた心の平安なんですよ。
ネジャットが浜辺で父の帰りを待つラストに、温かく優しい気持ちになりました。
ちなみに、原題を直訳すると「向こう側に」、英語題の意味は第三章のタイトル「天国のほとりで」です。

映画「永遠(とわ)の語らい」感想

永遠(とわ)の語らい
製作:ポルトガル/フランス/イタリア’03
原題:UM FILME FALADO(仏語:UN FILM PARLE/英語:A TALKING PICTURE)
監督:マノエル・デ・オリヴェイラ
ジャンル:ドラマ

【あらすじ】2001年7月、地中海。歴史学教授のローザは、遺跡めぐりをしながら7歳の娘マリアに人類の歴史を教えていた。そんなある日、2人はアメリカ人船長に船内での夕食の席に招かれる。そこでは3人の女性がそれぞれ母国語で語り合い…。

この作品はよくわからなかったですね。
9・11を意識してるんだろうという事はわかるんですけど、なんか数コマの風刺漫画をびろーんと伸ばしたような感じでわたしは面白いとは思えませんでした。
まず、親子の遺跡めぐりが描かれる第一パート。せっかくいろいろな遺跡を映しているのに、まるで絵葉書のように固定された映像でストレスが溜まります(神父の”三位一体”のお話は興味深かった)。母親は本でしか見たことのない場所を実際に見たくて来たのに、遠くから眺めて娘に昔話(終わったこと)のように話して聞かせるだけだし、娘の方も素直にそれを聞いて「あれは何?」「どうしてそうなるの?」と優等生のように質問するばかり。あまり感情移入させたくないのか…。その割には少女と犬が戯れてるシーンあったけど?

そして、三人の女性と船長が夕食の席で会話する第二パート。フランス人・イタリア人・ギリシャ人の女性たちと、ポーランド系アメリカ人 (アメリカではポーランド人を馬鹿にするポーリッシュ・ジョークというのがあるそうです) の船長がそれぞれ母国語で会話。それ自体は面白かったのだけど、話の内容はあるようなないような…わたしがわからなかっただけかもしれませんが。
そこに、ポルトガル人の親子が加わり、彼らだけ母国語ではなく英語を話すことに。こういう意味ありげなところは、ポルトガルやそれぞれの国の関係に詳しければもっと面白かったのかも。

ラスト、置いてきぼり(衝撃的ともいう)の第三パート。何と言ったらいいのか…暴力の歴史は今でも続いているということでしょうか?
マルコヴィッチさんの顔がインパクト抜群。少女に贈ったアラブ人形のことは知らないまま、放心してるしかないという感じでした。
ちなみに原題はどれも”語る映画”。邦題もなかなかですね。
深読みできる方にはたまらない作品かもしれません。

映画「評決」観ました

 | 社会派  com(2) 
Tag:シドニー・ルメット 

評決
製作:アメリカ’82
原題:THE VERDICT
監督:シドニー・ルメット
原作:バリー・リード
ジャンル:★ドラマ

【あらすじ】他人の葬儀に紛れ込み仕事を探す、落ちぶれた弁護士ギャルビン。友人に金になりそうな依頼を回してもらうが、医療ミスで植物状態の女性を目の当たりにしたことで熱意を取り戻す。だが、相手は背後にカトリック教会を控える病院で…。

以前録画ミスして、今回やっと観る事ができました。
ポール・ニューマンが素敵。やっぱ男は皺だよね!!
…それはさておき、内容もまさしく法廷モノという感じで見ごたえがありました。法廷モノ好きならこれは外せません。
冒頭では酷いありさまだったギャルビンが、示談金をたくさん引き出そうと、被害者の痛ましい写真を撮っている時にふと気付きます。”自分は一体なにをしてるんだ”と。
酔いから覚めたように、かつて正義を求めていた頃の熱意を、目に生気を取り戻していく様子にぐいぐい引き込まれました。とくに、バーで出会った女性ローラに理想を語った時の目がほんと可愛い。キラッキラしてて。
それでいて、相手の強引なやり方にうろたえて「もうダメだ」と簡単に挫けそうになることも…。まともに闘うのは久しぶりで、味方も少ない彼の揺れ動く心理。人間味があってよかったです。
また、彼の突然の変化に戸惑いつつ、どんな時も見捨てることなく力を貸してくれる弁護士仲間ミッキーと、弱気のギャルビンに喝を入れるカッコイイ女ローラ。自分の意見を聞かない生意気なギャルビンを目の敵にする憎たらしい判事もいい味だしてました。

行き詰まり、もう手立てがないと思いかけた時、名探偵のように逆転のチャンスを掴むくだりはぐっときます。完全にかつての自分を取り戻したギャルビンの最終弁論…思わず聞き入りました。
ギャルビンが悪人じゃなくてホントよかったなぁとしみじみ思ってしまう、やや複雑な結果でしたが、映画としては文句なし!
電話のベルが鳴り響くラストが深い余韻を残します。

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第24回ブログDEロードショー「十二人の怒れる男」
「旅立ちの時」観ました

映画「パピヨン」観ました

パピヨン
製作:フランス’73
原題:PAPILLON
監督:フランクリン・J・シャフナー
原作:アンリ・シャリエール
ジャンル:★ドラマ

【あらすじ】胸に蝶の刺青をしている事からパピヨンと呼ばれる男がいた。無実の罪で南米仏領ギアナの監獄へ送られてくる途中、国防債権偽造でフランス中を混乱させたドガと出会う。彼は、脱走費用の工面と引き換えに彼の命を守ると約束し…。

ドガとパピヨンの友情が素晴らしかったです。
こんなことがなければ友情どころか話すこともなかったんじゃないかと思われる二人なんですが、不思議なくらい息がぴったりで一緒にいるのが当たり前のようにみえてくるんですよね。壊れた眼鏡を手に「縁にレンズをあわせるんじゃなく、レンズに縁をあわせよう」と言って直してしまう、柔和なドガだからこそかもしれません。
その友情の真価が問われた独房のエピソード。危険を冒しココナッツを差し入れるドガ。食事量を減らされてもドガの名前を言わないパピヨン。ふたりの絆に涙が。
また、虫を食べてでも生き残ろうとする生への執着、暗闇の中でぎらぎらと光る眼、夢の中で「人生を無駄にした罪で有罪」と言わたときの表情…マックイーンの鬼気迫る演技はさすがでした。
でもでも、当初パピヨンを演じるのはチャールズ・ブロンソンの予定だったんだとか!!
マックイーンの演技は素晴らしかったけれど、それでもブロンソンのパピヨンも見てみたかった…。

二度目の脱走はドガがあまり出てこなくてつまらなかったです。部落で過ごすシーンもよくわからなかったし(脱走自体が夢?とか思ってしまった)、やはり二人の友情あってこその作品だと思いました。
ラスト、悪魔島での生活に慣れて意外と気楽にやってるドガと、不屈の精神で自由を求めるパピヨンの対比にしみじみ。泳ぎ去る彼を見送るドガのなんとも言えない表情が印象的でした。
それにしても、最後の水中の人影は何とかならなかったのか…。

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映画「タハーン ~ロバと少年~」観ました

 | 社会派  com(8) 
Tag:インド 

タハーン ~ロバと少年~
製作:インド’08
原題:TAHAAN: A BOY WITH A GRENADE
監督:サントーシュ・シヴァン
ジャンル:★ドラマ

【あらすじ】カシミール地方。家族やロバのビールバルと共に暮していた8歳の少年タハーン。3年前から父親が行方不明だったが、父がくれたロバがいつも一緒だった。そんなある日、借金返済のためビールバルが売られてしまい…。

後半は嫌な汗をかく展開なんですが、ラストで予想外に感動してしまって一気に大好きになった作品です。
舞台は紛争中のインド北西部カシミール地方ということで、最初からきな臭さが漂ってきました。ちょっと村はずれに行けば銃声が聞こえてくるし、廃墟と化した町だってでてきます。
そんな中、幼いながら強く優しい心をもつ少年タハーンが、父親とのつながりでもある親友のロバを取り戻そうと奮闘するお話です。
前半は、だいたいロバの新しい持ち主である商人ダールに付いてまわるんですが、コイツがけっこう嫌な奴でした。仕事を手伝う青年ザファルの扱いが酷いんですよ。彼が質問に答えようとまごつくたび、”お前は馬鹿だから聞くだけ無駄だ”という態度で遮るので、私自身話すのがとろいのもあってムカついてしまいました。根はいい人だとわかっていても、約束は破るし、嫌な気分になることもしばしば…。

→以下ネタバレ注意!

映画「わが街」観ました

わが街
製作:アメリカ’91
原題:GRAND CANYON
監督:ローレンス・カスダン
ジャンル:★ドラマ

【あらすじ】ロサンゼルス。人生に焦りを感じ始めていた弁護士マックは、ある日、黒人地区で車がエンストし、危険なところをレッカー車の運転手サイモンに助けられる。一方、マックの妻クレアは捨て子を見つけて家に連れ帰り…。

たしかフジテレビで深夜に放送していたのを期待せずに観たんですが、これがなかなかの拾い物でした。犯罪がはびこるロサンゼルスを舞台に、6人の男女の人生の転機を描く群像ドラマです。人との繋がりという普遍的なテーマをさりげなく描いていました。

危ないところを助けてもらったマックは、心残りをつくりたくないという想いでサイモンに感謝の気持ちを伝えようとします。彼の妹の家が銃撃された(!)と聞けばいいアパートを紹介し、ふとした思い付きから知り合いの女性を紹介してみたりも。その一方で、よけいなお節介だったかもしれないと、どこまで踏み込んでいいものか悩んでいるんですよね。
これはわたしもしょっちゅう悩むことなので共感できました。相手がまだ会って間もない命の恩人ならなおさら不安でしょう。
そんな時、妻が拾った赤ん坊(通報済み)を養子にしたいと言い出します。ちょっとした”善意”もためらっていた彼に、ばばーんと人生に関わる決断をしてみせたわけです。
「起きてしまった事を無かった事にはできないように、一度できた人との縁は消せないのよ」と言うクレアが素敵でした。
バイオレンス映画監督のデイビスが、物盗りに脚を撃たれて考え方が変わったり変わらなかったりというエピソードも人間らしくて面白かったです。彼が引き合いにだした「サリヴァンの旅」という作品もいつか観てみたいと思いました。

マックとサイモンの人種を超えた友情、彼らと子供(甥も)との親子の愛情、そしてちょっとしたきっかけから始まった恋。それらが静かにじっくりと描かれています。中盤、マックの夢のシーンからクレアの夢に切り替わる演出も良かった!
原題はグランドキャニオンで、ラストに雄大な風景が迎えてくれます。

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映画「暗黒街のふたり」観ました

暗黒街のふたり
製作:フランス’73
原題:DEUX HOMMES DANS LA VILLE
監督:ジョゼ・ジョヴァンニ
ジャンル:★ドラマ/犯罪

【あらすじ】銀行強盗を計画したリーダーとして懲役12年の刑を受けたジーノ。彼の社会復帰を願う保護監察司ジェルマンの力添えで出所した彼は、妻のためにも真面目に第二の人生を歩み始める。だが、彼の更生を疑うゴワトロー警部と再会し…。

実にやるせない作品でした。
本気で人生をやり直そうと頑張るジーノを踏みにじるように、不運や世間の冷たい目、そして悪意と無関心が彼を追い詰めていきます。
とくに酷いのがゴワトロー警部。彼は優越感を得るためにこの仕事をしてるんでしょうね。だから、自分がぶちこんだ犯罪者が、自分よりいい生活をしているなんて許せない
あらゆる手段でジーノを刑務所に送り返そうとする姿は、ジーノを知っている側にとって腹立たしいものでしかありません。(根拠はないけどマザコンっぽいし、立ってるだけで不気味!)

もちろん、彼を信じて家族や息子のように想ってくれている人もいました。彼が心から反省していると知っているジェルマンはもちろん、その家族や、仕事をくれたおじさんなどです。
彼らの存在にジーノがどれだけ救われたことか!
彼らを見ていて、自分だったら前科のある者を偏見を持たずに見られるだろうかと考えてしまいました。きっと、無関心によって彼を死刑にしてしまった陪審員たちと、同じ結論を出してしまうんでしょうね…。
ゴワトロー警部のような存在が現れないため、誤った判決を下さないため、わたしたち国民が制度に関心を持ち、目を光らせている事が大事だと思いました。

また、この作品では”残酷なギロチン刑”を批判しているんだけど、見せしめのために使わないのなら死刑囚を苦しませないギロチン刑(あと日本の絞首刑も)は残酷とも言い難い気がしました。死刑そのものが残酷と言うならわかるけどね。
原題の意味は「街のふたり」、邦題は”暗黒街”にしたせいで内容を誤解されそうです。

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